「ほら、アイズあの話してやれよ」
「?」
「下層で遭遇したミノタウロス、あいつらが上層へ向かって走り出したの一緒に見ただろ?」
「!!!」
アイズは目を見開く
「バカみてぇにビビりやがってよ、アイズに」
ぶっくくくと笑うベート
「最初にビビらせたのはティオネだけどねー」
「いや、アンタでしょ?ティオナ」
「そん時、いたんだってな上層に駆け出し冒険者の馬鹿が」
「ラウル、誰も怪我はないって言ってたわよね?」
「そういう問題じゃないんスよ、アキ。ギルドからも言われちゃってるんス」
「ベート、今回の件は我々の不手際だ。恥を知れ」
「んだと、ババア!」
「おい、そこの白髪のやつじゃねえか?ミノタウロスから助かったって言う新人」
とある冒険者がヒソッと声を上げた
「あん?」
ベートが耳を傾けてベルを睨んだ
「え...」
スパゲッティを頬張るベルに視線が集まる
ベルは頭が真っ白になる
注目されている...
「え?」
訳がわからない
なんで?
ベルの前にベートが立つ
「お前...ランクいくつだ?」
「1です...」
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白髪の少年が店に入ってきた時にリューは気づいた
五階層でミノタウロスから助けた新人冒険者
シルには、また会えるといいねと言われていたけれど
いざ、目の前で会うとなると迷った
「...このまま逃げていても仕方がないか」
「アンタも仕事しな、リュー」
ミア母さんからはものすごく睨まれている...
厨房の仕事ばかりしていてはサボっていると思われてしまう始末だ
「ロキ・ファミリアが来店したよ、リュー」
ルノアが厨房に声を掛ける
「はい、今出ます」
リューが厨房から顔を出すと空気が変わっていた
先ほどまで賑やかだった店内が、どこか落ち着かないざわめきに包まれている。
視線の先には、ロキ・ファミリアの面々。そして、その中心にいる白髪の少年。
「シル、何かあったんですか?」
「ちょっと怒鳴り声が響いただけだよ」
「?」
「五階層のミノタウロスーー」
ベートの言葉にリューは固まった
あの時の...
ロキ・ファミリアが原因だったと後から冒険者の間の話からチラッと聞いたけれど本人の口から聞くのは少し興味が湧いた
「お前...ランクいくつだ?」
ベートが白髪の少年に詰め寄っていた
「1です」
彼はなんと答えるだろうか?
「ランク1のお前がなんで、ミノタウロスから逃げ切れたんだ?」
アイズも耳に髪をかけベルをじっと見つめる
「えっと...実は、助けてもらって」
「助けてもらった?」
片眉を上げるベート
「はい、緑の覆面をしている冒険者を知りませんか?」
豊穣の女主人の店員が一斉にリューを見た
「コホン」
視線が集まったことにリューも気づくと咳払いを一つした
「リュー、何してる(ニャ)」
アーニャ、クロエ、ルノアが呟く
シルはただ1人笑っている
「知ってたな、アレ」
アーニャ、クロエ、ルノアが呟く
「シル...」
リューは黙って先を見守ることにした
「もの凄い速さで、ミノタウロスを倒しちゃったんです!」
「あん?知らねえな、そんなに強いんだったら俺たちだって直ぐにわかるはずだぜ?」
顔を見合わせるロキ・ファミリアの面々は首を同じように振るだけだった
「そう、ですよね...」
肩を落とすベル
「運も実力のうちって言うし、君の強さの一部なんじゃないかな?」
「そ、そんなことないと思います...まだまだ駆け出しで僕なんかーー」
頭を掻きながらベルは視線を落とす
「アンタ団長に褒められてんのよ?お礼の一つも言えない訳?」
「す、すいません?!」
アマゾネスがすごい形相で睨んできてベルは背筋が凍った
「でも、助かってよかったね!」
ばしいっ
ティオナは、にぱっと笑ってベルの背中を叩いた
「ぐふっ...」
食べ物が口から出そうになる
「フン、雑魚は巣穴にすっこんでろ」
「ベート!」
リヴェリアが苛立つ
「あの...」
がたっ、とアイズが立ち上がった
ベルは顔を真っ赤にしてその少女をただ見つめた
「ミノタウロスもっと早く...仕留め切れなくて、ごめんなさい」
アイズは頭を下げた
「そ、そんな、あなたのせいじゃありません!」
ベルはギョッとしておたおたしている
「ほら、ベートも」
ぐいっとベートの頭を下げさせるティオナ
「やめろ!馬鹿ゾネスッ?!」
「そんな、皆さんやめてください?!」
都市最強のファミリアが最弱冒険者に頭を下げる
また変な噂が流されてしまう、とベルは焦った
リューもその光景をベルと同じように見つめていた