孤独のプイグルメ   作:徒然の連れ

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始めまして、初めましてでした。めちゃくちゃ急仕上げなので口調とかめちゃくちゃなんだよなぁ。まあそこは鏡の世界なんで勘弁しておくんなまし!


ウンボンのホットなチキン

時間や社会に囚われず、幸福に空腹を満たすとき、

人は束の間、自分勝手になり、「自由」になる。

誰にも邪魔されず、気を遣わず物を食べるという孤高の行為。

この行為こそが、現代都市の人々に平等に与えられた、最高の『救い』と言えるのだ。

 

ザクッ、ザクッ、ザクッ。

 

「おーい、プイ! 朝の鶏肉の下ごしらえ、終わったかー?」

「……あと三羽だ、社長。」

 

包丁を握り、もも肉の筋を切る。

 

シーシュポス百貨店の数々の出来事も、異邦人…ムルソーたちと戦った後の記憶も、もはやすべて過去の事だ。

 

「どうしてここにいるんだっけ…」

 

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あの崩壊の夜、ムルソーたちと戦って、私は負けてそれから…

 

そんなことを思いながら目を覚ますと、そこには知らない景色が広がっていた。

 

「どこ…ここ…」

 

足が痛む、いつかの記憶では、靴を履かせてくれたんだっけ。

 

首が痛むほど高い建物に囲まれたその頂上には、赤と黒に分かれた雨が降っていた。

 

地面が沸騰しているみたいに強く雨が降り続けている、寒い、足が痛い、お腹がすいた。

 

黄金の装束を肩に寄せて街を歩く。

 

歩く。

 

歩く。足が痛い。

 

歩く

 

 

寒い。歩く。

 

 

歩く。

 

 

 

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いつの間にか雨は止んでいた。

エメラルドみたいな色が特徴的な街が見える。

 

「ここはどこ…?」

 

そう思ったとたん、体の感覚が一気に蘇る。

足の痛み、空腹、寂しさ、疲れ、計り知れない苦痛が体中を蝕んでくる。

 

その時。

 

「いい匂いがする…」

 

そう言って見た先には、【ウンボンのチキン酒場】と書いてあった。

 

すると、その店の中にいた人がこっちを見てきた。

 

「そこの君、どうしたんだい?」

 

「それが…気になったの。それは何?」

 

「これ?ああ…これは看板メニューのウンボンチキンだよ」

 

「ウンボンチキン…?」

 

そうして差し出されたお皿の上には、湯気を立たせた何かが乗っていた。

 

「最近いろいろメニューを考えていてね。よかったら食べてくれないかい?」

 

「でも、その前に体を綺麗にしようか。泥まみれじゃ気分よく食べれないだろう?」

 

そういわれると私は店の奥にあった、シャワー?っていうもので体を洗った。体の水分を拭いて、戻ると、あの人は小ぶりな箱を持っていた。

 

「じゃじゃーん!」

 

そういった後に開いた箱の中には、一対の靴が入っていた。

 

「最近ぬいぐるみを恩人に上げちゃったから新しく作ったんだけど、こうやって履いてくれる人がいて嬉しいな~」

 

「なにこの…なに?」

 

「ボンちゃんスリッパだよ~この部分とかすごくうまく作れたんだ(^O^)/」

 

履いてみると、その靴はまるで持ち主を待っていたかのようにぴったりだった。

 

「痛くない」

 

あれだけ痛かった足が嘘のように痛く無くなる。

 

「それに、あたたかい」

 

思わず、微笑む。

 

「さあ!元気になったことだし、食べようか!」

 

「そういえば自己紹介してなかったね、私はここ、ウンボンのチキン酒場の社長だよ、社長って呼んでほしいな。君の名前は?」

 

「私は…ビュッf………プイ。プイだよ」

 

「そうか、それじゃあプイ、ここに座ってくれ」

 

カウンターの端の席に腰を下ろすと、店長が重厚な鉄皿をドン、と目の前に置いた。

 

 

「へいお待ち! 『ウンボン特製・ホットチキン』だ!」

 

……うわぁ。

 

皿の上には、狐色にカラリと揚がった大ぶりのフライドチキンが三塊。

だが、その表面にとろりと回しかけられているタレの色が……ほのかに赤く光っている。

 

 

ニンニクと唐辛子、そして焦がし醤油の強烈な匂いが、私の鼻腔を容赦なくダイレクトに殴りつけてくる。

 

「隠し味にちょっといろいろ混ぜてね、激辛だがいくら食っても飽きが来ない旨さをめざしたんだ」

 

 

社長が笑いながら厨房へ戻っていく。

……よし。いってみよう。

 

トングでチキンをひとつ掴む。

重い。衣がザクザクと音を立てている。

 

大口を開けて、一気に噛みつく。

 

ザクッ……!!ジュワッ………!!

 

…………っ!!!!

 

辛い! 辛いぞ、これ!!

 

口に入れた瞬間、舌の上で唐辛子のスパイスが爆発した!

喉が焼ける! 炎を飲み込んだかのような激痛!

なるほど、「ホット」とはこの刺激のことか!

 

だが……待てよ?

 

モグ……モグ……。

 

ジューシーな鶏肉の肉汁が口いっぱいに広がるのと同時に、暴力的な旨味も襲ってくる!

 

そうしたそばから、また唐辛子の激辛と鶏肉の旨味が何重にも襲いかかってくる!

 

口の中で無限ループしている……!!

 

なんだこれは。

食えば食うほど、舌が削られては再生し、また旨味を吸収する!

完全な永久機関だ!

 

(すかさず、社長が置いてくれた冷えた麦茶を喉に流し込む)

 

ぐびっ……ぐびっ……ふはぁぁっ……!!

 

うあぁ……うまいっ!!

 

この熱狂的な激辛と肉汁のあとに来る、冷たい麦茶の爽快感!

完璧すぎるパートナーだ!

 

「店長!おいしい!」

「食いっぷりがいいなぁ! 今炊きたてを持ってくるからな!」

 

茶碗に山盛られた白飯に、タレの染みたチキンをワンバウンドさせてかき込む。

衣のザクザク感、柔らかい肉汁、そして米の甘み。

 

数々の思考が跡形もなく頭の中から去っていく。

今の私には、この熱いチキンと、冷たい白飯、そして無限に再生する舌があればそれでいい。

 

咀嚼する。飲み込む。また肉をかむ。

胸の奥で、カチリと何かが満たされていく音がした。

 

ふぅ……食った、食った。

 

汗を拭きながら、冷えた麦茶を飲み干す。

 

「私…満たされている…?」

 

今まで感じたことのないような感覚だが、これ以上ないほど心地よく、喜ばしい感情だった。すると社長が

 

「なあ。もし行く当てがないんだったらここで働かないかい?」

 

「……えっ?」

 

 

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そう言われて始まった、私の都市での新しい生活。

 

神様としての本質も痛みも空腹もここにはない。あるのは、油の匂いと、包丁の音だけだ。

 

 

「よし、午前中の仕込みは終わりだ! プイ、ちょっと早いがお前も昼飯にしてくれ。それと今日は団体の予約があるから外で食べてきてくれ」

 

 

厨房から、社長の威勢のいい声が飛んでくる。

 

……昼食……食事。

この言葉ほど、今の私の胸を激しく揺さぶる響きはない。

 

エプロンの紐をきゅっと締め直す。

腹を満たした「元・神様」は、今日もK社のどこかで、元気にバイトに励むのだった。

 

「今日はなにを食べようかな」

 

(第1話・おわり)




一発ネタです。続きはない!…多分。
あと孤独のグルメ要素少なすぎない!?
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