双子悪役令嬢、婚約破棄からの魔王軍闇堕ち破滅の運命をソニックブームでこじ開ける 作:宵更カシ
決闘の申し込みは学校を大いに湧かした。
下級クラス生の下剋上とも言うべき状況に、アンナは不敵な笑みで応えた。
その夜、オムレット邸の大食堂。
「ほう。学園ではそのような事が」
「はい父上」
静謐な食卓での話題に、オムレット家当主『カニクリム・オムレット』はフォークを止めた。
「挑む生徒はどんな奴なんだ?」
「最近転入してきた平民出身の女です。全く何が目的なのか」
「フムン」
カニクリムも噂では耳にしていた。
選ばれし勇者の卵が集う由緒正しいブレイブ学園に、凡庸な平民出身の女子生徒が入学した。
ソレが学内でもトップクラスのマナを持つメルヘン家の令嬢に挑む。無謀すぎて案じてしまうほどだ。
――これは使える。
上手く事を運べば、メルヘン家の令嬢を学園から追い出せる。
肥えて太い喉を鳴らしてフォークで刺したステーキを頬張った。
「タイバーよ。行動妨害の魔法は授業で習ったな?」
「はい。中型のケルベロスほどなら簡単に動きを止められます」
「ではアンナの動きを止めるのも容易いな?」
「それは出来ますが・・・・・・」
タイバーは途端に口籠もる。
「どうした? はっきり言え!」
「魔法を使えば探知されます。レイナマリーもいますし」
「誰がお前にやれと言った! 頭を使え頭を!」
ドンッと食器たちが騒ぎ、タイバーは肩を竦ませた。
「上級クラスにも将来が期待できない捨て石はいる! そいつらを使えそいつらを! この役立たずが! おい! 食事を下げろ! フォンマフィンのところへ行く」
「は、はい旦那様!」
食べかけの食事を放り、カニクリムは食堂を後にしようとする。
怒られるのも今に始まったことじゃない。行く行くはオムレット家を背負う当主になる身、厳しくなるのも仕方がないとタイバーは思う。
「あぁそうだタイバー。お前の働き次第で、メルヘン家から奪うマナ石の鉱山を数個やってもいい」
「そ、それは本当ですか?!」
「あぁ。俺は嘘はつかない。だがヘマをしたら、例え実の息子でも容赦はしない。分かってるな?」
生唾を飲み込む。そのギラついた目は、何をされるか分からないという恐怖を増長させる。
そして扉の奥にカニクリムは扉の奥へと消えていった。
ダンジョンの各所に眠る魔力を生み出す石『マナ石』の採掘を生業とするメルヘン家。
彼等のマナ石はかつての魔王の脅威から人類をも救ったと評され、下手な貴族よりも高い地位を持っている。
一方でオムレット家とフォンマフィン家は武術で名を上げた家だ。
命を張らずに成り上がった彼等を快く思うはずがない。代々の当主達は良い顔を浮かべながらも、いずれ引きずり下ろしてやると野心を燃やしていた。
あの婚約破棄はまさに宣戦布告だったわけだ。当の本人達はそれに気づいていない。
「これで良いんだ。僕が幸せになるにはこれで」
一人ぽつりと残されたタイバーは、小さな声で呟きながら食事に手をつけた。