「起きて、起きてよ。」
目を覚ますと少女が僕を見ていた。少女は僕が起きるのを確認してから近くにあったボタンを押した。
どうやら起きたらこのボタンを押すようにと書かれていたからナースコールでもしたんだろう。
「もう大丈夫だからね、私が来たから。」
目の前の少女が誰かもわからない、けれど懐かしくてもどかしさを感じてしまう。
「貴女は誰?」
僕は不安げに聞いてしまう、此処がどこかもわからない上にどうしてこんなに心配されてるかわからないからだ。
「私はエオナだよ、ねぇ私の事忘れちゃったの?貴方の大好きなエオナちゃんだよ。」
そう言われても目の前の少女に見覚えはない。そして会話を続けているとドアがガラッと開く。
「おー、目を覚ましたんだね。よかったよかった、実験は成功した。また結果を聞かせてくれよ。」
医者ぽい服装を着た男性はそれだけを言うと去ってしまう。
「あれ?彼は僕に話すんじゃなかったの?」
エオナは首を振る。
「貴方の病状を見に来ただけみたいね、退院できるんだし色んな所に行こうよ。」
エオナに手を繋がれて僕は外まで出た。外は日が隠れており今日何をしていたかの記憶がないのだ。
「私達のお家に帰ろう、そして明日から一緒に旅をしよう。」
エオナは僕の自宅を知ってるようだ。今まで僕は彼女も友達も家族もいなかったはずなのにどうしてこんなに安堵してしまうのだろう、どうしてこんなに寂しいのだろう。
その考えとは裏腹に彼女は僕の手を引いて嬉しそうな顔を見せる。
「大丈夫、君ならできるよ。やっと君に触れることができたから。」
「どう言う意味?」
「そのままの意味だよ、大丈夫。私がついてるから、今日からは私がいるから。」
彼女と自宅に着いた。鍵がかかっていたのでポケットから取り出すが相変わらず両親はこんな時でも仕事のようだ。
「料理とか作ろうか?私だったらなんでも正確に作れるよ。」
彼女は僕に手洗いを済ませたのを確認すると冷蔵庫を開けた。
「何もないね、いくら私でも何もない所から料理を作れるわけではない。お金持ってるなら一緒に買い物へ行こうよ。」
彼女は鼻歌をしながら玄関へと向かった。
「ねぇ、僕はまだ君の事を何も知らないし此処までしてもらえる義理もないんだけど彼女だったりする?」
僕がそのように言うと彼女は少し影かかった表情で言い放つ。
「私は病院で言ったそのままだよ。私の事を今は忘れててもいい、ただいつかは思い出してもらわないと困るよ。」
彼女はそういうと僕のポケットから財布を取りだしたのだった。