神フレイヤは書庫へと足を踏み入れた。
並ぶ
「ベルに似合う魔法……」
そう呟くと、フレイヤはその一冊を手に取った。
ベルは次の日も豊穣の女主人に顔を出した
リューさんに会えるんじゃないか、と店先にいたのはシルさんだった
「ベルさん、これ」
シルは一冊の本をベルに渡した
「何ですか?この本」
「お客さんが忘れてしまったみたいで、よければ貰ってくれませんか?」
「え?いいんですか、そんな、もし大事なものだったら...!!!」
「誰も取りに来ないんだ、いいから貰っちまいな」
ミアさんはベルを睨んだ
「は...はい」
「それじゃあ、ここで読んでください」
シルは椅子を引く
「ここで?」
「はい」
シルはにこにこと笑いながら座るよう促す
「それじゃあ...」
ベルは店の一角に座り本を開いた
「おかえり、みんな」
「シル、買い出しいつもの倍ありませんか?」
「重いニャ、なんで重いものばっかニャーが持つニャ」
「重さは均一ニャ、文句言うニャ」
「あれ?なんでベル・クラネルが店にいるの?」
「本当ニャ」
「まだ店は開いてないニャ、早く起きるニャ白髪頭!」
揺さぶられてもベルは動かない
ベルの下の書物に目をやると真っ白だった
「落書きでもしてたのかニャ?この本、真っ白ニャ」
「!!!これは...
リューはハッとしてベルを見た
「誰がこんなものを?」
シルさんがベルの寝顔を覗く
「みんな、そっとしておいて。今はベルさん眠いみたいだから」
シルはそう微笑んでタオルケットを掛けた
すっかり日も落ち、店じまいを始めた頃
「...っ!!!」
ようやくベルが飛び起きた
「大丈夫ですか、クラネルさん」
「リューさん!僕、魔法を使えるようになったみたいです」
「やはり...」
「僕、
「今からですか?!もう夜も遅い、明日にしたほうが…」
「すぐ戻ります!」
そう言って彼は走り出した
「あーあ、行っちゃったね」
ルノアが背中を見送る
「リュー!!ベルさんのことよろしくね」
「彼を追います」
リューは給仕服を脱ぎ捨て戦闘着へと早替わりする
魔法を覚えたばかりの冒険者は、つい自分の限界を忘れてしまう。
魔法を使う喜びに夢中になり、魔力を使い果たして倒れる者も少なくない。
(クラネルさん……どうか無茶をしないでください)
リューはベルの後ろを、付かず離れずの距離で見守ることにした。
「ファイアボルトッ!!!」
「ファイアボルトォオオオッ!!!」
ベルの手から、炎の矢が次々に撃ち出された。
リューは思わず目を見開く。
詠唱が、なかった。
魔法とは、本来その名を唱え、力を練り上げて発動させるもの。
それを彼は、何の予備動作もなく放ったのだ。
「……超短文詠唱魔法?」
リューは信じられないものを見るように、ベルの背中を見つめた。
彼女は瞳を細め、ベルの様子を注意深く見守り続けた。