何もねぇ♪何もねぇ♪何もねぇよ俺ら♪
〜竈火の館〜
ガシャァン!と。景気の良い音が響く。此処はヘスティア・ファミリア本拠、竈火の館。人数の割には無駄に大きい館の一室で、合計4人の男女がジョッキを打ち合わせていた。
「うーんお酒が美味しいわ!!流石今話題の
一人はアストレア・ファミリア団長、アリーゼ・ローヴェル。
「酒の味など分からんだろう団長は?だいたいこの兎のお陰で酒が美味くなるなどありえん!」
そう言って再びジョッキを煽るのはアストレア・ファミリア副団長、ゴジョウノ・輝夜。二つ名は
「おいおいそりゃ無いだろ輝夜…酒の調達までやらせてよ」
三人目はライラ・アストレア。アストレア・ファミリア参謀、Lv.4の第二級冒険者である。
「良いですよライラさん!誘ったの俺ですし!」
そして、我らが主人公。ベル・クラネル(偽)。ちなみにヴェルフは鍛冶場に入り浸り中。何かビビッと来た!んだとか。
「いや〜、それにしてもまさか本拠にお呼ばれしちゃうなんて!相変わらず広いお屋敷ね〜!」
「広すぎて持て余してますけどね!来客が来ても困らないのがいいところですけど!」
「笑顔で言う事か青二才?」
「【アポロン・ファミリア】からのお下がりだしな〜。そう言えば新しい団員とか募集しないのか?」
「
皆様ご存知の通り、ヘスティア・ファミリア……というかベル・クラネルは結構ヤバい事に首を突っ込んでいる。その情報とは、万が一漏れたりしたら最悪の場合、下界が大混乱に陥るような特級呪物ばかり。故にヘスティア・ファミリアは安易に団員を募集する訳には行かなくなった。
「安心してベル!ウチもよ!!」
「威張る事かバカ団長。異端児の一件も、アストレア様が止めてくれなかったらベル達と戦争する事になってたぞ?」
「ま、結局ウチの馬鹿エルフは飛び出して協力してしまいましたがねぇ……」
そして。あろう事か
「リューさんには本当に助かりました…。あの人が居なかったらどうなってたか…」
「リオンも成長したわね!」
「というか弟分ができて張り切り始めたんだろうな」
「単純ですねぇ」
リュー・リオンは別である。あのエルフは、自分から首を突っ込んだのだ。
「いや〜…本当にリューさんマジでパネェっす。流石疾風!」
「リオンは本当にベルの事が好きみたいだから、真剣に考えてあげてね?」
「真剣に…真剣に………考えてぇなぁ…!」
「お?アイツ『クラネルさんには想い人が居るから諦める』的な事言ってたが、コレ脈アリか?」
「深層で色々あったらしいですからねぇ。ま、あのむっつりおバカエルフ様はナニもしていない、と言い張っていますが」
ジョッキを煽り、果実酒を飲み干すベル。これは面白い事が聞けるかもしれない、とニヤけ面でアイコンタクトを取った正義の使徒達は、ベルのジョッキに並々と追加の酒を注いだ。
「んぐっ、んぐっ………ぶはぁっ!あ〜〜〜〜〜〜!」
「おいイッキかよ…」
「いい飲みっぷりね!余程溜まってると見えるわ!私もだけど!」
「ええい洒落臭い!瓶ごと行くぞ私は!」
「あ〜っ!?輝夜さんソレ俺のですよ!?」
「口つけてないのだから皆同じだ青二才!」
輝夜とベルがウイスキーの酒瓶を持ち、そして口を付け始める。
そして、イッキに中身を呷った。あまりの暴挙に、ライラはドン引きした。
「おいおいお前等大丈夫か?ベルもあんまり酒強くないだろ?」
「大丈夫です……ヒック」
「問題無い……ヒック」
「うーんお酒回るの早すぎるわ二人とも!クソ雑魚ね!」
「「誰がクソ雑魚だ!!」」
綺麗にハモる。もうダメかもしれない。
「うっぅっう…リューさん…リューさぁん…!」
「泣き始めたぞコイツ…」
「ふっふっふ…よし、この際洗いざらい吐かせちゃいましょう!」
「オラっ!吐けっ!恋バナ聞かせろっ!」
「ぐえーっ!?輝夜さんヤメてギブギブギブっ!?」
輝夜がベルの首を〆る。仮にも1ファミリアの団長にとんでもない暴挙である。
「オラ馬鹿やめろ輝夜!アリーゼも何か言ってやってくれ……おいやめろお前までイッキすんなぁっ!?」
「ぷはーっ!!このお酒美味しいわ!極東のお酒ね!」
「あ〜っ!?ずるいぞ団長!ソレは私が持ってきたやつだ!」
「良いじゃない!此処に置いてあったのが悪いわ!」
極東酒の一升瓶を半分程呷ったアリーゼが開き直る。ライラは頭を抱えた。
「それで〜?ベルはリオンの事好きなの〜?」
「そうだ聞かせろっ!私の酒の無念を晴らせっ!」
「アッやめてツンツンしないで話しますからあっ!?」
「もう駄目だコイツら…」
ツマミの干物を齧りながら項垂れるライラ。もはや嫌な予感しか無かった。
