〜とある酒場〜
「ッスーーーーーーはぁ〜っ……!!」
「ん?どうしたんだい、ベル君?」
「!」
始まった、とヴェルフは思った。そして、案外速かったな、とも思った。アレから1週間ちょっとしか経っていない。
「相談なら乗るぜ?ベル君」
「ヘルメス様……すいません、コイツこうなると…」
今日はベル、ヴェルフ、そしてヘルメスの三人で酒場に来ていた。ヘルメス様からの奢りで、「普段真面目なんだからたまにはハメを外そうぜ!」との事である。が。呑んでる途中に、例の発作が始まった。
「……………ヴェルフ、
「…………」
ヴェルフは周りを見渡した。そして、安堵した。幸い、他の客は既に時間が時間なので退店している。店には三人だけだった。
「……ああ、良いぜ」
「お?何か面白い事が来そうだな?」
「ッスーーーーーー!!!!」
ベルが上を向く。そして深呼吸。ヘルメスもニヤけながら待った。
ヴェルフは絶叫した。
「………………は?」
「あ〜ほらヘルメス様固まっちゃったっ!あまりの衝撃に固まっちゃったっ!!」
無類の女好きであるヘルメスも、唐突の
「…………ふむ、ベル君…」
「ヘルメス様、何とか言ってやってください……」
ヴェルフは神の視点からの説教を期待した。
ヴェルフはヘルカスに期待した数秒前の自分を殴りたくなった。
「いやぁ、歳の割には全く浮ついた話がないから、そろそろソッチ方面にそれとな〜く誘導してみようかなって思ってたんだ!まさかベル君の方から言い出してくれるとはなあ!」
「なんて恐ろしい計画を立ててたんだアンタは!?」
ヴェルフは正気かコイツ?と思った。ベルの周りには唯ですら危険な女性も多いのに、そんな事したらオラリオの危機になるのは明白だ。なのにこのヘルカスと来たら、わざとソッチ方面に誘導してみようかなとか馬鹿な事言い出したのである。
「うんうん、俺は嬉しいよ。ベル君もきちんと男だったんだなぁ……で。」
「や、やめろぉ!やっぱやめてくれベル!」
ヴェルフは必死に制止した。周りの目だけを気にして許可を出してしまったのが間違いだった。少なくとも
「んぐっ………ぶはぁっ……で、まあ、具体的に何処がエロいかですけど」
「うんうん、其処を聞かせてくれよベル君!」
ヘルカスがキラキラした目でベルを見ている。あ、もうダメかもしれない…とヴェルフは頭を抱えた。
「あの人、元娼婦でしょ?」
「あぁ」
「…ま、そうだな」
ヘスティア・ファミリア妖術師、サンジョウノ・春姫は元娼婦の冒険者と言うファミリア内でも屈指の変わった経歴を持つ団員である。春姫が11の頃、客人の物を寝惚けて食べてしまい、それに激怒した父親に勘当されるようにイシュタル・ファミリアに売り飛ばされた……というのが事の顛末なのだが。
「元イシュタル・ファミリアの団員だけあって、知識だけは凄まじいんだよねあの人。まあそのイシュタル・ファミリアは『だいたい』俺のせいで消えちゃったんだけど」
「お、おう…」
「そうだね」
忘れがちだが
「でもさ、何というか、その…偏ってるんだよね」
「「あぁ……」」
ヘルカスとヴェルフはハモった。そしてヴェルフはこのあとの展開をだいたい察した。
「なんか、熱烈な視線を向けてきたり、『お背中お流しいたします』みたいな事言って泡で濡れてモコッッッッモコの尻尾で洗ってきたり」
「なんて恐ろしい事をするんだ春姫ちゃんは…!?」
「14の未経験の少年にする事じゃねぇよ…」
ヘスティア・ファミリア屈指のむっつり狐の所業に、ヴェルフは思わず同情した。女好きのヘルカスも、その恐ろしさを理解しているからこそドン引きした。
「オマケに白の薄っっっっすい浴衣で濡れ
「なんて奴!!(羂索)」
ヘルカスは更にこうふ……ドン引きした。そして、さめざめと泣き始める。
「うっうっう…!ベル君、君はよく頑張ったよ……で、他にエピソードは無いのかい?」
「あるに決まってんだろっ…!!!!」
