双子悪役令嬢、婚約破棄からの魔王軍闇堕ち破滅の運命をソニックブームでこじ開ける 作:宵更カシ
「実は折り入ってお話があるのです」
アンナは綺麗な言葉遣いで端を発し、澄んだマナコで主人公の顔を見つめていた。
精緻な小顔はフィギュアにそっくりで、流石は二次元と感心してしまう。あたしの美貌も中々だが、ミカには金髪ドリルの華やかさとは一線を画す、清楚な魅力がある。
性格も良いと来たら、そりゃイケメン共もコロッと落ちるわなぁ。
「あ、あのぉ」
困惑した表情も可愛いし色っぽい。こういう仕草に惚れちまうんだよなぁ。良い匂いするし、おっぱいデカいし。
「一体、わたくしめなんかにどのようなご用件で」
「おっと失礼。君の美しさについ見入ってしまった。あははは」
声を上げて笑うあたしに唖然とするミカ。
作り上げたキャラはものの数秒で崩壊を始めてしまった。おほんと咳払いを一つ、仕切り直し。
「実はお願いしたいことがあるんだ」
「お願い?」
「君にしか出来ないことなんだ。婚約破棄の噂は、低級クラスにも回っているよね?」
聞くと気まずそうにゆっくり頷く。
「やっぱり。あたしが夜伽してたなんて尾ヒレもついて、だろ?」
「は、はい。でも実際に現場を見たわけじゃないし」
この子は賢い。感心しっぱなしだなあたし。
「あははぁ・・・・・・君って賢い」
「どうも」
「他に男、いると思う?」
ううん、と首を横に振る。
「だろう? むしろ、あたしに男なんて似合わないと思うんだ! ってそんなことは良い。実は、あたしの家の窮地を救って欲しいんだ」
かくかくしかじか。屋敷にドラゴンが差し向けられたと手短に説明した。
はしょった部分もあるけど、相づちを打っていたので分かっていただけたと思う。
「証拠集めを手伝ってほしいってことですよね?」
「イグザクトリー!」
「い、いぐ?」
「そこで君から決闘を挑んで、あたしをボコボコにしてほしい」
さらりと言ったあたしの言葉に、ミカは顔を青くした。
決闘。文字通り、生徒同士で魔法や剣を使い戦うことを指す。
互いに切磋琢磨し実力を高め合うための行為、と生徒達には説明されているが、喧嘩などの紛争解決や下級クラスの生徒がのし上がるための手段となっているのが実だ。
「イカサマしろってこと?!」
「そそ。あたしとレイナの元許嫁から確たる証拠を掴んで欲しいんだ。上級クラスへの編入も悪い話じゃないと思うけど?」
「そうですけど・・・・・・でも」
良心が痛む。怪訝な顔からはそう読み取れる。
「より高度な魔法を学んで、飛び出してきた村の人達を見返したい」
「それは・・・・・・なんで知って」
「君のことならなんでも知ってるよぉ。気持ち悪いくらい」
主にレイナが、だけど。
「まぁそんな話は良いや。どうする? 良心に従って千載一遇のチャンスを失うかい? それとも」
「・・・・・・やります! でも、もしお二方が濡れ衣だったら」
「そんときはまた考えるよ。それじゃ契約成り」
「くっくっく。聞いてしまったぞ。我が輩、お前達の密約をこの耳で確かに」
チッ! やっぱ後をついてきてやがったかあのガキンチョ。
静かに踊り場の扉を開けば、隠れる気がさらさらないクルーミが張り付いて出てくる。
「イモータルさん?!」
「くれぐれも他言無用だぞくるみちゃん」
「ぬはははは。脅しかアンナ。この前、散々な目に遇わせてくれたことの仕返し、させてもらおうか!」
シメシメと得意げな顔であたしを見下している。
・・・・・・かくなる上は。
「な、なんじゃまじまじと顔を近づけて!」
静かに耳元へ寄って一言。
「そんなことしたら、例え
クルミちゃんから血の気が失せていく。
そして肩をがっつり掴まれるとミカに背を向け、
「き、貴様なぜそれを」
「うちら姉妹をあまり侮るなよぉクルミちゃん。何でも知ってるんだから」
「じゃ、じゃあ取引しよう。この秘密はお互い黙っておくってことで」
「そうそう。じゃないと、大変なことになるもんねぇ」
ニチャァと気持ち悪い笑みを浮かべて頷き合う。
こういうのでいいんだよこういうので。
程なくして、ぎこちなくあたしの秘密を守ってくれるよう公言して、この会はお開きになった。
そして学園の昇降口で、
「アンナマリー・ダグラス・メルヘン! 私、ミカ・アニマは貴方に決闘を申し込みます!」
大勢の生徒達がいる前で、あたしは決闘を挑まれたのだった。