「どうしたんだ?私の顔になにかついてるのか?」
あまりの衝撃に呆然としているゲントを訝しげに見るアイン
ジト目で睨んでくる彼女だが憎いことにドキリとしてしまうほど美女だ
「いや…別に…その…すみません…」
「はぁ…別にいい。では話を戻そう。君は、あの時、起きることを知っていたのか?」
段々と距離を詰めてきて壁ドンまでしてくるアイン
ふんわりと香る香水の匂いに心臓がはち切れそうになる
「答えてくれ。もし…君が知っていてあれを見過ごしたのなら…」
君の脳を生きたままほじくらなければならない…
耳元で囁かれたアインの声
ゾクゾクとして背筋が凍る
「………知らない…です…」
もうここまで来たらシラを切るしかない
アインだって確信は無いはず
なら、ここでシラを切れば相手が諦めるはず
「……………はぁ…君も強情だな」
ため息を吐き、離れるアイン
ようやく解放されたゲントは深呼吸する
(ホントに死ぬかと思った…)
「だが、君の容疑が晴れたわけじゃない。勘違いしないように」
そう言いながら去っていくアイン
研究所に来てから2日目…もう胃が死にそうです
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「みんな!ごめんなさい!昨日は心配かけたわね!」
1日が経ち、いつもの様子に戻ってきたカルメンがいつもと変わらない様子で皆の前に立ち、指示を出している
ゲントもカルメンから仕事の説明を受けた
簡単に言えばもしもアブノーマリティが脱走した時にカーリーとともに鎮圧すること
万が一の可能性を考えての役割だそうだ
「ああ、それとゲントには作業もお願いすることになったからよろしくね!」
「え?」
話を聞いたらどうやらアインの提案らしい
アインの方を見るとジッとこちらを見つめてきていた
「そうそう!早速2体目のアブノーマリティがいるからお願いしたいの!」
(アイン…もう俺の原作知識は限界だ。ただ地獄に来ただけじゃねぇかよ)
まずまずアブノーマリティもアインも女体化してるし参加ルートが特殊すぎて今がどの段階かも分からない
もういいやどうにでもなーれ!
「…分かった。今行く」
管理室を後にして収容室の部署へ向かう
収容室に入る前のドアで立っていた人に声をかけられる
「こんにちは。貴方がゲントさんですね?カルメンさんから案内役を任されています。ネモです」
丸メガネをつけた少し髪がボサボサの女性
彼女は手に持った書類を見ながらペラペラと話し始める
「今回のアブノーマリティなのですが…青い髪におおよそ人の身長を超えている身長の女性ですね…」
(青髪の女性…絶望の騎士か?いや…ペスト医師があんなんだし何があるか分からないな…)
「言語は同じのようなんですが…どうにも声がボヤけて聞こえるんですよね」
前を歩いているネモさんが言うには聞こえても水中で話しているような…会話のキャッチボールが上手くいかないらしい
「俺は何をすれば?」
「今日も同じく会話ですね。観察してなにか思ったことがあったらこの紙に書いてください」
そう言いながら渡されたのは1枚の紙
ボードに固定された紙とペン
「もう着いちゃいましたね」
いつの間にか収容室の前に着いていたらしい
厳重な部屋の前でネモさんが立ち止まる
重苦しい空気がドアの隙間から漏れている
「気をつけて下さいね。あれは人型ですが人を超えたなにかなので」
ネモさんに再三忠告される
ネモさんはやはり怖いからか足早に去ってしまう
「………ふう…」
[ゲント?準備は出来た?]
「ああ。言ってくる」
深呼吸をしてから中に入る
ドアが開き、中にいたアブノーマリティが見えた
青い髪に青いドレスを纏っている長身の女性
絶望に沈んでいるのか、悲しい空気を纏っている
「貴方は?不思議な雰囲気を纏っていますね」
(なんて言ってるか分からないな…やっぱり意思疎通は不可能なのか?)
ネモさんから聞いたようにボヤけて聞こえる彼女の言葉
頑張って聞き取ろうとしてみるが何も聞こえない
「ここは…気が付いたらここに居たんです」
(ん?)
先程よりも少しだが明確に聞こえた気がした
一応ボヤけて聞こえた「居た」だけを紙にメモしておく
「貴方の雰囲気は好ましいですね。昔の主を思い出します…」
段々と聞こえるようになってきた
紙に段々とメモしていく
「貴方はどこから来たのですか?」
「えっと…ここからかなり遠いところから来ました」
意思疎通までできるほどになった
心做しか重苦しい空気も無くなった気がする
「おや…もう時間みたいですね…」
「楽しめましたか?」
「はい。久しぶりに友達との会話をできたと思います」
タイマーが鳴り、椅子から立ち上がる
最初は目を閉じていたが、今は目を開いてこちらに笑いかけてきている
言葉も完全に聞こえるようになっていた
「じゃあ、失礼しますね」
「少しお待ちを」
部屋から出ようとした時、呼び止められる
(もしかして…これは)
「貴方に加護を…」
絶望の騎士は胸の前で手を組む
そうするとゲントの体に青い光が降り注いだ
[ゲント!?大丈夫!?すぐに離脱して!]
下手に動いてもアインに疑われるだけだ
すぐに指示に従って部屋を後にする
部屋を後にする直前、絶望の騎士がニコリと微笑んだのが見えた