ONE PIECE ―黄色い閃光は海を翔ける― 作:HINRON
第15話 海賊狩りの旧友たち
ゴーイング・メリー号は、青い海を順調に進んでいた。
シロップ村を出てから、しばらくが経つ。
新たに仲間となったウソップは、船に備えつけられた大砲を見つけて以来、何かとその調子を確かめたがっていた。
「なあ、ルフィ! この船の大砲、ちゃんと使えるんだよな?」
「おお! 撃ってみようぜ!」
「待て待て。撃つなら周囲の安全を確認してからだ。おれが照準を合わせるから、まずはあの岩場の向こうを――」
ウソップは船首から身を乗り出し、周囲の地形を慎重に見渡した。
狙撃の腕には自信がある。だからこそ、撃つ前の確認を怠るつもりはなかった。
だが、隣にいたルフィは違った。
「よーし、発射ァ!!」
「おい、待てって言ってんだろォ!!」
ドォン!!
轟音とともに砲弾が飛び出した。
砲弾は海面を越え、少し離れた岩場へ向かっていく。
――ドォンッ!!
岩場の近くで大きな水柱が上がった。
「…………」
ウソップはしばらく口を開けたまま固まっていた。
「おい、ルフィ……お前、周りを確認しろって言ったよな?」
「おう!」
「おう、じゃねェ!!」
ナミが舵を握ったまま、呆れた顔で振り返った。
「ちょっと! 何を勝手に撃ってるのよ! 船の近くに何かあったらどうするつもり!?」
「でも、当たってねェぞ?」
「そういう問題じゃないでしょうが!」
ゾロは甲板の隅で昼寝をしていたが、騒ぎを聞いて片目を開けた。
「……朝からうるせェな」
「ゾロ、お前も止めろよ!」
「俺は寝てた」
「そういう問題じゃねェ!!」
ミナトは苦笑しながら、砲弾が飛んでいった方向を見た。
岩場の陰に、小さな船が見える。
どうやら、あの近くに誰かいたらしい。
「……あれ、大丈夫かな」
ミナトが呟いた直後だった。
「なァにしてくれてんだァァァ!!」
海上に怒鳴り声が響き渡った。
岩場の陰から小舟が姿を現す。船上には二人の男がいた。
一人はサングラスをかけた、威勢のいい男。もう一人は額に何かを巻き、顔色が悪いながらも必死にこちらを睨んでいる。
「おい! 今の砲弾はどこのどいつだァ!! 危うく船ごと吹っ飛ばされるところだったじゃねェか!!」
サングラスの男が拳を振り上げた。
「ジョニー、そりゃあっしらの方が聞きてェくらいでやんすよ!! もう少しで海の藻屑になるところだったんでやんすからねェ!!」
隣の男も声を張り上げる。
「悪かったー!」
ルフィが船縁から身を乗り出して叫んだ。
「悪かった、で済むかァ!!」
ジョニーの怒声が返ってくる。
ミナトは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ごめんね。こっちの不注意だった。怪我はない?」
「お、おう……あんたは話がわかるじゃねェか」
ジョニーが少しだけ落ち着いた、そのときだった。
彼の視線が、メリー号の甲板に立つゾロへ向いた。
「……ん?」
ジョニーは目を凝らした。
「おい、ヨサク。あそこにいる緑頭……」
「何でやんすか、ジョニー」
「あれって……まさか……!」
ゾロも二人の顔を見て、眉を上げた。
「……お前ら」
次の瞬間。
「アニキィィィ!!」
「ゾロのアニキじゃねェですかァ!!」
二人の声が、海上に響き渡った。
ジョニーは小舟の上で大きく手を振り、ヨサクも嬉しそうに身を乗り出している。
「間違いねェ! あの三本の刀、あの顔! 海賊狩りのゾロのアニキだァ!!」
「いやァ、こんなところで会えるたァ思ってもみやせんでしたぜ! アニキ、お元気そうで何よりでやんす!」
「……うるせェな。お前ら、何やってんだ」
