転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
今度は三番打者として、チームを勝利へ導く役割を担う。
しかし、南原の強力打線は簡単には引き下がらない。
一回裏。
桜台フェニックスの攻撃。
先頭打者の高橋先輩が四球を選んだ。
無死一塁。
なかなかいい立ち上がりだ。
続く二番打者は佐々木先輩。
初球からバントの構えを見せる。
コツンッ。
打球は一塁方向へ転がった。
相手の一塁手が捕球し、一塁へ送球。
「アウト!」
送りバント成功。
一死二塁。
そして。
「三番、朝倉!」
「はい!」
俺の出番だ。
バットを持って打席へ向かう。
相手投手は四年生。
先ほどの投球を見る限り、球速は八十キロ台後半くらいだろう。
制球力も悪くない。
(……いい投手だな)
俺は軽くバットを構えた。
◇ ◇ ◇
初球。
外角低め。
「ストライク!」
(……なるほど)
なかなか厄介なコースだ。
二球目。
内角高め。
「ボール!」
少し外れた。
カウント一ボール一ストライク。
三球目。
外角のストレート。
(……来た!)
俺は踏み込んだ。
バットを振る。
カキィンッ!
打球は一二塁間へ飛んだ。
「抜けろ!」
ベンチから声が上がる。
相手の二塁手が飛びついた。
だが、わずかに届かない。
ライト前ヒット!
「よし!」
二塁走者が三塁を回る。
ライトがボールを拾った。
返球。
しかし、間に合わない。
「セーフ!」
先制!
桜台フェニックス、一対〇!
(……よし!)
俺は一塁ベース上で小さく拳を握った。
投手として無失点。
打者として先制タイムリー。
なかなかいい仕事ができたのではないだろうか。
◇ ◇ ◇
二回表。
俺はショートの守備位置にいた。
予定どおり、一回を投げ終えて藤原先輩と交代したのだ。
藤原先輩がマウンドへ。
去年からチームを支えてきた四年生の主力投手。
安心して任せられる。
……と思っていたのだが。
南原ドラゴンズの打線は、やはり強力だった。
先頭打者がセンター前ヒット。
続く打者は四球。
無死一、二塁。
(……まずいな)
俺は少し守備位置を調整した。
次の打者は送りバント。
一死二、三塁。
ここで相手の一番打者が登場した。
藤原先輩が投げる。
初球。
ストライク。
二球目。
カキィンッ!
打球は左中間へ飛んだ。
外野手が追いかける。
しかし、打球はその間へ落ちた。
二塁走者も本塁へ向かう。
……二点タイムリー。
南原ドラゴンズ、二対一。
逆転された。
「くそっ!」
藤原先輩が悔しそうに呟いた。
俺はすぐに声をかけた。
「まだ大丈夫です!」
大地も声を出す。
「一つずつ取ろう!」
藤原先輩が頷いた。
「ああ!」
その後、藤原先輩は後続を抑えた。
だが、試合は逆転を許してしまった。
◇ ◇ ◇
三回裏。
桜台フェニックスの攻撃。
スコアは一対二。
一点差で追いかける展開だ。
そして、俺に二度目の打席が回ってきた。
二死一塁。
(……さて)
相手投手は初回と同じ四年生。
先ほどは外角のストレートをライト前へ運んだ。
当然、相手も警戒してくるだろう。
初球。
内角。
「ボール!」
二球目。
外角低め。
「ストライク!」
三球目。
高め。
俺は見送った。
「ボール!」
カウント二ボール一ストライク。
(……焦る必要はない)
無理に打ちにいく必要はない。
自分の打てる球を待てばいい。
四球目。
真ん中より少し内。
(……これだ!)
俺はバットを振り抜いた。
カキンッ!
鋭い打球が三遊間へ。
相手のショートが飛びつく。
だが、ボールはグローブの先を抜けた。
「よし!」
レフト前ヒット!
一死ではなく二死なので、走者は打球と同時にスタートを切っている。
一塁走者は一気に三塁へ向かった。
レフトから返球。
「セーフ!」
二死一、三塁。
同点のチャンスだ。
続く四番打者は松本先輩。
打撃に定評のある四年生だ。
「松本先輩!」
俺が声をかける。
「お願いします!」
「任せろ!」
松本先輩が力強く答えた。
初球。
ファウル。
二球目。
ボール。
三球目。
カキィンッ!
打球はセンター前へ飛んだ。
(……よし!)
三塁走者がホームイン。
同点!
桜台フェニックス、二対二!
「やった!」
大地がベンチで飛び跳ねていた。
俺も思わず笑う。
……やっぱりいいな。
自分が打つのも楽しいが、仲間が打ってくれるのも嬉しい。
◇ ◇ ◇
四回表。
南原ドラゴンズの攻撃。
藤原先輩は再びマウンドへ上がった。
しかし、先頭打者に二塁打を許した。
続く打者は送りバント。
一死三塁。
ここで南原の三番打者。
藤原先輩が投げた。
初球。
外角低め。
「ストライク!」
二球目。
カキンッ!
打球はセカンド方向へ。
「大地!」
俺が叫ぶ。
大地が前進し、捕球した。
三塁走者が本塁へ走る。
大地は迷わずホームへ送球。
ぱしんっ!
中村先輩が捕球する。
走者が滑り込んだ。
「アウト!」
「よっしゃあ!」
同点を守った!
二死一塁。
その後、藤原先輩は四番打者を外野フライに打ち取った。
四回表終了。
二対二。
そして四回裏。
俺たちの攻撃が始まる。
◇ ◇ ◇
先頭打者が内野安打で出塁した。
続く打者は送りバント。
一死二塁。
その後、二番打者が四球を選んだ。
一死一、二塁。
そして。
「三番、朝倉!」
俺の三度目の打席だ。
(……よし)
ここで打てば、勝ち越し。
しかも、次の回は最終回だ。
大きな意味を持つ打席になる。
相手投手がセットポジションに入る。
初球。
外角低め。
ストライク。
二球目。
内角高め。
ボール。
三球目。
外角。
ファウル。
追い込まれた。
だが、焦らない。
俺にはアベレージヒッターがある。
そして、対エース○も取得している。
もちろん、特殊能力があるからといって自動的に打てるわけではない。
だが、技術の再現性を高めてくれるのは大きい。
四球目。
外角低め。
(……来た!)
俺は踏み込んだ。
バットを振る。
カキィンッ!
打球はセンター方向へ。
相手のショートが飛びついた。
しかし、届かない。
「抜けた!」
センター前ヒット!
二塁走者が三塁を回る。
センターが返球。
ホームへ。
だが、間に合わない。
「セーフ!」
勝ち越し!
桜台フェニックス、三対二!
「よっしゃあ!」
ベンチから歓声が上がった。
俺は一塁ベース上で、小さく笑った。
(……よし!)
今日、三打数三安打。
しかも二打点。
打撃では十分に貢献できた。
だが、まだ試合は終わっていない。
五回表。
南原ドラゴンズの最後の攻撃が残っている。
そして、相手は強打のチームだ。
最後まで何が起こるか分からない。
俺は改めてグローブを握った。
勝利まで、あと三つのアウト。
ここからが本当の勝負だ。
第二十五話をお読みいただき、ありがとうございます。
悠真は準決勝で三打数三安打二打点の活躍を見せ、桜台フェニックスが三対二と勝ち越しました。
次回、第二十六話「決勝進出、二刀流が導く勝利」。