明後日の夜に予定されている「映画監督・酒巻昭氏を偲ぶ会」まで、残された時間は約四十時間。
阿笠邸の地下工房の空気は、物理的なデータ奪取の熱狂から一転し、冷徹な作戦室のそれへと変貌していた。
「……待ってくれ、ヤンさん」
コナンが腕を組み、作業台の前に身を乗り出した。その眼鏡の奥には、強い疑念と確認の光が宿っていた。
「さっき『組織に睨まれていたある政治家も出席する』って言ったな。それは、今マスコミを騒がせているあの男のことか? 汚職疑惑で東京地検特捜部と警視庁捜査二課から内偵を受けている、代議士の呑口重彦……」
「ご明察だよ、工藤君」
ヤンは椅子に深く腰掛け、手元に引き寄せた新聞のスクラップと、先ほどDRAMからダンプしたばかりのテキストファイルのプリントアウトを並べた。
「なぜ呑口代議士なのか。その根拠を、推測ではなく手元にある確定情報から論理的に演繹(えんえき)してみよう。宮野君、この数字に見覚えはあるかい?」
ヤンが指差したのは、東都自動車の海外子会社を経由して流れていた、ある特定口座への不自然な資金移動ログだった。四半期ごとに均等に割り振られた、総額三億円にのぼる使途不明金。その送金先の名義は「南洋交易」という実体のないペーパーカンパニーになっている。
灰原哀が画面に目を凝らし、ハッと息を呑んだ。
「これ……南洋交易の代表者名、呑口代議士の実弟の名義だわ。姉が生前、組織の資金洗浄用の口座リストを愚痴っていた時に聞いたことがある……」
「符号したね」
ヤンは鉛筆の頭で机を軽く叩いた。
「では、状況を整理しよう。
第一に、呑口代議士は東都自動車――すなわち組織の資金提供ノードから巨額の裏金を受け取っていた。
第二に、現在、東京地検特捜部はその資金の流れの尻尾を掴み、呑口に対する強制捜査の令状請求を秒読み段階で進めている。
第三に、検察の厳しい取り調べに耐えられるほど、この代議士の忠誠心や精神力は高くない。逮捕されれば、自己の減刑のために司法取引を持ちかけ、裏金の出所――東都自動車と、その背後にある謎の組織の存在を検察官に吐き出すのは時間の問題だ」
ヤンは冷めた紅茶のカップを揺らし、コナンと灰原を交互に見据えた。
「敵の最高意思決定者――烏丸蓮耶、あるいは現場指揮官の立場になって考えてごらん。この『堤防の決壊』を止めるための手口は、軍事的に見て一つしかない。『被疑者が公権力の手に落ちて口を開く前に、物理的に消滅させること』だ」
「口封じの暗殺……!」
コナンが拳を握りしめた。
「ああ。そして暗殺を実行する場所として、敵はなぜ杯戸シティホテルの追悼会を選んだのか。ここにも明確な軍事合理的理由がある。……宮野君、東都自動車の会長である枡山憲三の写真を確認してくれないかい」
阿笠博士が経済年鑑からコピーしてきた、白髪の老紳士の顔写真を灰原の前に差し出した。
灰原はその写真を凝視した瞬間、全身を強張らせ、喉を詰まらせた。
「……ピスコ。間違いないわ。物心ついた頃、父や母の研究室を訪れていたあの男よ。彼が……東都自動車の会長だったなんて」
「これで全てのピースが噛み合った」
ヤンは白紙のノートに、素早く図を描き始めた。
「暗殺を計画する場合、最も高いハードルとなるのは『ターゲットを確実に特定の場所へ誘い出すこと』、そして『実行犯が不自然さなく現場に滞在し、脱出すること』だ。呑口代議士は現在、マスコミの追跡を恐れて自宅と議員会館に引きこもっている。警察の警備が固いその二カ所を襲撃するのはリスクが高すぎる。しかし、彼が長年親交のあった映画監督の追悼会であり、しかも自らの最大のスポンサーである枡山憲三が発起人を務める公の場となれば、彼は警戒を緩めて姿を現さざるを得ない」
