ヴァルハルトの甥 ダグザへ征く 作:風神弓雷神刀
2/11 帝都ダグシオン 市場
私は今市場に来ている。理由はもちろん、屋台巡りだ。ダグシオンの特産物を色々食べてみたい。
「いいじゃねぇか。俺たちと食べようぜ。」
「仲良くしようや。」
賊が誰かに話しかけているみたいだ。ダグシオン大剣闘祭で、ダグザ中の強者だけじゃなくて、荒くれ者まで来ている始末だ……。騎士として見過ごす訳にはいきません。私は、角を曲がって、突撃する。
「あなたたち‼︎何をしているのです……か?」
そこにはベロンベロンに酔い潰れた賊たちが寝転がっており、女性が1人座ってお酒を飲んだままだ。唖然とする。
「もう、あなたたちもう倒れちゃったの?わたしはまだまだいけるわよ。あら?」
緑色の髪を編んだ女性はこちらに視線を向ける。
「わたしを助けようとしてくれたのね。わたしはソフィアよ。」
「私はイングリットと申します。」
「イングリットちゃんね。」
イングリットちゃん……。ちゃん付けで呼ぶのはあまり慣れなくてむず痒い……。ドロテアぐらいだったし……。
「あのこれは……?」
「この可愛い子たちがお酒を飲もうって言うから付き合っただけよ。先に倒れちゃったけど。酔っている姿って可愛いわよね。わたしはまだ食べ足りないし、ここであったのも何かの縁よね。一緒にどうかしら?」
酔っている人が可愛く見えることは置いておいて、悪い人ではなさそうです……。
「では、ご一緒させていただきます。」
ソフィアに連れられて街を彷徨う。
「へぇ、じゃあイングリットちゃんはダグシオンに来たばっかりなのね。なら美味しいところ案内しなくちゃ‼︎でも、わたしが出入り禁止になっていないところってどこが残っていたっけ?」
その言い方から察するに出入り禁止になっていないお店の方が数え上げるくらいしかないってことかしら。
「美味しいものを食べられるのは楽しみですが、何をしたら出入り禁止になるのですか?」
「お店のお酒全部飲み切っちゃったとかね。出店ならそんなことないわ。出店にしましょう。」
さっきの光景からもソフィアは相当な酒豪と見える。そうこうするうちに市場に着いた。
「ほら着いたわよ。」
クサリク肉を焼いた出店なのかしら。
「いらっしゃい。お嬢さん方、注文は?」
「わたしはクサリク肉の串を10本ください。イングリットちゃんはどうする?」
さっきも食べていたのにかなりの健啖家だ。
「わ、私は5本でお願いします。」
つられて5本注文してしまった。
「美味しい……。美味しい……。」
ソフィアは頬張り、美味しいという声が所々漏れてくる。本当に美味しそうに見えるわね。私も早く食べようかしら。
「ごめんなさい。わたしったらつい夢中で食べちゃって。」
ソフィアがはっとしてこちらを見た。
「いえ、お構いなく。まだ食べていませんが、とても美味しそうに感じますから。私もいただきますね。」
ソースが染みていて美味しい。そして、クサリク肉の辛味酸味に合っている……。
「ふふっ」
「どうかしましたか、ソフィア?」
「イングリットちゃんが美味しそうに食べているところを見たら私まで嬉しくなっちゃった。」
「私も、またご一緒したいです。」
「ええ、ダグシオンにはまだまだ美味しいところがあるんだから、一緒に周りましょう。」
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2/12 帝都ダグシオン 厩舎
厩舎に来るのが遅くなってしまいました……。場所を聞いてから1週間近く経ってようやくです。
オルニウスという飛駝はフォドラにはいなかったので初めて見ることになります。
「蚤を取ることはできたものの、今度はあまり食べなくなってしまったな……。ウーシュラならなにか分かるかも知れないが、最近は見かけないからな……。」
