「『人生ぇぇぇぇ!!』……くぅぅぅ! 聞こえるっ!
聞こえて渡るぞアキヒコ先生のシャウトが……ッ!」
アキヒコが去った後の事務所では、まだ興奮冷めやらぬスタッフたちが『か』のデモ音源を延々リピート再生し、大盛り上がりしていた。
聞けば聞くほど味が出る。
新しい解釈。
「坂本さん、この曲マジでヤバいです! 絶対にミリオン行きますよ!」
「ああ、間違いない。『Aaaaaaaっ!』『青』『嫌々』に続く、歴史に残るメガヒットになる!」
スタッフたちの熱い支持のもと、坂本は確信する。
「んでだ。この曲をどうすべきか……」
熱気あふれる室内で、何故か坂本が「この神曲を誰に歌わせるか」という議論を提起した。
「え、でもこれってビビッド・ルージュに渡すって話じゃなかったですっけ?」
経緯を知っていたスタッフが、素朴な疑問を投げかける。
「それはそうなんだがな……この心を熱くさせながらも重厚な曲は、もっと相応しい歌い手がいるんじゃないかと思ってな」
坂本も最初はそのつもりだったが、曲を聴いて別の選択肢があるのではないかと思い直したのだ。
「あとシェイプロもでかくなってきたんだし、いつまでもビビッド・ルージュだけが突出してるわけにもいかないだろ。第二、第三の柱を立てたいところだ」
「確かに……」
ビビッド・ルージュが歌ってもヒットは確実だろうが、別のグループを盛り立てていくのも事務所として大事な方向性だ。
その話を聞いた各々のスタッフが、ここぞとばかりに目を光らせる。
「あ、それなら、僕の担当のベテランバンドに歌わせれば、渋さとロックの融合で世界狙えますって!
曲調聴いて、行ける気がしますっ」
「いやいや、待てよ! アキヒコ先生の新しい引き出しなんだから、思い切って新人グループのデビュー曲としてぶつけたらどうだ? 『ふぁいなんす』。彼女たちだって、一発でスターダム行きだぞ!」
「いやーでも、やっぱり安定のビビッド・ルージュじゃないですか!?
『嫌々』からの勢いをそのまま繋げて、彼女たちを社会現象の頂点まで押し上げるべきです!」
あっちでもこっちでも白熱した議論が巻き起こり、事務所内はまるで昭和の殴り合いのような活気に包まれていた。
良きかな良きかなと、坂本は満足そうにその様子を眺めた。
芸能事務所はこうでなくっちゃ。
坂本の心は大海のように広くなっていた。
なぁに、もう曲は手に入れた。これは大ヒット確実のエクスプレスチケット。
使い道はじっくり考えよう。
やがてひと段落つき、スタッフたちが冷めたお茶を飲み始めた頃、若手社員のひとりが坂本のデスクへ近づき、ポツリと尋ねた。
「あの……坂本さん。ところで、例の……もう片方のポップスの曲はどうするんですか?」
「ん? あー『人生』だっけ?」
坂本は煙草に火をつけながら、事もなげに答えた。
「そりゃ、約束通り大河内先生の事務所に渡すさ」
「えっ……マジで大河内先生に送るんですか? 断られたり、怒られたりしませんかね……?」
不安そうに眉をひそめる若手。
それもそのはず、大河内といえば「日本のポップス界の重鎮」「生きる伝説」とまで呼ばれる存在だ。
大河内が歌うポップスは、必ずヒットすると言われたこともあった。
だが――それは、あくまで昔の話であった。
(まあ、今のあの大河内先生なら、受け取るくらいはしてくれるだろ……)
坂本は心の中でニヤリとほくそ笑んだ。
正直なところ、現在の大河内は完全に落ち目だった。
かつては平成初期のヒットチャートを総ナメにしていたものの、ここ数十年は鳴かず飛ばず。
その功績から毎年のNHK紅白歌合戦に出場してはいるが、歌うのは決まって数十年前のヒット曲ばかり。
懐かしのメロディ枠として辛うじて扱われているのが現実だ。
エンタメ業界はどこまでも残酷で弱肉強食。
表向きは「大河内先生! 偉大なる巨匠!」と持ち上げられてはいるものの、裏での扱いはすっかり落ちぶれた老兵扱いである。
老兵は歌わず。ただ消え去るのみ。
みんな触れずにそっとしている。
「大丈夫だって。大河内先生、ここ数年まともな新曲すら出せてないだろ?
