方城開局   作:機織りカエル

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4話と幕間の間に主人公情報を載せてるので見といてね、結構ちゃんと考えたから。


第8話:東オーラス、正義の放銃

 日車は木槌を高く掲げた。

 

 その瞳に宿るのは、理不尽な世界に絶望しながらも、なお『事実と正義』を手放さない法律家のプライドだった。

 

「詭弁(ギャンブル)で、現実(ファクト)を汚すな。――裁判長、被告人の弁明はすべて失当。情状酌量の余地なし。速やかな結審と、最高刑を求刑する!!」

 

ドンッ!!!

 

 日車が渾身の力で木槌を叩きつけた。法廷の空気が震え、日車の言葉が一枚の牌となって卓へ放たれる。

 

 その牌は――字牌の「白」。

 

 白い牌面に、何も描かれていない一枚。だが、日車の正義と怒りを背負ったその牌は、刃のように鋭く雀ヶ原へと迫った。

 

「――ロン」

 

 雀ヶ原は、迷いなく宣言した。

 

「ありがと。ごちそうさまでした」

 

 カチャリ。

 

 雀ヶ原は手牌を倒した。

 

 三組の槓子。一組の刻子。

 

 そして、最後に雀頭となる一対の「白」。

 

 その手牌は、すでに完成していた。

 

「なっ……!?」

 

 日車は目を見開いた。

 

「待て……! お前は立直をしていない。しかも、私が最後に放ったのは――」

 

「白だろ?」

 

 雀ヶ原は、倒した手牌を指先で示した。

 

「俺は白単騎。最後の雀頭を待ってたんだよ。お前が攻撃に変えたその一枚で、ちょうど完成ってわけ」

 

「馬鹿な……!」

 

 日車の視線が、雀ヶ原の手牌を走る。三組の槓子対々和を成立させる刻子。そして、白の雀頭。

 

「お前は……最初から、この形を狙っていたのか……?」

 

「最初から全部決まってたわけじゃねぇよ。勝ち筋が見えたから、そこに向かって手を組んだ。それだけだ」

 

 雀ヶ原は肩をすくめた。

 

「俺の手は、三槓子と対々和。そこにドラが四つ。合計八翻――倍満だ」

 

【和了形:三槓子】

【和了形:対々和】

【ドラ:4】

【合計:8翻】

【打点:倍満】

 

 打点のアナウンスが飛ぶ。

 

「8翻……倍満……!」

 

 日車の顔から血の気が引いた。

 

 最初の告発から、ここまでの攻防が頭の中でつながっていく。営業妨害の告発から生まれた牌を、雀ヶ原は攻撃として受けるのではなく、手牌へ取り込んだ。

 

 ポン。

 

 そして、同じ牌の四枚目を加えた加槓。

 

 さらに二組の暗槓。

 

 攻撃を受けながら、雀ヶ原は着実に三槓子を完成させていた。

 

「最初に私が放った牌を……攻撃として受けるのではなく、利用したのか……!」

 

「やっと分かったか」

 

 雀ヶ原は口元についた血を、ジャージの袖で拭った。

 

「お前は俺を追い詰めてるつもりだったんだろうけどな。俺にとっちゃ、使えるもんは全部使う。お前の告発も、攻撃も、ルールもな」

 

「異議あり……!」

 

 日車は卓に手をつき、ジャッジマンを仰いだ。

 

「この領域の裁定には瑕疵がある! 手続きの再確認を要求する! 再審を請求する!!」

 

 しかし、ジャッジマンは動かない。雀ヶ原は深いため息をついた。

 

「あのさぁ、弁護士。再審ってのは、判決が確定してから申し立てるもんだろ」

 

 一歩、日車へ近づく。

 

「まだゲーム中なのに、都合が悪くなったからって卓を巻き戻せるわけねぇじゃん」

 

【不服申し立て:再審請求】

【判定:却下】

【システム優先順位に基づき、現局の和了および精算を最優先します】

 

