交流会の朝、三輪はいつもより早く目を覚ました。
窓の外はもう明るい。夏の朝は、時計を見る前に時間を間違えそうになる。
三輪は布団を畳み、制服へ着替えた。机の上には、昨晩のうちに用意しておいた刀袋と手帳、通信端末が並んでいる。
端末を手に取る。留め具に緩みがないことを確かめ、腰の後ろへつけた。
何度も試して決めた場所だ。刀を抜く動きにも、走る動きにも、今のところ邪魔になっていない。
「よし」
鞄を持って部屋を出ると、廊下の向こうから真依が歩いてきた。
「早いわね」
「真依も」
「私は準備があるから」
「私も、最終確認しようと思って」
真依は三輪の腰のあたりを見る。
「それ、今日もつけるのね」
「うん。何かあったら押すようにって」
「訓練で使うことにならないといいけど」
三輪もそう思った。
通信端末は、試しているうちに少し薄くなった。メカ丸が留め具の位置も調整してくれたおかげで、以前より取り出しやすい。
使わずに済めばいい。
ただ、必要になったときに、迷わず押せるようにしておく。
それも準備の一つだった。
*
東京校の一行は、集合時刻より少し早く到着した。
門の向こうに五条の姿が見えると、三輪は手を振りかけた。
その隣の背の高い姿に気づき、手が止まる。
「あ、パンダ!」
「おう、三輪。久しぶり」
パンダが片手を上げた。
その後ろには、狗巻と真希がいる。
「しゃけ」
「狗巻くんも、久しぶり」
「元気そうだな」
真希が言う。
「うん。真希さんも」
最後に東京校へ行ったときと比べると、真希の立ち姿は少し変わって見えた。
肩の力は抜けているのに、どこから動いてもすぐ対応できそうな位置に足がある。
三輪がそこを見ていると、真希が片眉を上げた。
「何だよ」
「あ、ごめん。足の置き方、前と少し違うなって」
「……よく見てんな」
「私も、真希さんの動き、もっと見たいなと思ってたから」
真希は一度だけ笑った。
「今日は見せる機会もあるだろ」
「うん。楽しみ」
その横から、虎杖が顔を出した。
「三輪先輩!」
「虎杖くん。釘崎さんも伏黒くんも、久しぶり」
「先輩、この前言ってた店、まだ覚えてます?」
釘崎が早速、携帯電話を取り出す。
「もちろん。値段も見ておいたよ」
「相変わらず準備がいいですね」
「時間は確認してあるから、今日が終わって、みんな大丈夫だったら」
「やった」
虎杖が両手を上げる。
伏黒はその後ろで荷物を持ったまま、三輪へ軽く頭を下げた。
「今日はよろしくお願いします」
「うん。よろしくね」
三輪は三人の顔を見て、少し安心した。
交流会について、いろいろな話を聞いた。
校長の考えも、虎杖が抱えている危険も、自分の中から消えたわけではない。
それでも、まずは無事に会えた。
そのことが嬉しかった。
*
楽巌寺の挨拶と、交流会の説明が始まった。
両校の生徒たちは、演習場の前に並ぶ。
京都側は東堂、加茂、西宮、真依、メカ丸、三輪。
東京側は真希、狗巻、パンダ、虎杖、伏黒、釘崎。
五条と歌姫は、それぞれの生徒の近くに立っていた。
「今回の形式は、双方で相談して決めたわ」
歌姫が地図を広げる。
「演習区域の中に、回収対象を複数置いてあります。制限時間内にそれを確保し、自陣へ運ぶこと」
地図の中央には、林と小さな建物がある。
その両側に、東京側と京都側の開始地点が示されていた。
「ただし、各校に一つずつ、移動させなければならない護衛対象があります」
補助監督が、布に包まれた箱を二つ運んできた。
大きさは、抱えれば両腕が塞がる程度。
「これは負傷者の代わりだと思って。床に落としたり、一定以上の衝撃を与えたりすると失点。決められた場所まで安全に運べば、得点になります」
