おい待てここmod入ってんじゃねぇか!   作:怒飲焼

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第12話〜運命の分岐、独り善がり、「C」〜

「2人ともご苦労さま!いつも依頼料入れて貰ってありがとね」

 

「別にいい。カルメンも研究の方はどうだ?」

 

「………正直に言うと進んでないわ…貴方が名付けた絶望の騎士と魔弾の射手は貴方なら協力してくれるけど…他の幻想体たちはまだ作業する度に誰かが死んじゃう…コギトの研究も行き詰まってるし…」

 

カルメンが目を伏せてそう言った

この頃の彼女は実験の行き詰まりと職員の犠牲の板挟みにあって酷く憔悴している

今までの明るい笑みも鳴りを潜めている

 

「あ…ごめんね…ゲントも依頼で疲れてるのにこんなこと聞かせて…もう行くね!」

 

停める間もなくカルメンは走り去ってしまう

周りを見ても暗い顔をしている職員しかいない

 

(嫌な予感がするな…この時期か?)

 

時系列を覚えてる訳じゃないから正確なことは言えない

だが、嫌な予感を覚えたままその日は作業をこなし、眠りについた

次の日、起きた時にカルメンから召集がかけられて嫌な予感は的中することになる__________________________________________________

 

「エノクから相談を受けてね。彼女も実験に参加したいって」

 

主要メンバーが集められた会議室で、カルメンが静かに話し始める

 

「彼女は、私達の力になりたいんだって。助けてくれた私たちを……今度は彼女が助けたいって」

 

誰も喋らない

アインはカルメンがそうするならそうするだろうし、ベンジャミナはアインがそうするならそうするだろう

カーリーだって個人の意思は尊重するはずだ

 

「それで……私は……」

 

ゲントは嫌な空気を頑張って飲み込む

この先の言葉を知っているからこそ、この後することを覚悟するために

 

「彼女を実験に参加させることにした」

 

カルメンは覚悟を決めた顔で告げる

エノクに…彼女に実験を行うと

 

「反対意見がある人は……手を挙げてちょうだい」

 

カルメンは周りを見回す

まるで、誰かこの提案を止めてくれと

本来なら誰も手を挙げず、実験は行われてしまう

だが、今回は違う

カルメンの視線が一点に止まる

 

「反対だ」

 

ただ1人、ゲントが手を挙げる

そのまま、ダニエルやエリヤの間を縫ってカルメンに近づいていく

 

「おい!ゲント!何を考えてる!?」

 

カーリーの野生の勘が働いたみたいだ

その場で跳躍し、ゲントに襲いかかる

 

「悪い。これだけは許せないんだ」

 

ミミックを振り下ろしてきたカーリーを避け、そのまま「宿敵」で小突く

カーリーはこの程度の攻撃で怯まない

そのまま追撃をしようとした時、違和感に目を見開く

カーリーの動きがまるで水中のように緩慢だった

「宿敵」の特殊効果……移動速度-50%

カーリーとは言えども元々速度の上がっているゲントに移動速度を減らされて追いつける道理なんてない

 

「あ、あああああああっ!」

 

だが、カーリー

彼女は研究所の床がひび割れる勢いで踏み込んで普通に走るくらいの速度で飛び出してきた

だが、もうその頃にはゲントはカルメンの目の前にまで迫っていた

 

「カルメン。口閉じとけよ」

 

「え……」

 

呆然としているカルメンの首襟を掴んで、引き寄せる

そのまま顔の付近まで近づけると、ゲントは少し顔を赤らめているカルメンに頭突きした

 

「!???!?!??!??」

 

突然の衝撃に目を見開くカルメン

遅れてカルメンの額から血が溢れ出す

 

「……はぁ…カルメン。これでちょっとは頭冷えたか?」

 

ゲントの方も血が少し出ているが、気にせず話し出す

他のメンバーは呆然と立ち尽くしている中、カルメンにビシッと指を指す

 

「何言ってんだよ!研究が行き詰まってるから子供を実験台に!?バカ言ってんじゃねぇよ!」

 

ゲントはいつもの冷静さをかなぐり捨てて叫ぶ

良い人であろうとした努力を投げ捨て、カルメンに向けて叫ぶ

 

「たしかに……この頃実験は行き詰まってるかもしれない!なんの成果も出ないで、みんな落ち込んでるかもしれない!でも!でもよ!それはダメだろ!」

 

ゲントは口が達者な訳じゃない

だから、ただずっと思ってたことを叫ぶ

 

「子供は!守って!次を託すべき存在だろ!俺らが無理だとしても!エノクがやり遂げるかもしれない!エノクが無理でも違う次の誰かがやるかもしれない!そうだろ!」

 