「リューさん…リューさんは……そのですね…」
「おっおっお?やっぱり脈アリよコレ!」
「遂にあのポンコツにも春が来たか!」
真剣な表情で固まるベル。そして、息を大きく吸うと観念したかのように吐き出した。
案の定ぶち撒けた。
「うっぅっう…好きだ…好きだよリューさん…!」
「それでそれで!?何処が好きなの!?」
「その後が大事なんだ青二才!早く吐け!」
「明日の朝本当の意味で吐く事になりそうだけどな…」
二日酔い確定になった三人を見て、早くも明日の予定を組み立て始めたライラ。まあ介抱で埋まりそうだが。
「まずっ!最初に言っておきますけど!」
「勿体ぶらずに教えろ!」
「気になるわ!」
「俺の
「!?」
ライラは思わず耳を疑った。リオンとは真逆の
「あら見事に真逆!」
「其処から何故あのポンコツを!?」
「そ〜れ〜は〜!!」
またもやライラは嫌な予感がした。
「リューさんにメタメタのボコボコに性癖を曲げられたからでぇっす!」
「「キタコレっ!!!」」
ライラは机に突っ伏した。こんなのが英雄候補なんてもうオラリオは終わりだ。
「ほら、俺リューさんと二人きりで深層デート(絶望)する事になったじゃないですか?」
「あ〜っ…!!」
「やっぱり其処かあのポンコツエルフ…!!」
アポロン・ファミリアとの戦争遊戯、そして異端児騒動。どちらもリュー・リオンとベル・クラネルが深く関わったオラリオの事件である。そして。その二つの騒動である程度関係が進んだ二人が直面した困難が、深層での…ジャガーノート騒動なのだが。
「37階層まで落ちて、歩けなくなったリューさん背負いながら必死に逃避行したわけですが」
「あの時は大変だったわねぇ…」
「連絡が入った時は肝が冷えたぞ…」
遠い目で思い出すアリーゼ&輝夜。読者の皆様の為に説明しておくが、この世界線ではアストレア・ファミリアが謎の狩人がもたらした情報によってアストレア・ファミリアの犠牲は避けられた。……が、それでも全員深手は負わされてしまい、リュー・リオンの闇落ちは避けられなかった。
「いや、本当にすいません。俺がもうちょっと報連相徹底してれば……」
「いや、お前は悪くない……って、そんな事はどうでも良い!!続きだ!続きをよこせ!」
「お酒の力!お酒よ!」
「ちょっアリーゼさん…あ〜もうイっちゃうもんね!」
並々と注がれた酒を飲み干すベル・クラネル(偽)。ライラは呆れを隠せなかった。
「途中、喉渇いたって言ったら、ウーズを狩って…!!!」
「水分補給……37階層……まさか!?」
「間キスか!?間キスしたのか!?」
「いえっ…あの人っ!!俺に、俺にだけ飲ませて自分は恥ずかしくなったのか仕舞いやがったんですっ!!!」
「「っち!!!!」」
「水筒の蓋を閉めながら『この階層では……水分は貴重だ……///』とか甘酸っぱい声出しながらテレてバックパックの中に仕舞いやがったんですっ!!!!」
「カーッペッ!ったくあのポンコツおバカエルフは!根性なしめ!!」
「聞いてて恥ずかしいわ!!自分でやった事なのに自分でテレるなんて!自爆の天才ね!!」
「止めてやれよお前等……」
ライラは同情した。そりゃまあ確かに、自分でやり出した事でテレるのはぶっちゃけダサい。…が、リオンがポンコツなのは今に知れた事ではない。そんなに深刻な事では無いように思えた。
「んでっ!!あの時リューさん骨折してたから俺が背負って移動してたんですよ!!でも俺っ!!ぶっちゃけ
「ほうほう?ソレは何故なんだぁ?」
「あの人っ!!俺が耳弱いこと前に言ったのにっ!『クラネルさん…モンスターに声を聴かれて位置がバレてはマズいので、耳元で囁きますね…♡』って!!背負ってる間ずぅぅぅぅっっっと!!!耳元で囁いてきたんですっ!!!!」*1
「「甘酸っぺぇ〜〜っっ!!」」
「あれ、アタシ果実酒飲んだっけか…?」
本来は苦味があるはずの
「よく…よく耐えたぞベル・クラネル…!お前は悪くない。全てあのドスケベポンコツおバカエルフのせいだっ…!」
「分かってくれますか輝夜さん…!でも、コレだけじゃ無いんですっ…!!!」
「まだあるの!?14歳の幼気な少年の性癖をどれだけ虐めれば気が済むのリオンは!?」
らしくない驚愕を顕にするアリーゼ。アリーゼとてもう20歳は超えている。男性に対しての接し方くらいは理解しているし、何処までが性的で何処までが良識的なのかも分かる。だが、自分の元団員はどうだろうか。明らかにやり過ぎなくらいにはヤっている。
「ほら…あの、
「ああ、彼処か。『蒼の道』…だったか?」
