転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
その対戦相手は、昨年の決勝でも戦った東山レッドソックスだった。
再び激突する両チーム。決勝戦へ向けた準備が始まる。
「東山レッドソックス?」
俺は思わず聞き返した。
「ああ」
田島監督が頷く。
「決勝の相手は、東山レッドソックスに決まった」
……なるほど。
これは面白い。
昨年の市内低学年大会。
俺たち桜台フェニックスが初めて優勝した大会の決勝戦。
その相手こそ、東山レッドソックスだった。
強力な打線を誇るチーム。
特に四年生の主力打者たちには随分と苦しめられた。
あのときは、何とか勝利を掴むことができた。
そして今年。
再び決勝で対戦することになったのだ。
「今年も東山か!」
大地が興奮した声を上げた。
「去年も強かったよな!」
「うん」
「今年も勝とうぜ!」
「もちろん!」
俺は笑って答えた。
もっとも、昨年勝ったからといって今年も勝てるとは限らない。
相手だって成長している。
それに、今年の東山は昨年とは主力選手の顔ぶれも変わっているはずだ。
四年生以下の大会なのだから、昨年四年生だった選手たちはもう出場できない。
つまり、今年は新しい四年生を中心としたチームになっている。
その新しいチームが決勝まで勝ち上がってきた。
十分に強敵だろう。
◇ ◇ ◇
「それじゃあ、東山について説明するぞ」
田島監督が資料を広げた。
「今年の東山も打撃力が高い。ただし、去年とは少し違う」
監督は続けた。
「今年は守備もかなり良くなっている。特に内野の連携が強い」
なるほど。
打撃だけでなく守備まで強化してきたのか。
それは厄介だ。
「それから、エースは四年生の速水拓海。右投げで、球速は九十キロ前後」
「九十キロ!?」
大地が驚いた。
俺は少し興味を惹かれた。
九十キロ。
四年生としては優秀な球速だ。
しかも、エースということはコントロールもそれなりにいいのだろう。
「速水は去年も三年生として試合に出ていた。だが、今年は大きく成長しているらしい」
監督の説明を聞きながら、俺は昨年の試合を思い返した。
……なるほど。
昨年の控え投手が、今年のエースになったわけか。
少年野球ではよくある話だ。
学年が上がれば、それまで控えだった選手が中心になる。
当然ながら、成長の機会も増える。
これは楽しみだ。
◇ ◇ ◇
練習開始。
今日のメニューは、打撃と守備の確認が中心だった。
まずはティーバッティング。
俺はバットを握り、軽く構えた。
ボールをよく見る。
足を踏み出す。
腰を回転させる。
そして、バットを振る。
カンッ!
打球はセンター方向へ飛んだ。
「いいぞ、朝倉!」
山本コーチが声をかけてくれる。
「ありがとうございます!」
「ただ、少し身体が開くのが早いな」
……おっ。
なるほど。
俺はもう一度フォームを確認した。
確かに、最近は少し早めに身体を回している気がする。
前世の経験があるとはいえ、今の身体ではまだまだ調整が必要なのだ。
「もう一回お願いします!」
「よし!」
再びティーバッティング。
今度は身体の開きを抑える。
バットを振る。
カンッ!
先ほどよりも、打球が真っすぐ飛んだ。
「おっ、今のはいいぞ!」
「ありがとうございます!」
その瞬間。
『ピロン♪』
――――――――――――――――――
【打撃練習評価】
フォーム改善を確認しました。
【改善項目】
身体の開き
ミートポイントの安定
【獲得経験点】
技術ポイント+15
精神ポイント+5
――――――――――――――――――
(……よし)
やはり、こうした細かい修正が重要だな。
育成システムがあるからといって、練習しなくていいわけではない。
むしろ、能力を最大限に活かすためには、地道な練習が欠かせない。
◇ ◇ ◇
その日の午後。
田島監督が俺を呼んだ。
「朝倉、決勝の起用について話しておきたい」
「はい!」
「今回は藤原を先発させる」
「分かりました!」
「お前は三番ショートだ。投手としても準備しておいてくれ」
「はい!」
なるほど。
今回は藤原先輩が先発。
俺はショートとして出場するらしい。
もちろん、異論はない。
藤原先輩はチームの主力投手だ。
しかも、決勝戦ともなれば経験豊富な投手に任せるのは自然な判断だろう。
「それから、朝倉」
「はい?」
「決勝だからといって、無理するなよ」
田島監督が真剣な表情で言った。
「お前はまだ二年生だ。これから先、何年も野球を続けるんだからな」
「はい!」
俺は大きく頷いた。
その通りだ。
今は七歳。
将来的には高校野球、プロ野球、そしてメジャーリーグを目指している。
ここで身体を壊すわけにはいかない。
無理をせず、今できる最高のプレーをする。
それが大切だ。
◇ ◇ ◇
その日の夜。
俺は育成システムを開いていた。
経験点の残高を確認する。
市内大会と春季大会で、かなりの経験点を獲得していた。
もちろん、能力強化にも使っている。
しかし、それでも十分な余裕がある。
(……さて)
決勝に向けて何を強化するか。
ミート。
コントロール。
走力。
守備力。
どれも重要だ。
だが、今の俺はまだ小学二年生。
成長制限によって、簡単に能力を伸ばせるわけではない。
俺は少し考えた。
(……やっぱり、ミートかな)
現在のミートはF40。
七歳の能力上限はF50。
まだ伸ばせる余地がある。
しかも、俺はアベレージヒッターを取得している。
ミート能力を伸ばせば、その効果をさらに活かせるだろう。
俺は経験点を消費した。
『ピロン♪』
【ミートがF40からF43になりました】
(……よし!)
少しずつではあるが、確実に成長している。
この調子だ。
俺は画面を閉じた。
明日は決勝戦。
相手は東山レッドソックス。
昨年の決勝でも対戦した強豪だ。
(……絶対に勝つぞ)
俺は静かに気合いを入れた。
二年連続優勝。
その目標まで、あと一勝だった。
第二十七話をお読みいただき、ありがとうございます。
決勝の相手は昨年と同じ東山レッドソックス。
新エース・速水拓海を擁する強豪との再戦が決まりました。
次回、第二十八話「決勝戦開幕、七歳の天才打者」。