転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある 作:1番道路
桜台フェニックスと東山レッドソックスが、二年連続で優勝を争うことになった。
三番ショートとして出場する朝倉悠真は、東山の新エース・速水拓海と対峙する。
決勝戦。
とうとう、この日がやってきた。
春季少年野球大会。
四年生以下の部。
俺たち桜台フェニックスは、東山レッドソックスとの決勝戦を迎えていた。
去年に続いて、二度目の決勝。
しかも相手まで同じなのだから、なかなか不思議な巡り合わせだ。
「悠真!」
「ん?」
大地が駆け寄ってきた。
「今日も勝とうぜ!」
「もちろん!」
「去年みたいに優勝するぞ!」
「うん!」
俺は笑って答えた。
……いいな。
こういう雰囲気。
決勝戦だというのに、緊張よりも楽しみの方が大きい。
いや、決勝戦だからこそ楽しいのかもしれない。
強い相手と戦える。
しかも、優勝が懸かっている。
これ以上ない舞台だった。
◇ ◇ ◇
「全員集合!」
田島監督の声が響いた。
俺たちはベンチ前に集まる。
「いよいよ決勝だ」
「はい!」
「相手は東山レッドソックス。去年も戦った相手だな」
監督は選手たちを見渡した。
「ただし、今年は去年とは違うチームだ。相手も成長している。去年勝ったからといって油断するなよ」
「はい!」
「それから、今日は藤原が先発だ。朝倉は三番ショート。佐藤は八番セカンド」
「はい!」
俺と大地が返事をする。
その後、他の選手の名前も呼ばれた。
捕手は中村先輩。
四番は松本先輩。
守備の中心となる四年生たちが、しっかりとメンバーに入っている。
去年から一緒に戦ってきた仲間たちだ。
頼もしい限りである。
「よし、最後まで全力でいこう!」
「はい!」
全員の声が揃った。
◇ ◇ ◇
試合開始前。
俺は相手チームの練習を眺めていた。
東山レッドソックス。
赤いユニフォームを着た選手たちが、整然とウォーミングアップをしている。
その中心に、一人の少年がいた。
背番号一。
速水拓海。
小学四年生。
今年の東山のエースだ。
彼は捕手に向かって投球練習をしていた。
左足を上げる。
身体を回転させる。
そして、右腕を振り抜く。
シュッ!
ぱしんっ!
(……おお)
なかなか速い。
しかも、フォームが綺麗だ。
特に腕の振りが安定している。
球速は九十キロ前後と聞いているが、実際に見ると数字以上に速く感じるかもしれない。
「悠真、あれがエースだぞ」
大地が隣に立っていた。
「うん」
「すげえ速いよな」
「そうだね」
「お前、打てる?」
「打ってみないと分からないよ」
「お前なら打つだろ!」
大地が笑った。
……随分と信頼されているな。
もちろん、期待には応えたい。
だが、相手も優秀な投手だ。
簡単にはいかないだろう。
そのとき。
『ピロン♪』
――――――――――――――――――
【決勝戦イベント発生】
『二年連続優勝への挑戦』
【対象試合】
春季少年野球大会
四年生以下の部・決勝戦
桜台フェニックス
対
東山レッドソックス
【特別目標】
・決勝戦に出場する
・打撃で勝利に貢献する
・守備または投球で勝利に貢献する
・大会優勝
【特別報酬】
大量の経験点
大会MVP評価
特殊能力取得補助
――――――――――――――――――
(……おお!)
またしても大量報酬の予感だ。
これはぜひとも達成したい。
俺は小さく笑った。
よし。
全力でいこう。
◇ ◇ ◇
「プレイ!」
審判の声が響いた。
先攻は東山レッドソックス。
つまり、俺たちは守備からだ。
藤原先輩がマウンドへ上がる。
初球。
外角低め。
「ストライク!」
いい立ち上がりだ。
二球目。
内角。
打者が振った。
カンッ!
打球はショート方向へ。
(……来た!)
俺は素早く前進した。
グローブを地面へ近づける。
ぱしっ!
捕球成功。
そのまま一塁へ送球。
「アウト!」
ワンアウト!
「ナイスショート!」
藤原先輩が声を上げる。
「ありがとうございます!」
俺は笑って返した。
続く二番打者はセンターフライ。
二死走者なし。
そして三番打者。
東山の主力選手だ。
初球。
外角低め。
「ボール!」
二球目。
内角。
「ストライク!」
三球目。
カキィンッ!
打球は左中間へ飛んだ。
センターが追いかける。
しかし、ボールはその前に落ちた。
センター前ヒット。
二死一塁。
……なるほど。
やはり簡単には終わらない。
そして四番打者。
体格のいい四年生だった。
藤原先輩が投げる。
初球。
ストライク。
二球目。
ファウル。
三球目。
カキンッ!
打球はセカンド方向へ。
「大地!」
「おう!」
大地が捕球し、一塁へ送球。
「アウト!」
スリーアウト!
チェンジ!
初回無失点。
なかなかいい立ち上がりだった。
◇ ◇ ◇
一回裏。
桜台フェニックスの攻撃。
東山のマウンドには速水拓海。
右腕のエースだ。
先頭打者の高橋先輩が打席に入る。
初球。
シュッ!
ぱしんっ!
「ストライク!」
(……速い)
ベンチから見ても、球威がある。
二球目。
外角低め。
高橋先輩が振った。
カンッ!
打球はセカンド方向へ。
相手の二塁手が軽快に処理する。
「アウト!」
一死走者なし。
続く佐々木先輩。
こちらも三球目を打ったが、ショートゴロ。
二死走者なし。
そして。
「三番、朝倉!」
俺の出番だ。
バットを握り、打席へ向かう。
速水先輩がこちらを見た。
少し驚いたような表情だった。
まあ、無理もない。
俺はまだ小学二年生。
相手は四年生だ。
体格差はかなり大きい。
だが。
(……関係ないな)
打席に立てば、年齢など関係ない。
投手と打者。
ただ、それだけだ。
◇ ◇ ◇
初球。
速水先輩が振りかぶる。
シュッ!
ぱしんっ!
「ストライク!」
(……なるほど)
外角低め。
いい球だ。
二球目。
内角高め。
今度はボール。
カウント一ボール一ストライク。
三球目。
外角へストレート。
(……来た!)
俺は踏み込んだ。
バットを振る。
カキンッ!
打球は三塁方向へ。
「ファウル!」
……惜しい。
タイミングは合っていた。
だが、少し引っ張りすぎたらしい。
カウント一ボール二ストライク。
追い込まれた。
速水先輩がボールを握り直す。
そして四球目。
内角低め。
(……ここだ!)
俺はバットを振り抜いた。
カキィンッ!
打球はセンター方向へ飛んだ。
相手のショートが横っ飛びに飛び込む。
だが、届かない!
センター前ヒット!
「よし!」
俺は一塁へ駆け抜けた。
セーフ!
二死一塁。
俺はベース上で小さく笑った。
(……いい投手だな)
簡単には打てなかった。
だが、しっかりと捉えることができた。
これで初打席は成功だ。
もっとも、まだ得点には繋がっていない。
次の打者は四番、松本先輩。
ここで一本出れば面白い。
俺はリードを取りながら、相手投手を見つめた。
決勝戦。
まだ始まったばかりだ。
だが、すでに十分すぎるほど楽しい試合になっていた。
第二十八話をお読みいただき、ありがとうございます。
決勝戦が開幕。悠真は東山の新エース・速水拓海からセンター前ヒットを記録しました。
次回、第二十九話「一進一退の攻防、二刀流の真価」。