転生した俺の野球人生には、パワプロの育成システムがある   作:1番道路

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春季少年野球大会、四年生以下の部・決勝戦。

桜台フェニックスと東山レッドソックスが、二年連続で優勝を争うことになった。

三番ショートとして出場する朝倉悠真は、東山の新エース・速水拓海と対峙する。


第二十八話 決勝戦開幕、七歳の天才打者

 決勝戦。

 

 とうとう、この日がやってきた。

 

 春季少年野球大会。

 

 四年生以下の部。

 

 俺たち桜台フェニックスは、東山レッドソックスとの決勝戦を迎えていた。

 

 去年に続いて、二度目の決勝。

 

 しかも相手まで同じなのだから、なかなか不思議な巡り合わせだ。

 

「悠真!」

 

「ん?」

 

 大地が駆け寄ってきた。

 

「今日も勝とうぜ!」

 

「もちろん!」

 

「去年みたいに優勝するぞ!」

 

「うん!」

 

 俺は笑って答えた。

 

 ……いいな。

 

 こういう雰囲気。

 

 決勝戦だというのに、緊張よりも楽しみの方が大きい。

 

 いや、決勝戦だからこそ楽しいのかもしれない。

 

 強い相手と戦える。

 

 しかも、優勝が懸かっている。

 

 これ以上ない舞台だった。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「全員集合!」

 

 田島監督の声が響いた。

 

 俺たちはベンチ前に集まる。

 

「いよいよ決勝だ」

 

「はい!」

 

「相手は東山レッドソックス。去年も戦った相手だな」

 

 監督は選手たちを見渡した。

 

「ただし、今年は去年とは違うチームだ。相手も成長している。去年勝ったからといって油断するなよ」

 

「はい!」

 

「それから、今日は藤原が先発だ。朝倉は三番ショート。佐藤は八番セカンド」

 

「はい!」

 

 俺と大地が返事をする。

 

 その後、他の選手の名前も呼ばれた。

 

 捕手は中村先輩。

 

 四番は松本先輩。

 

 守備の中心となる四年生たちが、しっかりとメンバーに入っている。

 

 去年から一緒に戦ってきた仲間たちだ。

 

 頼もしい限りである。

 

「よし、最後まで全力でいこう!」

 

「はい!」

 

 全員の声が揃った。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 試合開始前。

 

 俺は相手チームの練習を眺めていた。

 

 東山レッドソックス。

 

 赤いユニフォームを着た選手たちが、整然とウォーミングアップをしている。

 

 その中心に、一人の少年がいた。

 

 背番号一。

 

 速水拓海。

 

 小学四年生。

 

 今年の東山のエースだ。

 

 彼は捕手に向かって投球練習をしていた。

 

 左足を上げる。

 

 身体を回転させる。

 

 そして、右腕を振り抜く。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

(……おお)

 

 なかなか速い。

 

 しかも、フォームが綺麗だ。

 

 特に腕の振りが安定している。

 

 球速は九十キロ前後と聞いているが、実際に見ると数字以上に速く感じるかもしれない。

 

「悠真、あれがエースだぞ」

 

 大地が隣に立っていた。

 

「うん」

 

「すげえ速いよな」

 

「そうだね」

 

「お前、打てる?」

 

「打ってみないと分からないよ」

 

「お前なら打つだろ!」

 

 大地が笑った。

 

 ……随分と信頼されているな。

 

 もちろん、期待には応えたい。

 

 だが、相手も優秀な投手だ。

 

 簡単にはいかないだろう。

 

 そのとき。

 

『ピロン♪』

 

――――――――――――――――――

 

【決勝戦イベント発生】

 

『二年連続優勝への挑戦』

 

【対象試合】

 

春季少年野球大会

四年生以下の部・決勝戦

 

桜台フェニックス

対

東山レッドソックス

 

【特別目標】

 

・決勝戦に出場する

・打撃で勝利に貢献する

・守備または投球で勝利に貢献する

・大会優勝

 

【特別報酬】

 

大量の経験点

大会MVP評価

特殊能力取得補助

 

――――――――――――――――――

 

(……おお!)

 

 またしても大量報酬の予感だ。

 

 これはぜひとも達成したい。

 

 俺は小さく笑った。

 

 よし。

 

 全力でいこう。

 

     ◇ ◇ ◇

 

「プレイ!」

 

 審判の声が響いた。

 

 先攻は東山レッドソックス。

 

 つまり、俺たちは守備からだ。

 

 藤原先輩がマウンドへ上がる。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ストライク!」

 

 いい立ち上がりだ。

 

 二球目。

 

 内角。

 

 打者が振った。

 

 カンッ!

