ONE PIECE ―黄色い閃光は海を翔ける― 作:HINRON
水平線の向こうに見えていた島影は、船が進むにつれて、少しずつその姿をはっきりと現していった。
青い海に囲まれた島々。海岸沿いには家々が並び、斜面には緑が広がっている。潮風に乗って、どこか甘い柑橘の香りも漂ってきた。
「おおっ! 島だ!」
船首に立ったルフィが、身を乗り出して声を上げた。
「見りゃ分かるだろうが。落ちるなよ」
ゾロが呆れた声を返す。
「落ちねぇよ!」
「さっきから何度も同じこと言ってるぞ、お前」
ウソップが額を押さえた。
そんなやり取りを横目に、ミナトは島の様子を注意深く観察していた。
美しい場所だ。
海岸には小さな船がいくつも停泊し、丘の上にはみかん畑らしきものも見える。海から眺める限りでは、どこにでもある穏やかな島に思えた。
だが、案内役のジョニーとヨサクは、島が近づくにつれて口数が少なくなっていた。
「……着いたぞ」
ジョニーが短く告げる。
「ここがコノミ諸島でやんす」
「よし! ナミを探そうぜ!」
ルフィは勢いよく立ち上がった。
「待て待て! まずは船を着けるんだよ!」
ウソップに襟首をつかまれ、ルフィは不満そうに頬を膨らませた。
小さな船は海岸へと近づき、やがて静かに岸へ着いた。
五人が陸へ降りる。
潮の香りに混じって、みかんの甘い匂いが鼻をくすぐった。
サンジは周囲を見回しながら、ふっと煙草の煙を吐いた。
「へえ。いいところじゃねぇか。食材もいろいろ手に入りそうだ」
「お前はどこへ行っても飯のことばっかりだな」
ゾロが言う。
「うるせぇ、クソマリモ。食事は大事だろうが」
「今はナミを探すのが先だろ」
「分かってるっつってんだろ!」
いつもの言い争いが始まりかけた、そのときだった。
「……おい。あれ、何だ?」
ウソップが道の先を指さした。
そこには、奇妙な光景が広がっていた。
一軒の家が、上下逆さまになって地面に突き刺さっていたのである。
屋根の一部が土に埋まり、窓や扉が不自然な角度で空を向いている。周囲には壊れた木片が散らばっていた。
「なんだありゃ……」
サンジが眉を寄せる。
「家を逆さまにするなんて、普通じゃねぇな」
ミナトは近づき、地面に残る跡と建物の損傷を確かめた。
自然に倒れたわけではない。誰かが力ずくでひっくり返したのだろう。
それも、家に住む人間のことなど気にも留めずに。
「……ずいぶん乱暴な真似をするね」
ミナトの声から、普段の穏やかさがわずかに消えた。
周囲を見渡しても、家の持ち主らしき人物は見当たらない。
代わりに、少し離れた場所から村人たちがこちらを窺っていた。
視線が合うと、彼らはすぐに目を逸らす。こちらに近づこうとする者もいなければ、話しかけてくる者もいなかった。
歓迎されていないというより、誰かを警戒することが当たり前になっているようだった。
「なあ、あんたたち!」
ルフィが近くにいた村人へ声をかける。
「ナミって女を知らねぇか? オレンジ色の髪の――」
「やめてくれ!」
村人は慌てた様子で声を上げた。
「その名前を、ここで大声で口にするんじゃない!」
ルフィが目を丸くする。
「え? 何でだ?」
「頼むから、余計なことに首を突っ込まないでくれ……。あんたたちまで巻き込まれたら、どうするんだ」
村人はそう言い残すと、逃げるようにその場を離れてしまった。
「……何だよ、今の」
ウソップが困惑した顔で呟いた。
「ナミの名前を聞いただけで、あんなに怯えるなんて……」
ミナトは村人が去っていった方向を見つめた。
恐怖。
それも、目の前にいる相手を怖がっているというより、背後にいる何者かを恐れているような反応だった。
島の人々は、何かに逆らうことそのものを恐れている。
その原因がアーロンなのだろうか。
まだ断定はできない。
「……あんたたち、ナミを探してるの?」
背後から、女の声がした。
一行が振り返る。
そこには、青い髪の若い女性が立っていた。腕には入れ墨があり、こちらを真っ直ぐに見つめている。
警戒心を隠そうともしていない。
「そうだ! ナミを知らねぇか?」
ルフィが即座に答えた。
女性はルフィを見てから、ほかの面々にも視線を向ける。