「なるほど……! 枡山が発起人なら、会場のレイアウトやタイムスケジュールまで思い通りに把握できる!」
コナンの声に熱が帯びる。しかし、ヤンは冷静にそれを制した。
「慌ててはいけないよ、工藤君。ここからが戦術の組み立てだ。敵の意図が読めたとしても、こちらの兵力と手段を誤れば、暗殺を止められないばかりか、こちらの存在を敵に晒すことになる」
ヤンは阿笠博士に入手させた、杯戸シティホテル本館の建築構造図と、追悼会が行われるメインバンケット「孔雀の間」の平面図を机に広げた。
「敵の暗殺手段を消去法で絞り込もう。宮野君、ピスコという男の射撃の腕や、組織での役割はどうだったかい?」
「……ピスコ自身は、長年ボスの身辺警護や裏の始末をつけてきた古参の工作員よ。高齢だけれど、銃の扱いはプロ。ただ、彼自身の体格や年齢からして、若い頃のような俊敏な格闘戦やアクロバティックな潜入は不可能だわ」
「ふむ。つまり『老人が単独で、大勢の人間がいるパーティー会場で実行可能な手口』でなければならないわけだ」
ヤンは指を三本立てた。
「第一に、毒殺。グラスへの混入や吹き矢、毒針の類だ。しかし、これはターゲットが確実にその飲食料を口にする保証がなく、また即効性の毒を使った場合、苦悶するターゲットの周囲に即座に人垣ができ、会場全体が緊急封鎖されてピスコ自身が検問を突破できなくなる。不確実性が高すぎる」
「第二に、近接射撃。至近距離から銃で仕留める手口だ。だが、至近距離での発砲は衣服への硝煙反応や返り血のリスクが残り、逃走時に自分が真っ先に疑われる。いくら発起人でも、警察の鑑識を誤魔化すのは難しい」
コナンが平面図の天井を見つめ、ハッと息を呑んだ。
「……まさか、第三の手段か? 『偽装事故』……!」
「そうだよ、名探偵君」
ヤンは図面の「孔雀の間」の中央を指差した。
「この会場の構造的特徴を見てごらん。天井高は約八メートル。そこから真鍮とクリスタルガラスで構成された、重量数百キログラムの大型シャンデリアが三基吊り下げられている。……もし私がピスコなら、どうするか?」
ヤンは追悼会の式次第のペーパーを指先でなぞった。
「午後六時三十分。酒巻昭監督の生前の未公開ダイジェストフィルムの上映。……この間、会場内の全照明は落とされ、数分間の完全な暗転状態が生じる。招待客の視線は一斉に前方の巨大スクリーンへと固定される」
室内の空気が、急速に凍りついていく。
「暗転の瞬間、ターゲットの頭上に吊るされたシャンデリアの支持チェーンを、サイレンサー付きの拳銃で撃ち抜く。暗闇の中での発砲炎(マズルフラッシュ)は、ポケットの中や手元のハンカチで銃口を覆えば隠蔽できるし、衣服への硝煙反応の付着も防げる。落下した数百キロのクリスタルがターゲットを直撃すれば、即死は確実。周囲はパニックになり、人々が出口へ殺到する中で、ピスコは何食わぬ顔で群衆に紛れて銃をポケットに隠し、発起人として『事故の収拾』を装えばいい」
「完璧な偽装事故だ……!」
コナンが呻くように言った。
「暗闇の中でシャンデリアが落ちてきたら、誰も銃撃だとは思わない! 単なる老朽化やボルトの破断による事故死として処理されちまう!」
「そして、その凶器の持ち込みだがね」
ヤンは淡々と論理を進めた。