なんせ何渡したって文句言うんだから。業界内で誰も曲を書きたがらないんだからさ。
あっちだって新曲に飢えてるんだよ。そろそろ挨拶周りにいかなきゃとも思ってたしな。ちょうどいいよ。アキヒコ先生のあの教本みたいなポップスでも、手ぶらよりはマシだろ。
『はい、今若手で一番新進気鋭の作曲家からの提供曲です』って渡せば受けとるくらいはしてくれるさ」
坂本はハハハと軽薄に笑うと、デスクのPCを指差した。
「おーい、そこのお前。大河内先生のマネージャー宛てに、さっきのポップスの音源データ送っといてくれ。『アキヒコ氏から大河内先生へ、デモですが是非にと』ってな。また正式にご挨拶にいきますみたいな感じで丁寧にな。
俺は『か』のアーティスト選定で忙しいから頼んだぞ!」
「あ、はい! わかりました!」
指示を受けた若手社員は、自分のデスクに戻ると早速メールの作成に取りかかった。
「ええっと、大河内事務所宛て、と……。
ったく、この後イベント設営だから前入り急がなきゃなんないのに。
添付ファイルは……アキヒコ先生のUSBからデータをデスクトップにコピーして……」
若手社員は作業に追われ、焦っていた。
アキヒコから渡されたUSBメモリ内には、ふたつの音声ファイルが並んでいる。
『人生.wav』
『か.wav』
「えっと、渡す曲は……これだな! さっさと送る。さっさと!」
気が急いていた若手社員は、確認もそこそこに、マウスをカチカチッとドラッグ&ドロップした。
そう――彼はパニックのあまり、送るべきポップスだけでなく、本来なら絶対に渡してはいけない超弩級のロック『か』のファイルまで、まとめて大河内事務所へ送信してしまったのだ。
送信ボタンが押され、画面に「送信完了」の文字が踊る。
「よし、送信完了! 坂本さん、大河内先生宛てに曲送っておきましたー!」
「おう、サンキュ! よっしゃみんなで会議するぞっ」
『人生』だけ送るはずだった大御所のもとへ、爆音ノイズ『か』も電子
★
豪華な調度品に囲まれた広大なリビングで、ポップス界のレジェンド・大河内は重厚な革張りソファに深く腰掛けていた。
大河内は思索にふける。
己の人生。
若い頃、自身の歌うポップスで天下を取り、レコードを売りに売りまくった。
一生遊んで暮らせる以上の財産を築き上げ、人生はとうに「上がり」を迎えている。自分が金のために歌っていたのなら、とっくに引退して海外のリゾート地にでも引き籠もっていただろう。
――それでも俺はここにいる。
それでも俺がこの音楽業界にしがみつき、老体に鞭打ってステージに立ち続ける理由……それはただ一つ、音楽が心底好きだからだ。
しかし、大河内自身、うすうす勘づいていた。
自分が業界のメインストリームから完全に干されているということに。
周囲の若いスタッフやプロデューサーどもは、会えば「先生、先生」と揉み手で大袈裟によいしょしてくる。だが、渡される仕事といえば昔のヒット曲の懐かしのメロディ特番ばかり。
彼らの目が自分を過去の遺物として扱っていることくらい、百戦錬磨の大河内には痛いほど分かっていた。
それでも過去の栄光で、大河内事務所は新曲を歌わなくても問題なく回っている。
生ぬるいこの環境で、俺はこのまま朽ちていくのか。
これが俺の望んだ人生……
「……ふぅ」
静かな部屋で溜め息をついたその時、事務所のマネージャーからメールが届いた。
長年懇意にしているシェイキング・プロから、新曲に関するメールが来たという。
『大河内先生。
今、飛ぶ鳥を落とす勢いの流行の作曲家・アキヒコ氏から、先生のために書き下ろされた曲が届きました! ぜひお聴きください!』
「アキヒコ……? ああ、あの噂の……」
