「研究所も大きくなったわね」
カルメンが、管理室でしみじみと呟く
最初の方は数個しか付いていなかった収容室を監視するモニターも、ほぼ全て点灯している
なんなら途中で足りなくなって買い足したくらいだ
「ええ。それに、研究員も、幻想体も増えましたね」
それに加え、幻想体も、幻想体を作業する職員も、監視する職員も増えていった
奥地にあるこの研究所は今や隠された「翼」と言っても差し支えないだろう
なんか持ち直したカルメンの提案で「コギト」の安定供給も出来るようになってたし
最近では「エンケファリン」の名前もちょくちょく聞くようになってきた
(そういえば…そこら辺ってどうなってたっけ…)
長さ的に言えば、もう20数年前の話だ
大体さぁ!なんで転生者はそんな10数年前の話覚えてんだよ!おかしいだろ!
「ゲントも、カーリーと依頼で稼いできてくれたり、作業に鎮圧…色々ありがとね」
「別にいい。仕事ならやるだけだ」
カルメンが改めて顔を見てお礼を言ってくる
ゲントも、この研究所の人達に情も湧き、カーリーと志し同じく彼女たちを守りたいと思っていた
「そういやカーリーは今日は一人で依頼か。帰ってくるのは夜くらいだったか?」
「ええ。今日はゲントに依頼は来てないし…そのまま作業を終わらせたら自由時間にしていいわよ」
アインがタブレットを見ながらそう言ってくる
今日はミシェルからもエリヤからも声がかかっていないから久々に本当に自由な時間を過ごせそうだ
(今日は何しようかな〜やっぱ積んじゃってるゲームか?いや…寝て過ごすのも良いなぁ)
そんなことを考えながらるんるん気分で作業に向かう
今日は抱えてる絶望の騎士、魔弾の射手、モーリーに加えて更に増えた複数体の幻想体の作業が重なっている日だが…ご褒美があれば耐えられる
「ふんふ〜ん」
作業は順調に進んだ
「随分ご機嫌だねぇ」
「ああ!お前らのおかげでこの研究所も大分大きくなってきたからな。休みも取れるようになったんだ」
「僕と話すのは休みじゃないのかい?」
「な訳ないだろ」
最近のモーリーとの話の種はもっぱらミステリー小説の推理を語り明かすことだ
ゲントもミステリー小説が好きで読んでいることを話したら興味を持ったモーリーにもミステリー小説を渡すようになり、それからは互いに話す仲になった
「……まぁいいか。じゃあ今日はゆっくり休んでね」
モーリーの作業も順調に終わらせて収容室から出る
これで、ゲントはもう自由だ
背を伸ばして、収容室から出る廊下を歩く
収容室もアップグレードして収容室に行くためには長い廊下が設けられていた
「カルメン!出るぞ!鍵を開けてくれ!」
収容室から出るドアに付けられている監視カメラにそう叫ぶ
しかし、ドアは一向に開かない
「……カルメン?」
もう一度呼びかけるが、反応はない
ゲントは嫌な予感を覚えて収容室のドアを殴り破る
「っ!?」
収容室外の廊下は、死屍累々だった
人の血肉が壁や天井に張り付き、遺体は原型を留めていない
「クソ…何が起きて…」
その時、廊下の無効から巨大な口が現れた
あれは…貪欲の王…
「なんで幻想体が逃げ出してんだよ!」
ゲントは杖の下側…鋭く尖っている杖を槍投げのように投げる
それだけで貪欲の王は弾け飛び、白髪の少女が床に倒れる
だが…貪欲の王の後ろにも様々な幻想体が跋扈していた
(幻想体が逃げ出す………まさか…)
原作で、研究所が壊滅する事件があった
とある女によって襲撃が起き、幻想体が全脱走した
「ダニエル…!」
ダニエルのいる部署はこの廊下…十は超えている幻想体の先だ
「あはは!ゲント!ゲント!遊ぼ!遊ぼ!」
全員人型はしているが、やはり相容れない化け物だ
彼女らの目にはゲントを壊すという嗜虐心しか見えない
「……退け!化け物共!」
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「ダニエルッ!」
血塗れになりながら、ダニエルのいるはずの部署のドアを蹴破る
中は、酷い有様だった
廊下と同じく死屍累々
そして…奥にいた
「ゲン…ト…」
四肢を捥がれ、首を掴まれて持ち上げられているダニエルと、彼女の首を掴んでいる女…
「お前…何…してんだ…」
「ようやく足を運んでくれたか。……ふふ、友が逝くその最期の瞬間にすら立ち会えず、ただ絶望に染まりゆくその貌は、随分と滑稽で……そして、ひどく愛らしいものだな」
その目を愉しげに曲げ、嗤う女
その顔は、美しいはずなのに、吐きそうな程嫌悪感を覚える
「さあ、交わすがいい。それがどれほど無意味で、掠れた命の残滓に過ぎずとも……お前たちが交わすべき、最後の言葉というものをな」
そう言ってダニエルを投げ渡してくる
地面を何度か転がり、足元に倒れるダニエル
「ダニエル!?なんでこんな…お前…」
本編ならこんなに痛めつけられるはずない
よく見たら女の手は赤いボタンを押している
(あれは…収容室の…)
本来ならダニエル自身が押し、幻想体を解放するはずだ
だが今あの女が押しているということは…
「お前…断ったのか?」
ダニエルがあの女…ガリオンに抗ったということだ
ダニエルはゲントの顔を見ながら朗らかに笑う
「……私……ゲン…ト…」
「喋らなくていい…おい…目を閉じんな…寝たら…」
「…………………」
もう血を流しすぎていたのか、もはや顔が分からないほど青あざができ、腫れ、切れた顔から分かる通り熾烈な拷問に耐えかねたか
もうそれ以上彼女は喋らなかった
「…………………」
ゲントは、物言わなくなったダニエルを腕の中に抱いたまま動かない
その様子を見たガリオンは体を震わせる
「別れは済んだかい?ならば、私と対話を始めよう…「…黙れ」…フフッ…」
「もう喋るな。お前の声なんて聞きたくない」
ダニエルの遺体を横にそっと置き、立ち上がる
手に杖を持ち、殺意の籠った目でガリオンを睨みつける
「お前を殺す」
「ああ。良い…実に…私好みだ」
ビナー語難しぃ!書けない!