双子悪役令嬢、婚約破棄からの魔王軍闇堕ち破滅の運命をソニックブームでこじ開ける 作:宵更カシ
ブレイブ学園。
勇者の育成を目的として創設され、貴族や戦いの素養がある少年少女達が通う学校だ。
高い魔力は大きく純粋なマナから生み出される。純粋なマナは親から子へ受け継がれるため、入学資格のないこの学園も実質的に社会的地位の高い人間しか通うことができなくなっている。
・・・・・・と、これが乙女ゲーム『七人の勇者様』の設定で、ゲームは
主人公は平民出身の『ミカ・アニマ』。
純度の高いマナを持ち、ブレイブ学園への入学を許されるが、快く思わない私たちから酷い虐めを受ける。
しかしそれが明るみになって破滅し、彼女は勇者候補生達と無事に卒業して勇者になる……。
一方で破滅後の私たちはメルヘン家からも追放されて魔王軍堕ち、人類へ宣戦布告した魔王軍共々、ミカを含めた逆ハーレムパーティーに葬られるのがオチだ。
まぁこのルートはすでに無いと、私は確信する。
すでに知らない筋書きを進んでいるというわけだ。
あの晩から一夜明け――。
澄んだ青空の下でクラスの魔法実習を学園の屋上から眺めて、あたしは青春を感じていた。
破滅フラグビンビンの悪役令嬢といえど、まさか死んで学生に戻るなんて思わなんだ。せっかくならば楽しまなければ。
「おぉ? アレは同じクラスのミンディちゃん。胸がデカくていいんだよなぁ。おっあっちは隣のクラスの――」
「おいコラおっぱい星人」
おっとつい独り言が。しかも上がってきたレイナにばっちり聞かれてたし。
「なんだよ。屋上来るときくらいはノックしろ。常識だろー?」
「あんたは思春期のガキか。まぁ良いわ」
「昨日オヤジとしたやり取りそのままだな!」
ぎゃははと下品に爆笑しながら、レイナのそれはもう緩い稜線を見た。
そしてしっかり、頬を一発殴られた。
「正気に戻った?」
「えぇはいレイナさん。続けてください」
「言われた通り、タイヴァーとギリーアスの二人を監視した。けど怪しいところは何も」
「机の中とかロッカーは?」
「所持品も一通り調べたけど何もなし。あっノートや日記もよ。タイヴァーの奴見てたら吐き気を催したぐらいね」
屋敷にドラゴンを嗾けた奴の特定をレイナには任せていた。
しかし当ては外れたらしい。
曰く、吐き気のする日記には日々の出来事と感じたことをポエム調に綴っていたとのこと。あたしが見てくれば良かった。
「クルミちゃんにも頼んだけど、首尾はどうかしらね」
「あの子は、まぁ無理しない程度にやってくれれば。魔王様の仕事だってある」
レイナから聞いた時は驚いた。
まさか後席に乗せてた女の子が魔王様だったなんて気づかなかった。
「魔法適正高いのに気づかないなんて。筋トレばかりしてたのが裏目に出たね」
揶揄うように言う。
まぁこうして実習をサボってるのも、昔から筋トレばかりしてたせいで女神様から貰った魔法以外使えなくなったからなんだが。
「オヤジに口聞いて貰って、なんとか単位は取れるが、バレるのも時間の問題だなぁ」
かつて神童とか持て囃されていたから絶対に嘲笑される。そんなの嫌だ! 異世界に来てまで恥かきたくない!
「まっそれが明るみに出るより先に、ドラゴン差し向けた馬鹿を探すのが先決なんだけど?」
「言われなくても。ただ、こうも潔白だと振り出しだなぁ」
婚約破棄をしたその日に襲撃を掛けてきた。
用意した魔物はダンジョン最奥に出現する黒炎龍。そんなものを嗾けられる連中はそういないし、ダンジョンを攻略できるパーティーも限られる。
順当にあの二人かその周辺が怪しい、というか十中八九二人が関与しているに違いない。ダンジョンへ突入できる強力な冒険者のパーティーを雇うことも出来るから、そう思っていた。
しかし何も出てこないんじゃ振り出しに戻る。そう思っていたが、
「あっ、まだ一つだけ確かめる方法がある」
「ほぉう。聞いても?」
「ミカちゃんを使おう。彼女になら何かボロが出るかもしれないからな」
このゲーム最強のモテ女、主人公のミカがいるではないか。
結果としてあの二人もミカに惚れる男達の一角なのだから、ぶつけてバチは当たらない。
レイナも妙を得たように頷く。
「決まりだな。今日の午後から決行しよう。あたしから接触する」
「分かった。私はまた二人を探ってみる」
「それじゃ、状況開始だ」
二人で拳を付き合わせて、校舎の中へと戻っていくのだった。