アキヒコという名前は最近よく聞いた。
ロックとかいうあさましいジャンルの曲を作曲している人物だ。
新進気鋭の若き作曲家だという。
大河内は自分の感性が昔であることを理解しつつも、時代においてかれないようトレンドやニュースはしっかりチェックする方だ。
ロックなど雑音以外の何物でもないから、じっくり聞いたことこそないものの、そのアキヒコが作曲したという数々の曲が大ヒットしていると、大河内は知っていた。
世界を震わせる。
その大変さは大河内が一番よく知っている。
音楽を通して、人々の魂に訴えかけなければならないのだ。
そういう曲を書く人物。
大河内は年甲斐もなく、胸の奥で小さな火が灯るのを感じた。
新しい波。今の若者を狂乱させている時代の寵児が、自分に曲を書いてくれたという。この俺にだ。もちろんポップスだろう。
もしかしたら、この曲が俺の止まった時間を再び動かしてくれるのではないか。
ワクワクと鼓動を早めながら、添付された音声ファイルを再生する。
タイトルは『人生』――か。ふむ。
――流れる、繊細で緻密なメロディ。
大河内は静かに目を閉じ、じっと耳を傾けた。
1分、2分……。
曲が終わった瞬間、大河内の表情はすっと冷め切っていた。
胸にともった小さな灯は消え失せた。
「……虚無だ」
呟きが、広い部屋にぽつりと落ちる。
退屈で、目新しさもなく、どこかで何万回と聴き、何万回と自分が歌ってきたような、教本通りの古臭いポップス。
何も残らない。
魂が1ミリも震えない。
そしてタイトルは『人生』
「……そうか。今の俺には、こういう枯れ果てた曲がお似合いだということか」
自嘲気味に目を伏せ、ため息をつく。
これを作曲したというアキヒコ。これを堂々と送ってくる事務所。
こんな曲でも出せば大河内の知名度で、一定のファンが買う。
若者どもは自分に「昔ながらのお行儀の良いポップスでも歌って大人しくしていろ」と言っているのだろう。
失意の中、メールのウィンドウを閉じようとした大河内は、添付ファイルがもう1曲あることに気づいた。
大河内事務所のマネージャーによりプラスで添えられた文面には、こう追記があった。
『※こちらはロックの楽曲となります』
「……なに?」
大河内の眉間が一瞬で激しく跳ね上がった。
ロック。
大河内がこの世で最も憎み、毛嫌いしているジャンルだ。
ただギターをギャンギャン鳴らし、キーキー叫ぶだけの雑音。耳を汚すだけのゴミくず。それを、この俺に聞けと。あまつさえ歌えというのか……!?
「舐めやがって……! 俺を誰だと思っている!!」
憤怒が腹の底から湧き上がった。
いくら落ち目とはいえ、歌謡界を支えてきたレジェンドである自分に対して、こんな暴力的で不快な雑音を送りつけてくるとは!
「文句だ……! シェイキング・プロに苦情を叩き込んでやる!!」
怒りに震える手で、大河内は文句を言うための証拠として、再生ボタンを強く押し込んだ。
一回だけだ。
一回だけ聴いて、どれだけひどいかを徹底的に突き付けてやる。
そう思った次の瞬間――
――ドカドカジャカジャカ!! ギャギャギャー!!
~人生ぇぇぇぇ!! 歪んだ世界で俺は叫ぶぅぅぅ!!~
「ッ!!!!????」
雷が直撃したかのような衝撃が、心臓を揺るがす振動が、大河内の脳髄を貫いた。
全身の毛穴が立ち開き、肌に猛烈な鳥肌が立つ。
破天荒で、剥き出しで、不快なはずのノイズの裏から叩きつけられる、それでも圧倒的なまでの命の躍動。
狂気と衝動。言葉にならない魂の叫び!
「な……なんだ……なんだこの曲は――――っ!?」
大河内はソファから立ち上がり、スピーカーの前で激しく動悸する胸を押さえた。
これが……これがロックなのか!?