「しまっ――」

 

 日車の頭脳が、領域のルールを理解してしまった。再審を行うには、今の裁定を受け入れ、法廷を一度終わらせなければならない。

 

 だが、この領域では和了が成立した時点で、現局の精算が優先される。自分が築いた法廷のルールが、自分自身の敗北を覆すことを許さない。

 

【和了成立】

【対々和:2翻】

【三槓子:2翻】

【ドラ:4翻】

【合計:8翻】

【倍満の因果ダメージを確定】

 

「完璧な正論ってのも、使いどころを間違えりゃ放銃になるんだよ」

 

 雀ヶ原が指先を鳴らした。

 

ドゴォォォォォォォォンッッッッ!!!!

 

 倍満の因果が呪力衝撃波となり、日車の身体を直撃した。三つ揃えのスーツが引き裂かれ、呪力防壁が音を立てて砕け散る。日車はコンクリートの床を転がり、壁に激突して血を吐いた。

 

「が、あああッ……!」

 

 衝撃は肉体だけにとどまらない。術式を維持する呪力の流れが乱れ、日車の領域は崩壊していく。黒い麻雀卓も、法廷の幻影も、ガラスのように砕けて消えた。

 

 やがて、二人を包んでいた領域は完全に消滅した。日車は血のにじむ床に伏せながら、それでも震える手を伸ばした。

 

「次……だ。次の裁判を……」

 

 だが、呪力は底をつきかけていた。術式を維持する余力もなく、ジャッジマンを呼び出すことすらできない。

 

 雀ヶ原は日車を見下ろした。

 

「もう無理だろ。今のお前に、次の裁判を始める余力はねぇよ」

 

 日車は答えなかった。それでも、その目から正義への執念が消えたわけではなかった。

 

 正義と詭弁。

 

 法廷と博打。

 

 その勝負は、雀ヶ原の和了によって幕を下ろした。雀ヶ原はコガネを呼び出し、日車のポイントを確認した。

 

「さて、と。勝負は終わった。こっちはこっちで、精算してもらわねぇとな」

 

表示された保有ポイントは――102ポイント。

 

「100ポイントあるんだろ。なら、約束どおりルールを追加してもらうぜ」

 

 日車は血のにじむ床に伏せたまま、雀ヶ原を睨み上げた。

 

「……私に、ルールを追加しろと言うのか」

 

「そういう約束だったろ。お前が勝負に負けたからって、話までなかったことにするつもりはねぇよな?」

 

 日車はしばらく黙っていた。

 

 やがて、震える声でコガネを呼び出しルールの追加をした。

 

 死滅回游の総則に、新たな一文が加わった。

 

【泳者による死滅回遊へのルール追加が行われました】

【《総則》--10】

【泳者は他泳者に任意の得点を譲渡することができる】

 

 ルールの追加が完了する。

 

 日車の保有ポイントは、残り2ポイントとなった。

 

「で、残りの2ポイントの内の1点を俺に譲渡してくれ」

 

「……勝負に勝っただけで、そこまで要求するのか」

 

「勝負に勝ったから要求してんだよ。あんたが納得できるかどうかと、俺が勝ち分を回収するかどうかは別の話だろ」

 

 日車は雀ヶ原を睨んだ。その目には、まだ反発が残っていた。それでも、日車は飲み込み、点数譲渡を黄金に頼んだ。

 

【ポイント譲渡】

【移動元:日車寛見】

【移動先:雀ヶ原雀】

【譲渡ポイント:1】

 

 処理が完了した。日車の保有ポイントは1。雀ヶ原に1ポイントが加算された。

 

「よし。これで精算終了っと」

 

 雀ヶ原は端末をしまい、倒れた日車を見下ろした。

 

「正義も結構。法律も結構。けどな、勝負の結果は結果だ」

 

そして、大の字に倒れ込む。

 

「――ごちそうさまでした」

原作基準で行きますか?

  • はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
  • いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で
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