ドババババババッッ!!!!
東京第2結界、臨海公園。
秤金次と鹿紫雲一の殴り合いは、もはや人間の領域を完全に超越していた。
遠隔ハッキングによるイカサマバフ――大三元の連動効果と『
「オラァッ!!」
「ハッ!!」
秤の呪力をまとった拳が、鹿紫雲の顔面を捉える。
だが、鹿紫雲は怯まない。
秤の肉体には負の電荷を、自身の肉体には正の電荷を蓄積させていく。一度蓄積された電荷は、次の必中の稲妻へとつながる。
秤が殴る。鹿紫雲が受ける。そして、鹿紫雲が反撃する。互いに一歩も引かない攻防の中、確変の制限時間が刻一刻と迫っていた。
4分11秒。
その終わりは、すぐそこまで来ている。
(――ここだ)
鹿紫雲が手をかざした瞬間、世界が白く染まった。
必中の稲妻。
音を置き去りにした超高電圧の電撃が、秤の左腕を肩口から吹き飛ばす。
同時に、鹿紫雲は秤の脳を狙っていた。
反転術式による再生の要を潰す。そこを断てば、いくら呪力が溢れていようと回復は間に合わない。だが、秤は寸前で首を傾けた。
致命傷を避けた代償に、左腕を丸ごと失う。
「ハッ、腕の一本、
そして――。
【確変終了】
【無制限の呪力溢出:終了】
秤の全身を包んでいた黄金の呪力が、一瞬だけ途切れた。その直後。
「領域展開――『坐殺博徒』!!」
秤は、再び領域を押し通した。
左腕を失ったまま、死の淵で引き当てる次の大当たり。一回転ごとに命を賭ける、1/239の地獄の抽選。
鹿紫雲の猛攻が秤の肉体を切り刻む中、主題歌のビートが再び鳴り響く。
【
「嘘だろ、コイツ……ッ!!」
鹿紫雲が初めて声を荒らげた。
腕を失い、死の淵に立ちながら、秤は自分自身の豪運だけで再び大当たりを引き当てたのだ。雀ヶ原の遠隔アシストは、もうない。大三元の重力も、魂を焼く熱も、急速な治癒もない。『天衣無縫・連荘親番』による連動効果も、すでに消えている。
それでも、秤は当たりを引いた。
「ひゃはははは! 言ったろ! 俺は運がいいんだよォォォッッ!!」
再び無制限の呪力が溢れ出す。失われた左腕を、反転術式が修復していく。
秤は笑った。
自分の命を賭け、確率を引き当て、何度でも立ち上がる。それこそが、秤金次というギャンブラーだった。
そこからは、海水をも巻き込んだ極限の泥仕合となった。
鹿紫雲は臨海公園の海水を利用し、電気分解によって生じる塩素や水素、酸素を戦術に組み込む。さらに水蒸気爆発を引き起こし、秤をまとめて吹き飛ばそうとした。
爆音。閃光。飛び散る海水。
秤の肉体は何度も損傷する。だが、確変中の無制限の呪力と自動反転術式によって、そのたびに修復されていった。
「しつけぇな……! 何回ぶっ壊しゃ止まるんだよ、お前は!」
「そりゃこっちの台詞だっつーの!!」
秤は海水の中でも止まらない。
呪力を無駄なく攻防へ回す雀ヶ原の同期補正は、もう届いていない。それでも、秤は自分の呪力と反転術式を頼りに、鹿紫雲へ食らいついた。
そして、最後の一撃。
秤は鹿紫雲の肉体を海へと叩き落とした。
凄まじい水蒸気爆発が、辺りを真っ白に染め上げる。
--数秒後。爆風が収まった海岸に、二人の男が倒れ込んでいた。
「ハァ……ハァ……。クソが、死ぬかと思ったわ……」
秤は大の字にひっくり返り、荒い息を吐いた。隣では、呪力を使い果たした鹿紫雲が、ピクリとも動かずに空を仰いでいる。
「……俺の、負けか」
鹿紫雲は、どこか満足げに呟いた。
「呪力を使い切った。……さぁ、殺せよ」
秤は残された右手を持ち上げた。
「殺すわけねぇだろ」
「……何?」
「第一、俺はお前に勝ったと思えねぇ。術式使わずに呪力特性と操作でこんだけ出来んだ。よくやるよ」
「俺の術式は一発しか使えない。宿儺にしか使うつもりはない」
「なるほどな、だったら俺たちの
秤はゲラゲラと笑った。
「雀のハックがなくても、俺の豪運とお前のパワーがあれば、この死滅回游ってクソ卓を完全に制圧できるわ」
鹿紫雲の目が、わずかに見開かれる。
「……両面宿儺と、戦えるんだな」
その口元に、凶悪な笑みが戻った。
「いいだろう。君のその泥臭いギャンブル、僕も一枚噛ませてもらうよ」
【東京第2結界:南四局(オーラス)――決着】
【勝者:秤金次】
【鹿紫雲一:生存】
【鹿紫雲一の保持ポイント:200ポイント】
【鹿紫雲一が高専チームに合流】
鹿紫雲の200ポイントは、移動していない。秤が奪ったわけでも、コガネを通して譲渡したわけでもない。200ポイントを持つ強者が、そのまま仲間になったのだ。それは、殺して奪うよりもはるかに大きな戦力の獲得だった。
勝負は決した。だが、ポイントは動かなかった。
鹿紫雲一は生きている。200ポイントも、その手元に残ったままだ。
秤は相手を殺さず、鹿紫雲もまた、敗北と引き換えに自分の目的へ続く道を手に入れた。勝者と敗者が決まったにもかかわらず、卓の上には何も失われずに残っている。それは、殺し合いを強制する死滅回游において、奇妙な結末だった。
――流局。
勝負が終わっても、すべてが清算されたわけではない。
二人の勝負師は次の局へ進むため、同じ卓に座ることを選んだ。
*
同時刻。東京第1結界。
日車との勝負を終えた東京都庁の最上階で、雀ヶ原雀は壁にもたれかかっていた。
「あー……。ダル……」
ジャージの袖で鼻の頭の血を拭い、コガネの情報を見る。東京第2結界の最新の泳者一覧が表示されていた。
そこには、単独で200ポイントを保持したままの『鹿紫雲一』の名前がある。
ポイントは減っていない。
鹿紫雲の表示も、秤の表示も消えていない。雀ヶ原は、画面を見ながら口元を歪めた。秤が勝つと思っているからだ。こちらからはどうなっているかはわからない。
「軍資金は、必要だな」
面倒くさそうに首を鳴らし立ち上がる。
「さて、虎杖たちを探すか」
東京都庁の窓の向こうには、呪霊に覆われた東京の街が広がっていた。
主催者――羂索が作り上げた、理不尽なゲーム。
その卓に座らされた泳者たちは、殺し合いを強制されている。
ならば。
「ここから本格的に、打ち回しで進めようじゃねぇか」
雀ヶ原は、タバコをポケットへ押し込んだ。
ギャンブラーたちの仕込みは、まだ終わっていない。ポイントを奪うのではなく、ポイントを持ったままの強者を味方につける。
それもまた、この理不尽な卓を攻略するための一手だった。
死滅回游は、彼らのギャンブルによって、静かに、しかし確実に侵食され始めていた。
格ゲーの才能が、無いんだよなぁー
原作基準で行きますか?
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はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
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いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で