──蒼空side──
俺の前世は特にこれと言って何もない人生だった
だけど妹には幸せに生きていて欲しかった、妹は誰にでも優しくきっと将来は皆に好かれる立派な人に成長する、そう自慢できる妹立った
でもある日、事故に合い入院してしまった
相手は飲酒運転の上にスマホを弄っていたらしい、それでも妹は相手を恨まなかったのだ
俺も妹が許したなら仕方ないと割り切った、そんな本当に心の底から優しい子だったのに殺された
俺が妹が殺されたと知ったのは全て終わった後の事だ⋯⋯どうやら不良グループに目を付けられ拉致され暴行を受けたらしい、警察の話ではその前には暴力だけではなく性的暴行も受けたとか
妹は生きるべきだった、将来の夢を嬉しそうに語り優しい子が何故殺されなければ、何でこんな目に合わなければと思ったのだ⋯⋯そんな事を考えていたからだろうか、俺も死んだのだ⋯⋯多分事故で
そしてこの世界に雲津過 蒼空として転生した
そしてこの世界でも妹が出来た、今度こそ守りたいと思ったのだ
でも死んだ、俺が出かけたせいで妹がついてきて禍獣に殺されたのだ⋯⋯前世でも今世でも妹は生きるべき存在だった、何となく生きて、死んでないから生きているような無気力な俺ではなくて⋯⋯優しく明るい未来を語る妹が生き残るべきだったのだ
足音が聞こえる、今は拒否する気力すら存在しなかった、だから足音に声をかける
「まったく、人の記憶を覗き見るなんて悪いことだよ?それで何しに来たのかな、翔さん」
「君と話に来たんだ、あの夜の続きを話そうか」
目の前に立つ翔さんを見る、別に過去を知られたからと言って特に話すことは無い
話さなくても周囲から読み取れる記憶を見ればいいだけなのだから⋯⋯そんな事を考え込んでいたからだろうか、翔さんの行動に気づけなかった
急に手を引っ張られ立ち上がらされたのだ
「何をするんですか?仕方ありませんね聞きたいことがあるならどうぞ」
「それじゃあ聞かせてもらおうかな、あの夜に君が言いかけたことを」
何だそんな事か今更隠す必要もない
「そうですか、気になるならいいですよ⋯まさかそんな事の為に来るなんて何を考えているのか」
あの夜いいかけた言葉を紡ぐ
「もし、私が禍神の依代たる御子だとしたら⋯⋯もし私が私で無くなったら
本当のスキルが浄化では無く禍霧の吸収だとしたら、私を終わらせてくれますか?そう言おうとしてたんです
まあ物語上では第4部隊の皆が終わらせてくれる筈だったのですが、かなりズレてきちゃいましたからね
あらためて聞かせてください、私を⋯⋯俺を殺してくれますか?」
俺の言葉を聞き翔さんは少し考え
ゴッ
俺を殴った、頭を抑え抗議する
「何するんですか!痛いじゃないですか」
「はぁ~成る程成る程、蒼空さん⋯⋯もういいか蒼空、僕達は助けるために来たのであって殺しに来たわけじゃない」
「俺を助けるなんて意味のない行為です!俺みたいな価値のない人間なんて」
翔さんは俺の言葉を聞き自信の頭に手を当てた、それは困った子に何て伝えたら良いか分からないような表情で⋯⋯そして俺をもう一度殴った、さっきよりは力が弱いがそれでも少し痛い
「さっきから何なんですか!女の子を殴るのが趣味だったりします?この変態!」
「人聞きの悪いことをいうなこの馬鹿!価値のない人間なんて誰が言ったの?そもそも人の価値なんて誰が決めてるの?それに君が死んで妹さんは喜ぶの?悲しむんじゃないかな」
「それは⋯⋯でも俺は私は」
「妹さんの事を僕は何も知らない、でも君のことは少しは知ってるんだよ
だから蒼空さん、妹さんは君に生きて幸せになってほしかったんじゃないかな?僕なら生き残ってる人には幸せになってほしいと思う、なら君が優しいと思う妹さん達だって同じじゃないかな?」
わかってる、俺が死んだ所で何も意味がないことなんて、それでも自分の価値を生きてる意味を考えられない
そして翔さんが俺を抱きしめ頭を撫でてくる
「蒼空さん、君が死ぬ事はきっと妹さん達への裏切りだよ
それでも自分に価値がないなんて思うなら僕達が言い続けるよ、蒼空さんには価値があると、生きてていいと」