ゾロの傷だらけの身体。サンジの煙草。落ち着いた様子で周囲を見ているミナト。そして、明らかに緊張しているウソップ。
「……あんたたち、ナミの仲間?」
「ああ!」
ルフィは迷いなく頷いた。
「オレたちはナミを追いかけてきたんだ!」
「追いかけてきた、ね……」
女性の表情がわずかに変わった。
喜んでいるのか、怒っているのか。それとも、何かを確かめようとしているのか。
ミナトには、まだ判断できなかった。
「私はノジコ。ナミのことなら知ってるわ」
「本当か!」
ルフィが一歩踏み出す。
ノジコはすぐには答えず、腕を組んだ。
「でも、あんたたちが何者なのかも分からないのに、何でも話せるわけないでしょ」
「そりゃそうだな!」
ルフィはあっさりと頷いた。
「オレはルフィ! 海賊王になる男だ!」
「……は?」
ノジコが目を瞬かせる。
ウソップが頭を抱えた。
「おい、ルフィ! そういうことをいきなり言うなって!」
「何でだよ。聞かれたから答えたんだぞ?」
「そういう問題じゃねぇ!」
サンジがため息をつく。
「悪いな。こいつはいつもこんな調子だ」
「……見れば分かるわ」
ノジコは呆れたように言った。
それでも、彼女の表情には、ほんのわずかな変化があった。
少なくとも、ルフィはナミのことを隠そうとも、取り繕おうともしない。
ノジコはしばらく考えたあと、静かに口を開いた。
「……少し、話をしましょうか」
*
ノジコの家へ向かう道の両側には、みかん畑が広がっていた。
実ったみかんが枝から垂れ下がり、風が吹くたびに葉がさらさらと音を立てる。
穏やかな景色だった。
けれど、村の空気はどこか重い。
畑で作業をしていた人々も、一行の姿を見ると、すぐに作業へ戻るふりをした。
誰もが、余計なことに関わらないようにしている。
ミナトは、その様子を見ながら歩いていた。
「この島、何か変だな……」
ウソップが小声で言う。
「さっきから、みんな俺たちを見ては目を逸らすし……」
「それだけ、外から来た人間を警戒してるんだろうね」
ミナトは周囲に聞こえない程度の声で答えた。
「長い間、誰かに脅されていたのかもしれない」
「アーロンの野郎か……」
サンジが顔をしかめる。
前を歩いていたノジコは、聞こえていたのか、ほんの少しだけ歩調を落とした。
しかし、何も言わなかった。
やがて、一行はノジコの家に着いた。
彼女は椅子を勧めると、自分も腰を下ろした。
「……ナミは、昔から頭のいい子だったわ」
静かな声だった。
「あの子は小さい頃から、海や島を見るのが好きだった。普通の子が遊んでいるときでも、紙に線を引いたり、海岸を歩いて形を確かめたりしてね」
ノジコは窓の外へ目を向けた。
「最初はただのお絵描きみたいなものだった。でも、あの子は本気だった。いつか世界中の海を自分の手で描いて、海図にするんだって」
「世界中の海を……」
ウソップが呟いた。
「すげぇ夢じゃねぇか」
「そうでしょ。あの子、本当に夢中だったのよ。海図を描いているときだけは、周りのことなんて何も気にしていなかった」
ノジコの口元に、かすかな笑みが浮かんだ。
けれど、その笑みはすぐに消えた。
「……あの子が、あんなふうになる前まではね」
部屋の中が静かになった。
ノジコは一度目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。
「私たちには、母親がいたの」
その言葉を聞いて、ルフィが顔を上げる。
「母親?」
「ベルメールさん。血はつながっていなかったけど、私たちにとっては本当のお母さんだった」
ノジコは、昔を思い出すように話し始めた。
*
まだ幼かった頃。
戦争で荒れ果てた土地に、二人の少女がいた。
青い髪の少女と、オレンジ色の髪の少女。
ノジコとナミ。
二人は戦火の中で家族を失い、頼れる者もいないまま、ただ生き延びていた。
そんな二人を見つけたのが、海兵として戦場にいたベルメールだった。
傷つき、疲れ果てていた彼女は、二人を見て足を止めた。
「……あんたたち、こんなところで何してんの?」
返事はなかった。
幼いナミは、ただベルメールを見つめていた。
ノジコはナミをかばうように抱き寄せる。