「おーいベル〜?オーラ出てるぞ抑えろ〜?」
酒も入り饒舌になったベルを、ヘルカスは更に煽る。ヴェルフは魔剣を持ってくれば良かったと後悔した。
「濡れ
「やり過ぎだ…やり過ぎだよ春姫ちゃん…!」
「ナニやってんだあの狐!?」
ヴェルフは明日の朝食はきつねうどんにしてやろうかと思い始めた。あんまりである。余りにも、惨すぎる。14の幼気な少年に対してやることでは無い。
「俺が神さまの気配察知してなかったら確実にバレてましたよ!?ホントに、本当にあの狐は…!!!」
「でも、ベル君?」
「…はい?」
ヘルカスが質問する。ヴェルフは物凄く嫌な予感がした。
そんな大声で言うな、とヴェルフは追加で叫びそうになった。
「お前等いい加減にしろよ!?聞かれたらヤバい会話ばっかしやがって!?」
「じゃあヴェルフも言ってやってくれよ!!あの人味占めたのか定期的に耳かきしてくるんだぞ!?」
「ちょっと待てぃ!(相席食堂)」
「ブフォッwちょっと待って腹痛いっ…wwwwww」
異界の芸人のような声で思わず聞き返すヴェルフ。
「お、お前定期的!?定期的って言ったか!?定期的にしてもらってるのか!?」
「そうだよ!!!春姫さんの柔らかでありつつも弾力のある
「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ヘルカスは笑いすぎて息ができていない。出来ればそのまま還ってくれないかな。天界に。
「馬鹿野郎はお前だよ!!ちょっとは抵抗しろよ馬鹿野郎!」
「うっせぇ!!できるならこんな話しないわ!」
「Lv.3に負ける第一級冒険者っっっっ…!!」
もうダメだコイツ。と、ヴェルフは絶望した。やはりヘスティア・ファミリアの、いやオラリオの未来は暗いのか。
「……でも、アレでもまだセーブされてる方なんだよな」
「……あ、確かにそうだよな」
春姫は元娼婦のクセに殿方の肌を見るとブッ倒れると言う娼婦としてはカスすぎる弱点を持っている。ヴェルフもベルも最初に知った時は五感を疑った。だってカスだもん。娼婦としてあるまじき醜態だもん。最低だもん。
「……もうこの話はやめよう。怖くなってきた。俺の未来が」
「ひーっwww…!……ふぅ。ま、確かにこれからだよな春姫ちゃんは。アレで成長性Aとは……恐ろしいぜ」
「春姫さんは、破壊力 - A / スピード - C / 射程距離 - C / 持続力 - E / 精密動作性 - A / 成長性 - A って所か…。」
「うーんこれは屈指のスペックだな…。スタープ◯チナとやり合えるか?」
「何の会話してるんだアンタらは…」
ヴェルフはもう会話について行けなかった。酒も味がしない。せっかくヘルメス様の奢りでいい酒を呑んでいたのに。
「このままカスのままでいて欲しいけどなぁ…でも、それはそれで勿体無い気も…」
「分かるぜベル君。…よし、此処はベル君立ち会いの元で、監督役のアイシャも誘ってホテルでしっぽり…」
「させねぇよ!?」
「……………それは"アリ"だ」
「ナシだよぉっ!!」
夜は更けていく。ジョッキの底に残った、エールの泡をしみじみとヴェルフは啜った。サンキューヴェルフ。君のお陰でオラリオの平和は保たれた。そしてファッキューベル君&ヘルカス。ダーウィン賞受賞しろクソボケ共。
ベル・クラネル(偽)
前世でも今世でも未経験。なので紙装甲。どのくらいの紙装甲かは、前回のエピソードでだいたい分かってると思うので割愛。でも性欲強めなのは祖父の英才教育()もしっかり影響している。ファッキューゼウカス。
ヴェルフ
またも団長の乱心に巻き込まれた鍛冶師。正直もうお腹いっぱいだが、それはそれとして春姫の所業にドン引き。暫く春姫を白い目で見た。
ヘルカス
ヘルカス。説明不要。今回の話でベル君にもそう言う欲があると把握。裏で暗躍を始める。
次回はポンコツか主神かな…?