双子悪役令嬢、婚約破棄からの魔王軍闇堕ち破滅の運命をソニックブームでこじ開ける   作:宵更カシ

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第6話 魔王、気絶する

「オーバジィー! オーバジィー!」

 

 窄む視界の中でクルーミは思う。

 

 あぁ父上、もうすぐそちらへ行きますよ。我が輩の人生は短くて、最後は空飛ぶ謎の魔物にロデオの如く振り回されて殺されました。

 

 この世界では見慣れぬ物を冥土の土産にしよう。そう決めた矢先に意識は戻る。本日三度目のウェイクアップ。

 

「お、やっと起きたかクルミちゃん」

「お、おいお前! 我が輩を何度殺そうとすれば気が済む!」

「えぇ? まだ7Gしか掛けてないのに」

「なんじゃその7Gとかいう単位は! それにこの魔物は人が乗れる代物じゃないぞ! なんてものに乗せてくれたんだお前は」

「Gってのは重力加速度で、全力旋回すると人と機体に掛かる負荷を表して」

「御託はいい! もう下ろせ! 一刻も早く下ろせ! それでも下ろさぬというのならこの魔物を倒して下りる! 我が輩は本気だぞ!」

「あー、壊されるのは勘弁だけど、一つだけ良い方法を教えてやる」

 

 アンナがそう言うと、クルーミは期待の眼差しを向ける。

 

「股のとこに黄色と黒のレバーあるだろ?」

「あぁこれか」

「それ引っ張れば下りられる。ただし、身体に掛かる負荷は20G」

「20・・・・・・G」

「キャノピー・・・・・・ここを覆ってる窓を爆発で吹き飛ばしてロケットで射出される。いやぁアレは二度と体験したくない。あはは」

 

 期待した我が輩がアホであった! 

 

「じゃあ破壊す、のわっ!」

「舌噛むから口閉じとけよ! そーれ9G旋回!」

 

 轟音が聞こえたと思えば身体が横に傾く。そして機体が軋むような音を上げながら星空が回る。

 

 象に踏まれているような感覚が胸を締め付けて息が出来ない。

 

 また視界が暗くなっていく。すると今度は走馬灯のような光景が奔った。

 

 これは我が輩が魔王になる前の思い出。

 

「じゃあ君はクルミちゃんだね」

「人を木の実みたいに呼ぶな! 人間の分際で」

 

 人間の少年との会話だ。確かこれは、我が輩が一人で出かけて、人間の村に迷い込んでしまったときのことだ。

 

 一日しか居なかったけど、魔物である我が輩をとても歓迎してくれた。すぐに帰れるようにと一緒に帰り道を探してくれたり、凄く優しかったところ。

 

 優しかった記憶。でもその村はもうない。

 

「我が輩・・・・・・ただ仲良くしたかった・・・・・・人間と」

 

 そこで再び星空が空を覆った。

 

「はい、お疲れさん」

 

 ミラー越しにアンナがサムズアップ。

 

「なーにがお疲れさんだ! こんなものこうして!」

「あぁ落ち着け落ち着け! この高度から落ちたらマジで死ぬから! 下りる。分かったから下りる!」

 

 慌てふためくアンナ。

 

 もう我慢ならん! 今すぐぶち壊して・・・・・・!

 

「アンナ! アンナ聞こえる?」

「あぁん? ここでは『スレッジホーク1』だレイナ。どした?」

「対空レーダーが屋敷に向かう影を捉えた。ブルズアイ350、50、11000」

 

 暗号のようなやり取り。だがクルーミにも背後の方に巨大な魔力を捉える。

 

「こやつの魔力は・・・・・・!」

「クルミちゃん、もう少し付き合ってくれない?」

「何をする気だ」

「野暮用さ。ちょっとした魔物狩り」

「や、やめろ! お前達の魔力では到底敵わぬ! 相手は黒炎龍じゃ!」

「あたし達の武器は魔法じゃねぇ。まぁ見てな」

 

 忠告を無視してアンナは黒炎龍に向かっていくのだった。

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