「今日からここが貴方の部屋よ!」
カーリーに担がれたまま研究所を案内される
研究所にいる研究員の皆様に変な目で見られてかなり恥ずかしいがカーリーとカルメンはそうでもないらしい
最後に寝泊まりする部屋を紹介される
てっきり豚箱みたいな場所にぶち込まれるかと思ったが意外にも部屋は広かった
「どうどう!?ベッドにお風呂!でっかいタンスもあるんだよ!」
胸を張って威張るカルメン
顔だけ見たら美女なのだが如何せんこの後の彼女の行動と彼女の起こした結果を考えるとギリ嫌悪感の方が勝つ
「そ・れ・に!私の部屋のと・な・り♡」
「おえ…」
キュルンと効果音の付きそうな動きでアピールしてくるカルメン
思わず嘔吐いてしまう
「ちょっと!なんでそうなるのよ!」
意味がわからないと地団駄を踏むカルメン
後ろでくつくつとカーリーが笑っている
「……はぁ…まぁ…ここまで来たら働くしかないか…」
「ほんと!?やった!!一緒に働けるってカーリー!」
「分かった…分かったから…揺らさないでくれ…」
嬉しそうにカーリーの肩を掴んで揺らすカルメン
何がそんなに嬉しいんだか…
「じゃあ!明日からお仕事教えるね!今日はゆっくり休んで!おつかれ!」
カーリーと共に部屋を去るカルメン
いつ持ってきたのか私物がしっかり部屋に配置されていた
「ホントに…なんでこんなことに…」
数年前、ジェナと別れてから爪になれるようにひたすら鍛錬を続けていた
ようやく便利屋も倒せるくらいにはなってC社への入社も決まりかけてたのに…
「まぁ…考えても仕方ないか…」
恐らく明日から始まるのはアブノーマリティの抽出作業
案内された実験室にあるカメラには既にアブノーマリティの影があった
人型だったから思い違いかもしれないが…
「………考えても仕方ねぇや。もう寝よ」
部屋に運ばれてきた食事を食べてから歯磨きをしてシャワーを浴び、布団に潜る
その日の夜は、嫌な予感でなかなか寝付けなかった
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「では!仕事の説明をしたいと思います!」
翌日、部屋まで迎えに来たカルメンの後をついて行って実験管理室まで向かう
そこには多数の職員がパソコンで作業していた
「ここは管理室!これからアブノーマリティにする実験を監視する施設なんだ!最大50体は監視できるよ!まだ一体しかいないけど…」
何かをボソリと呟いたカルメンは何でもないとワタワタとするとパソコンに何かを打ち始める
「カルメンさん!実験開始します!アインさんも準備完了したようです!」
「ええ。始めてちょうだい」
管理室前方上部に設置された無数のモニターの1つの電源が点けられる
その画面には1人の黒い人影が映っていた
その人影の背後には大きな翼がある
(もしかして…ペスト医師か?)
いや…ありえない
本来なら抽出9〜10日くらいで来るはずだって動画でも言ってたはず…
まぁ、研究所時代に初めてのアブノマなんて知らないし俺がただのにわかだから分からない
だが、1つ言えることは…
(この研究所オワタ…)
「電源、点灯します」
収容室の電源が点灯される
予想通り、その場に立っていたのはペスト医師だった
鳥のようなマスクを被り、背中には巨大な黒い翼
全身は黒いマントで覆われている
1つ変わっているのは…その…なんか…胸が…パツパツ…
「実験対象に特に目立った様子は見受けられず…実験を開始してください」
ゲントの脳内が胸元に支配されている間に、実験は開始されるようだ
職員の1人が収容室に入った女性に指示を出す
女性は恐る恐る近づいていく
「____________」
何を言っているかは聞き取れない
だが、数分間、話が続いた
「ここまでは順調ね」
(いや…あれはもう…)
カルメンは順調だと思っていたが、ゲントは気づいていた
もう女性の目は正気ではなかった
「!?実験中止!早く収容室から出なさい!」
カルメンが気づいた頃にはもう遅かった
女性は虚ろな目でペスト医師に近づいていく
ペスト医師も手を広げ、女性を抱擁した
抱擁された女性は翼で覆い隠される
「聞こえますか!?聞こえますか!?」
カルメンが声を荒らげるが、声は届かない
少しすると、翼は再度開かれ、中から恍惚とした女性が現れる
彼女はそのまままるで信徒のようにペスト医師に礼をすると収容室から出た
「……あれは…」
少しすると収容室から戻ってきた女性職員にカルメンが自ら質疑応答を行った
だが、受け答えは平常に行っており、変わっている点といえばやはりペスト医師を崇拝しているところだけだろう
「……今日の実験はこれまでにしましょう」
想定していた事態とは異なる事が起き、今日の業務は終わりを迎えた
「ごめんね…業務を教えるはずだったのに…」
焦燥したカルメンは謝ってから去っていく
(…まぁ…ああなるのも無理はないか…)
まだアブノーマリティが何かすら分かっていない時点であんなババを引いてしまったのだ
(詳しいことは話せないし…カルメンとかに任せるしかないな…)
どうやらゲントに任せられるのはカーリーと同じく護衛任務だったらしい
まぁ全然文系だし実験も分かんねぇしな
(ひとまず部屋に戻っとくか…)
「君」
部屋に戻ろうとした時、後ろから声をかけられる
聞き覚えのない女性の声
振り返ると黒髪をポニーテールにした鋭い目の女性がそこには立っていた
「えっと…俺ですか?」
「ああ。君だ」
見知らぬ美女はそのままこちらに歩いてくるとジロジロと全身を眺めてくる
「…何か?」
「君は…先程の事態について何か知っているようだね」
ドキンと心臓が跳ねる
鋭い目はまるでこちらの全てを見透かしているかのように見てくる
「な、なんの事だか…ていうか…貴女にそんなこと聞かれて俺に答える必要が?」
「そうだな…私が一介の職員だと思っているなら…先に自己紹介しとくべきか」
彼女は耳に髪をかけながら真っ直ぐとこちらを見て口を開いた
「私はアイン。カルメンと一緒に、この研究所を立ち上げたわ」
アイン…嘘だよな