「相手の護衛対象を奪ってもいいんですか?」
伏黒が尋ねる。
「奪って得点にはならない。ただし、進路を妨害することは可能よ」
歌姫は全員を見回した。
「危険な方法で箱を破壊したり、持っている相手を無理に転倒させたりするのは禁止。人を運んでいる場面だと思って行動して」
「要するに、探索と護衛を両方やれってことか」
真希が言う。
「そういうこと」
五条が、地図の端を押さえた。
「今回は、相手に重い怪我を負わせる攻撃は禁止。刃物は訓練用に交換。呪力の出力も、相手が防御できないほどには上げない」
虎杖が手を上げる。
「俺たちが全員で三輪先輩のところに行っても、大丈夫なんですか?」
「ずいぶん正直な質問ね」
釘崎が言った。
「いや、だって、どうやって回収するのかなって」
三輪は少し考えた。
「みんなで来られたら、守るのは大変だと思うよ」
「先輩でも?」
「うん。箱もあるし、全員違う方向に動いたら、私一人じゃ全部は追えないから」
五条が頷く。
「そういうこと。三輪ちゃんはすごく強いけど、箱を三つ同時に持って、別々の場所には行けない」
三輪は言いかけて、やめた。
箱を三つ持つだけなら、たぶんできる。
でも、別々の場所には行けない。それは本当だ。
歌姫が続けた。
「三輪には、京都側の護衛対象についてもらいます。護衛対象を運ぶ間は、自分から遠くの回収対象を取りに行かないこと」
「はい」
「相手と接触した場合は、合意した出力と装備で対応。無理な追撃はしない」
三輪は訓練用の刀を確かめた。
重さは普段の刀に近いが、刃はついていない。表面に目印が塗られていて、有効な打撃になったかを立会人が判断できるようになっている。
「ほかにも細かい規則は配った紙に書いてあるから、開始前にもう一度読んでおいて」
歌姫が言い終えると、両校の間に、小さな話し声が広がった。
*
開始前、京都側は林の手前に集まった。
加茂が地図を広げる。
「三輪は護衛対象につく。運搬は誰が担当する?」
「俺が持つ」
東堂が言った。
「なら、護衛は要らんだろう」という声が上がる前に、彼は続ける。
「だが、相手が集まれば、箱を持ったまま全員を相手にするのは面倒だ。三輪、頼むぞ」
「はい」
真依が地図の東側を指した。
「私はこの建物の近くを見る。見通しがいいし、東京側がそこを通るなら分かる」
「私は上から確認するね」
西宮が言う。
「回収対象の場所と、向こうの動き。見えたところから伝える」
メカ丸は地図の中央へ指を置いた。
「通信の中継は俺が担当する。谷側は声が届きにくい可能性があるから、そこだけ予備回線に切り替えろ」
「回収は、私と真依で分担しよう」
加茂が言う。
「西宮の報告を受けて、近い方が向かう。相手が先に確保していた場合は、無理に追わず、位置を知らせる」
三輪は地図を見た。
東堂と一緒に箱を運びながら、相手の進路を防ぐ。
回収対象の場所を探すのは、西宮たち。
自分が護衛から離れれば、その間に箱が狙われる。
「東堂先輩、私が前を見ます。箱を持っている間、足元を見づらいと思うので」
「うむ。だが、俺に指図する前に、お前も周りを見ろ」
「はい」
「東京の一年に気を取られて、箱を落とさせるなよ」
「気をつけます」
東堂が頷いた。
メカ丸が、三輪へ端末を渡す。
「今日はこちらを使え。訓練用の回線に合わせてある」
「ありがとう」
三輪は受け取り、留め具を確かめた。
「緊急信号は、訓練の点数とは関係ない。必要だと思ったら押せ」
「うん」
「相手も同じだ。通知が来たら、競技より確認を優先する」
「分かった」
三輪は端末をつけた。