馬の世話をしに来ている男性が何やら困っている様子みたい。
「あ、あの……。」
「ん?」
こちらを見るために振り返りました。
「何かお困りでしょうか?」
フェルディナントさんに、以前人は何かを成すために生まれてきたと言われて、こんな私にも回り回って誰かの役に立てると気付きました。私のような人間でも、誰かを幸福にできるのかもしれないって……。リゲルさんなら、手助けするはず……。
「あ、あぁ。この前買い付けた馬がな、蚤で暴れていたのは落ち着かせられたのだが、今度は飼い葉を食べなくなってしまってな……。」
「少し失礼します……。」
「あぁ。」
彼の横を通り、馬の顔を見る。
「どうしたの?まぁ、同じものを食べ過ぎて飽きてきたの。そうよね、栄養も偏っちゃうものね。」
「何か分かったのか?」
「はい。燕麦ばかり食べて、栄養が偏ってしまっているので……、飼い葉を干し草に変えた方が良いかと思います……。」
イングリットさんとも似たような話をしたことを思い出します……。
「確かに近頃は燕麦が多かったな……。分かった、干し草に変えてみよう。感謝する。」
「いえ、それほどでも……。あの、私はこれで……。」
私が立ち去ろうとしたところ、呼び止められる。
「待ってくれ。何かお礼を……。」
「お礼は結構です……。」
「では、せめて名前だけでも……。私はゲイツだ。闘技場で剣闘士をやっている。」
「マリアンヌです……。では、失礼します。」
ゲイツさんの元から離れる。
「面妖な……。まさか、ウーシュラと同じように動物の心を正確に読み取ることができようとは。しかも、会話をしていた。2人も同じことができるということはやはり修行すれば体得できるのではないか……。今度、ウーシュラかマリアンヌに聞いてみるか。」
ゲイツさんの独り言は私には聞こえませんでした。
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2/13 帝都ダグシオン 劇場
俺は、物語に新たな着想を得るため、観劇していた。題目は『闘技場の白髪鬼』……。本でも、ダグシオンに来てすぐに買って読んだが、こちらはどんなものかと見てみたが、演出も相まって面白い。一度倒れてから、もう一度立ち上がることこそ、カッコいいと思っていたが、一度も負けない様もそれはそれで悪くない……。こういう負けたことがない奴で、リゲルが負けるところを見たことはないが、負け戦はいくつかあるみたいだ。フェリアの2人の王がヴァルハルトを止めているとき、あいつも手を貸し、伯父と戦い、大打撃を与えたものの、先にダウンして、バリージオさんに引っ張られて撤退した。他にもアドラステア帝国にガルグ=マク大修道院を攻められたとき、大司教は捕えられ、義姉は崖から落ちて、陥落して負けたそうだ。
俺は演出家に会いたくなった。このような作品には感謝を伝えないとな。俺は辺りを見回す。するといるではないか……。客席の後ろで、腕を組み見ているものが!!すかさず、彼女の元に近づく。
「お前が、この劇の演出家か?俺は選ばれし希望の剣士ウードだ。」
「あぁ、ぼくがこの劇の演出もしたし、本も書いた。」
まじかよ⁉︎著者のダンテであったか。
「このような作品を生み出し、感謝する。良い着想を得られた。昏き闇の中から、一縷の光が差し込んできたようだ。」
ダンテは俺の顔をまじまじと見る。
「君、ウードと言ったね。君はあのウードなのかい?」
俺の名前を知っているだと⁉︎
「ふっ、俺の名声は偉大なる作家のところまで轟いているとはな……。そうだ俺こそがウードだ‼︎」
どのウードを指しているのか知らんが、素直に嬉しいなぁ。
「やっぱり、そうだったか……。君のことを取材させてほしい。」
ダンテが俺を取材‼︎いよいよ俺の伝記が出版されるのか!?
