TRPGクリエイターカオスくんのGM日記 作:TRPGクリエイターカオスくん
『自衛隊出撃命令! これは訓練ではない! 自衛隊出撃命令! 繰り返す、これは訓練ではない。即時配置につけ!』
「なんだなんだ!?」
「何が起きた!?」
混乱しつつも、私は戦闘機に追い立てられるように乗った。
指示された所に向かい、飛んでいるものを見てびっくりした。
あれ、蟲!?
『あれを誘導しろ! 方法は任せる!』
「任せるって……」
『無線を期待する方がアホだろうな。周囲を囲んで、俺が前を飛んで誘導する』
『アメリカに誘導してくれ!? ちょっ それは無理ですって』
管制塔がなんか揉めてる……。
『最寄りの基地に誘導するぞ。無理はしない』
なんとか近場の自衛隊基地に誘導する。
マスコミのヘリがめちゃくちゃ飛んでる……。
管制塔がもめてるっぽいから、一応お断りはしているらしい。
誘導してから戦闘機を降りる。
「よくやった! よくやった、よくぞ事故を起こさず誘導した、首相と防衛大臣から個人的に金一封出るぞ!」
「ありがとうございます!」
テレビをわっせわっせと運んでいるのが見える。
「あれは?」
「クールジャパンが流行ったときに、調子に乗った首相がどさくさに紛れて作った宇宙人用の日本PR動画だ」
「そんなのが役に立つ日が来るんですね……。なんでも備えはしておくもんですね」
「監修した元首相も駆けつけてくるそうだ」
あっ 降りてきた。
「野次馬してもいいですか?」
「彼らが帰った後、この基地丸ごと隔離される事が決まった。見に行かなきゃ損だ。あっ 絶対に変な真似はするなよ!」
「もちろん」
私たちは広い円を描くようにエイリアンさんを囲んだ。
フラッシュなし、シャッター音なしで写真をとった。
テレビを持っていって見てほしいとジェスチャーすると、彼らはお互いの顔を見合わせて、一人戻って行った。
はえー。生きてる。生き物の内部に入って宇宙を飛んでるのね、この種族。
帰ってきた宇宙人は両腕いっぱいにお団子とスライムみたいなのをいっぱい持ってきた。
お団子よね、あれ。
それを一つずつ配っている。仲間にも、私達にも。
私も一生懸命仲間をかき分け、前に出て貰った。
宇宙人さんはそれを食べながらテレビを見る事にしたようだ。自由か。
幸いな事に、和やかな雰囲気で視聴している。
スライムみたいなのは中身をストローで吸うのね。
誰かストロー持ってきて。
ええい! 女は度胸!
私はもらったお団子に口をつけた。あまーい! あっ 花粉団子? これ花粉団子だ! 届いたストローを突き刺してスライムをチュウ! あっ これは蜂蜜!
「大丈夫なのか!?」
「意外といけますよ。甘い。これ、花粉団子です。本当に蜂さんなんですね。この人達。これでも美味しいけど、パンにつけて食べたい」
「そもそも花粉団子食えるのか……?」
「イケるみたいですよ。俺も食べてみようかな」
スマホでポチポチして調べる隊員たち。
その間に、馬鹿が間違えてフラッシュを焚いた。
「すみません! 写真とってただけなんです!」
あわあわとスマホの画面を見せて説明する。
ギチギチ。ひっ怒ってる?
蜂型エイリアンさんは、ポーズを取ってくれた。 優しい……。
フラッシュ焚いてもいいならと、しばし写真撮影会をする。
写真は宇宙人さんにも印刷して渡した。嬉しそうだった。よかった。
エイリアンさんの一人にペンと紙を渡して、隊長と絵心達者な隊員がなんとか目的を聞き出そうとする。隊員が一生懸命絵を書いて、隊長が横から延々と文句をつける式だ。大変そうだなぁ。
エイリアンさんがスラスラと書いたり指差したりと手振り身振り。
「どうやら、最高級の花粉団子を売るので、代わりに何か欲しいそうです」
「宇宙を飛び越えて花粉団子の販売に来たんですか!」
「どうやら、そうみたいです……?」
みると、蜂さんたちは蜜も売っていい、と手振りで示す。
「いやぁ……。流石に花粉団子に国家予算は……仲良くはしたいですけど」
「花粉団子はいらないので、船の卵とかありますか?」
さらりと宇宙船の下に卵を書いて交渉をする。
いやぁ、流石にそれは……。
花粉団子を取引テーブルに出す方も出す方だが、それならと宇宙船を要求する方もする方である。
エイリアンさんが、宇宙船を向いて声を掛ける。
すると宇宙船が動いた。大きなものが動いたので騒然とする。
その後、交尾を始めたらしいということで、さらに騒然とした。
スマホでバッチリ動画を取るもの、顔を隠すもの……。
絵心のある隊員は顔を隠す方だった。
「お前が始めた物語だろ! 先方が卵をくれるっていうんだから、ありがたく交渉するぞ! 宇宙船の卵だったらそこそこ予算使ってもお国も許してくれるだろ」
ぺちぺちと隊長。
交渉は続いた。
卵は本当にこの場で産んでもらえるらしかった。
彼らが求めるのは、宇宙船の代わりというには申し訳ないくらいささやかなものだった。
「ご当地産の蜂蜜と花粉団子、これは近場の店の売っていいって在庫みんな貰ってこい。あ、味見はしてもらえよ? 蜂蜜なら売るのも許可なくて問題ないだろ。報告と領収書だけあげろ」
「ナイフかー。まあ、銃じゃなきゃいいだろ……。えっ というかナイフ一つ持たずに何しに出たん?」
「あー。他惑星のスペシャルな蜂蜜を取りに? そんで食料と燃料以外持ってくるの忘れた? 豪快な忘れ物だな、おい。ちょっと待ってろ、サバイバルグッズ持ってきてやる。あー。企業からもらった防刃布のサンプルがあったろ? あれもやるよ」
そんなわけで、隊員達からサバイバルグッズをカンパされて、間に合った元首相からデジタルカメラとらくらくホンを受け取って、また来ることがあったらお土産ちょうだいとおねだりに頷いて。
もらうものを貰ったら、彼らはあっさり帰って行った。
「よくやった!!!! 本当に本当に良くやった!!! パーフェクト以上のウルトラパーフェクトコミニケーションだ! 基地の隊員全員に特別ボーナスをやろう!」
「ありがとうございます!」
首相にも元首相にも防衛大臣にもとにかく褒められた。
自衛隊が日本の、地球の役に立てた。
素晴らしい1日だった。
隔離期間は1週間だったが、心配していた病原菌等もなく、だけど検疫の問題ということで蜂蜜と花粉団子は回収された。
写真はデータのコピーの提出義務はあったけど、それ以外は自由だった。
いい思い出が出来て嬉しい。
家族にも友人にも活躍を称えられたし、軍人が仕事を果たしてこんな手放しで賞賛されるなんてなかなか無いのでは? 災害救助は災害という不幸が前提だしね。
今日は間違いなく、素晴らしい1日だった。