いや、
今まで自分が「ロック」だと思って毛嫌いしていたものは、ただの偽物、上っ面だけのスカスカな雑音に過ぎなかったのだ。
本物のロックとは……これほどまでに激しく、されどこれほどまでに美しく、人間の魂を根底から揺さぶるものだったのか!!
「これを……この俺に歌えというのか……!?」
大河内はハッと息を呑み、さっきの虚無なポップスと、この狂気のロックを頭の中で並べた。
(そうか……! そういうことか、アキヒコ……!!)
大河内の脳内で、完璧な解釈が組み上がっていく。
タイトルが物語っている。あの退屈なポップスは、今の過去に甘んじて死んでいる『今の私の人生』を見立てたものだったのだ!
アキヒコは生意気にも俺に突きつけたのだ…大河内、今のお前はこの平坦で虚無な、このポップスと同じだよ。
――大河内、お前、今、生きているか?
そうだ。いつから自分は挑戦しなくなった。
このまま老いて死ぬのが、これからの俺の人生なのか?
さっきまでの俺は、新しい曲で何かが動き出すことを……周囲の状況が変わることを期待した。
だが違う! 変わらなければいけないのは、周りじゃなく自分自身なのだ!
変われ、大河内! 過去を捨てて、新しく生まれ変われ!
そのための武器は用意してやった……ここにある、ロックだ!!
それは、時代の寵児から老兵への、血の通った強烈な挑戦状であり、同時に救いの手だった。
「ふ……ふふふ……ハハハハハハハ!! 若造が、やりおるわ」
大河内は腹から声を上げて破顔した。
「素晴らしい……! 素晴らしいじゃないか、ロック!!」
胸の奥で死んでいた情熱が、ドロドロとした赤いマグマとなって蘇ってくる。
世間の目? 落ち目? 過去の栄光? そんなものはどうでもいい。
変化こそが『人生』だ!
大河内は固く拳を握り締め、ギラギラとした少年の目を取り戻してスピーカーを見つめた。
「いいだろう、アキヒコ! 受け取ったぞ、お前の魂を!!
歌う……俺は歌うぞ!!」
思い出したのは駆け出しの頃の自分。
音楽が大好きだった頃の自分。
自分はポップスというジャンルが好きだったのではない。
いつだって、心から熱くなれる音楽が好きだったのだから。
ポップス界の重鎮・大河内が、アキヒコのロックによって完全に覚醒した瞬間であった。
★
シェイキング・プロダクションの来客室。
ドアが勢いよく開くと同時に、異様な圧力が部屋中を満たした。
「やあやあ、坂本君! 突然押し掛けてすまないね!」
入ってきたのは、大河内その人だった。
高級スーツをビシッと着こなし、背筋をピンと伸ばし、溢れんばかりの笑顔を浮かべている。
ここ最近の昔の栄光に縋る元気のない老人、といった佇まいは雲散霧消し、全身からギラギラとしたエネルギーが満ち溢れていた。
「お、大河内先生……!? いらっしゃいませ!
突然のご訪問でびっくりしましたよ。こちらからまたご挨拶に伺おうと思ってましたのに……いったい今日はどうされたんですか!?」
坂本は慌てて迎え入れ、頭を下げた。
入ってくるなりの、あまりの上機嫌ぶりに困惑を隠せない。
最近やったことと言えばアレだ。アキヒコのポップスを送ってやった。
あれでこんなに喜ぶか?
予測できない言動をされると、逆に不安になってしまう。
「いやあ、お礼を言いたくてね!
届いたよ、新曲。アキヒコ君のあの曲が! いやあ……本当に痺れた! 魂が震えたよ!
私の長年の迷いを一瞬で吹き飛ばしてくれた!」
「は、はあ……! アキヒコ先生のポップスを、そこまで気に入っていただけましたか」
坂本は胸をなでおろした。
やっぱりあのポップスの件で良かったみたいだ。
あの教本みたいな退屈なポップスでも、落ち目の大河内には十分響いたらしい。
なんだ。説得する必要なさそうでよかったよ。
アキヒコとの約束もこれで無事に果たせる――そう安堵した瞬間だった。
大河内は楽しそうに目を細め、力強く拳を握りしめた。
「ポップス? 何を言っているんだい坂本君。私が言っているのは、もう一曲の方……
『か』のことだよ!」
「……え? 『か』?」
坂本の時が止まった。
「あの歪んだギター! 疾走するドラム! そして脳裏に響くは『人生ぇぇぇぇ!!』という魂の叫び!
