ちぇんそーまん 作:ルゥー創作するのは間違っているだろうか?
「チェンソーマン……」
マキマは、手元の情報に目を落としたまま呟いた。
「チェンソーマン?」
隣にいたアキが、片眉を上げる。
聞き覚えのない名前だった。
少なくとも、今の話の流れでその名前が出てくる理由は分からない。
「新しい悪魔がおるのか?」
パワーも興味を示したが、マキマは答えなかった。
「見つけた……」
その口元が、わずかに持ち上がる。
マキマは携帯電話を取り出すと、慣れた手つきで耳に当てた。
「車を手配して」
「どちらへ?」
「ちょっと遠出して、田舎の方へ行きたいんだ」
「俺も行きます!」
アキが即座に申し出る。
パワーがその発言に口を大きく開けてアキを睨んだ
マキマがわざわざ自分で出向くほどの用事じゃ!
何が起きているのか分からない以上、同行するべきだとこの人間は考えたんじゃろう!!!
「ワシはいかん!」
パワーは間髪入れずに拒否した。
アキは思わずパワーを睨んだが、マキマは二人のやり取りを気にする様子もなかった。
「アキくんとパワーちゃんは留守をお願いします」
「そんな……マキマさんが行くほどのことなんですか? だったら――」
アキが食い下がろうとする。
しかし、マキマはそれ以上説明するつもりがないらしい。
マキマはアキに向き直ると金色の瞳をギラつかせこう言った
「じゃあ、私はしばらく東京を離れるから。後、よろしく」
金色の瞳が、柔らかく細められた。
微笑みを浮かべたその表情からは、何を考えているのか読み取れない。
「わかりました」
アキから不満の表情がスッと消え、静かに頷いた。
パワーは顔を顰める
マキマは満足そうに微笑むと、そのまま部屋を出ていった。
残された二人の間に、しばし沈黙が落ちる。
「チョンマゲ、わしはラッキーじゃ」
「チョンマゲって言うな」
アキの抗議をよそに、パワーは勝ち誇ったように笑っていた。
---------
「遅かったみたいだね」
マキマは、静まり返った倉庫を前にそう呟いた。
本部には、ゾンビの悪魔の討伐と報告してある。
もちろん、それは嘘ではない。
けれど、本当の目的は別にあった。
チェンソーマン。
まだ確信があったわけではない。
ただ、チェンソーの悪魔を操る少年がいる。そんな話が舞い込んできたとき、マキマの胸は期待に弾んだ。
もしかしたら、と思った。
会えるかな?
マキマは倉庫の扉に手をかけた。
重い扉が開く。
その向こうには、無数のゾンビが転がっていた。
すでに戦闘は終わっているらしい。
ゾンビの悪魔も、やられてしまったのだろうか。
マキマはゆっくりと倉庫の中へ足を踏み入れた。
目的の相手は、もうここにはいないのかもしれない。
そんな考えが頭をよぎった、そのときだった。
暗闇に、月明かりが差し込んだ。
その光の中に、人影が立っていた。
人間の姿をしている。
けれど、その頭部から伸びる刃も、身体から伝わる異様な気配も、普通の人間のものではなかった。
チェンソーの悪魔をその身に宿した人間。
悪魔人間、とでも呼べばいいのだろうか。
マキマは、その姿をじっと見つめた。
間違いない。
チェンソーマン。
自然と、口元に笑みが浮かぶ。
「これ、君がやったの?」