ベルメールは二人の姿を見て、しばらく黙っていた。
そして、やがて小さく息を吐いた。
「……ったく。放っておけるわけないじゃない」
彼女は二人を抱き上げた。
それが、三人の始まりだった。
*
「ベルメールさんはね、口が悪くて、すぐ怒る人だったわ」
ノジコが懐かしそうに笑う。
「家のことも料理も、何でも一人でやろうとするくせに、ちょっとしたことで大騒ぎするの。ナミがいたずらをすれば怒鳴るし、私が何か言い返せば、もっと大きな声で怒鳴り返す」
「へえ……」
サンジが少しだけ口元を緩めた。
「でも、最後には必ずご飯を作ってくれた。貧乏だったけど、三人で食べるご飯はおいしかったわ」
ノジコの視線が、部屋の片隅へ向いた。
そこには、古びた家具が置かれている。
何年も使い続けてきた、飾り気のない生活の跡。
「ナミは、みかんが大好きだった。ベルメールさんが育てたみかんを勝手に食べて、よく怒られてたわね」
*
「だって、おいしいんだもん!」
幼いナミが、口いっぱいにみかんを頬張っていた。
「ナミ! また勝手に食べたわね!」
「食べちゃダメなんて言ってないじゃん!」
「売る分がなくなったらどうするのよ!」
「じゃあ、もっといっぱい作ればいいじゃん!」
「そういう問題じゃない!」
ベルメールが怒鳴り、ノジコが横で笑う。
ナミは頬を膨らませていたが、ベルメールが別のみかんを差し出すと、すぐに機嫌を直した。
そんな、何でもない日々。
決して裕福ではなかった。
それでも、家には笑い声があった。
誰かが帰ってくれば、誰かが迎える。
食卓には、いつも三人分の食事が並ぶ。
血のつながりがなくても、三人は確かに家族だった。
「……ベルメールさんは、私たちのことを本当に大切にしてくれた」
ノジコの声が、少しだけ震えた。
「私たちがどんなに悪いことをしても、どんなに困らせても、最後には必ず私たちの味方でいてくれた」
ミナトは黙って話を聞いていた。
祖父母に育てられた自分にも、家族の温かさは分かる。
ただ、ノジコの語る日々を、自分の経験だけで分かったつもりになることはできなかった。
彼女たちにとって、ベルメールがどれほど大きな存在だったのか。
その答えは、これから語られる過去の中にあるのだろう。
*
ある日のこと。
幼いナミは、家の中で紙に向かっていた。
小さな手に握られた鉛筆が、紙の上を忙しく動いている。
「……できた!」
ナミは紙を持ち上げ、得意げに笑った。
「見て、ベルメールさん! これ、海の地図!」
「ん? どれどれ……」
ベルメールが覗き込む。
紙には、海岸線や島らしき形が描かれていた。まだ幼い子供の描いたものだから、線は不揃いで、正確とは言えない。
それでも、ナミは真剣だった。
「ここが島で、こっちが海! こっちに行くと、もっと大きな島があるの!」
「へえ。よく描けてるじゃない」
ベルメールは笑った。
「本当!?」
「ええ。でも、これだけじゃまだ海図とは言えないわね。船が通れる場所も、海の深さも分からないんだから」
「じゃあ、もっと勉強する!」
ナミは勢いよく立ち上がった。
「いつか、世界中の海を全部描くんだから!」
「世界中?」
ベルメールは目を丸くしたあと、豪快に笑った。
「あははは! そりゃあ大きく出たわね!」
「笑わないでよ!」
「笑ってないわよ! 応援してるの!」
ベルメールはナミの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「やるからには、最後までやりなさい。自分で決めた夢なんでしょ?」
「うん!」
ナミは満面の笑みで頷いた。
その隣で、ノジコも笑っていた。
それは、未来を疑う理由など何もなかった頃の笑顔だった。
*
「……でも、その日々は長く続かなかった」
ノジコの声が、再び現在へと戻ってくる。
部屋の中に、重い沈黙が落ちた。
「ある日、魚人たちがこの島にやって来たの。アーロン一味よ」
ウソップが息を呑む。
ジョニーとヨサクも、険しい表情で話を聞いていた。
「アーロンは島の人間たちに金を要求した。払えなければ殺す。逆らえば殺す。そんなやり方で、この島を支配し始めたの」
ノジコの声は静かだった。
けれど、その指先は膝の上で強く握られていた。