「追悼会は民間のセレモニーだ。空港やサミットのような金属探知機の手荷物検査など存在しない。ピスコのような老獪なプロであれば、誰かに出し入れを任せるような不確定なリスクは冒さない。彼は間違いなく、自分自身の上着の内ポケットに消音器付きの小型拳銃を忍ばせて会場へ入るはずだ。手元に凶器をキープし続けることこそが、最も確実だからね」
ヤンは平面図の一点をトントンと叩いた。
「この計画を完遂するために不可欠な前提条件はただ一つ。暗転の瞬間、ターゲットをシャンデリアの直下――半径二メートルの『キルゾーン』に正確に立たせておかなければならないということだ。ピスコはどうやって呑口をそこへ誘導すると思うかい?」
「会話で誘導するか……あるいは、何か目印を持たせるかだ」
コナンが顎に手を当てて思考を巡らせる。
「受付で配られる記念品、胸に挿すコサージュ、あるいは床の絨毯の模様……。あらかじめ『監督の思い出話』にかこつけて、特定のスポットライトの真下へ立たせる約束を取り付けておくのが一番確実だ」
「その通りだ、工藤君。敵の作戦プロトコルは完全に透けて見えた」
ヤンは満足そうに頷き、そして姿勢を正した。
「さて、ここからが我々の戦力展開(デプロイメント)だ」
ヤンが告げた瞬間、灰原哀がスツールから立ち上がった。その瞳には、恐怖を押し殺した悲壮な決意が宿っていた。
「私も行くわ。ピスコは私の幼い頃の顔を知っているかもしれない。けれど、遠目からなら組織の人間が放つ独特の気配……ジンや他の工作員が紛れ込んでいないか、私にしか感知できないものがあるはずよ!」
「断固として却下する」
ヤンの声は、感情を一切挟まない、絶対的な平坦さを持っていた。
「な……! どうしてよ! 私だって――」
「宮野君」
ヤンは視線を書類から上げず、冷徹に言葉を紡いだ。
「軍事学において、最も愚かな指揮官とは『自軍の戦略的価値を理解せず、感情で最前線に飛び出す人間』のことだよ。君の現在の存在価値は何だい? 昨夜奪取したAPTX4869の完全データから、元の肉体へ戻るための解毒薬を精製することだ。君の頭脳と知識は、この戦いにおける我が方の唯一無二の後方生産基地(ファクトリー)なんだよ」
灰原が息を詰まらせる。
「敵の最高幹部が待ち受ける閉鎖空間に、なぜ最も狙われている最重要保護対象をわざわざ運んでいく必要がある? 君が会場で恐怖に駆られて動揺し、瞳孔を開かせ、体温を変化させただけで、現場のプロは違和感を察知する。もし君が捕獲されれば、昨夜の苦労も、我々の優位性もすべて水泡に帰す。……君は阿笠邸の地下で、通信機を通じて我々のバックアップとデータの解析に専念しなさい。これは命令ではない、作戦を成功させるための最低限の論理的要請だ」
反論しようと開かれた灰原の唇が、小さく震え、やがて悔しげに結ばれた。
「……わかったわ。私はここに残る」
「賢明だね」
ヤンはふわりと表情を緩め、今度はコナンへと向き直った。
「そして名探偵君。君の配置だが、君は毛利探偵の同伴者という完璧な隠れ蓑(カモフラージュ)を持っている。毛利探偵自身、酒巻監督のファンであり、招待状が届いているはずだね?」
「ああ。蘭も一緒に行く手はずになってる」
「君の任務は、現場における『観測員(スポッター)』だ。ただし、絶対に自らピスコを追い詰めようとしたり、時計型麻酔銃で眠らせようとしてはならない」
コナンが怪訝な顔をした。
「なんでだ? 隙を見て麻酔銃で眠らせて、小五郎のおじさんの声で警察に引き渡せば――」
「二つの理由で自殺行為だよ」
ヤンは指を折った。