素晴らしい……あれこそが本物のロックだ! あの教本のような退屈なポップスを前座に置くことで、私に『お前は過去に死ぬのか、それとも新しい生へ飛び込むのか』と突きつけてきたんだろう!?
アキヒコ君の深いメッセージ、しかと受け取ったよ!」
大河内が熱弁を振るう横で、坂本の顔から一瞬で血の気が引いていく。
(嘘だろ……!? なんで大河内先生が『か』を聴いてるんだよ!!??
送ったのは『人生』だけだろ? まさかっ!?)
チラリと除くドアの隙間から、曲の送信を担当した若手社員が「すみません間違えて2曲とも送っちゃいました」と言わんばかりの顔で必死に頭を下げ、顔面蒼白でガタガタ震えているのが見えた。
あ、察し。
(このバカ野郎――――ーッ!!!!)
坂本は心の中で叫び、胃が破裂しそうなほどの激痛に襲われた。
大河内は、ロックなど音楽ではないと公言してはばからない、ポップス界の頑固親父だ。
そんな大河内に新曲ロックをプレゼントなど、お中元にゴキブリをセレクトして送るに等しい。
本来なら、こんなゴミ雑音を私に歌わせる気か! と激怒し、殴り込みをかけられてもおかしくない大暴走である。
「あ、あの……! 大河内先生! あれはちょっとした手違いと言いますか、先生にお渡しする予定だったのは最初のポップスの方でして……!」
焦った坂本は、なんとか撤回しようと冷や汗を流しながら言葉を紡いだ。
しかし弁明しながらも不思議に思う。
あれ、でもおかしいな。ロック自体には怒っていないのか?
いやむしろ、受け入れているのか……っ
大河内の目がカッと迸り、眼光と共に言葉を続ける。
「手違い……? 坂本君、あれは私に――俺にくれた『新しい人生』の切符ではないのか?」
大河内の一言には、長年歌謡界の頂点に君臨し続けてきた者だけが持つ、圧倒的な覇気が宿っていた。
落ちぶれたとはいえ、相手は生きるレジェンド。
もしここで「すいません、すべて間違いでした。そんな意図は毛頭ございません」なんて言えば、どうなるか?
大河内の復活したプライドを粉々に踏みにじることになり、どんな恐ろしい事態になるか分かったものではない。
何より――坂本は、目の前で腕を組む彼の凄まじい迫力に、完全に度肝を抜かれていた。
(なんだこのプレッシャーは……!?
昔の、全盛期の『歌神・大河内』が完全に甦ってやがる……!!)
ここにいるのは、ただの老兵ではない。
あの時代のモンスターが、アキヒコの『か』という劇薬によって目を覚ましてしまったのだ。
坂本の脳内で、プロデューサーとしての計算が爆速で回転し始める。
大御所・大河内×アキヒコの爆音ロック。
本来ならあり得ない、完全な
だが……もしこの全盛期の迫力を取り戻した大河内が、あの狂気のシャウトを爆音に乗せて叩きつけたら……?
(……イケる。いや、イケるどころじゃないぜ……!!
こんなの日本中が腰を抜かす前代未聞のリーサルウェポンになるぞ……!!)
坂本はゴクリと唾を飲み込むと、引きつっていた顔を瞬時にプロデューサーの顔へと切り替えた。
この切り替えの早さ。
敏腕プロデューサー坂本、真骨頂である。
「……失礼いたしました、大河内先生。仰る通りです。
先生のその魂の目覚め……是非俺たちにプロデュースさせてください!」
「ふっ……そうだ。そうこなくては!」
大河内は満足げに不敵な笑みを浮かべ、坂本と力強い握手を交わした。
こうして、誰も予想しなかった衝撃のプロジェクト——大河内×アキヒコ・超絶怒涛のロック『か』のリリースが、正式に決定してしまうのだった。