「ッ……でも…私たちの手で……」

 

「ああ!お前が集めたんだ!お前が終わらせなきゃいけねぇよな!?でも!これだけは言える!お前は今!間違ってる!」

 

「なら!どうすればいいのよ!皆に協力してもらってるのに!成功しなくて!成果も出せなくて!毎日毎日無駄に死なせてる!」

 

「お前が無駄なんて言うなよ!良いか!?本当に無駄になるのはな!お前が諦めて全部投げ捨てた時だ!今みたいに何も考えずに馬鹿なことをしようとした時だ!分かったか!?」

 

ゲントの言葉にカルメンは目を見開く

そのタイミングで武器の効果が切れ、いつも通りに戻ったカーリーがゲントを取り押さえる

その日はそのまま解散となる

カルメンは医療室に運ばれ、ゲントは自室での軟禁となった

その日の夜、ゲントの自室を尋ねてきたエノクとリサと話をした

リサはひたすら泣きじゃくって感謝を伝えてきた

エノクは自分の何が悪いのか、足りないのかとひたすら質問責めしてきた

リサを慰めながらエノクに必要そうな言葉をかける

その日の夜、2人で寝るエノクとリサを眺めてゲントは夜を越した__________________________________________________

 

「なぁカルメン…聞こえるか?」

 

「……うん」

 

ゲントは自室の壁にもたれかかる

そこの壁は薄く、頻繁に夜、カルメンが話しかけてきていた

そこでゲントはカルメンに話しかける

 

「この前のこと……悪かったな……」

 

「ううん…私もどうかしてた」

 

カルメンの声は前よりは少し明るくなっている

いい兆候なのだろうか

 

「エノクと話したよ」

 

「……なんて?」

 

「これからはしっかり勉強して実験する側になれるようにするってさ」

 

「そっか…」

 

少しはにかんだ声

エノクが実験者になると知ったのが余程嬉しかったようだ

 

「リサも支えれるように勉強するってさ。まだあんくらいなら遊んでればいいものを」

 

「フフッ……ゲントは、あのくらいの時のこと覚えてる?」

 

「…………微妙だ。ぼんやりと覚えてる」

 

「そっか…私はね、何も知らずに、平和な巣でみんなで暮らしてたよ。まだその時は……気づいてなかった」

 

カルメンの巣は比較的環境が良い

だからこそカルメンのような人物が育つのだろう

 

「……ねぇ。なんで止めてくれたの?」

 

「そりゃ子供を実験台にするなんてダメだろ」

 

「そうね。それもあると思う。でも……それ以外の理由もあるんでしょ?」

 

「………………」

 

カルメンはいつもそうだ

アインとかほど優秀じゃないのに洞察力だけはずば抜けてる

たまにこうして確信を突いてくる

 

「ねぇ…ゲントは覚えてる?昔、私達会ってるのよ」

 

「は?」

 

カルメンが急に変なことを言い始める

昔、カルメンと会ってた?

 

「いや…覚えてない」

 

「そっか……まだ12歳くらいかな……その時、たまたま会ったんだ」

 

「……………」

 

「その時の貴方、今と全然変わらないの。なんか、やけに大人びてて……遠くを見てた。まるで今のエノクみたいね」

 

フフッと笑いながら語るカルメン

全く知らない記憶で頭を捻らせるゲント

何とも変な空気の中で2人は語り合う

 

「その…昔の俺はなんか言ってたか?ほら、普通は10年前なんて覚えてないだろ?」

 

「う〜ん…『カルメン、愛してる』って…「嘘つけ!」あっはは〜バレちゃった」

 

「はぁ…まぁ…今はいい。俺をこの研究所に誘ったのも…その時が原因なのか?」

 

「うん。なんか、アイン達とは違う見つけ方なんだよね……その…ビビッ!ってきたって言うか……あ、この人と一緒にいたいって思ったんだ」

 

カルメンの声が少しじっとりとする

壁越しで見えないのに、ハイライトの無い目が想像できる

 

「でも…あの時、君は頑なとして首を縦に振ってくれ無かったよね…」

 

(まぁ…そりゃそうだよな……)

 

今だって無理やり連れてこられた挙句、ゲントが絆されてしまったからこそだ

まだ昔のカルメンに人を絆す魅力が無かったなら、絶対について行かないだろう

 

「だから…その…ごめんね?あんな手荒なことしちゃって」

 

「………別にいい。でも、悪いと思うならもうあんな馬鹿なことすんなよ」

 

「うん。もう絶対にしない」

 

カルメンの声は、今までのように疲れ切っていなかった

ただ、前を見つめることが出来たのか、芯の通った強い声だった

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