勝利の女神:NIKKE〈WORLD TRIGGER〉 作:ライダーマスク
〈ラピSIDE〉
合流時点での戦闘を終えて身を隠せる場所に移った私とアニス、そして指揮官とマリアン。
「損害報告は無し、損耗も軽微。皆よくやってくれた」
指揮官が私たちの損害や消耗状態の確認を聞いてそう答えた。
「ねぇ、ラピ」
「言いたいことはわかるわ。あの指揮官の事ね」
「うん。あの人が来てから何故かわからないけどじり貧だった戦いが一気に優勢になってあっさり終わっちゃった。どういう事?」
「私にもわからないわ。少なくとも私の経験上あそこまでの指揮能力が高い指揮官はいなかった。何より―――ラプチャーを倒せる火器を使える人間なんて」
しかも、縦列のラプチャーを数機貫通して向こう側の廃墟や地形も砕く威力のスナイパーライフル。
下手すれば対物ライフル並み。
威力であれば、あの人が使っていた武器と遜色ない。
一体何者なの?
「さて、改めて自己紹介と行こうか。俺は“ムラクモ・セブン”ニケ管理部所属。今は前哨基地指揮官兼特殊別動隊隊長をしている。そんで俺が連れてきた彼女は―――」
「改めてシルバーガン分隊所属エリシオン製ニケの“マリアン”です」
「[分隊04-F]隊長の“ラピ”です」
「[分隊04-F]隊員の“アニス”よ」
「よろしく。ラピ、アニス。それでだ―――救援要請に会った君達の指揮官の死についてだが…」
指揮官の問いにアニスが答え始める。
「前の指揮官様は死んだわ―――対人ライフルをラプチャーにぶっ放しながら「ラプチャー!人類の敵!」って言いながた突撃して、通常タイプのラプチャーによるレーザーを喰らって遺体も残らず死んだわ」
「守れなかったんですね…2人は」
マリアンの言葉にアニスが返そうとするが、指揮官が言葉を挟んだ。
「そこは違うぞ、マリアン」
「え?」
「君達ニケはどんな状況だろうと人間を護る。たとえ自分の身に何があろうともだ。だが、マリアンが遭遇した撃墜事故や、ラピとアニスの前任の指揮官の様に自殺行為を止めてまで守れるわけじゃ無い。そうだろ?」
「う、うん…」
「はい」
「ご存じなのですね」
「そういった指揮官は何度かいたからな。変に生き残った指揮官や初めての戦場で気が狂った新米指揮官とかな」
そう言う指揮官の目は何処か寂しそうだった。
おそらくそういった指揮官を助けられなかった後悔があるのだろうか?
ともかく―――
「アニス。エブラ粒子の濃度が減ったみたいだし、この指揮官の情報を中央政府の人事データベースで調べて」
「うん、検索してみるね」
アニスが指揮官について調べ始めた。
「顔や身分証の情報と完全一致しているわね。戦歴は―――えぇぇぇ!?」
「どうしたの?」
「ら、ラピ!? この指揮官様凄い人だよ!」
「なにがあったの?」
「ほら! 数年前に地上の一部資源施設をラプチャーから奪還したってニュースがあったじゃない! その指揮官様がこの人だよ!」
「!」
「え!?」
アニスの情報に私と、なぜか彼と一緒に来たマリアンまでもが驚いていた。
〈ラピSIDE OUT〉
□
〈ムラクモSIDE〉
「ほら! 数年前に地上の一部資源施設をラプチャーから奪還したってニュースがあったじゃない! その指揮官様がこの人だよ!」
「!」
「え!?」
俺の戦歴を知ったマリアンとラピ、アニスが驚いていた。
てっきり知っているかと思ったんだけどな。
「うわぁ…かなりの達成困難な任務や作戦を量産のニケ達を使って達成しているじゃん…」
「そういえば[新星]の再来とか言われていたわね」
「あの有名な指揮官だったんですね…」
3人がアニスが持っているスマホから表示されている俺の情報と俺を交互に見ている。
あの作戦は中央政府の腐った上層部の連中が俺の活躍で自分達の立場が危ういと感じで無理やり生かされた作戦。
そして随伴してくれた総員6名のニケは全員死亡。
俺も死にかけたが、今持っている力をあの場で手に入れてあの施設に居た小型ラプチャー600機、ロード級ラプチャー60機、タイラント級ラプチャー6機を殲滅できた。
あの作戦は今の俺の始まり。
最初はあの副司令官との出会い、色々なコネが出来てきて最終的に前哨基地の指揮官でありアークでも大抵の権力者や上層部でも手が出せない立場である特殊別動隊の隊長をさせてもらっている。
まあ…
「だが、奪還した資源施設は資源の2割も回収できずに、報復しに来たラプチャーによって破壊されたけどな」
「え!?」
