「エライ目にあった...」
「そりゃそうだよ、ベル君。五階層でミノタウロスに会った冒険者はもれなく◯ぬぜ!」
話を聞いたヘスティアは瞳を丸くした
「だから、駆け出しの君みたいな眷属が生きて帰ってきてくれて僕はもう泣きそうだよッ」
瞳を潤ませてヘスティア様はベルを見上げた
「神様まで大袈裟に泣かないでください、エイナさんも凄く大変だったんですからぁ」
ぐったりとしたベルはハラハラと神様を見つめる
「うわあぁぁぁあああ、ベルくぅーん!本当に良かったよぉ〜」
ぎゅむっと抱きしめたヘスティアは力いっぱいベルを胸で潰す
「か、神様、苦しいです...」
苦笑いしながらベルも抱きしめ返す
「それで?どうしてミノタウロスから逃げきれたんだい?」
「それが---------」
ジャガ丸くんを頬張りながらヘスティアは目を瞑って話を聞いていた
「ふうん。覆面のエルフ君ねえ...」
「神様は心当たりありませんか?」
ベルは手にジャガ丸くんを握ったまま一口も手をつけていない
「ボクもジャガ丸くんの屋台やってるけどさ、そういう客は来ないぜ?」
「そうですよねえ、ギルドでも心当たりがないって言われちゃって...」
「お礼もせずに逃げてきちゃっただなんて、可哀想なことするねキミも」
「だってあんな情けない格好みせちゃったら恥ずかしくなっちゃって...」
「あはは、まあ。キミも冒険者なんだし、これからも会おうと思えばきっと会えるさ!」
「そうですよね」
「うん、希望はいつでも捨てちゃダメだぜ?」
親指をぐっと立てる神様にベルは微笑んだ
夜の予約客が入店してきた頃にはリューも店に戻ってきた
「リュー、今日は何かあった?」
シルがにこにこと笑いながら話しかけてきた
「シル、遅くなってすみません。今日は久しぶりに人助けをしました」
「そっか、リューはいつもすごいね」
「いえ、当たり前のことをしたまでです」
「その当たり前が凄いんだよ?私だったら助けられないし」
「でも、助けた相手に何故か逃げられてしまいました」
「逃げられた...?」
「はい、理由はいくつか考えたのですが...」
「うん」
「どれも納得いかなくて」
「そっか、また会えるといいね。その冒険者さんに」
「え?えっと...そうですね」
リューは"今は冒険者ではない身。できることなら、彼らとの接触は避けたい"と思う反面、あの少年にもう一度会ってみたいとも思った
翌日
朝の掃除をしているとシルが手を振ってみんなに報告した
「今夜は私のお得意様が1人きてくれるんだ」
「シルのお得意様?あたし達は知らない人ってこと?」
ルノアが片眉を上げて雑巾掛けの手を止めた
「誰ニャ?」
アーニャが尻尾を振りシルに飛びつく
「シルのお得意様の多さにはびっくりしすぎてもう何も思わないニャ」
クロエが溜息を吐く
「私たちがそれぞれ店を開いたら、間違いなくシルの店が売り上げ一位でしょう」
リューは確信を持って発言する
「今夜はあたしの常連ロキ・ファミリアもくるからね」
ミア・グランツが顔を覗かせた
「しっかり働きな!」
「はい(ニャ)!」
みんなの声が揃った