「もちろん構わないさ。三日三晩でも俺の伝説を話してやろう……。」
場所を移して、俺は邪竜との戦い、埋もれ狂い果てた神祖竜との戦いを語る。だが、まだ彼女は話を聞きたいようだ。
「何かヴァルムやイーリスでの過去の戦いは、伝説はないのかい?」
「お安いご用だ。その類のものはよく読んだり、探索したからな。」
俺はかつて起こったアカネイアの戦争、バレンシアの戦争、さらにはリゲルから聞いたフォドラの戦争についても語った。本当に三日三晩話した。
「感謝する。これで、大剣闘祭で扱うことができる題材が増えたよ。」
なるほど、大剣闘祭では過去の戦いを再現するのか……。ならば、俺もダグザの伝説を色々知ることができるんじゃないか……。楽しみが増えたぜ‼︎
「またいつでも語ってやろう……」
ダンテと俺は最後にテフを飲み交わした。
その時、天幕が開かれる。闇に生きた俺たちには眩しいぜ。
「いつまで閉じこもっているのですか、ウード‼︎」
「テフの飲み過ぎで、目がきまってるじゃないか。」
「これはこれは、黎明覇リゲルに清廉の騎士イングリットではないか……。」
「二つ名を付ける暇があったら、眠りなさい‼︎」
「そちらのあなたは?」
「ぼくはダンテだ……。」
「ダンテってあのダグザの文豪ダンテか⁉︎」
「私、『闘技場の白髪鬼』を読みましたよ。騎士道物語とは異なりましたが、面白かったです。」
ほう……、イングリットも読んだのか……。騎士道物語が好きならば、今度聞かせてやろう……。おや、リゲルが戻って行った……。何か用があったか?
「そうか……。君たちはリゲルとイングリットと言ったな……。リゲルと言ったか⁉︎ヴァルム帝国皇帝の⁉︎それに、イングリット、君はどこ出身なんだい?」
「え⁉︎私はファーガス神聖王国ですけれど……。」
「ファーガスだって、ウードがさっき言っていた国ではないか⁉︎君たち2人の口から直接聞きたい、ヴァルムのこともフォドラのことも‼︎ぜひ、取材させてく……れ……」
急にダンテが眠りに落ちたぞ……。あれっ、俺も眠気が……。何とか落ちる瞼の隙間からリゲルが戻って来たのが見える。後ろにマリアンヌを連れて……。マリアンヌが魔法を使っ……たか……。
「2人して急に眠りましたね……。あら、マリアンヌも来たんですね。」
「はい、解毒の魔法を使いました……。リゲルさんが、眠っていない2人を眠らせてくれと頼まれて……。」
「僕たちの取材になりそうだったからこの人も僕たちも徹夜することになるのが見えたんでね。アズールの時も2徹だったし……。ウードもだけど、健康に悪いでしょ。だから、マリアンヌに頼んだ。」
「解毒の魔法で、眠らせることができるのですか……。」
「前に一度……、ユーリスさんが動物に触れたら症状が出るとおっしゃていて、解毒の魔法で治したことがあるので、もしかしたらできるんじゃないかって……。」
「少し違う症例だけれども、本当にうまくいくとは思わなかった。僕はウードを寝床に運ぶよ。2人はダンテさんを頼む。」
「分かりました。」
「はい。」
ウードとダンテは別々の寝床に運ばれる。
「私はこれから、眠りこけているクロードを起こしてきます……。マリアンヌ、彼も本当は徹夜しているかもしれないので、一応ついて来てくれませんか?」
「はい……。」
「僕は、身ぐるみ剥がされて、神殿兵に捕まったアズールをセレナと迎えに行くよ。」
「何やっているのですか……彼は。また、女性絡みなのでしょうけど……。」
彼らの日常はまだ続く。
はらぺこイングリットとソフィアでした。彼女たちの食べる日々は続いていきます。これを機にダグザの食材の味を色々見返していました。もし、クロエが居れば珍味祭になっていましたね。
マリアンヌとゲイツでした。ゲイツは前にウーシュラとの支援Cが発生しています。飼い葉の話はマリアンヌとイングリットの支援会話参照です。ゲイツは実際に見たことないことすら信じ込んでしまうのは、リリアンとの支援会話で見れますが、ウーシュラとの支援Bが発生していないため、動物好きのゲイツはもう修行を始めるかも……。
ウードと再びダンテでした。ダンテからウードは取材のために狙われていました。取材と言われれば、ウードは悪い気はしないですよね。これで、ギムレー、ハイドラ以外にも、フォドラと2人の英雄王の話もダンテは知ることになりました。ユーリスの話は、マリアンヌとユーリスの支援会話参照です。レストの効果盛っていますが、まあ徹夜相手には効くということで……。
最後、アズールが身ぐるみ剥がされていますが、アズールとマークの支援会話参照です。また、睡眠薬を盛られたんでしょう。