「本当は俺が防衛任務に回るはずが欲をかいた一部の上層部が自分の手柄にしたいがために俺を外した。自分達が地上に上がって資源回収をしてが、施設を奪いに来たラプチャーの軍団によって全員壊滅―――果てには[ヘレティック]によって資源施設や上層共、その場にいたニケは全滅。今は施設やラプチャーの残骸が融解した残骸が残る更地だ」
「[ヘレティック]ってあの都市伝説の、人間を裏切ったニケの事?」
アニスがそう聞いてきた。
「ああ。都市伝説じゃなくて実在している。現に[アブソルート]と[メティス]の合同部隊によってコードネーム[インディビリア]が討伐されている」
[アブソルート部隊]とは面識があって、当時の事を聞いたが勝てたのは奇跡だと言っていた。
因みに俺が奪還した資源施設を更地にしたのは[ニヒリスター]というヘレティック。
俺も1回だけ接触して戦ったが、ヘレティックは総じてヤバい。
戦闘能力だけ見れば俺が使う力の奥の手を使えば何とかなるが、問題なのは不死といえるほどの生命力。
何度体を吹き飛ばそうが、瞬時に再生しガッデシアムや大概の合金を簡単に溶解させる熱線を放ってくる。
あの時は奥の手を使った状態で奴が俺に重傷を負わせた際に俺の返り血を浴びた。
だが、その瞬間に奴が苦しみながら体の一部が自壊。
最終的に奴が撤退した事でなんとかなった。
「指揮官様も中央政府に色々とやられているのね…」
「ま、今に始まった事じゃない。個人的に俺の事を命を捨ててまで守ってくれた当時の部下達や、あの場所で作業していたニケや作業員の人達が報われないのが心残りだ」
「上層部については?」
「自業自得だ。寧ろ勝手に自滅してくれたおかげで中央政府がほんのちょっとマトモになったくらいだ」
「容赦ないね、指揮官様」
まあ、何も考えずに当時の部下の犠牲で成功させた一部の地上奪還成功の功績を向こうがとってくれたおかげで、更地にされた際の責任はこっちにいってないからな。
そこだけは…まあ良しと思っている。
「ま、とにかくこれで俺の実力は担保されたって事だ。2人は俺が指揮官をする事に異論はあるか?」
「ありません」
「私も無いわよ。でも、偉大なる中央政府様がこんな凄い指揮官様を救援に寄こしてくれるなんてね」
「今の指揮官であればあの輸送機から生き延びれたのも納得がいきます」
ラピとアニスがそう納得した。
とりあえず後々誤解が無いように、これだけは言っておくか。
「因みにこの区域で行われている作戦での救援指揮官については、本来は別の指揮官が来る予定だったからな」
「え?」
「はい?」
俺の言葉に困惑するラピとアニス。
「マリアン。説明を」
「はい。実は―――」
マリアンが2人に合流するまでの経緯を離した。
「それで今に至ります。私としても今の指揮官が居なかったら今頃どうなっていたか分かりません」
「……やっぱり死んでいたじゃない」
「……そうね。ごめんなさい、アニス」
2人の雰囲気的にマリアンと本来来るべきだった指揮官を乗せた輸送機が墜落するところ見たんだろう。
そしてランデブーポイントに留まるべきか、移動するべきかで言い合っていたところか。
普通なら輸送機が墜落した瞬間に逃げるべきだとアニスが言った。
だがラピは先ほどまで濃いエブラ粒子で中央政府にいるオペレーターと通信がつながらなくて救援部隊が存命か分からないから留まるべきだと言った。
そんなところだろう。
「とりあえず今展開している作戦についてはどうする? このまま俺は指揮官として作戦続行してもいいが」
「大丈夫ですか?」
「ああ。残弾も問題ないしバイタルも問題ない」
「わかりました。それなんですが…」
「どうした?」
「あのね指揮官様。実は私達がもともと行うはずだった捜索作戦の座標なんだけど―――元々私達の指揮官様だけが知っていたのよ」
「マジ?」
「マジよ」
なんで2人の前任は部下にも作戦情報を共有しないんだよ。
自分が死んだときの状況も想定しろって、ニケ管理部の士官学校で習う内容だぞ…。
「もしかして、その前任ってニケフォビア?」
「正解よ…。流石に今の指揮官様が知っているわけないよね」
「ああ」
これは想定外だな。
なんでニケを指揮する指揮官がニケフォビア思想の持主なんだ。
せめてニケフォビア思想持ちは書類の時点で除外して欲しいもんだ。
「あ、あの…私なら知ってます」
「「え!? 知ってるの!?」」
俺とアニスの声が重なった。
「はい。出発前に入力されました」
「ナイス、マリアン」
「ありがとうございます」
とりあえず作戦続行できそうで良かった。
この作戦のオペレーターとの通信がつながる地域まで移動して作戦座標を聞く手間が省けた。