「別にそんなに焦んなくていいんじゃないかな?」
「でも…それだと研究に…」
エリヤは下を向いて拳を握る
だが、ここで変なアドバイスをして更に焦らせる訳にも行かない
「お前まだ20代だろ。まだ先があるはずなんだから…」
「でも!その先があるかさえも…」
「大丈夫だ。お前は出来るやつなんだから」
エリヤの頭を撫でる
エリヤは気持ちよさそうに目を細める
「ほら、落ち着いたろ?」
「うん…ありがとう」
そのまま撫で続ける
少ししてから話すと、物足りなさそうに手を目で追っていた
「またなんかあったら相談に乗るよ」
「うん…お願いするね」__________________________________________________
「ね、ねぇ!ゲント!今日の夜ちょっといいかな…」
「ゲント!その…今日もいいかな…」
「ゲント!」
そう言ってから、明らかにエリヤから声をかけられる回数が増えた
なんなら朝昼晩と呼び出される
「まぁ…それでいいならいいけどさ」
「なんのはなし?」
「うわぁ!?」
後ろからヒョコッとカルメンが出てきた
うわ出たよ…
(うわ出たよ…)
「うわ出たよ…」
「ちょっと!心の声が漏れてるわよ!」
プンプンと怒っているカルメン
まぁ…流石に言い過ぎか
「悪い悪い。別になんでもないよ」
「本当に?ほんと〜に〜?」
ズイっと顔を近づけてくるカルメン
面倒くさい女だが、顔だけはいい
そうやって近づかれると少しドギマギしてしまうから勘弁して欲しい
「あれ〜?ドキドキしてる〜?」
ニヤニヤして煽ってくるカルメン
こいつこんなメスガキみたいなやつだっけ
「な訳無いだろ。調子乗んな」
顔を近づけてきたカルメンのデコを弾く
痛ッとデコを抑えながら後ずさるカルメン
「たく。俺だったから良かったものの…他の奴らだったら大変なことになるかもしれないんだぞ?」
「別に私はゲントなら大変なことになってもいいのにな…」
「なんか言ったか?」
「ううん!なんでもない!」
じゃ!またね!と言いながらスキップで去っていくカルメン
頭が痛いと言わんばかりに頭に手を当てているゲントに、後ろから誰かが裾をちょいちょいと引っ張る
後ろを振り返るとアホ毛がヘナっとしたミシェルが立っていた
「ミシェル?どうしたんだ?」
「……その…またお願いしたくて…」
いつものだろう
だが、生憎周りに空室は無かった
「悪いな…またこん…うおっと…」
断ろうとした時、ミシェルが飛びついてきた
そのまま、頭をグリグリと擦り付けて来る
「おい…周りもお構いなしかよ…」
何とか周りからは見えない場所に移動して、ミシェルの頭を撫で、抱きしめる
ミシェルは気持ち良さそうに目を閉じている
「……急にどうしたんだ?」
「…この頃…エリヤさんと…仲良いから…その…あの…」
「……まさか…」
顔を赤くしながらどもるミシェル
あまりの可愛さにゲントは内心ニヤニヤしてしまう
「大丈夫だって。お前が必要ならいつでも相手になるから」
「………本当?」
「ああ。約束する」
その後も数十分程頭を撫で続け、抱き締める
ミシェルが満足する頃には体が痺れていたが、去っていった時の満足気な顔を見たらなんて事ない
「嬉しそうですね。そんなに抱きつかれたのが良かったんですか?」
「い、いつからそこに…」
「貴方とミシェルがここに来て抱き合い始めてからです」
(最初からじゃねぇか!?)
ミシェルが居なくなったことで影になっていた場所からゆっくりと現れたアイン
彼女の目は見るのが怖くなるほど漆黒に染まっている
「……彼女とは…肉体関係を持っているのですか?」
「い、いや…持ってないです」
「………………まぁ良いでしょう。この後、作業はありますか?」
「もう全部終わりました」
「分かりました。では、今夜、私の部屋に来てください」
そう言ってアインはゲントの横を通り抜けていく
真横を通る時、アインとまた目が合う
「…あの言葉…忘れたとは言わないわよ?」
血走った、仄暗い光を宿した目
冷静沈着なアインには似つかわしくない、私情100%の目
耳元で囁かれ、背筋が凍るような錯覚すら覚えた
それだけを言うと、アインは立ち去っていった
(……怖い…)
その日はもう部屋に戻り、現実逃避で寝ようとしたが、職務を早く終わらせたのか17時の段階でアインからの電話に起こされ、部屋に強制連行
その日の夜、ゲントは寝かせてもらえなかった