「彼は明らかに何かを知っています。彼から情報を引き出せば研究も大きく進むのでは?」
ベンジャミン…いやベンジャミナから鋭い眼差しが向けられる
たしかにこの2人なら脳を生きたままほじくり返して情報を抜き取ることも可能だ
今できるか分からないが…
「……だが…」
アインはまだ躊躇があるようで後ろ向きな考えのようだ
ベンジャミナはそれを見て歯ぎしりしてさらに強く言う
「カルメンの理想を実現するんでしょう!?なら何を戸惑うんですか!?」
「…………」
ちょっとアインの考えが俺の脳クチュの方向へと傾きかけている
流石に傷つけたくはないし逃げようにも周りは人で囲まれている
「……いやダメだ。彼はカルメンが直々にスカウトしに行ったんだ。何か役割があるはず」
「でも!」
アインは何とか否定してくれた
ベンジャミナは納得できないようだがアインは首を振る
「それにまだ慌てる時期じゃないコギトの研究が進めばいずれ解決する問題だ」
「………分かりました」
不満そうに睨みつけてくるベンジャミナの隣を通って管理室を出る
バクバク跳ねている心臓を落ち着かせようと深く息を吸って、吐く
少し呼吸を整えた後、ひょっこりとカルメンが出てきたカルメンの両手には小さい双子の手が握られていた
「ゲント!ちょうど良かった!外郭でこの子達見つけて連れ帰ってきたの!ほら、リサ、エノク、挨拶しなさい」
「こ、こんにちは!」
「……こんにちは」
少し緊張しながらも挨拶してくる女の子とそっぽを向いてカルメンに隠れながら挨拶してくる女の子
名前を聞いて分かったがこの2人リサとエノクだ…
「今度からこの研究所で過ごして貰うから暇だったら遊んであげてね!」
そう言いながらカルメンは2人と一緒に去っていく
(…これで全員か)
他のメンバーも名簿でいることだけは分かったしこれでセフィラも全員揃った
(でも俺いつ始まるとか知らねぇんだよな…)
何せやっていた時はストーリーもあんま見てなかったしストーリー見たのも転生する直前からさら半年くらい前だ
その中でもミッシェルによる密告、調律者による襲撃くらいしか覚えてない
(もっと転生させるべき人がいただろ…)
たまに思う
もっとストーリーを理解している人、作業を全部覚えてる人、もっと頭のいい人、もっと強い人
なのに転生したのは何も無い俺だ
(ダメだな…ここでなよなよしてたら心までやられちまう…)
その日は部屋に戻ってすぐに寝てしまった
翌日からは1度幻想体の抽出は中止になり、コギトの詳しい研究が始まるようだった
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数日後
「今日は俺の部屋のベランダに小鳥が来てな。餌をあげたら離れなくて大変だったんだ」
「それは…まだその小鳥さんはいますか?」
「もう帰ってったよ。見たかったら今度写真を撮ってくるよ」
最初に作業に向かったのは絶望の騎士
先日言った通りゲント以外が作業すると会話もできず、体調を崩してしまうらしい
今いる幻想体は絶望の騎士と魔弾の射手だけだがその2人ともゲントが専属となって作業していた
「今日はここまでみたいだ。失礼するよ」
「少し待ってください」
何回も作業してから限られた時間でも色々な話が出来るようになっていた
今日もいつものように次の作業へと移ろうとした時、絶望の騎士が頬に手を当ててくる
左頬に何かを書いているようだ
「はい。失礼しました」
ゲントは手鏡を出して自身の顔を確認する
左目の下側に黒の涙のような模様が描かれていた
(これはギフトか…)
鋭利な涙の剣……絶望の騎士がくれるギフトであり精神力・攻撃速度・移動速度を上げてくれるありがたいギフトだ
「これで…いつでも貴方と共にあれます」
「ありがとな」
ありがたくギフトを頂き、収容室を後にする
「やぁゲント。コーヒーいる?」
次の魔弾の射手の収容室に行く前に1度管理室に戻ると今日はアインやカルメン、ベンジャミナはおらず、コーヒーを嗜んでいる好青年…いや、女性がコーヒーを差し出してきていた
「やぁダニエル。折角だし貰おうかな」
コーヒーを受け取り、彼女の隣で口をつける
彼女のコーヒーはなかなか美味く、ブラックでも香り高く美味しく飲める
「それにしてもそんなプレゼント貰うくらいには仲良くなったんだ」
ダニエルがゲントのギフトが付いている左頬を撫でる
くすぐったさに少し震えてしまう
「案外あいつらとも仲良くできるかもな」
「それはどうだろうね。僕はまだ怖いよ」
「無理はない。コーヒー美味かったよ。あと1人行ってくる」
コーヒーを飲み干し、マグカップをダニエルに手渡してから管理室を後にする
コーヒーを飲んで元気はいっぱい
魔弾の射手の収容室に入る
「全く。やっと来たか。待ちくた…びれた…」
収容室のドアを開けた時、初めに魔弾の射手が声をかけてくる
やけにテンションが高く、話しかけてきた魔弾の射手
だがゲントの顔を見て言葉尻が萎んでいき、剣呑な雰囲気を纏う
「どうしたんだ?」
「………誰のだ。その顔につけてるやつは」
鋭利な涙の剣に向けて銃が突きつけられる
炎の顔でよく見えないが目が座っている気がする
「……さっき貰ったんだ。オシャレの1種だってよ」
「嘘をつくな。それがオシャレだと?人のファッションセンスを鑑みずに描いといてよく言う」
銃口で鋭利な涙の剣をグリグリとする魔弾の射手
何も言えずに手を挙げているとため息を吐いて魔弾の射手は銃を下ろす
そしてため息を吐いて1つのパイプのようなものを投げてくる
「おっと」
「それは私の火がついてる。消えないし牧を補充しなくても吸えるからな」
不機嫌になってしまったのかそっぽを向きながら説明してくる
加えるとチョコのような甘い香りがした
「魔法の弾丸」…デバフがあるが鋭利な涙の剣と同じく攻撃速度を上げてくれる
まだ外郭以外での戦闘はないがこれから更に増えていく幻想体との戦闘を考えたらありがたい
その日は魔弾の射手との会話は上手くいかず、だが途中で帰ろうとすると銃を突きつけられ、いつもより長く作業していた