転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
相手は大会屈指の得点力を誇る南原ドラゴンズ。
先発を任された朝倉悠真は、強力打線を相手に投球を開始する。
準決勝当日。
市内の少年野球場には、朝から多くの選手や保護者が集まっていた。
四年生以下の部も、いよいよ残り四チーム。
ここまで勝ち進んできたチームだけあって、どこも簡単には負けそうにない。
「悠真!」
「おはよう、大地!」
「今日、お前先発だろ!」
「うん!」
「頼んだぞ!」
「任せて!」
大地が笑った。
俺も笑い返す。
……いいな。
こうして仲間から信頼されるというのは、やっぱり嬉しい。
もっとも、期待に応えられるかどうかは別問題だ。
今日の相手は強打の南原ドラゴンズ。
簡単に抑えられるとは思っていない。
◇ ◇ ◇
試合開始。
先攻は南原ドラゴンズ。
つまり、俺たちは守備からだ。
「朝倉、頼んだぞ!」
田島監督の声に、俺は大きく頷いた。
「はい!」
マウンドへ向かう。
中村先輩がホームベースの後ろに座った。
俺は軽く肩を回し、ボールを握る。
その瞬間。
『ピロン♪』
――――――――――――――――――
【公式戦イベント発生】
『強打者への挑戦』
【対象試合】
春季少年野球大会
四年生以下の部・準決勝
桜台フェニックス
対
南原ドラゴンズ
【イベント目標】
・先発登板
・強打者からアウトを奪う
・失点を最小限に抑える
・打撃で勝利に貢献する
【特別報酬】
各種経験点
投手特殊能力取得のコツ
――――――――――――――――――
(……おお)
また新しいイベントだ。
しかも、投手用の特殊能力。
これはぜひとも欲しい。
俺はマウンド上で小さく笑った。
よし。
まずは一番打者だ。
◇ ◇ ◇
初球。
外角低め。
シュッ!
ぱしんっ!
「ストライク!」
(……よし)
狙いどおり。
二球目。
内角高め。
打者がバットを振った。
カンッ!
打球はサード方向へ転がる。
「サード!」
村田先輩が前進し、捕球。
一塁へ送球した。
「アウト!」
ワンアウト。
まずは順調だ。
続く二番打者。
こちらは小柄だが、足が速そうだった。
初球はボール。
二球目はストライク。
三球目。
外角へ投げた球を、上手く合わせられた。
カキンッ!
打球はライト前へ。
(……上手いな)
単打。
一死一塁。
そして、三番打者が登場した。
南原の主力打者。
小学四年生。
背が高く、構えにも迫力がある。
(……さて)
どう攻めるか。
中村先輩がサインを出す。
初球は外角低め。
俺は頷いた。
投げる。
シュッ!
「ボール!」
少し外れた。
二球目。
内角。
「ストライク!」
三球目。
外角低め。
打者が振る。
カキィンッ!
(……うわっ!)
鋭い打球が三遊間へ飛んだ。
藤原先輩が追いかける。
だが、わずかに届かない。
レフト前ヒット。
一死一、二塁。
……なるほど。
強打のチームという評判は本当らしい。
そして。
四番打者が打席に入った。
◇ ◇ ◇
四番打者は、さらに体格がよかった。
小学四年生とは思えないほど、バットを力強く振っている。
もちろん、プロ野球選手と比較するようなものではない。
だが、今の俺にとっては十分な強打者だった。
(……面白い)
俺はボールを握り直した。
一死一、二塁。
ここで長打を打たれれば、一気に失点する可能性がある。
慎重にいこう。
初球。
外角低め。
「ストライク!」
二球目。
内角へストレート。
カキンッ!
「ファウル!」
追い込んだ。
中村先輩がサインを出す。
外角低め。
俺は頷いた。
そして、三球目。
少し力を抜いて投げた。
シュッ!
打者が踏み込む。
バットが出る。
カキィンッ!
打球はセンター方向へ高く上がった。
(……打ち上げた!)
「センター!」
高橋先輩が落下地点へ向かう。
そのまま捕球。
「アウト!」
ツーアウト!
だが、二塁走者がタッチアップを狙った。
「サード!」
センターから返球。
村田先輩が捕球する。
しかし、走者はすでに三塁へ到達していた。
二死一、三塁。
……まだ安心できないな。
続く五番打者。
ここも長打力があるらしい。
初球。
ストライク。
二球目。
ボール。
三球目。
打者が振った。
カンッ!
打球はショート方向へ。
藤原先輩が捕球し、一塁へ送球する。
「アウト!」
スリーアウト!
チェンジ!
(……ふう)
無失点。
何とか初回を抑えた。
◇ ◇ ◇
「ナイスピッチング!」
ベンチへ戻ると、大地が出迎えてくれた。
「ありがとう!」
「やっぱお前すげえな!」
「いや、結構打たれたよ」
「でもゼロ点じゃん!」
……まあ、そうだな。
確かに、結果は無失点だ。
だが、内容としては反省点も多い。
球速七十八キロでは、強打者に対応される。
コントロールを高めても、完璧に打球を封じられるわけではない。
それでも。
(……楽しいな)
強い打者と対戦するのは、やっぱり面白い。
そして、これからは打者としての出番だ。
一回裏。
桜台フェニックスの攻撃。
俺は三番打者として、バットを握った。
相手投手は四年生。
なかなか速い球を投げるらしい。
(……さて)
投手として無失点。
ならば、次は打者として結果を残そう。
俺はネクストバッターズサークルで、ゆっくりと素振りを始めた。
第二十四話をお読みいただき、ありがとうございます。
南原ドラゴンズの強力打線を相手に、悠真は初回無失点の好投を見せました。
次回、第二十五話「三番打者の意地、準決勝の勝負どころ」。