抜け出せない沼を持つ男と実力主義の教室。雛鳥は何を見るか。 作:末路雛鳥
早くあの少女を出したいんです!
では本編をどうぞ、今回は待望のクラス分け&あの説明です。
絶望しながらバスに揺られ続け数時間。結局最後まで誰も乗ってこなかった。
今の俺からしたら嬉しいが、ここまであまりにも完全な孤独を与えられると、なんだろう、それはそれで寂しいな。
まさか俺から発せられた負のオーラで乗れなかったのか?
……な訳ないだろバカ。俺にそんなオーラなんてあるわけないし。
ないよな? 単にこのバスのルートを使う奴が極端に少ないだけだと思いたい。
停留所でバスを降りると、巨大な校門が広がっていた。
三年間、ここから出られないのは、少し寂しいと思いながら、ワクワクしているのも、また事実だ。だが、何故だろう、ぼっち生活まっしぐらに見えてしまう。俺から人に話しかけないからか? 当たり前か。
自分のコミュ症具合に嘆きながら校門を潜り、桜舞い散る道をゆっくりと歩く。
春の暖かな風に乗ってヒラヒラと花びらが落ちてくる光景は、いかにも青春の始まりって感じがする。
これから三年間、どんな学校生活が待っているだろうな。
パンフレットに書かれていたような素晴らしい恩恵は確かに大切だ。だが、俺にとって一番重要なのはそこじゃない。
敷地内の自動販売機もしくはスーパー、コンビニにマックスコーヒーがあるか否か、それが最重要だ!
……説明しよう。え? いらない? あそう。
でも、一応な。説明しておこう。マックスコーヒーというのは、成分表に加糖練乳が入っている激甘コーヒーのことだ。コーヒー、砂糖よりも多い加糖練乳。
コーヒーにミルクではなくミルクにコーヒーのようなもの。
千葉県民の血液(個人の意見です)とも言える飲み物であり、あれを飲まないやつは千葉県民じゃない(個人の意見です)
人生はただでさえ苦いんだから、コーヒーぐらいは甘くたっていい、俺の持論だ。異論は一切認めない。
船橋市浜町にある記念すべき、そして祝うべきららぽーと第一店にマッ缶の自販機があるのだ、あそこは神に等しい場所。あそこには頻繁に行ったなあ、由比ヶ浜とも行ったな。
元部活仲間とマッ缶の有無、ららぽの素晴らしさを永遠に考えながら靴箱まで歩いていくと、大きな掲示板の前に新入生の人だかりが見えた。
人混みに揉みくちゃにされる趣味はないので、少し離れた位置から人が減るのを待つ。少ししたら少なくなったので確認する。
「Bクラスか」
クラスを確認した俺は、そのまま入学式があるらしくいので周りの生徒たちの流れに任せて体育館に向かう。
名門校の入学式はどのようなものか興味がある。どんな感じか、堅っ苦しいのか、それとも短い言葉なのか、入学式が初めて楽しみかもしれない。
俺は、3年間をあまり目立たずやり過ごしたいと思う。まあ、俺なんて普通は目立たないと思うが、総武中では目立ったからな、悪い方に、屋上で相模に、おっと、黒歴史その五十が顔を出してしまっt「呼んだ?」 いえ、呼んでないです。出てこないでください。
とにかく、そんな特殊なことがないかぎり目立たないだろう。
……この高校生活で彼女ができちゃったりして。ふへ。
体育館に近づくにつれて、新入生たちのざわめきが大きくなっていく。 期待に胸を膨らませて楽しそうに談笑している。
俺にはそんな仲良しこよしはできないな。なんて思いながらも体育館に入る。
入学式はあっけなく終わった。 名門校の式典なんてものは、得てして堅苦しくて退屈なものと相場が決まっていた。案の定、お偉いさんの在校生のありがたいお話は眠気を誘う。
学校の理念だの、実力主義だの、未来を担う人材だの、とにかく意識の高いワードのオンパレード。正直、なにを言っているのかわけがわからん。
右に左に適当に話を聞き流しつつ、必死にあくびを噛み殺しているうちに、いつの間にか式そのものが終了していた。