ゾロは面倒くさそうに答えた。
しかし、二人を追い払う様子はない。
「何って、そりゃあこっちの台詞でさァ! アニキこそ、どうして海賊船なんかに乗ってんです!?」
「そうでやんすよ! あっしら、アニキが海賊になったと聞いたときゃあ、そりゃもう驚きやした!」
「別に、説明するようなことじゃねェだろ」
「相変わらず、つれねェなァ、アニキ!」
ジョニーが豪快に笑い、ヨサクも何度も頷いた。
ミナトはゾロに視線を向けた。
「知り合いだったんだね」
「ああ。賞金稼ぎをやってた頃の仲間だ」
「おおっ! アニキの仲間の方でやんすか!」
ジョニーとヨサクがミナトを見て、慌てて姿勢を正した。
「申し遅れましたオレの名はジョニー!」
「あっしはヨサク!ゾロのアニキとはかつての賞金稼ぎの同志!どうぞ、お見知りおきを!」
「よろしく。オレはミナト」
「へへっ、よろしく頼むぜ、ミナト!」
ジョニーはそう言ってから、再びゾロを見た。
「それにしても、アニキが海賊とはなァ……!」
「まだ言うか」
「何度でも言いやすぜ! いやァ、驚いた驚いた!」
「ジョニー、あんたさっきからそればっかりでやんすよ……」
ヨサクは笑いながらも、ふらりと身体を揺らした。
ミナトはその様子を見逃さなかった。
「ヨサク、ちょっといい?」
「へ? あっしでやんすか?」
「うん。顔色がよくないね。体調が悪いの?」
「……ああ、こいつのことか」
ジョニーが心配そうに相棒を見た。
「少し前からこんな調子なんだ。海の上じゃ新鮮な食い物も手に入りにくくてよ。休ませてはいるんだが、なかなか良くならねェ」
「ジョニー、あっしは大丈夫でやんすよ……」
「大丈夫な奴がそんな顔色してるかってんだ!」
ナミが小舟を見ながら口を開いた。
「長い航海で新鮮な果物を食べていないなら、栄養が足りていない可能性もあるわね。食事の内容や症状をもう少し確認した方がいいわ」
「そうだね」
ミナトも頷き、荷物から保存食を取り出した。
「乾燥させた果物と野菜があるんだ。栄養を補う助けにはなると思う。すぐに治るとは限らないけど、よかったら食べてみて」
「おおっ! こいつはありがてェ!」
ジョニーが声を上げた。
「アニキの仲間は気が利くじゃねェか!」
「いやァ、助かりやす……! ミナトさん、ありがとうございやす!」
ヨサクは保存食を受け取り、少しずつ口に運んだ。
「水も飲んで、無理せず休んでね。症状が続くなら医者に診てもらおう」
「へい、わかりやした!」
ナミも頷いた。
「食べ物だけで治ると決めつけない方がいいわね。しばらく様子を見ましょう」
「さすがナミだな!」
ルフィが感心したように言う。
ミナトは岩場の方へ視線を向けた。
先ほどの砲撃の影響だろうか。岩の一角に釣り糸が絡まっている。糸の先は海中に沈み、岩の隙間に引っかかっているようだった。
「ちょっと待っててね」
ミナトは腰の道具袋から、普段使っている普通のクナイを一本取り出した。
「何するんだ?」
ウソップが尋ねる。
「釣り糸が岩に絡まってるんだ。切っておくよ」
ミナトは狙いを定め、クナイを投げた。
クナイは正確に飛び、釣り糸だけを断ち切る。そのまま岩肌に突き立った。
「おおっ! 正確だな!」
ウソップが感心して声を上げる。
ミナトはクナイの位置を確認した。
次の瞬間、彼の姿が甲板から消えた。
「……は?」
ウソップが目を見開く。
岩場に突き立ったクナイのそばに、ミナトが立っていた。彼はクナイを抜き、刃についた汚れを拭って状態を確かめる。
そして、再び姿が消えた。
次の瞬間には、メリー号の甲板へ戻ってきていた。
「よし。問題なし」
ミナトはクナイを道具袋へしまった。