メカ丸の手が、いつもより少し長く留め具のそばにあった。
「緩んでる?」
「いや」
彼は手を離した。
「問題ない」
*
開始時刻を待つ間、真依が一人で建物の陰に立っていた。
その前に、真希が来る。
三輪は少し離れた場所から二人に気づいた。
近づこうとして、足を止める。
「相変わらずね」
真依が先に言った。
「何がだよ」
「そうやって、平気な顔してるところ」
真希は肩に担いでいた訓練用の武器を下ろした。
「平気に見えるなら、見る目がねえな」
「へえ」
真依の声は冷たかった。
「今日は、そっちの一年まで守りながら戦うんでしょ。大変そう」
「そっちこそ、銃だけでどうするつもりだ?」
「見てれば分かるわよ」
二人の間に、短い沈黙が落ちた。
三輪は声をかけなかった。
何を言えばいいのか、分からなかったこともある。
それ以上に、二人が自分たちの言葉で話しているところへ、割って入るべきではないと思った。
やがて真希が武器を持ち直す。
「怪我すんなよ」
真依の目が細くなる。
「そっちこそ」
真希はそれ以上何も言わず、東京側の集合場所へ戻った。
真依はしばらくその背中を見ていた。
三輪が近づくと、真依が先に言う。
「聞いてた?」
「少しだけ」
「何か言いたいわけ?」
「ううん。もうすぐ始まるから、呼びに来た」
真依は三輪の顔を見た。
「……そう」
そのまま、二人で開始地点へ向かう。
歩きながら、三輪は一度だけ真依を見た。
真依は前を向いていた。
三輪も前を見た。
*
開始の合図が鳴った。
東堂が護衛対象の箱を持ち上げる。
三輪はその前に立ち、訓練用の刀を腰へ差した。
『上から確認する。最初の回収対象、北側の小屋付近に一つ』
西宮の声が通信機から届く。
『真依、そちらへ。私は中央を見ます』
加茂の指示に、真依が短く返事をした。
メカ丸の傀儡は、少し離れた木陰を進む。全員の声を中継できる位置を確かめている。
三輪と東堂は、西寄りの道へ入った。
「三輪」
「はい」
「向こうは、俺たちがここを通ると思うか」
「地図だけなら、思うかもしれません。箱を運ぶには歩きやすい道なので」
「なら、別の道へ行くか」
三輪は道の先を見た。
左は木が多く、箱を抱えたまま通るには狭い。右は緩い斜面になっている。
「右なら通れます。でも、上から見つかりやすいです」
「上には西宮がいる」
「はい。見てもらってから、移りましょう」
通信機へ手を添え、西宮に確認する。
『右の斜面、今のところ人影はないよ。でも、先の木の陰は見えない』
「分かりました。ありがとうございます」
東堂が斜面へ向かう。
三輪は半歩先に出た。
足元を確かめながら、左右の木々を見る。
そのとき、前方から小さな足音がした。
三輪は手を上げ、東堂を止める。
木の陰から虎杖が姿を現した。
「見つけた!」
「虎杖くん」
彼は三輪と東堂の位置を見て、すぐに足を止めた。
「うわ、二人一緒か」
「そうだよ。箱があるから」
「ですよね」
虎杖は困ったように笑った。
けれど、すぐには飛び込んでこない。
三輪は周囲を見る。
虎杖一人で、正面から箱を奪おうとしているわけではないだろう。
「伏黒くんたちは?」
「それ、言ったら駄目なやつですよね」
「そうだった」
虎杖が笑う。
次の瞬間、斜面の下から黒い影が伸びた。
伏黒の式神。
三輪は踏み込まず、東堂の前へ身体を移した。
式神が箱へ向かおうとする。
三輪の鞘がその進路を遮った。
強く打ちつけない。訓練の範囲で動きを止め、東堂へ近づけない位置を作る。
「後ろ!」
虎杖の声とともに、釘崎が木の向こうから姿を見せた。
訓練用の釘が、三輪の足元へ打ち込まれる。
