方城開局   作:機織りカエル

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第17話:姉の離脱(オリ)、姉の和了り

  

 11月16日、正午。東京第1コロニー。

 

 ビルの屋上で、雀ヶ原雀たちは真希からの連絡を待っていた。

 

 いや、正確には連絡ではない。屋上へ続く扉が開き、足音が近づいてくる。

 

「待たせたな」

 

 現れたのは禪院真希だった。

 

「真希さん!」

 

 虎杖が声を上げる。

 

 真希は何事もなかったかのように屋上へ入ってくる。呪力を持たない彼女は、結界の侵入制限を受けない。東京第1コロニーの外から、そのまま中へ入ってきたのだ。

 

「……半端から一端には変わったか?」

 

 雀がぼそりと呟く。

 

「うるせぇよクソニート」

 

「いや、別に?で、何があった?マキマキ」

 

 雀に促され、真希は本題に入った。

 

「虎杖の自称兄の話だが、天元様が羂索の手落ちた」

 

 その場の空気が変わった。

 

「……え?」

 

 虎杖の表情が固まる。

 

「それと、九十九由基が死んだ」

 

「九十九さんが……?」

 

 虎杖は言葉を失った。伏黒も険しい顔で黙り込む。

 

 天元を守るために戦った九十九が敗れ、天元自身も羂索に取り込まれた。状況は、想定していた以上に悪い。

 

「……マジかよ」

 

 雀は短く息を吐いた。

 

「天元様を取り込んだなら、羂索の計画はもう始まってるんじゃないのか?」

 

 虎杖の疑問に、伏黒が答える。

 

「いや。それなら、どうしてまだ同化が始まっていない?」

 

 天元が羂索の手に落ちた。それにもかかわらず、日本中の人間と天元の同化は始まっていない。

 

 そこには、まだ何か条件があるのかもしれない。

 

「慣らしが完成したことと、実際に同化を始めることは別なのかもしれないな」

 

 雀が腕を組む。

 

「あるいは、まだ何か準備が必要なのか。……どっちにしろ、今の情報だけじゃ断定できねえ」

 

「羂索が何を考えているのか、直接確かめるしかないってことか」

 

 伏黒はそう言って、話題を切り替えた。

 

「それより、今は追加するルールについて確認したい」

 

     ◇

 

「そういえば、なんで先輩たちは総則(ルール)をすぐ追加しなかったんだ?」

 

 虎杖の問いに、伏黒は指を立てながら説明を始めた。

 

「追加を希望していたのは、次の四つだ」

 

 指を一本立てる。

 

「①ポイントの譲渡」

 

 二本目。

 

「②コロニーの出入り」

 

 三本目。

 

「③結界内外での通信」

 

 最後に、四本目。

 

「④死滅回游からの離脱」

 

「どんなルールを追加するかは決まってたんだよな?」

 

 虎杖が確認する。

 

「ああ。ただ、追加する順番には意味がある」

 

 伏黒は続けた。

 

「まず①。ポイントの譲渡だ。これがなければ、他の泳者が持っているポイントを使ってルールを追加することができない」

 

「なるほど……」

 

「問題は②と③だ」

 

 伏黒は真希へ視線を向けた。

 

「コロニーの出入りと、結界内外の通信。この二つが追加できれば、コロニー間の移動や連絡が自由になる」

 

「でも、真希さんがいるなら……」

 

 虎杖が言いかけると、真希が頷いた。

 

「私は結界を素通りできる。コロニーの出入りに関しては、ルールを追加しなくても何とかなる」

 

「私も移動できますよ」

 

「それは来栖の術式のおかげだろ?他のプレイヤーは動けない」

 

「もちろん、全員が自由に連絡できるわけじゃないし、天使みたいに移動はできない」

 

「つまり、②と③は便利だが、今すぐ絶対に必要ってわけじゃない」

 

 雀がまとめた。

 

「なら、先に④だな」

 

 伏黒が頷く。

 

「死滅回游からの離脱。まずはそれを追加する」

 

     ◇

 

「コガネ」

 

 伏黒が呼びかけると、式神が姿を現した。

 

