11月16日、正午。東京第1コロニー。
ビルの屋上で、雀ヶ原雀たちは真希からの連絡を待っていた。
いや、正確には連絡ではない。屋上へ続く扉が開き、足音が近づいてくる。
「待たせたな」
現れたのは禪院真希だった。
「真希さん!」
虎杖が声を上げる。
真希は何事もなかったかのように屋上へ入ってくる。呪力を持たない彼女は、結界の侵入制限を受けない。東京第1コロニーの外から、そのまま中へ入ってきたのだ。
「……半端から一端には変わったか?」
雀がぼそりと呟く。
「うるせぇよクソニート」
「いや、別に?で、何があった?マキマキ」
雀に促され、真希は本題に入った。
「虎杖の自称兄の話だが、天元様が羂索の手落ちた」
その場の空気が変わった。
「……え?」
虎杖の表情が固まる。
「それと、九十九由基が死んだ」
「九十九さんが……?」
虎杖は言葉を失った。伏黒も険しい顔で黙り込む。
天元を守るために戦った九十九が敗れ、天元自身も羂索に取り込まれた。状況は、想定していた以上に悪い。
「……マジかよ」
雀は短く息を吐いた。
「天元様を取り込んだなら、羂索の計画はもう始まってるんじゃないのか?」
虎杖の疑問に、伏黒が答える。
「いや。それなら、どうしてまだ同化が始まっていない?」
天元が羂索の手に落ちた。それにもかかわらず、日本中の人間と天元の同化は始まっていない。
そこには、まだ何か条件があるのかもしれない。
「慣らしが完成したことと、実際に同化を始めることは別なのかもしれないな」
雀が腕を組む。
「あるいは、まだ何か準備が必要なのか。……どっちにしろ、今の情報だけじゃ断定できねえ」
「羂索が何を考えているのか、直接確かめるしかないってことか」
伏黒はそう言って、話題を切り替えた。
「それより、今は追加するルールについて確認したい」
◇
「そういえば、なんで先輩たちは
虎杖の問いに、伏黒は指を立てながら説明を始めた。
「追加を希望していたのは、次の四つだ」
指を一本立てる。
「①ポイントの譲渡」
二本目。
「②コロニーの出入り」
三本目。
「③結界内外での通信」
最後に、四本目。
「④死滅回游からの離脱」
「どんなルールを追加するかは決まってたんだよな?」
虎杖が確認する。
「ああ。ただ、追加する順番には意味がある」
伏黒は続けた。
「まず①。ポイントの譲渡だ。これがなければ、他の泳者が持っているポイントを使ってルールを追加することができない」
「なるほど……」
「問題は②と③だ」
伏黒は真希へ視線を向けた。
「コロニーの出入りと、結界内外の通信。この二つが追加できれば、コロニー間の移動や連絡が自由になる」
「でも、真希さんがいるなら……」
虎杖が言いかけると、真希が頷いた。
「私は結界を素通りできる。コロニーの出入りに関しては、ルールを追加しなくても何とかなる」
「私も移動できますよ」
「それは来栖の術式のおかげだろ?他のプレイヤーは動けない」
「もちろん、全員が自由に連絡できるわけじゃないし、天使みたいに移動はできない」
「つまり、②と③は便利だが、今すぐ絶対に必要ってわけじゃない」
雀がまとめた。
「なら、先に④だな」
伏黒が頷く。
「死滅回游からの離脱。まずはそれを追加する」
◇
「コガネ」
伏黒が呼びかけると、式神が姿を現した。
「ルールの追加を要求する。死滅回游から、プレイヤーが離脱できるようにしろ」
『却下。総則7に抵触します』
「……やっぱりか」
伏黒は顔をしかめた。
そのままでは認められないことは、想定していた。
「なら、条件を変える。離脱するプレイヤーの代わりに、結界の外にいる人間を新たなプレイヤーとして連れてくる。それならどうだ?」
『却下。総則7に抵触します』
再び、拒否。
「何が問題なんだ?」
虎杖が眉をひそめる。
コガネは、代わりの条件を提示した。
『追加で100点を支払う場合、ルールの追加が可能です』
「……追加で100点?」
伏黒の表情が険しくなった。
雀も目を細める。
「待て。身代わりを用意するだけなら、離脱するプレイヤーと入れ替わるだけだ。プレイヤーの総数は変わらねえ」
雀はコガネを見据えた。
「なのに、そっちの条件じゃ追加で100点が必要になる。その点数を用意するために、さらにプレイヤーが死ぬ可能性があるだろ」
コガネは答えない。
「身代わりだけなら、プレイヤーはプラスマイナスゼロだ。なのに、そっちの提案だと余計に人が死ぬ。そっちの方が総則7に抵触するんじゃねえのか?」
『その指摘は、ルール追加の条件を変更する理由にはなりません』
「……融通が利かねえな」
雀が吐き捨てる。
コガネは、追加の100点を支払う方式を撤回しなかった。
伏黒はしばらく考えた後、息を吐いた。
「……分かった。その条件でいい」
「伏黒!」
虎杖が声を上げる。
「他に方法がない。今は津美紀を離脱させる手段を確保するのが先だ」
伏黒はコガネに向き直る。
「追加の100点を支払う。その条件で、死滅回游からの離脱を可能にするルールを追加しろ」
『ルールの追加を受理しました』
コガネの声が響く。
『総則11。プレイヤーは、100点を支払うことで、身代わりとなるプレイヤーを用意し、死滅回游から離脱することができる』
ルールが追加された。
伏黒は小さく息を吐く。これで、津美紀を救い出すための手段が一つできた。
「真希さん。頼みがある」
伏黒は真希へ向き直った。
「津美紀を連れてきてほしい」
「分かった。すぐに向かう」
真希は余計なことを聞かず、屋上を後にした。伏黒はその背中を見送る。
ようやく、姉を死滅回游から救い出すための道筋が見えた。
◇
同日、15時。東京第1コロニー。
真希に連れられ、津美紀が雀たちのもとへやってきた。
「津美紀!」
伏黒が駆け寄る。
久しぶりに姉の姿を見た伏黒の表情には、安堵が浮かんでいた。
「恵……」
津美紀は弟を見つめた。
「よかった。無事だったんだね」
「ああ。……もう大丈夫だ。これから、ここを出よう」
伏黒は津美紀にポイントを譲渡した。これで、津美紀は100点を持つことになる。
「これでルールを追加できる。コガネ」
津美紀が呼びかけた。
「コロニー間を自由に移動できるようにしてちょうだい」
『ルールの追加を受理しました』
コガネが応答する。
その瞬間だった。
津美紀の様子が変わった。伏黒が知っている姉とは違う、どこか不自然な言動。
雀はその変化を見逃さなかった。
「……おい」
雀の声が低くなる。伏黒も、目の前の人物に違和感を覚えた。
姉を救うために用意したはずの手段。その一手によって、彼らは気づいてしまった。
目の前にいるのは、本当の津美紀ではない。
“津美紀の身体を使っている、別の何者か”
伏黒の表情から、安堵が消えた。
死滅回游の盤面は、まだ終わっていなかった。
原作基準で行きますか?
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はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
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いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で