三輪は跳ばなかった。
半歩ずらし、足場を確かめる。釘崎の位置からは箱が見えない。狙いは三輪をその場から動かし、伏黒の式神へ道を作ることだ。
「東堂先輩、右へ」
「うむ」
東堂が箱を抱えたまま斜面の上側へ動く。
虎杖が追う。
三輪はその間へ入った。
訓練用の刀を抜く。
虎杖の拳が届くより先に、刀の腹が彼の前腕へ触れた。
「有効!」
離れたところから立会いの声がする。
虎杖は足を止め、悔しそうに笑った。
「やっぱ速いなあ」
「ごめん。ここは通せないよ」
「いや、そういう訓練ですから!」
虎杖は一度下がり、釘崎へ手で合図した。
その間に、伏黒の式神が横から箱へ向かう。
三輪は刀を返し、進路を塞ぐ。
伏黒は無理に押し込まなかった。
式神を下げ、木々の間へ姿を隠す。
『中央の回収対象、東京側が一つ確保!』
西宮の報告。
三輪は目を上げた。
虎杖たちがこちらへ来た間に、別の誰かが回収したのだ。
箱を守ることはできている。
けれど、相手はそれだけを狙っていたわけではない。
「三輪」
東堂が言った。
「ここに留まれば、向こうの思うつぼだ。進むぞ」
「はい」
三輪は虎杖たちを追わず、東堂と一緒に移動を再開した。
*
京都側も、二つ目の回収対象を確保した。
真依が先に見つけ、加茂が東京側の接近を知らせたことで、遠回りせず自陣へ運べたのだという。
『真依、戻ったよ』
西宮の声がする。
『向こうも二つ。今のところ同点』
「早いですね」
三輪が言うと、東堂は笑った。
「なら、こちらも急ぐだけだ」
箱を持つ腕は揺れていない。
三輪は周囲を確かめた。
林の向こうから、遠く訓練用の武器がぶつかる音がする。
別の場所で、誰かが戦っている。
三輪は耳を澄ませた。
『メカ丸、聞こえる?』
西宮の声。
『……』
返事がない。
『メカ丸?』
三輪が通信機へ手を添える。
「メカ丸、どうしたの?」
数秒遅れて、声が返ってきた。
『聞こえる。回線の切り替えに時間がかかった』
『了解。中央の建物の北側、東京のパンダが移動中』
『分かった。加茂へ伝える』
それきり、通信は通常どおりに戻った。
三輪は少し気になったが、今は目の前の道を見た。
通信が途切れる可能性は、訓練前にも聞いていた。
必要なら、声が届く場所まで戻る。それも手順のうちだ。
「三輪、足元」
東堂に言われ、三輪は前を見た。
斜面の土が、一部だけ柔らかくなっている。
「あ、ありがとうございます」
「人に気を取られるなと言っただろう」
「すみません」
「謝るより、次を見ろ」
「はい」
三輪は頷き、先へ進んだ。
*
通信が途切れていた数秒間、幸吉は別の画面を見ていた。
交流会の区域図ではない。
校内に設けられた通信記録の表示。その一部に、送受信の履歴が残らない時間を作っていた。
長い時間ではない。
けれど、通常の訓練には必要のない操作だった。
画面の向こうから、三輪の声が聞こえる。
『メカ丸、どうしたの?』
幸吉は息を詰めた。
すぐに返事をすればよかった。
それができる位置に、指を置いていた。
にもかかわらず、操作を終えるまで、回線を戻さなかった。
『聞こえる。回線の切り替えに時間がかかった』
自分の声を、傀儡が伝える。
三輪は、それ以上尋ねなかった。
幸吉は表示を閉じた。
画面には、各生徒の位置を示す印が並んでいる。
三輪の印は、東堂のものと並んで動いていた。
約束は守られる。
京都校の人間には、手を出さない。
何度も確認した。
それでも、記録の空白を見た瞬間、自分が今、誰のためにそれを作ったのか、考えずにはいられなかった。
*
演習区域の外では、歌姫が受信機を確認していた。
「今、一瞬途切れたわね」
