双子悪役令嬢、婚約破棄からの魔王軍闇堕ち破滅の運命をソニックブームでこじ開ける 作:宵更カシ
「オーバジィー! オーバジィー!」
窄む視界の中でクルーミは思う。
あぁ父上、もうすぐそちらへ行きますよ。我が輩の人生は短くて、最後は空飛ぶ謎の魔物にロデオの如く振り回されて殺されました。
この世界では見慣れぬ物を冥土の土産にしよう。そう決めた矢先に意識は戻る。本日三度目のウェイクアップ。
「お、やっと起きたかクルミちゃん」
「お、おいお前! 我が輩を何度殺そうとすれば気が済む!」
「えぇ? まだ7Gしか掛けてないのに」
「なんじゃその7Gとかいう単位は! それにこの魔物は人が乗れる代物じゃないぞ! なんてものに乗せてくれたんだお前は」
「Gってのは重力加速度で、全力旋回すると人と機体に掛かる負荷を表して」
「御託はいい! もう下ろせ! 一刻も早く下ろせ! それでも下ろさぬというのならこの魔物を倒して下りる! 我が輩は本気だぞ!」
「あー、壊されるのは勘弁だけど、一つだけ良い方法を教えてやる」
アンナがそう言うと、クルーミは期待の眼差しを向ける。
「股のとこに黄色と黒のレバーあるだろ?」
「あぁこれか」
「それ引っ張れば下りられる。ただし、身体に掛かる負荷は20G」
「20・・・・・・G」
「キャノピー・・・・・・ここを覆ってる窓を爆発で吹き飛ばしてロケットで射出される。いやぁアレは二度と体験したくない。あはは」
期待した我が輩がアホであった!
「じゃあ破壊す、のわっ!」
「舌噛むから口閉じとけよ! そーれ9G旋回!」
轟音が聞こえたと思えば身体が横に傾く。そして機体が軋むような音を上げながら星空が回る。
象に踏まれているような感覚が胸を締め付けて息が出来ない。
また視界が暗くなっていく。すると今度は走馬灯のような光景が奔った。
これは我が輩が魔王になる前の思い出。
「じゃあ君はクルミちゃんだね」
「人を木の実みたいに呼ぶな! 人間の分際で」
人間の少年との会話だ。確かこれは、我が輩が一人で出かけて、人間の村に迷い込んでしまったときのことだ。
一日しか居なかったけど、魔物である我が輩をとても歓迎してくれた。すぐに帰れるようにと一緒に帰り道を探してくれたり、凄く優しかったところ。
優しかった記憶。でもその村はもうない。
「我が輩・・・・・・ただ仲良くしたかった・・・・・・人間と」
そこで再び星空が空を覆った。
「はい、お疲れさん」
ミラー越しにアンナがサムズアップ。
「なーにがお疲れさんだ! こんなものこうして!」
「あぁ落ち着け落ち着け! この高度から落ちたらマジで死ぬから! 下りる。分かったから下りる!」
慌てふためくアンナ。
もう我慢ならん! 今すぐぶち壊して・・・・・・!
「アンナ! アンナ聞こえる?」
「あぁん? ここでは『スレッジホーク1』だレイナ。どした?」
「対空レーダーが屋敷に向かう影を捉えた。ブルズアイ350、50、11000」
暗号のようなやり取り。だがクルーミにも背後の方に巨大な魔力を捉える。
「こやつの魔力は・・・・・・!」
「クルミちゃん、もう少し付き合ってくれない?」
「何をする気だ」
「野暮用さ。ちょっとした魔物狩り」
「や、やめろ! お前達の魔力では到底敵わぬ! 相手は黒炎龍じゃ!」
「あたし達の武器は魔法じゃねぇ。まぁ見てな」
忠告を無視してアンナは黒炎龍に向かっていくのだった。