名門校の入学式はどうだったか。結論、眠くなる。退屈でしかなかったし立ったまま寝ている人がいた。立ちっぱなしで足が痛え。
ぞろぞろと移動する新入生の群れに紛れてBクラスの教室まで歩く。 スライド式の扉を開け、絶句した。
何故って? 男子女子関係なくそれはもう楽しそうに雑談をしている、まるで昔からの友人と話すように。
俺に気づいていないことが幸いだ。
自分のネームプレートが置かれた席を探す。俺の席は……真ん中の、一番後ろか。
なるほど、悪くない。目立たないし、何より扉から近い、早く帰れるし、いい席だと思う。
よしよし、と内心で頷きながら自分の席へと向かう。
……あとそこ、今俺の目とバッチリ合って小さく悲鳴をあげたそこのお前。あとで体育館裏にきなさい。きっちりボコボコにしてあげよう、俺が。
まあ、十中八九返り討ちにされてボコボコにされるのは俺の方だが。あと俺の方あまり見ないでください全員に気づかれてしまいます。
自分の席に腰を下ろし、鞄から一冊の本を取り出した。 これか? これは純愛漫画だな。さっきのラノベとは違うぞ。
おい、なんで俺みたいな奴が純愛漫画なんて読んでるんだって顔するな。お前らが言いたいことは痛いほどわかる。だがな、現実でこんなキャッキャうふふの恋愛なんてできるはずないだろふざけんな。なんなら話しかける前に悲鳴をあげられて逃げられるまであるぞ。
だからこそ、二次元から学んで現実で恋人を作るためのイメトレをこなしているってわけで、これも立派な先行投資と言える。そう、だから目が潤んでいるのは気のせいだ。
そんな見苦しい言い訳を並べ立て、心の中で一人漫才を繰り広げていると、カチャリ、と小さな音が響いた。
視線を落とすと、右隣の席に座っていたやつのシャーペンが俺の足元に転がってきている。
無言でそれを拾い上げ、隣へ差し出す。
「……あ、ありがと!」
元気いっぱいのお礼の言葉、頷くだけしかできなかった。これで声を出そうものなら「あっ、いえ」なんてキョどっていただろうからな。
改めてクラスの中をぐるりと見渡してみた。なんか隣の奴がじっと見てくる気がするが多分気のせいだろう。
この空間。
美男美女が多すぎやしないか? あっちにはクールなイケメン、イケメン(大切なことだから二回言いました)あっちには飴玉咥えたツインテールのダウナー美少女。何味だろう。
はっきり言って個性が強すぎる、髪色どうなってんだ。カラフルすぎて目がおかしくなるわ。
ちなみに隣のやつは長い紫の髪をポニーテールにした明るい美少女と言える容姿。
周りの人達は笑顔で話し合っている。キャッキャ、うふふ。初日から仲良しすぎる、俺には合わないかもしれない。
少しの絶望感を味わっていると扉が開く。セミロングで軽くウェーブのかかった髪型の今時の大人って感じの人だ。
「おはよう〜、席に座ってねー!」
はーいと全員返事をしながら席に座っていく。
黒板前の位置に行ってその先生は口を開く。
「私はこのBクラスの担任の星之宮知恵でーす。この学校はクラス替えは行われませんので三年間よろしく〜早速だけど、配る物があるから前から後ろに回して〜 特殊なルールについてお話しするから。」
前から回ってきた物は見覚えのある資料だった、合格発表を受けてから貰ったものと同じ。書かれてる内容も同じ、敷地内の寮での生活を義務付けられると共に在学中は特例を除き外部との連絡を一切禁じている。
たとえ肉親であっても許可なく連絡は許されない。当然敷地内から許可なく出ることもできない。
ただその反面、生徒たちが苦労しないように多くの施設も存在する。カラオケやシアタールーム、カフェなど様々だ。俺はあまり行かないと思うけどこれだけの施設があるという事実が大切だ。
そして、1番の特徴がSシステムの導入だ。
Sシステムって名前かっこよくね? 俺だけ?