隣の補助監督が頷く。
「メカ丸からは、回線切り替えとの報告です」
「場所は?」
「谷側ではありません。ただ、木が多い区域なので、影響が出た可能性はあります」
歌姫は記録へ時刻を書き留めた。
「終了後に確認します。今は他の回線も見ていて」
「はい」
五条は少し離れた場所で、演習場の方を見ていた。
「向こうはどう?」
歌姫が尋ねる。
「真希たちが回収対象を一つ運んでる。京都側も、そろそろ箱を届けるんじゃない?」
「あなた、自分の生徒のことを全部言わなくていいのよ」
「歌姫には言ってもいいでしょ」
「私は京都側の教員です」
「知ってる」
五条は笑った。
歌姫は記録を閉じず、次の通信を待った。
*
三輪たちが護衛対象を運んでいると、上から西宮の声がした。
『箱の到着地点まで、あと少し。正面に狗巻くんがいるよ』
「分かりました」
三輪は東堂と目を合わせる。
狗巻の術式は、相手に言葉で行動を強いるものだと、事前に聞いていた。
距離や声への対処を、無理に一人で判断しないようにも言われている。
「東堂先輩、箱を落とさないように、ここで一度止まりましょう」
「いいだろう」
三輪は通信機へ向かった。
「加茂先輩、こちらの前に狗巻くんがいます。今、援護に来られますか」
『すぐには難しい。回収対象を運んでいる』
「分かりました。こちらは少し下がって待ちます」
無理に進めば、箱を落とすかもしれない。
三輪は東堂とともに木の陰へ移った。
「先輩が前に出れば、狗巻を止められるんじゃねえの?」
後方から、パンダの声がした。
三輪が振り向くと、彼は少し離れたところに立っていた。
「たぶん、近づけばできると思う。でも、パンダが後ろにいるから」
「ばれてたか」
「さっきから、足音が聞こえてた」
「隠れるのは得意じゃないんだよなあ」
パンダは肩をすくめる。
「じゃあ、箱を守ったまま俺も相手にする?」
「そうしたいけど、その間に狗巻くんが近づいてきたら困るかな」
三輪は東堂へ言った。
「先輩、箱を持ったまま、左に下がれますか。私がパンダを止めます」
「お前に任せきりにはせん」
東堂は箱を抱え直し、周囲を見た。
「西宮。狗巻の位置を知らせろ」
『さっきの場所から動いてない。こっちを見てる』
「なら、下がりながら別の道へ回る」
パンダが一歩出る。
三輪は刀を抜いた。
近づいてきた大きな腕を、力で押し返さず、外側へ流す。
パンダは踏ん張り、もう片方の腕を箱の方へ伸ばした。
三輪は刀の腹でその腕を押さえ、東堂の進路から離す。
そこで深追いしない。
パンダも、箱までの距離が開いたことを見て、追撃をやめた。
「堅いねえ」
「箱を落としたくないから」
「そう言われると、こっちも無理には行けないな」
パンダは手を上げ、後ろへ下がった。
その先で、狗巻が小さく頷く。
「しゃけ」
東京側も、別の場所へ向かうつもりらしい。
三輪は刀を納め、東堂の隣へ戻った。
「すぐに来てくれて、ありがとう」
『こっちも見てるからね』
西宮の返事に、三輪は笑った。
*
交流会は、まだ続いていた。
京都側の箱は到着地点まで運ばれ、点数が入った。東京側も、別の道から護衛対象を進めているという。
残った回収対象を巡って、両校の生徒がそれぞれ動く。
三輪は指定された位置で待ちながら、通信を聞いた。
真依の声。
加茂の声。
虎杖が何か叫び、釘崎が言い返す声も、遠くから聞こえた。
訓練が終わったら、どちらが勝ったか確かめる。
それから、約束どおりお店へ行けたらいい。
三輪は、腰の端末へ軽く触れた。
留め具は、外れていない。
手を離し、前を見る。
林の向こうで、風が葉を揺らしていた。