 

 打球はショート方向へ。

 

(……来た!)

 

 俺は素早く前進した。

 

 グローブを地面へ近づける。

 

 ぱしっ!

 

 捕球成功。

 

 そのまま一塁へ送球。

 

「アウト!」

 

 ワンアウト!

 

「ナイスショート!」

 

 藤原先輩が声を上げる。

 

「ありがとうございます!」

 

 俺は笑って返した。

 

 続く二番打者はセンターフライ。

 

 二死走者なし。

 

 そして三番打者。

 

 東山の主力選手だ。

 

 初球。

 

 外角低め。

 

「ボール!」

 

 二球目。

 

 内角。

 

「ストライク!」

 

 三球目。

 

 カキィンッ!

 

 打球は左中間へ飛んだ。

 

 センターが追いかける。

 

 しかし、ボールはその前に落ちた。

 

 センター前ヒット。

 

 二死一塁。

 

 ……なるほど。

 

 やはり簡単には終わらない。

 

 そして四番打者。

 

 体格のいい四年生だった。

 

 藤原先輩が投げる。

 

 初球。

 

 ストライク。

 

 二球目。

 

 ファウル。

 

 三球目。

 

 カキンッ!

 

 打球はセカンド方向へ。

 

「大地!」

 

「おう!」

 

 大地が捕球し、一塁へ送球。

 

「アウト!」

 

 スリーアウト!

 

 チェンジ!

 

 初回無失点。

 

 なかなかいい立ち上がりだった。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 一回裏。

 

 桜台フェニックスの攻撃。

 

 東山のマウンドには速水拓海。

 

 右腕のエースだ。

 

 先頭打者の高橋先輩が打席に入る。

 

 初球。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク!」

 

(……速い)

 

 ベンチから見ても、球威がある。

 

 二球目。

 

 外角低め。

 

 高橋先輩が振った。

 

 カンッ!

 

 打球はセカンド方向へ。

 

 相手の二塁手が軽快に処理する。

 

「アウト!」

 

 一死走者なし。

 

 続く佐々木先輩。

 

 こちらも三球目を打ったが、ショートゴロ。

 

 二死走者なし。

 

 そして。

 

「三番、朝倉!」

 

 俺の出番だ。

 

 バットを握り、打席へ向かう。

 

 速水先輩がこちらを見た。

 

 少し驚いたような表情だった。

 

 まあ、無理もない。

 

 俺はまだ小学二年生。

 

 相手は四年生だ。

 

 体格差はかなり大きい。

 

 だが。

 

(……関係ないな)

 

 打席に立てば、年齢など関係ない。

 

 投手と打者。

 

 ただ、それだけだ。

 

     ◇ ◇ ◇

 

 初球。

 

 速水先輩が振りかぶる。

 

 シュッ!

 

 ぱしんっ!

 

「ストライク!」

 

(……なるほど)

 

 外角低め。

 

 いい球だ。

 

 二球目。

 

 内角高め。

 

 今度はボール。

 

 カウント一ボール一ストライク。

 

 三球目。

 

 外角へストレート。

 

(……来た!)

 

 俺は踏み込んだ。

 

 バットを振る。

 

 カキンッ!

 

 打球は三塁方向へ。

 

「ファウル!」

 

 ……惜しい。

 

 タイミングは合っていた。

 

 だが、少し引っ張りすぎたらしい。

 

 カウント一ボール二ストライク。

 

 追い込まれた。

 

 速水先輩がボールを握り直す。

 

 そして四球目。

 

 内角低め。

 

(……ここだ!)

 

 俺はバットを振り抜いた。

 

 カキィンッ!

 

 打球はセンター方向へ飛んだ。

 

 相手のショートが横っ飛びに飛び込む。

 

 だが、届かない!

 

 センター前ヒット!

 

「よし!」

 

 俺は一塁へ駆け抜けた。

 

 セーフ!

 

 二死一塁。

 

 俺はベース上で小さく笑った。

 

(……いい投手だな)

 

 簡単には打てなかった。

 

 だが、しっかりと捉えることができた。

 

 これで初打席は成功だ。

 

 もっとも、まだ得点には繋がっていない。

 

 次の打者は四番、松本先輩。

 

 ここで一本出れば面白い。

 

 俺はリードを取りながら、相手投手を見つめた。

 

 決勝戦。

 

 まだ始まったばかりだ。

 

 だが、すでに十分すぎるほど楽しい試合になっていた。




第二十八話をお読みいただき、ありがとうございます。

決勝戦が開幕。悠真は東山の新エース・速水拓海からセンター前ヒットを記録しました。

次回、第二十九話「一進一退の攻防、二刀流の真価」。
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