「今から配るのは学生証カードって言ってね、敷地内にあるすべての施設を利用したり購入したりできるの。具体的に例えるのならクレジットカードのようなものね、ただしポイントを消費するので注意してね。」
「それとこのポイントは学校内なら買えないものはないよ〜」
学生証と一体化されたポイントカードは学校での現金の意味合いだそうだ。現金だとトラブルが起きそうだし俺はいいと思う。カツアゲとかされたら俺は死ぬから。
「施設では機械に学生証を通すか、掲示すれば使えるよ、ピッてね。迷うことはないだろうけど迷ったらいつでも気軽に聞いてね。」
優しい言葉の次に思わず目が飛び出るかと思うほどの言葉が出てきた。
「みんなには平等に十万ポイントが支給されてると思うよ、あとで確認してね。一ポイントは一円の価値があるよ。ポイントは毎月一日に支給されるよ〜」
教室がざわついた、まあ、俺も動揺しているが、入学初日から十万という大金があっさりと配られた、それも全員に、流石政府が関わっている学校、やることがデカすぎる。ただ、これだけの大金が渡されて少し怖い。
「ふふ、驚いた? この学校は実力で生徒を図るの、だから入学できた貴方達にはそれだけの価値があるってこと、ポイントは卒業後に全て学校が回収するよ、だから貯めることはあまりおすすめしません」
「ポイントがいらなかったら誰かに譲渡してもいいよ、だけどカツアゲとか無理矢理はダメ、学校はいじめに敏感だからね。」
流石に戸惑いが広がっている、星之宮先生は教室を見渡している、おそらく質問だろう。俺はーー
スッ、手を上げた、周りの注目が集まる。
怖いなぁ、ただポイントが毎月十万も振り込まれるか聞きたい、俺が質問することで周りも、少なくともポイントに関しての疑問とかもちそうだし。星之宮先生は嬉しそうに促してくる。嬉しそう?
自分から見えた星之宮先生の反応を疑問に思いながら立ち上がる。
「えー、えっと、毎月本当に十万ポイントって支給されますか? いや、別に文句はないんですけど、いきなりこれだけの大金は少し怖いので」
言葉が詰まってしまったがよくやれたと思う、周りの生徒も星之宮先生を見ている。
「……その疑問は納得よ、いきなり十万は怖いよね、ただ安心してほしい、毎月の一日に必ずポイントは振り込まれるから。」
なるほど、安心した。ありがとうございますと言って座る。星之宮先生は周りを見渡して
「もう大丈夫そうかな、じゃああとは自由だよ! ケヤキモールに行った友達を作るのもよし、寮を見に行くのもよし、学校生活楽しんでね!」
星之宮先生は出て行った、周りの生徒から少し節約しようか、確かにこんだけの大金は怖いな、そんな言葉が出ている。
俺の言葉で少しは注意してくれるみたいだ、自分らしくないがそれでも俺は変わったと思う、自分が変わっても世界は変わらない、だがその変わった本人の考え方や物事の捉え方が変わるのもまた事実だ。
誰かのために、なんて言わない、これは俺の疑問を言っただけだ、だから周りが勝手に注目しただけ、俺がもし教師になったときに細かい疑問をそのままにしておきたくない。少しの情報からどんな生徒か理解すること、平塚先生がそれをやっていたから。
立ち上がり鞄を肩にかけ、扉を出て寮まで歩く、たとえ自己満足でも、人のために何かをすることは。
気分がいい。
自惚れか? はい、調子に乗ってすみません。
八幡くんのキャラ崩壊かもしれませんね。星之宮先生の話し方難しい! 自分で書いたみないとマジでわからなかった、末路です。
次の話ではついに、予告通りのとある女子との出会いです! 長かった、待たせた人もいるかな、楽しみにしてください!
あとBクラスにいたら必ず自己紹介をしようと言いそうな女子、いましたよね。何故いなかったのか。そのうちわかります。
次は、女子との出会い編で、お会いしましょう。今日かもしれませんし明日かもしれませんが、とにかく。
ここまで読んでくださりありがとうございました!