勝利の女神:NIKKE〈WORLD TRIGGER〉 作:ライダーマスク
〈ムラクモSIDE〉
俺―――ムラクモ・セブンは顕現させていた銃トリガーである[DMR]を格納し視界に映し出されたレーダー内にラプチャーが居ない事を確認した。
「状況終了―――大丈夫か?」
「はい。救援ありがとうございました」
急な状況で共闘した勝利の女神ことニケである彼女がほっとした様子で返事をした。
此方から見て怪我は…ないな。
「俺から見て怪我はないようだが…不調や怪我はあるか?」
「問題ありません」
「そうか。それでだ…なんで中央政府の地上用輸送ヘリが撃墜されているんだ? 俺は別任務で帰還途中だったのを君の救難信号をひろって来たんだが…」
「そうだったんですね。任務帰りなのに救援ありがとうございます」
「ああ。それでなんでこんな状況に」
俺は貨物室の内側から爆破されたような跡で物言わぬ残骸と成り果てた輸送ヘリを指さした。
確かこの作戦区域ではニケの一個小隊が調査任務をしている最中だったのは覚えている。
「実は―――」
それから聞かされた情報は以下の通りだった。
俺が知っているこの区域で調査任務を行っていたニケ小隊との定期連絡が途絶。
それが連続で発生し中央政府は調査隊に何かあったかを突き止め、無事であれば救援するために人間の指揮官とニケ分隊[04-F]を派遣。
しかし、30機を超えるラプチャーの群体と遭遇し交戦。
その戦いの過程で[分隊04-F]の指揮官が死亡。
状況が状況の為、[分隊04-F]の隊長であるニケが救援を要請。
その救援要因として俺が助けたニケ―――エリシオン製ニケ[シルバーガン分隊]所属のマリアンと指揮官の2人が派遣されることになった。
だが、輸送ヘリで2人を移送中に本来この作戦区域では居ないはずの対空火器を装備したラプチャーによって攻撃を受けて墜落。
人間であった操縦者と指揮官は攻撃と墜落による影響で死亡。
そしてマリアンは孤立し、救援要請を送り俺がそれを偶然ひろって援軍として向かい交戦し勝利した。
そんな流れだ。
しかし、いくら内部が腐敗している中央政府とはいえ地上でのスキャンでラプチャーの種類を漏らすなんてな…。
しかし輸送機の貨物室の壊れ方が不自然だな。
内部から破裂するように装甲が捲れている。
今はこの付近の[エブラ粒子]*1が濃いからこの作戦のオペレーターと通信ができない―――が輸送機のブラックボックスデータくらいなら今頃オペレーターの所に送られている頃だからその解析結果を待つしかないか。
「状況は把握した。俺は本来この作戦に参加していない人員だがこんな状況だ。俺が死んだ指揮官の代わりとしてこの作戦を引きつごう」
「良いんですか? ですが中央政府の承認がないままセブン大尉が参加するのは…」
「問題ない。俺はそもそも中央政府の許可なしで地上に行ける権利を持っている―――ほら」
俺は自分の身分証を立体映像で展開した。
そこに書かれているのは俺の身分だ。
姓 名:ムラクモ・セブン
性 別:男
年 齢:21歳
生年月日:21/OCT/2###
所 属:前哨基地最高指揮官
特殊別動隊隊長
階 級:大尉
個別番号:AD07-TT666
「特殊別動隊…確かアンダーソン副司令官と教官が提案した地上で自由に調査できる部隊と噂を聞いたことがあります」
「その通りだ……ってイングリットさんは自社のニケに教官呼びをさせているとは…本当にタクティカルが好きだな」
「教官と知り合いなのです……あ、特殊別動隊であるセブン大尉ならそうですね」
「ああ。っという訳で俺は地上で自由に動けるしアンダーソン副司令官には指揮官を失ったり指揮官として動けなくなった場合や指揮官が指揮官としての仕事を放棄している場合などの理由でその場でニケの指揮権を此方に移すことができる*2」
そもそも、今いるニケの指揮官の中で階級が一番上なのは俺だからやろうと思えば無理やりにでも指揮権を奪うことは出来る。
まあ、勝利の女神の指揮官として戦う指揮官に対してはそんなことしないけど。
「わかりました。改めて私はマリアンです。[シルバーガン分隊]所属で兵科は機関銃射手です。改めよろしくお願いします―――指揮官」
「よろしく頼む。俺の基本戦闘は遮蔽物生成とスナイパーライフルによる狙撃手だ。トリガー…だと分かりにくいか。武装を切り替えて複数の兵科も行ける」
俺はマリアンに手を差し出し、彼女はそれにこたえるように握手をしてくれた。
「さて、これから君の指揮官として作戦行動をするんだが―――肝心の[分隊04-F]とのランデブーポイントはどうなっているんだ?」
「作戦開始前に私にインプットされています。私が案内するのでよろしくお願いします」
「ああ。戦闘時は指揮しつつ遮蔽物の生成と狙撃でフォローする」
「ありがとうございま―――あれ、そういえば指揮官は普通にラプチャーをセミオートスナイパーライフルで倒していましたが……」
「それがどうかしたのか?」
「―――って、人間がラプチャーを破壊できる火器を撃っている!?」
マリアンがそう言いながら驚いた。
そういえば、ラプチャーに通用する歩兵火器って人間じゃ運用できなかったな。
俺としては今起動している[トリガー]を手に入れる前からニケ用の火器普通に扱えていたからすっかり忘れてた。
「対ラプチャー歩兵火器を使用するなんて自殺行為ですよ!!!」
そんなことを考えているとマリアンから普通に怒られた。
