Purple Moonlight   作:真夏歩

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第3話 幸福への長い○道

 12月。猫の温かさに触れながら、ベッドの上で物思いに耽る。

 

 初めて家族以外の連絡先が増え、一度一緒にお出かけもした。

 そして私のことを"お友達"と言ってくれた。

 ここにきてマキちゃんとの距離は、ぐっと近づいたように思える。

 

 マキちゃんは最近無事大学に合格したらしい。

 一般入試を受けるものだと思っていたけど、品行方正なマキちゃんは面接とか色々で受かったとのことだ。

 大変名の知れた大学なので、その倍率は想像しにくいけど……。簡単に受かってしまったのがさすがマキちゃんといったところか。

 他のお友達も多そうだし、人当たりも良いし、学校でも一目置かれる存在なのだろう。課外の振るまいを見ているだけでも納得してしまう。

 

「私がお友達か――」

 

 私で良いのだろうか。私と時間を共有してくれる余裕なんてあるのだろうか。彼女の時間を浪費しているのではないだろうか。

 そもそも、お友達とは一体何なのか。何をすべきなのか。

 お姉ちゃんが言うには、普通にしていれば良いらしい。しかし普通とは何なのか。

 こちらからアプローチしなければ、距離が遠いと思われるかもしれない。

 メッセージを送る?お出かけに誘う?家に遊びに行く?

 私が構ってもらっても良いのか?それがお友達というものなのか?

 

 寝返りを打つ。

 

 しかし、何故私なのだろう。

 学校も学年も違うし、単なる店員とお客さんの関係で良かったのではないだろうか。

 近くで遊べるお友達を増やしたかった?それは今更必要なのか?

 良くわからない。ただ、どうしても引っかかる言葉がある。

 

『無理に探さなくても、"この街に帰ってきてくれた"っていうことだけで、とっても喜んでると思います。そのお友達』

 

 夏休みにお店で言われた言葉だ。この言葉の正しい解釈が未だにできていない気がする。

 言葉通りに受け取るのであれば、"覚えてないなら無理に探すこともないよ"、という意味だろう。マキちゃんらしい気遣いのある言葉だ。

 しかし――。今の状況から察するに、もう一つ別の意味を持っているように思える。

 何か別の言葉を胸にしまって、絞り出したこの言葉の真の意味は。

 

 ――何か、当てがあるのではないか?

 

 でなければ、もし私のことを探している当時の友達が居た場合、少し無責任で可哀想な言い回しになるからだ。マキちゃんがそういう人だとは思えない。

 では、当てがあるとすれば、それは誰だ?

 

 ……マキちゃんではないか?

 

 もしそれがマキちゃんだとすると、多くの要素が繋がるのだ。

 マキちゃんが私に優しくしてくれる理由もそう。お友達になってくれた理由も、私がマイナスイオンを感じることも、何処かに懐かしさを覚えることも、あの安心感も。

 マキちゃんはあの日、過去に私と会ったことがあると気づいたのではないか?

 

 でももしそうだとすると、何で"それ、もしかして私じゃない?"って言ってくれなかったんだろう。

 確信が持てなかったから?今の自分に自信がなかったから?

 それが良くわからない。

 

 ……やっぱり私ではないのでは?

 会うチャンスは何度もあるのに、連絡先も知っているのに、まだそれを伝えてくれるわけではないということは、やっぱり私じゃないのかもしれない。

 

「あー……」

 

 私がちゃんと覚えていればこんなことにはならなかったのに……。

 結局全部私が悪い。気を遣わせている分、尚更質が悪い。

 実は私は、当時の友達の名前を覚えている。ただそれが、"マキ"ちゃんではなかったはずなのだ。

 だから私は断定できない。

 

 マキちゃんに聞いてみる?

 昔、私と会ったことないですか。って?

 私に何の確信もないのに、マキちゃんを試すようで嫌だ。それはできない。

 

 私には確かめる術がない。あの言葉の真意も、あの時遊んでくれた友達の存在も。

 

「どう思う?ワトソンくん」

 

 猫は知らん顔で寝ている。

 

「もう少し相手の気持ちを汲んであげたらどーお?」

 

 点けっぱなしのパソコンから聞きなれた声がする。いつの間にか、有名人のインターネットラジオが流れていた。

 相手の気持ち……。それがわかれば苦労しないんだけど。

 その言葉が妙に刺さるのは、私の思慮の浅さ故だろうか。

 

「はあー……」

 

 お友達って何なんだろう。

 何も解決しないまま今日も眠りにつく。

 遠くでは雷鳴が響いている。こちらには来ないことを願う。

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