「ベルメールも、私たちを守ろうとした。でも、あのときの私たちには、アーロンに逆らう力なんてなかった」
*
アーロン一味が村へやって来た日。
村人たちは、恐怖に震えながら金を差し出していた。
アーロンは、そんな人間たちを見下すように笑っていた。
「人間ってのは、本当に弱い生き物だな。金を払わなければ生きることもできねぇ」
魚人たちの笑い声が、村に響く。
ベルメールは家の中で、ナミとノジコを抱き寄せていた。
「いい? 二人とも。絶対に家から出ちゃダメよ」
「ベルメールさん……?」
ナミが不安そうに見上げる。
「すぐ戻るから」
ベルメールは笑おうとした。
けれど、その顔には、隠しきれない緊張が浮かんでいた。
家を出たベルメールの手元には、わずかな金しかなかった。
自分一人が生き延びるためなら、支払いはできる。
しかし、二人の娘を含めた分には足りなかった。
アーロンはベルメールを見下ろした。
「おい、人間。お前の家族は何人だ?」
「……」
「聞こえなかったのか? 家族は何人だと聞いてるんだ」
ベルメールは唇を噛んだ。
頭の中に、二人の娘の顔が浮かぶ。
ナミの笑顔。
ノジコの強がった顔。
三人で囲んだ食卓。
ベルメールが帰るのを待っている、あの家。
もし、二人の存在を隠せば。
自分一人が家族だと答えれば、二人は助かるかもしれない。
けれど、それは二人を娘ではないと否定することだった。
ベルメールは、ゆっくりと顔を上げた。
「……私には、娘が二人いる」
アーロンの口元から笑みが消えた。
「何だと?」
「私には、娘が二人いるのよ」
ベルメールは、もう一度はっきりと言った。
「ナミとノジコ。あの子たちは、私の娘よ」
その瞬間、家の中に隠れていた二人の少女が飛び出してきた。
「ベルメールさん!」
「やめて! お願い、やめて!」
二人の声が響く。
ベルメールは振り返った。
そして、娘たちに向かって、いつものように笑った。
「……ごめんね」
それは、今の状況を感じさせないほど優しい声だった。
「お母さん、ちょっと失敗しちゃった」
「ベルメールさん……!」
ナミが泣きながら手を伸ばす。
だが、その手が届くことはなかった。
「ナミ!ノジコ!...大好き」
銃声が響いた。
ベルメールの身体が倒れる。
ノジコはナミを抱きしめ、声にならない叫びを上げた。
ナミは、目の前で倒れたベルメールを見つめていた。
何が起きたのか、理解できなかった。
ついさっきまで、いつものように笑っていた人が。
自分たちを守ってくれた人が。
もう、二度と立ち上がらない。
「……ベルメールさん?」
ナミの声が震えた。
「ねえ、お母さん……起きてよ……」
返事はない。
ベルメールの血が、地面に広がっていく。
アーロンは、そんな親子の姿を見下ろしていた。
「人間のくせに、くだらねぇ意地を張りやがって」
魚人たちの笑い声が響く。
ナミは泣き叫んだ。
ノジコはナミを抱きしめたまま、ただ震えていた。
その日、二人の少女は母親を失った。
そしてナミは、アーロンのもとへ連れていかれた。
*
「……ナミは、連れていかれた先で海図を描かされた」
ノジコは、膝の上で握っていた手をゆっくりと開いた。
「アーロンは、あの子の才能に気づいたのよ。海図を描ける人間は、あいつらにとって利用価値があった。ナミは自由を奪われて、来る日も来る日も海図を描かされた」
ルフィは黙っていた。
いつもなら、何か言いたくなればすぐに口を開く。
けれど、今は何も言わなかった。
「……それでも、ナミは諦めなかった」
ノジコは続けた。
「あの子は、いつか村を買い戻すって決めたの。アーロンに金を払えば、村を解放してもらえる。そう信じて、ずっと金を貯めてきた」
「いくら必要だったんだ?」
ゾロが尋ねる。
「一億ベリー」
ノジコは答えた。
「一億……!?」
ウソップが目を剥いた。
「そんな金、簡単に集まるわけねぇだろ……!」
「ええ。普通なら無理よ。でも、ナミは諦めなかった。盗みをしてでも金を集めた。危険なことも、嫌なことも、全部自分で引き受けてね」
ノジコは目を伏せた。
「村のみんなが苦しんでいるのを、あの子はずっと見てきたから。自分が我慢すれば、いつかみんなを救えるって信じていたのよ」