「はい。彼処に偶然落ちて、で水源の近くで俺体力に限界が来ちゃって一回倒れたんですよね」
「水源……男女二人きり……倒れる……まさか!?」
「もう、ボチャンと。フラついてリューさんごとボチャンと」
「あっちゃ〜……と、言う事はぁ!?」
「濡れた衣服を乾かさないといけませんねぇっ!?」
もはや完全に普段のキャラがブッ飛んだアリーゼと輝夜が煽る。ベルカスは深呼吸をして、そして語り始めた。
「リューさんはっ!!あの人はっ!!『や、やはり…………肌を寄せ合いましょう///』とか言い出したんですよ!?」
「「言った〜っ!!遂に言ったぞ〜っ!!」」
「ごめんなリオン…お前の名誉、たった今地に落ちたよ……」
ライラはこの場に居ない本人に謝罪し、残りのエールを飲み干した。
「ヤったわ!!遂にゴールインね!!」
「皆のものであえ!式場を此処に建てるぞ!!」
「大げさですって〜!!」
全然そう思っていないであろう顔で照れるベル・クラネル。
「そして、こう……俺が、リューさんを後ろからですね?」
「みなまで言うな。分かる、それだけで分かるぞ…!」
俗に言う、バックハグである。いや、体温を保つのなら触れる面積が広いバックハグは効率的ではあるのだが、それはそれ。純潔を尊ぶエルフの中でも屈指の拗らせた価値観を持つリュー・リオンがソレをやるというのが問題である。
「このっ、解っちゃったんですよっ…リューさんも女何だなって…!柔らかさとか、血を沢山流してる筈なのに何故かいい匂いがしたりとかっ…!!!」
「あ〜っ!!」
「ダメダメえっちよ!!処女神のファミリアの団長がやる事じゃないわ!!」
「そう思って10秒も耐えられず*2に離れようとしたんです!そしたらっ…!!!」
「まだ何かあるのかよ…??」
ライラは絶望した。もう終わりだ。本当に終わりだ。
「リューさんに押し倒されてっ…『動いては……イケない……///』って…!!」*3
「「きゃーッ!!」」
黄色い悲鳴が響く。ライラは五月蝿いと思った。
「式場よ!式場を建てましょう!!深層に!!!」
「イケないのはお前の思考だよっ!!」
「おいおいリオン……」
流石にコレは庇えないな、とライラは思った。だってイケないんだもん。押し倒すのはマズイもん。他ファミリア(当時)の団長だよ?
「後は色々と連携して、最後にはジャガーノート入刀もしたしっ…!!!!」
「あれ?そっか、もう
「後はウエディングドレスだな…!!!」
「嫌だぜそんな物騒な結婚式は!?」
ライラは堪らず叫ぶ。
「そしてその後は例の大事件が起きるし…!!」
「あ〜、アレね!」
「神々の言う、『全国放送で公開生告白事件』だな!」
「オッタル入刀もしちゃうし…!!!」
「ブフォッwちょっwオッタル入刀っww」
「やめろ青二才w腹が捩れるww」
「ケーキ入刀2回してるが其処は良いのか…?」
ライラは突っ込んだ。普通2回するものではない。
「こうして俺はっ!!無事金髪ロングのスレンダーエルフでしか抜けない身体になってしまったのでしたっ!!めでたくねぇよっっっ!!!」
「団長、判決を」
「
「そこまでやるか!?」
とは言え、14の少年の性癖をバキバキにした罪は重い。ライラは一回リオンに性教育をするべきか、と本気で検討し始めた。
サンキューライラ。君のお陰で世界秩序は維持された。そしてファッキューベルカス。でも今回君は殆ど悪くないぞ。許してやろう。
時空
お察しの通りイレレコ時空。とは言え、流れ自体はあんまり変わらなかった。豊穣の女主人が人外魔境になる事以外は、だいたい問題無い。
ベル・クラネル(偽)
何かある事に毎回性癖をベキベキにされている14歳。ちなみに前世でのダンまち履修具合は15巻までなので、その後の展開は完全初見でやる事になった。とは言え女が絡まなければ原作ベル君よりも劣化する事はないので……え?16巻なんて思いっきり女が関わる?あはは…。
アストレア・ファミリア
生存√の住人。でもジャガーノートの一件で色々と弱体化喰らったので特に劇的に物語が変わる事は無かった。結局全員死なずに行けたので結果オーライ。
リュー・リオン
勝手にフラれたと勘違いして身を引いたエルフ。でも内心諦めきれずにヘスティア・ファミリアに改宗……嫁いだ。ちなみに深層編で性癖歪ませた事が結果的に良い感じに働く事に。スペックに特に変わり無し。
銀髪ロングのボンキュッボン
本人には言ってない。が、矢鱈と熱っぽい視線を送ってしまったのでバレている。内心まんざらでも無い。でも歳が離れすぎてるので泣く泣くオラリオに行かせた。「嫁の作法を教えてやろう」……帰ってください伯母さん。