「え?【剣姫】様と特訓...?」
「そうなんです!」
ベルはアイズと別れた後、豊穣の女主人へと戻ってきた
"ファイアボルト"取得後の報告とそのお礼を伝えるためだった
「それはあまり口外しない方が良いと思います」
シルとベルの横からリューが口を挟む
ベルは突然のその声にどきり、と胸を高鳴らせた
エルフの店員さん
ちゃんと話すのはこれで2回目なのにまだ落ち着かない
その瞳の空色に吸い込まれた
「えっと...リューさん、それは何でですか?」
「異なるファミリアの者同士が行動を共にすれば、余計な軋轢を生むことがあります」
「えっ、そうなんですか?」
「ええ。都市最大派閥であるロキ・ファミリアを快く思わない者もいるでしょう」
「そんなこと、あるんですか?」
喉をごくっと鳴らすベル
「暗黒期は終わったとはいえ、安心してはいけない」
リューさんの表情が曇る
「暗黒期...?」
聞き慣れない言葉に、ベルは首を傾げた。
「かつて、この都市がどれほど危険な場所だったのか。あなたはまだ、ご存じないのでしょう」
リューの声は静かだった。
けれど、その瞳には一瞬だけ、ベルの知らない過去の影がよぎった。
「リューさん……?」
「……いえ。今は知らなくてもよいことです」
そう言って、彼女は静かに目を伏せ
「気をつけてください」
「分かりました」
ベルはそう頷いたので、約束を交わしたのだと勝手に思い込んでいた
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「ベル君...これって」
ヘスティアは目をパチパチと瞬かせた
「神様っ、お願いします!!」
「な、な、な?!何だい、ベル君!!僕にも心の準備ってものがあぁ?!
ベルに詰め寄られヘスティアは顔を真っ赤にして顔を掌で覆った
「ごめんなさい、神様!僕のスキルを見てもらいたくて」
そう背中を向けてベルは微笑んだ
魔法の発現"ファイアボルト"
ベルの背中にはしっかりと刻み込まれていた
「嘘だろ?おいおい...まだ3週間目じゃないか、冒険者になってから」
「はい、僕にもよくわからないんですけど」
「わからない?なにかキッカケがあっただろう?」
「この間の酒場で、本を一冊読んだんですけど」
「なっ?!...それって
「
きょとんとするベルの肩を揺さぶるヘスティア
「だっ、誰の本だったんだい?!」
「それが、お客さんの忘れ物とかで全然知りません」
顔を青ざめさせるヘスティアの顔を不安そうに見つめるベル
「僕、何か...やっちゃいましたか?」
「ヘファイストスに聞いた話じゃあ、1000万ヴァリスはくだらないって」
「へ?」
ベルは思わず聞き返した。
1000万ヴァリス。
その数字が、頭の中でぐるぐると回る。
「だから1000万」
「そんな……」
自分が読んだ、たった一冊の本。
それが、そんな大金に相当するものだったなんて。
ベルは困惑したまま、ヘスティアの顔を見つめた。
「酒場の店員さんしか知らないんだね?」
「はい」
「絶対、ベル君が見たってことは内緒にしてもらわないとダメだぜ」
「それは、大丈夫だと思いますけど」
「いや、今日ボクもその店に行って確認するよ」
眉尻を下げてヘスティアは伸びをした
「それじゃあ、僕と一緒に」
「おいおい、帰ってきたばかりだろう?ベル君はちゃんと休んでて」
「はい...」
ヘスティアの寝ていたベッドに吸い込まれるようにベルは微笑みながら眠りについた
「僕も隣で寝ちゃおうっと」
ヘスティアも満面の笑みでベルにくっついて眠り直した
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「ここがベル君の言ってた豊穣の女主人だな」
ヘスティアは酒場を前にごくんと唾を飲んだ
「どこのファミリア系列なんだろ...」
「あら、ヘスティアじゃない」
そう声をかけてきたのは神フレイヤだった
「フレイヤ!ここ、フレイヤの店?」
「ええ、そうよ」
にっこりと頷くフレイヤの顔をヘスティアはまじまじと見る
「あの、あのさ?」
「なあに、ヘスティア」
「僕の
「ああ、それね。私があげたのよ?」
「え?お店の忘れ物だってベル君は...」
「名目上は、ね」
「名目上って……どういうことだい?」
ヘスティアの眉がぴくりと動いた。
「そのままの意味よ。あの本を手に取ることも、魔法を覚えることも、私は止めなかった。それだけ」
「それだけって……!」
「ふふっ。あの子、可愛いでしょう?」
フレイヤの瞳が、楽しそうに細められた。
「なっ……! ベル君に何をするつもりだい!?」
「何もしないわ。ただ、あなたと同じように、あの子の成長を見守りたいだけ」
「ベル君は渡さないぞ?!」
「わたしも無理矢理あなたから取ろうなんて思ってないのよ?今のあの子が好きだから」
「好きって...」
めっちゃヤバいやん!ヘスティアは内心焦っていた
「そんなに警戒しなくてもいいのに。今のあの子を、私は気に入っているのよ」
「気に入っているって……まさか!」
ヘスティアは瞳を見開く
「何もしないわ、安心して。ヘスティア」
「分かったよ...って、急がなきゃ!」
そう言ってヘスティアは急いでバイト先へと走り出した
「またね、フレイヤ」
「今のところはね」
ふふっ、とフレイヤは口角を持ち上げた