ミナトは静かに息を吐いた。
バラティエで見たナミの姿が、頭の中によみがえる。
アーロンの手配書を見たときの、ほんの一瞬の反応。
宝に目を輝かせる一方で、仲間のことをよく見ていたこと。
誰にも弱みを見せず、必要なら平気な顔で嘘をつくこと。
そして、何も告げずにメリー号と海図を持ち去ったこと。
それらが、少しずつつながっていく。
ナミは仲間を裏切りたかったわけではないのかもしれない。
仲間を巻き込まないために、一人で抱え込もうとしたのかもしれない。
けれど、それはまだミナトの推測にすぎなかった。
ナミ自身が何を考え、どれほどの苦しみを抱えてきたのか。
それを、すべて分かったつもりになることはできない。
「……八年間、か」
サンジが低い声で呟いた。
くわえていた煙草の先が、わずかに揺れている。
「たった一人で、そんなことを……」
「ナミは強い子よ」
ノジコは言った。
「でも、強いからって、何も感じていないわけじゃない。あの子だって、本当は……」
そこで言葉が途切れた。
ノジコは顔を伏せた。
「……本当は、ずっと誰かに助けてほしかったのかもしれない」
その言葉に、誰もすぐには返事をしなかった。
外から、風に揺れるみかんの葉の音が聞こえてくる。
ベルメールが育てたみかん畑。
かつて、三人が笑い合っていた場所。
その景色は今も変わらずそこにあるのに、家族の時間だけは戻ってこない。
ミナトは、静かに目を閉じた。
祖父母から教わったことがある。
誰かを助けるためには、相手が何を望んでいるのかを知ろうとしなければならない。
自分が正しいと思うことを押しつけるだけでは、相手を救えないこともある。
ナミは八年間、自分の力だけで村を救おうとしてきた。
その決意を否定するつもりはない。
だが、彼女が一人で背負わなければならない理由も、本当はなかったはずだ。
「……話してくれてありがとう、ノジコさん」
ミナトは、穏やかな声で言った。
「ナミが何をしてきたのか、少し分かった気がする。でも、本人がどんな思いでいたのかは、オレたちが勝手に決めつけちゃいけないと思う」
ノジコは顔を上げた。
ミナトは彼女の目を見て続けた。
「だから、ナミに会って話をするよ。何を考えていたのか、これからどうしたいのか。ちゃんと本人の口から聞きたい」
ノジコは、しばらくミナトを見つめていた。
やがて、小さく息を吐く。
「……そう」
その声には、わずかな安堵と、まだ消えない不安が混じっていた。
ルフィが立ち上がった。
「よし。ナミを迎えに行こう!」
いつもと変わらない、真っ直ぐな声だった。
だが、今度は誰も軽く受け流さなかった。
ゾロは傷に障らないよう慎重に立ち上がり、刀の位置を確かめる。
サンジは煙草を灰皿に押しつけ、険しい顔で出口へ向かった。
ウソップも拳を握りしめる。
ミナトは最後に、もう一度ノジコへ向き直った。
「……ナミのこと、教えてくれてありがとう」
ノジコは何も言わなかった。
ただ、彼らの背中を見つめていた。
八年間、妹が一人で抱えてきたもの。
その重さを、今度こそ誰かが分かち合ってくれるのだろうか。
ノジコには、まだ分からない。
けれど、少なくとも彼らは、ナミの話を聞いたうえで彼女のもとへ向かおうとしている。
それだけは、確かだった。
家の外では、みかんの葉が風に揺れていた。
その向こうに、アーロンパークがある。
ナミが八年間、自由を取り戻すために戦い続けてきた場所。
そして、その希望が今も残されている場所だった。
――だが、その希望がどれほど脆いものなのかを、彼らはまだ知らなかった。
ミナトの今後の成長(能力)について! リトルガーデン編以降
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悪魔の実 ゾオン系 幻獣種:九喇嘛
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悪魔の実 パラメシア系 チャクラ人間
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無能力者を貫き通す!