「ルールの追加を要求する。死滅回游から、プレイヤーが離脱できるようにしろ」

 

『却下。総則7に抵触します』

 

「……やっぱりか」

 

 伏黒は顔をしかめた。

 

 そのままでは認められないことは、想定していた。

 

「なら、条件を変える。離脱するプレイヤーの代わりに、結界の外にいる人間を新たなプレイヤーとして連れてくる。それならどうだ?」

 

『却下。総則7に抵触します』

 

 再び、拒否。

 

「何が問題なんだ?」

 

 虎杖が眉をひそめる。

 

 コガネは、代わりの条件を提示した。

 

『追加で100点を支払う場合、ルールの追加が可能です』

 

「……追加で100点?」

 

 伏黒の表情が険しくなった。

 

 雀も目を細める。

 

「待て。身代わりを用意するだけなら、離脱するプレイヤーと入れ替わるだけだ。プレイヤーの総数は変わらねえ」

 

 雀はコガネを見据えた。

 

「なのに、そっちの条件じゃ追加で100点が必要になる。その点数を用意するために、さらにプレイヤーが死ぬ可能性があるだろ」

 

 コガネは答えない。

 

「身代わりだけなら、プレイヤーはプラスマイナスゼロだ。なのに、そっちの提案だと余計に人が死ぬ。そっちの方が総則7に抵触するんじゃねえのか?」

 

『その指摘は、ルール追加の条件を変更する理由にはなりません』

 

「……融通が利かねえな」

 

 雀が吐き捨てる。

 

 コガネは、追加の100点を支払う方式を撤回しなかった。

 

 伏黒はしばらく考えた後、息を吐いた。

 

「……分かった。その条件でいい」

 

「伏黒!」

 

 虎杖が声を上げる。

 

「他に方法がない。今は津美紀を離脱させる手段を確保するのが先だ」

 

 伏黒はコガネに向き直る。

 

「追加の100点を支払う。その条件で、死滅回游からの離脱を可能にするルールを追加しろ」

 

『ルールの追加を受理しました』

 

 コガネの声が響く。

 

『総則11。プレイヤーは、100点を支払うことで、身代わりとなるプレイヤーを用意し、死滅回游から離脱することができる』

 

 ルールが追加された。

 

 伏黒は小さく息を吐く。これで、津美紀を救い出すための手段が一つできた。

 

「真希さん。頼みがある」

 

 伏黒は真希へ向き直った。

 

「津美紀を連れてきてほしい」

 

「分かった。すぐに向かう」

 

 真希は余計なことを聞かず、屋上を後にした。伏黒はその背中を見送る。

 

 ようやく、姉を死滅回游から救い出すための道筋が見えた。

 

     ◇

 

 同日、15時。東京第1コロニー。

 

 真希に連れられ、津美紀が雀たちのもとへやってきた。

 

「津美紀!」

 

 伏黒が駆け寄る。

 

 久しぶりに姉の姿を見た伏黒の表情には、安堵が浮かんでいた。

 

「恵……」

 

 津美紀は弟を見つめた。

 

「よかった。無事だったんだね」

 

「ああ。……もう大丈夫だ。これから、ここを出よう」

 

 伏黒は津美紀にポイントを譲渡した。これで、津美紀は100点を持つことになる。

 

「これでルールを追加できる。コガネ」

 

 津美紀が呼びかけた。

 

「コロニー間を自由に移動できるようにしてちょうだい」

 

『ルールの追加を受理しました』

 

 コガネが応答する。

 

 その瞬間だった。

 

 津美紀の様子が変わった。伏黒が知っている姉とは違う、どこか不自然な言動。

 

 雀はその変化を見逃さなかった。

 

「……おい」

 

 雀の声が低くなる。伏黒も、目の前の人物に違和感を覚えた。

 

 姉を救うために用意したはずの手段。その一手によって、彼らは気づいてしまった。

 

 目の前にいるのは、本当の津美紀ではない。

 

“津美紀の身体を使っている、別の何者か”

 

 伏黒の表情から、安堵が消えた。

 

 死滅回游の盤面は、まだ終わっていなかった。

原作基準で行きますか?

  • はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
  • いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で
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