領域展開が使えなくなったからといって、五条悟の戦闘能力が失われたわけではない。
むしろ、領域の押し合いから解放されたことで、五条は肉弾戦に集中できるようになっていた。
五条が踏み込む。
宿儺が迎撃しようとするが、その拳が届くより早く、五条の打撃が宿儺の身体を捉えた。
ただの拳ではない。
五条は術式の順転「蒼」を打撃に組み込んでいる。周囲の空間を引き寄せる力を拳に重ねることで、相手を引き寄せながら強烈な一撃を叩き込む。
宿儺の身体が大きく揺れた。
「……やっぱり、領域が使えなくなっても五条先生の攻撃は変わらないな」
戦況を見守る虎杖が呟く。
「いや、むしろ肉弾戦に集中できるようになった分、厄介になってる」
隣で雀が答えた。
「五条先生は打撃に『蒼』を纏ってる。相手を引き寄せる力を拳に重ねて、普通の打撃じゃ届かない間合いからでも叩き込めるんだ」
「そんなことまでできるのか……」
「できるから最強なんだろ。あの人の場合、単純な殴り合いに見えても、術式の使い方が一段違う」
五条は攻撃の手を緩めない。
宿儺を建物の壁面へ叩きつけ、さらに蒼の引力で周囲の瓦礫を集める。
宿儺は瓦礫を破壊して抜け出すが、五条は間髪入れずに追撃を仕掛けた。
宿儺も反撃する。
互いの拳が交差し、衝撃が周囲へ広がった。その間も、魔虚羅の法陣は宿儺の頭上に浮かんでいる。
雀はそれを見逃さなかった。
「……まだ回ってるな」
「魔虚羅の法陣か?」
「ああ。五条先生の無下限呪術に適応するまで、残りの回転数を数えてたはずだ」
雀は戦場から目を離さずに続ける。
「宿儺は五条先生と戦いながら、魔虚羅の適応を進めてる。五条先生が攻めてるように見えても、時間をかければかけるほど、あっちの手札が増えていく」
「じゃあ、早く決着をつけないと……」
「そういうことだ」
五条も、そのことは理解しているはずだった。だからこそ、攻撃の手を緩めない。
五条の手元に、赤い球体が生まれる。
術式反転「赫」。
五条はそれを宿儺へ放った。
宿儺は建物の柱を利用して攻撃を避ける。赫はそのまま建物を貫き、宿儺の背後へと回り込んでいった。
「……避けた?」
虎杖が目を見開く。
「いや、まだだ」
雀は画面を見つめるように、戦場の動きを追っていた。
五条が放った赫は、まだ爆発していない。
建物の形状を利用して軌道を変え、宿儺の背後へ回り込ませていたのだ。
宿儺がそのことに気づいた瞬間、赫が背後で炸裂した。
「なっ……!」
爆発に巻き込まれ、宿儺の身体が大きく吹き飛ぶ。
五条はその隙を逃さなかった。
一気に距離を詰め、宿儺の顔面へ拳を叩き込む。
黒い火花が散った。
黒閃。
五条の一撃が、宿儺の身体を強烈に打ち抜いた。宿儺の身体が揺れ、そのまま意識を失ったかのように動きを止める。
「黒閃……!」
虎杖が声を上げた。
雀も目を細める。
「決まったな」
五条の一撃は、宿儺を一時的に意識を失わせるほどの威力を持っていた。
しかし、その直後だった。
宿儺の頭上にあった魔虚羅の法陣が落下する。
地面に触れた法陣が、もう一度回転した。
「……!」
雀の表情が変わる。
宿儺の足元に広がる影が不自然に広がり、五条の足元まで影が伸びた。
次の瞬間、その影の中から巨大な腕が現れる。
魔虚羅。
その巨体が影から姿を現し、五条へ向けて剣を振るった。
五条は反応するが、斬撃は無下限呪術を突破していた。
「五条先生!」
虎杖が叫ぶ。
魔虚羅の剣が五条の肩を斬り裂く。
五条は距離を取り、傷を負った肩を確認した。
「……なるほどね」
雀は魔虚羅の姿を見つめていた。
「適応が完了したんだ」
「無下限に?」
「ああ。魔虚羅は、五条先生の無下限呪術に適応した。だから、今の斬撃は不可侵を突破して届いた」
雀は続ける。
「さっきまでの攻撃は、無下限に阻まれていた。けど、もう同じ手は通用しない。少なくとも、魔虚羅にはな」
虎杖は唇を噛んだ。
「じゃあ、五条先生は……」
「まだ終わってねえよ。あの人が、ここで簡単に負けるわけがない」
雀の声には、いつもの気怠さがなかった。
五条は魔虚羅と向き合い、再び構える。宿儺も、ゆっくりと身体を起こしていた。
黒閃の直撃を受けた影響は残っているようだが、完全に戦闘不能になったわけではない。
魔虚羅が五条へ向かって動く。
五条はその攻撃を受け止め、反撃を繰り出した。宿儺も加わり、二方向から五条へ攻撃を仕掛ける。
五条はそれらを捌きながら、魔虚羅を破壊する機会を窺っていた。だが、宿儺はその隙を与えない。
魔虚羅の適応によって、五条の無下限呪術は突破されるようになった。
それだけでも十分に厄介な状況だ。
そして、宿儺はさらに手札を増やす。
「……まだ何か出す気か?」
雀が呟いた。
宿儺の足元に、再び影が広がる。そこから現れたのは、巨大な式神だった。
鵺を基盤に、複数の式神を組み合わせた嵌合獣。
『
「式神……?」
虎杖が目を見開く。
「伏黒の十種影法術だ」
雀が答えた。
「複数の式神を組み合わせてる。魔虚羅だけでも厄介なのに、さらに一体追加してきやがった」
宿儺は顎吐を従え、五条を見据える。
魔虚羅が前へ出る。
顎吐もまた、五条を挟み込むように位置を取った。
宿儺自身も戦闘を続けるつもりだ。
五条の前に立つ敵は、三体になった。
「……三対一か」
虎杖が呟く。
「数だけの問題じゃねえ」
雀は戦場を見つめたまま答えた。
「魔虚羅は無下限を突破できる。顎吐も加わって、宿儺は攻撃の手数を増やした。五条先生は三方向からの攻撃を捌きながら、魔虚羅を仕留める方法を探さなきゃならない」
「それって……」
「相当きつい盤面だな」
雀は短く息を吐いた。
五条は三体を前にしても、表情を崩さない。
宿儺、魔虚羅、そして顎吐。
最強の術師を追い詰めるための布陣が、完成していた。
戦況は、明らかに変わった。
五条悟は今、三対一の戦いを強いられている。
原作基準で行きますか?
-
はい。原作基準でオリ敵、オリ展開無し。
-
いいえ。原作基準ではなくオリ敵オリ展開で