転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
南原ドラゴンズの強力打線を抑えれば決勝進出が決まる。
桜台フェニックスは、仲間を信じて最後の守備に臨む。
五回表。
南原ドラゴンズの最後の攻撃。
スコアは三対二。
俺たち桜台フェニックスが一点リードしていた。
だが、安心できる状況ではない。
何しろ、相手はこの大会屈指の強打線を持つチームだ。
たった一点のリードなど、あっという間にひっくり返される可能性がある。
「よし、みんな!」
藤原先輩がマウンドから声を上げた。
「あと三つだ!」
「おう!」
俺たちも声を揃える。
藤原先輩は、この試合の二回からマウンドを任されている。
途中で二点を失ったものの、それ以外は粘り強く投げ続けていた。
球数も増えているが、監督とコーチが状態を確認しながら続投を決めている。
俺はショートの守備位置についた。
(……頼みますよ、藤原先輩)
もちろん、俺も全力で守るつもりだ。
◇ ◇ ◇
先頭打者。
南原の六番打者が打席に入った。
藤原先輩の初球。
外角低め。
「ストライク!」
いい球だ。
二球目。
内角。
打者が振った。
カンッ!
打球はショート方向へ転がった。
(……来た!)
俺は素早く前進する。
打球の勢いを確認し、身体を低くする。
グローブを差し出す。
ぱしっ!
捕球成功。
そのまま一塁へ送球。
ぱしんっ!
「アウト!」
ワンアウト!
「ナイスショート!」
藤原先輩が声を上げた。
「ありがとうございます!」
俺は笑って返した。
よし。
あと二つだ。
続く七番打者。
こちらは初球から積極的に振ってきた。
カキンッ!
打球はライト方向へ。
右翼手が走る。
しかし、ボールはその前に落ちた。
ライト前ヒット。
一死一塁。
(……やっぱり簡単じゃないな)
俺は改めて守備位置を確認した。
相手は一点を追いかけている。
当然、走者を進めたいはずだ。
ここで盗塁やバントがあるかもしれない。
八番打者が打席に入る。
予想どおり、送りバントの構え。
藤原先輩が投げた。
コツンッ。
打球は投手前へ転がった。
藤原先輩が素早く処理する。
二塁への送球は間に合わない。
そのまま一塁へ。
「アウト!」
二死二塁。
……なるほど。
同点の走者が二塁に進んだ。
そして九番打者。
ここを抑えれば勝利。
しかし、出塁を許せば上位打線に回ってしまう。
重要な場面だった。
◇ ◇ ◇
藤原先輩が大きく息を吐いた。
中村先輩がサインを出す。
初球。
外角低め。
「ボール!」
二球目。
内角。
「ストライク!」
三球目。
打者が振った。
カンッ!
ファウル。
追い込んだ。
ベンチから声が飛ぶ。
「藤原、あと一つ!」
「落ち着け!」
俺も声を出した。
「先輩、後ろは任せてください!」
藤原先輩がこちらを見て、軽く笑った。
「ああ!」
そして四球目。
藤原先輩が腕を振る。
シュッ!
打者がバットを出した。
カキンッ!
打球は二塁方向へ転がった。
「大地!」
「任せろ!」
大地が正面で捕球する。
そのまま一塁へ送球。
ぱしんっ!
「アウト!」
「ゲームセット!」
試合終了!
桜台フェニックス、三対二!
南原ドラゴンズに勝利!
決勝進出だ!
◇ ◇ ◇
「やったあああ!」
大地が飛び跳ねた。
「決勝だぞ、悠真!」
「うん!」
「あと一勝で優勝だ!」
「そうだね!」
俺も笑顔になった。
去年に続いて、今年も決勝進出。
しかも、今年は準々決勝で青陵への雪辱を果たしている。
ここまでの道のりは、決して簡単ではなかった。
だが、その分だけ嬉しい。
「朝倉!」
藤原先輩が近づいてきた。
「今日はナイスバッティングだったな!」
「ありがとうございます!」
「三安打二打点だろ? 助かったぞ」
「藤原先輩もナイスピッチングでした!」
「おう!」
藤原先輩が笑った。
俺も笑い返す。
いいな。
こういうの。
投手として先発し、打者として勝ち越し点を叩き出す。
しかも、最後は仲間の守備で勝利。
これ以上ない試合だった。
◇ ◇ ◇
試合後。
田島監督が選手たちを集めた。
「みんな、よく頑張った!」
「はい!」
「相手は強い打線だったが、最後まで粘り強く守れた。特に終盤の守備はよかったぞ」
監督は満足そうに頷いた。
「ただし、まだ終わりじゃない」
その言葉に、全員が静かになった。
「次は決勝戦だ」
「はい!」
「去年も優勝したが、今年は今年だ。気を緩めず、最後までしっかり戦おう」
「はい!」
俺たちは声を揃えた。
……よし。
あと一勝。
優勝まで、本当にあと一勝だ。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
俺は育成システムを開いていた。
『ピロン♪』
――――――――――――――――――
【公式戦結果】
春季少年野球大会
四年生以下の部・準決勝
桜台フェニックス 3
南原ドラゴンズ 2
勝利!
【朝倉悠真・個人成績】
投手:
1回無失点
打者:
3打数3安打
2打点
【総合評価】
S
【獲得報酬】
各種経験点
強豪対戦ボーナス
【特殊能力のコツ】
対強打者○
――――――――――――――――――
(……おお!)
対強打者○。
投手用の特殊能力だ。
強打者との対戦で投球能力が向上する。
なかなか魅力的な能力ではないか。
俺は思わず笑みを浮かべた。
アベレージヒッター。
対エース○。
そして、今回の対強打者○のコツ。
少しずつではあるが、特殊能力も充実してきた。
この調子で育成を続ければ、将来的には相当な選手になれるだろう。
もっとも、今はまだ七歳。
身体能力には限界がある。
焦る必要はない。
俺は画面を閉じた。
次は決勝戦。
どんな相手が待っているのか。
(……楽しみだな)
俺は布団に入った。
そして、翌日の練習を思い浮かべながら眠りについた。
第二十六話をお読みいただき、ありがとうございます。
南原ドラゴンズとの準決勝に三対二で勝利し、桜台フェニックスは決勝進出を決めました。
次回、第二十七話「決勝戦の相手、王者との再戦」。