「な、な、な……!? 今、消えたよな!? 岩場に移動して戻ってきたよな!?」
ウソップが大声を上げる。
「飛雷神の術だ!」
ルフィが得意げに説明した。
「ミナトはクナイのところに移動できるんだぞ!」
「いや、それは聞いたけどよ! 実際に見るとびっくりするだろ!!」
「ははっ、そうだよね」
ミナトは苦笑した。
「目印にしたクナイや場所が必要だし、距離にも限界がある。何度も使えば体力も消耗するからね」
「でも、投げたクナイは毎回取りに戻るのか?」
ウソップが尋ねる。
「使えるものはね。クナイだって無限にあるわけじゃないから。特に飛雷神の目印にしているものは大切なんだ」
「無駄にしねェのはいいことだ」
ゾロが腕を組む。
「武器だって、いつでも好きなだけ手に入るわけじゃねェからな」
「そういうこと。もちろん、回収するために危険を冒すつもりはないけどね」
ミナトは穏やかに笑った。
ジョニーとヨサクは、そのやり取りを興味深そうに眺めていた。
「いやァ、アニキの仲間は変わった技を使うんでやすねェ」
「へへっ、ますます面白い連中じゃねェか!」
「お前ら、俺の仲間を勝手に評価してんじゃねェ」
ゾロが低い声で言う。
「照れてんですかい、アニキ!」
「斬るぞ」
「ひィッ! 相変わらず容赦ねェ!!」
甲板に笑い声が広がった。
やがて、ジョニーがふと思い出したように尋ねた。
「そういや、アニキたちはどこへ向かってるんです?」
「料理人を探してるんだ!」
ルフィが即答した。
「うまい飯を作れる奴が欲しい!」
「……お前、飯のことしか頭にねェのか」
ゾロが呆れる。
「腹が減ったら戦えねェだろ!」
ウソップがため息をつく。
「お前は腹が減ってなくても騒いでるだろうが」
ジョニーとヨサクは顔を見合わせた。
「料理人を探してる、ですかい……」
「だったら、ちょうどいい場所がありやすぜ!」
ヨサクが身を乗り出す。
「この先に、海上レストランがあるんでやんす! その名も――バラティエ!」
「海上レストラン?」
ミナトが聞き返した。
「へい! 海の上で料理を出してる店でさァ。腕の立つ料理人が揃ってるって話でやんす!」
「おおっ! 飯が食えるのか!?」
ルフィの目が輝く。
「話を聞け、ルフィ」
ナミが呆れたように言った。
「料理人を探してるのよ。食べるだけじゃないんだからね!」
「でも飯が食えるんだろ?」
「……はぁ」
ナミは深いため息をついた。
ミナトは笑いながら、ジョニーとヨサクを見た。
「二人もバラティエへ向かうの?」
「へい。ヨサクの体調もありますし、まずは食事と休息を取らせてやりてェんでさァ」
「それがいいと思う。無理はしないでね」
「ありがとうございやす、ミナトさん!」
ジョニーは小舟の舵を握り直した。
「よし、アニキ! バラティエでまたゆっくり話しましょうぜ!」
「話すことなんざねェよ」
「またまたァ! つれねェなァ、アニキ!」
「お前ら、うるせェ」
ゾロはそう言いながらも、二人を追い払うことはなかった。
ゴーイング・メリー号は小舟と並んで進み始めた。
ナミは海図を確認し、針路を整える。ウソップは大砲に近づかないようルフィを見張り、ゾロは再び昼寝を始めた。
ミナトは水平線を見つめた。
その向こうには、まだ知らない場所がある。
世界を自分の目で見て回る。
その夢に、またひとつ新しい目的地が加わった。
海上レストラン・バラティエ。
そこでは、麦わらの一味の航海を大きく変える出会いが待っていた。
ミナトの今後の成長(能力)について! リトルガーデン編以降
-
悪魔の実 ゾオン系 幻獣種:九喇嘛
-
悪魔の実 パラメシア系 チャクラ人間
-
無能力者を貫き通す!