「ジャガ丸くんでいいですか?アイズさ-----------」
注文しようとするベルの隣からアイズがピースをしていた
「ジャガ丸くん抹茶クリーム味2つ」
「...え?あの、僕が奢ろうと思ってたんですけど」
大きく口を開けてアイズを見るベル
「ううん。よく考えたら私もベルに謝らないといけないから」
ベルに微笑み返しアイズは首を振りながらジャガ丸くんを受け取った
「え?」
2人は街の喧騒から逃れ静かな一角に腰を下ろす
「あの時のミノタウロス...5階層の」
アイズはジャガ丸くんをベルに差し出す
「もうロキファミリアの皆さんに謝罪も貰って、酒場のお代まで出してもらっちゃいましたし?!」
いやいや、とベルは首を振る
「聞いてベル。あの個体は、私が取り逃したんだ」
ベルにジャガ丸くんを押し付けるように渡すアイズ
「そうなんですか?!」
渋々ジャガ丸くんを受け取りながら目を見開くベル
「うん。もっと早く下の階層で仕留められた」
「そんな。アイズさんのせいだなんて、思ったことなんか...」
「だから、ごめんなさい」
深々と頭を下げるアイズの肩を掴むベル
「謝らないでください、アイズさん」
「でも...死んでたかもしれないんだよ?」
アイズさんの瞳は真剣だった
ベルは言葉を飲み込む
「初心者が出会っていい相手じゃない」
「そうかもしれないですけど...」
アイズはじっとベルを見る
次の言葉を待っている
「僕、生きてますから」
「そんなのただの幸運だよ」
「そう、ですね」
ベルは小さく頷いた。
確かに、あのミノタウロスと遭遇したのは不運だったのだろう。
そして、自分が今こうして生きているのは、幸運だけではない。
脳裏に浮かんだのは、緑のマントを纏った覆面の冒険者だった。
(……ちゃんと、お礼を言わないと)
ベルは手元のジャガ丸くんに目を落とした。
「...」
「ジャガ丸くん、食べよう?」
アイズの提案にベルも頷く
「はい」
二人は並んでジャガ丸くんを口に運んだ。
会話の途切れた時間は、思いのほか長く感じられた。
ベルは生きている。
けれど、もし次も同じようなことが起きたら?
今度も、必ず助かるとは限らない。
アイズは手元のジャガ丸くんに視線を落とした。
「償いがしたい」
ぽつりとアイズは呟いた
「償い?」
「ベルを強くする」
ベルに視線を移し、アイズは言う
「え?」
ベルは理解できず片眉を上げた
「私と特訓しよう」
「え、ええ〜っ?!」
ジャガ丸くんを落としそうになりながらベルは驚いた
「ダメ、かな?」
「ダメじゃないです!!!むしろ、よろしくお願いします!」
ペコペコと頭を下げるベル
「じゃあ、明日の日が登る前にここに集合」
「分かりました、えっと。5時くらいですかね」
「じゃあ、私行くね」
そう言ってアイズさんは走り出した
「あ、アイズさん!」
「?」
振り返り立ち止まるアイズに向かってベルは叫んだ
「ありがとうございましたっ!!!」
頭を深々と下げるベルに大きく手を振りながらアイズはまた駆け出した
「今まで私は、何を見せられていたんだ...」
リューはその光景を壁越しに見つめながら大きくため息を吐いた
「まさか、逢引きまでするとは...」
「本当だねえ」
シルがリューの横にぬっと顔を出す
「シル!」
突然の気配に肩を震わせ驚くリュー
「リューが遅いから心配してたんだよ?」
「すみません、ちょっとした事情があり」
「事情?」
「はい、事件というか事故というか」
「剣姫とベルさんのこと?」
「それもそうですが」
「なんで急にあそこまで仲良くなれちゃうんだろう。羨ましいなあ」
顔を真っ赤にしている少年の背中を見つめながらシルは微笑む
「シルも大概ですが」
リューは苦笑いするしか無かった