「第一に、ピスコのような老獪な工作員は、不測の事態に備えて必ず『予備の自爆装置』や『周囲を巻き込む毒物』を携行している可能性がある。素人の探偵劇で追い詰めれば、窮鼠猫を噛む事態になりかねない。
第二に、そしてこれが最も重要だが……現場にはピスコ以外の『組織の観測員(オブザーバー)』が潜入している可能性が極めて高い」
コナンが背筋を凍らせた。
「ピスコ以外の……!?」
「当たり前じゃないか。巨額の資金を動かす最古参の幹部が、重大な暗殺を行うんだ。組織のトップが、ピスコの『万が一の裏切りや失敗』を監視するための目付役を配置しないはずがない。……おそらく、海外から帰国したばかりの別の幹部か、あるいは現場の外で待機しているジンの回収部隊だ。君が目立つ動きをすれば、その観測員の照準が君自身へ向くことになる」
「じゃあ……どうやって暗殺を止め、ピスコを捕まえるんだよ!?」
ヤン・ウェンリーは、口元に静かで、底知れぬ笑みを浮かべた。
「敵を倒すのに、なぜ私たちが手を汚す必要があるんだい? この国には、年間何千億円もの予算を使って維持されている、極めて強大な公的暴力装置が存在するじゃないか」
「公的暴力装置……警察か!」
「そうさ。敵が最も恐れているのは、私のような無職の居候でも、小さな名探偵でもない。『法と拳銃を持った国家権力そのもの』だよ」
ヤンは阿笠博士に向き直った。
「阿笠博士。昨夜のフロッピーのダンプデータから抽出した、東都自動車から呑口代議士への迂回融資の口座記録、それから南洋交易の決算書の該当ページを、公衆回線から追跡不能な暗号化ファクスで送信する準備をしてほしい」
「お、送り先はどこじゃ? 警視庁捜査二課か?」
「いや。東京地方検察庁特別捜査部(特捜部)、警視庁刑事部(捜査一課および二課)、そして警察庁警備局企画課(公安)の三カ所へ同時にだ」
コナンが眉をひそめ、身を乗り出した。
「検察特捜部と、警察の刑事部に公安……!? なんでそんなバラバラな部署に同時に送るんだ? 捜査が混乱して縄張り争いになるだけじゃねえのか?」
「逆だよ、工藤君。縄張り争いが起きるからこそ、完璧に機能するのさ」
ヤン・ウェンリーは冷めた紅茶のカップを置き、チェス盤の駒を指先で弾くように語り始めた。
「公権力という巨大な機械はね、一つの部署だけに情報を与えると、手柄の独占や事なかれ主義で握りつぶされる恐れがある。だが、事件を立件したい『検察』、暴力犯罪の発生を絶対に防ぎたい警察の『刑事部』、そして国家の暗部を監視する『公安』――互いに激しく反目し合うこの三者に、同時に同一の動かぬ証拠を叩き込めばどうなると思う?」
ヤンの瞳に、官僚機構の力学をチェス盤のように見通す光が宿った。
「まず、東京地検特捜部だ。彼らは長年追ってきた政界汚職の巨頭・呑口代議士を、警察に先を越されて横取りされることを何より嫌う。同時に、『重要参考人を暗殺されて事件をもみ消される』事態だけは絶対に阻止しなければならない。だから特捜部は、裏金の物証を握った瞬間、呑口の緊急身柄拘束と東都自動車の捜索令状請求へ向けて即座に動き出す」
「……検察が動くとなれば、警察の刑事部は黙ってられないな」
「その通りだ、名探偵君」
ヤンは頷き、鉛筆でノートに矢印を書き足した。
「警視庁刑事部――特に捜査一課と二課のプライドは強烈だ。特捜部に手柄を奪われる屈辱を恐れると同時に、もし自分たちの管轄区域である高級ホテルで、現職代議士の白昼堂々の拳銃暗殺など許せば、刑事部長から課長に至るまで全員の首が飛ぶ。『特捜部が呑口を押さえに来るなら、刑事部は現場へ先回りして、拳銃を所持している暗殺者(ピスコ)を現行犯で取り押さえる』という選択肢しか残されなくなる」