おおー、彼女は相手が誰であろうとちゃんと意見を言えるんだな。
しかもストレートにかつ心配の意を込めている。
優しいなぁ。
「あー、俺は一応そういう武装が使えるんだよ。他の人間と違って身体能力とか色々人外じみているからな」
「でも危ないですよ!!」
「まあ、そう心配してくれるのは嬉しいよ。だけど、こうして勝利の女神たちと並び戦い守っていくのは俺が戦う上で絶対に譲れない事だ。そこらへんは勘弁してくれ。ほら、全然問題ないからな」
右腕だけマッスルポーズをして大丈夫だとマリアンに見せる。
因みにこういう状況で心配してくれたのはタクティカル大好きCEO直属のエリシオン最強部隊の隊長とマリアンだけだ。
「わかりました…。いきなり怒ってすみません」
「その心配はごもっともだ。そんじゃランデブーポイントまで案内頼む―――マリアン」
「はい。指揮官」
□
マリアンの案内でランデブーポイントを目指して進んでいた。
道中ラプチャーの小規模群体とエンカウンター数回ほど発生し戦闘。
しかし直後の戦闘でマリアンの脚にラプチャーの攻撃が当たり負傷した。
「負傷したみたいだな」
「負傷というより…損傷ですかね」
「俺にとっては勝利の女神として戦うニケは戦友であり生きとし生ける存在だ。近くに姿を隠せる場所さがして俺が治療しよう」
俺はそう言いながらマリアンを抱き上げる。
俗にいうお姫様だっこで。
「え、ちょっと指揮官!?」
「俺が負傷兵を運ぶにはこれが丁度いいんだ。折角だからお姫様気分でも味わってくれ」
「お姫様って…もぅ…///」
マリアンが恥ずかしそうにしながら身をゆだねてくれた。
それから近くの身を隠せる場所に移動。
念のためラプチャーが入れない出入り口を1つだけ確保して、他は[エスクード]を展開して簡易的なバンカーを作った。
「どこからともなく遮蔽物を生成するなんて…特殊な能力を持ったニケが居るのは知っていますが、こういう能力は聞いたことがありません」
「能力というよりは俺が今使っている専用兵装にセットされた武装の1つだ」
俺はマリアンの疑問に答えながら彼女の治療を始める。
これでもニケに関する知識はニケの開発者並みとはいかないが治療や異常の対処は一通りできるようにしている。
因みにニケに関する治療や異常の対処は[セラフィム部隊]のメアリーというニケに教わった。
普段は天使のように優しいが、健康診断をさぼると悪魔も恐れる雰囲気で追ってくる。
「もしかしてあの時使ったスナイパーライフルもですか?」
「ああ。まあ、あのスナイパーライフルは既存の
汎用性なら元に有った狙撃手トリガーである[イーグレット][ライトニング][アイビス]を使い分けるのもいいけど切り替えるのが面倒だっからそれぞれの長所を組み合わせて改造狙撃手トリガーである[セミオートスナイパーライフル]式の[DMR]にした。
改造した影響で上記の三つにはなかった弾倉式になって手動リロードが必要になった。
まあ、弾倉式になったおかげで弾倉ごとに[弾トリガー]を変えられるから俺としては実質デメリットがないってことだ。
因みに名前に関して最初は[Demolition Material Rifle]だったけど長いからそれぞれの頭文字をとって[DMR]にした。
呼びやすさは大事だからな!
「武器にかなりのこだわりがあるんですね。エリシオンのニケ用火器開発部門や教官と気が合いそうですね」
「どうだかな?―――よしこれで治療は終わりだ」
俺は治療個所に包帯を巻いた。
〈ムラクモSIDE OUT〉
◇
〈マリアンSIDE〉
「―――よしこれで治療は終わりだ」
私―――マリアンは指揮官が包帯を巻いたのに気付いた。
「あの、指揮官? こういったのはニケには効果がないのですが…」
「確かにないかもしれない。だが、さっきも言ったが俺にとっては勝利の女神として戦うニケは戦友であり生きとし生ける存在だ。少なくとも俺にはそういった事をしないと自分を曲げる事になる」
淀みも曇りもない真っすぐな目で私を見てそう言い放つ指揮官。
今まで私があって来た指揮官達は全員私達を兵器扱いし道具同然の扱いばかりだった。
常識的にそういった扱いがアークにとっての常識。
他にもニケを差別する思想である[ニケフォービア]が普通にいる。
そんな当たり前に逆らうかのように指揮官―――ムラクモ・セブン大尉は私や今まで関わって来たニケ達を戦友であり同じ生きている者として認識してくれている。
アークにとって異端、しかも中央政府に所属しているのなら猶更。
この人を良く思わない上層部に何度も嫌がらせや、酷い扱いを受けてきている。
それでも自分の考えを曲げずにこうして私を治療してくれた。
それにどことなく初めて会った気がしない。
どこかで会っていて、大切ななにかを語り合ったとも思える。
「どうだ? どこか痛むか?」
指揮官が心配そうに聞いてきた。
「いえ。指揮官が治療してくれたおかげで、もう治ったみたいです」
「治療に自信はあるが、それでも過信しないようにな」
「はい。あ、指揮官が怪我した時は私が治療したり支えてあげますね」
「ああ。その時はよろしく頼む」
他の指揮官であれば馴れ馴れしいと言われるけど、彼は笑顔を見せながら答えてくれた。
この任務が終わっても、また地上に行く時は彼と共に一緒の時間を過ごしたい。
そう私の心の中に温かく安心できる思いが広がっていった。
―――ニケ…ヲ……祭壇…ニ…誘…イ……
―――ラ…プ……チャー…ニ…捧…ゲ…ヨ……