それでも俺は⋯⋯頭が混乱する、きっと正しいのは翔さんだ
でも心では納得しきれない、その事は翔さんも分かっているのか言葉を続ける
「きっとこの言葉を君に言ってくれる人は誰も居なかったんだね、だから君はここまで傷ついてしまった
唯一の家族の妹を喪って1人になって、君の事を本当の意味で見てくれる人がいなくなってしまった
だから君はここまで疲弊してしまった」
何を言ってるのだろう?確かに妹が居なくなってから人との関わりは減った、前世なら仕事上の付き合いのみだ
この世界でさえ必要最低限の関わりに努めようとしていた、だから原作をなぞろうとしていた
翔さんの手が優しく、慈しむような撫で方に変わる
「今までよく頑張ったね、辛かったよね⋯⋯だから少しだけ今は休もうか
ここから先は僕達も一緒に歩むから」
「⋯⋯俺は、疲れてたの?」
何故か少し涙が溢れた
「疲れていることにさえ気づけない程にね、妹さんを喪って涙を流せなくなるほどに疲れていたんだよ」
そして涙が収まるまで俺は翔さんに抱き締められ頭を撫で続けられた
そして頭がはっきりすると共に恥ずかしくなってきた、そもそもここは俺の精神世界だ、つまり翔さんの言葉や思いは現実世界以上に直接俺の心に叩きつけられる
どれだけ心配か大切か、そんな思いがダイレクトで伝わってくるのだ羞恥心で殺す気に思えてくる
翔さんから離れ顔をきちんと見上げる
「あーあ、らくになれるかなと思ってたのに
仕方ないからもう少しだけ生きていてあげる」
「少しじゃなく、もっと生きていてほしいかな
でも今はそれで良いかな、それじゃあ元の世界に戻ろうか」
「うん、そうだね⋯皆は戦ってるんでしょ?」
翔さんが頷く、そして世界に明かりが灯り精神世界から現実世界に戻る
現実世界で最初に見たのは零さんに瑠流さん、そして彩さんと巨大な柱だった
何だあれ
「えっとあれ何?」
「おっ蒼空ちゃんお帰り!あれはステラだよ出てこれないように氷と絵と植物を追加してたらああなったの」
「うん、前よりは良くなったかなぁ~」
「久しぶりだね!」
3人が声をかけてくれる、そしてステラの声が響く
「成る程こうなりましたか、お見事ですねアンカーさん
なら今回は手を引いてあげましょう、ですが分かっていますか?今現在東京エリアの霧の大半は晴れたこと、つまりは蒼空さんの人類の生存圏を復活させる有効性が示せたということです」
「それが何?」
ステラの言葉に翔さんが警戒するように俺の前に立ち問いかける
「ふふ、つまりは貴方方はまた蒼空さんに霧を吸収させる必要性が出てきたというわけです人類のためにね
そう今回私達がやったことと何も変わりません」
「僕達は蒼空さんに無理矢理やらせたりなんかしない」
「アンカーさんはそうでしょう、しかし上層部の人は?
そして蒼空さんが全ての禍災の霧を吸収する事になる
何も変わりませんよ、私達と共にいてもあなた達と共にいてもね」
ステラの目的は俺に全ての禍災の霧を吸収させる事、そして人類圏の拡大のためには俺は結局、禍霧を吸収しなければいけない
つまりはステラにしてみれば本当にどちらでも良いんだろう、それでも俺は
「私は翔さん達と生きていきます、例え結末が同じでも
私は第4部隊の一員ですから」
「そうですが、それは少し残念ですね
まあ今回はもう引くとしましょうか」
その言葉を最後に声は聞こえなくなる、そして彩さんが柱の中を確認する
「う〜、いなくなっちゃった」
「構わないよ、蒼空さんは帰ってきたことだしね
他の皆と合流して帰ろうか」
「りょーかいー!」「そうだねぇ〜」「はいはーい!星沙も心配だしね」
零さん、彩さん、瑠流さんの順番で返事をするそして最後に翔さんは俺を見て手を伸ばす
「ほら、蒼空も一緒に帰ろう」
「⋯⋯はい!」
俺は手を握り歩き出す、過去を乗り越えたわけじゃない
でも今は現在を見ようと思った、思えたんだ
序章もっと早く終る予定でした、何故か教団が生えて連れ去られた
エピローグで序章は終了予定です