「だから目暮警部たちが、令状と大勢の私服捜査員を率いて現場へ踏み込まざるを得なくなるのか……!」
「そして最後の一つ、警察庁警備局――公安警察だ」
ヤンの声がわずかに低くなった。
「公安は、この事件の背後に『単なる汚職や殺人未遂を越えた巨大な組織の影』を直感する。彼らは事件が派手に世間へ漏れるのを防ぎつつ、ピスコが持つ組織の機密データを真っ先に回収するため、現場の外周や出入口に独自の監視網を敷かざるを得ない。……検察、刑事部、公安。三者が互いの抜け駆けを警戒し、恐怖とメンツで縛り合えば、彼らは『明後日の夕方、杯戸シティホテルに圧倒的な人員を送り込み、会場を完全に包囲する』以外の逃げ道を失うのさ」
ヤンが提示した通報文の骨子には、以下の三点が極めて事務的に、しかし法執行機関が無視できない具体的証拠とともに記されていた。
東都自動車・枡山憲三による、呑口重彦代議士への三億円の迂回政治献金の内訳および口座番号。
追悼会において、未公開フィルム上映による暗転時の混乱に乗じ、シャンデリアを落下させて呑口代議士を事故死に見せかける口封じ暗殺計画の存在。
被疑者・枡山憲三は、自らの上着の内ポケットに消音器付き自動拳銃を隠匿して会場内へ持ち込むという、現行犯逮捕のための具体的所持情報。
「これだけの具体性と物証が揃っていれば、警察と検察は『ガセネタ』と疑う余地すらない。刑事部は銃刀法違反と殺人予備の現行犯逮捕を狙って現場に張り込み、特捜部は贈賄の令状を準備して突入のタイミングを待つことになる」
ヤンは立ち上がり、黒いベレー帽を被り直した。
「作戦のタイムラインはこうだ。
午後六時二十四分。暗転の数分前、工藤君、君は毛利探偵を利用して、呑口代議士をシャンデリアの真下から強制的に引き離す。ワインをこぼすか、給仕のトレイをぶつけるんだ。服を汚された代議士は、暗転の前に必ず化粧室へ向かわざるを得なくなる。
そして午後六時三十分。暗転直後、キルゾーンが空虚になった瞬間、外で待機していた目暮警部たち刑事部と特捜部が会場を一斉に点灯させ、枡山憲三を取り囲む」
ヤンは窓の外、冷たい冬の星空を見上げた。
「引き金を引くことすらできず、上着の内ポケットに拳銃を握ったまま、衆人環視の中で現行犯逮捕される。そして外で待機しているジンの回収車列は、ホテルの周囲を埋め尽くした捜査車両と警察官を前に、指をくわえて撤退するしかない」
自らの手を汚さず。
正体を一ミリも晒さず。
公権力という巨大な怪物の習性を利用して、敵の急所を的確に圧殺する。
「……完璧なチェックメイトだ」
コナンは呟き、全身を駆け抜ける武者震いを抑えられなかった。推理で事件の謎を解くのではなく、事件そのものを発生の瞬間に力技で圧殺する、かつて見たこともない巨視的な頭脳戦。
「さて、工藤君、宮野君。明日の夜までは、何事もなかったかのように日常を過ごしたまえ。私は……そうだな、明日の午後のティータイムのために、少し上等なブランデーでも調達してくるとしようか」
ヤン・ウェンリーはいつもの気だるげな足取りで、地下工房の階段をトコトコと上がっていった。
その背中を見送りながら、小さな名探偵と元組織の科学者は、半世紀にわたり闇に君臨してきた巨大な怪物の足元が、音を立てて崩れ落ちていく確かな予感を抱いていた。