翼の中で   作:飯即斬

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初めまして。エースコンバット8が面白すぎたので書いてみました。長くは続けず気長にやって行きたいと思います。

戦闘機とかあまり詳しくないのでその辺りはご容赦ください。
「ストレンジリアル」などのエースコンバット独自の単語も殆ど出さない予定です。本編のネタバレも殆どありません。
ネットで本編主人公のレックスですが、地上ではぽやぽやしているというのが流行ってますがそうはなってません。
それと本編にはコープという重要人物も居ますがレックスが主人公ではないので出さない予定です。



プロローグ

 

 

空は、割れた。

 

その瞬間を、ヤマト・サイトウははっきりと覚えている。耳をつんざく金属の悲鳴、視界を埋め尽くす火の粉そして、自分を乗せていた旅客機が二つに折れる感覚。シートベルトが肋骨に食い込み、体が宙に放り出された。

 

(ああ、死ぬんだな)

 

そう思った。海面が近づいてくる。恐怖よりも先に妙に冷えた諦めが胸を満たした。どん、と叩きつけられる衝撃。全身を針で刺されるような痛み。それから、冷たい水が口の中に流れ込んできた。

 

もがいた。手足を必死に動かした。何度も何度も水面を目指して、暗い海の中で藻掻いた。肺が焼けるように痛む。意識が遠のきかけたその時、ようやく顔が空気に触れた。

 

「……っ、は……!」

 

咳き込む。潮水を吐き出す。荒い息をつきながら、ヤマトは周囲を見渡した。燃える機体の残骸が海面に散らばっている。遠くで誰かが叫んでいるような気がしたが、波の音にかき消されてよく聞こえない。他の乗客は——おそらく、もう。

 

ヤマトは浮力材を掴んだ。座席のクッションか何かだろう、それは幸運にも彼の体を支えてくれた。しかし、海は広大だった。水平線はどこまでも続き、空は鉛色の雲に覆われている。陸地の影ひとつ見えない。

 

(泳ぐしかない。でも、どこへ?)

 

途方もない絶望がゆっくりと体の芯に染み込んでくる。だが、それでも手足を動かさなければ沈む。生きるためには、動き続けるしかなかった。

 

どれだけの時間が経っただろう。腕は鉛のように重く、唇は乾ききってひび割れていた。意識が途切れがちになる。幻聴だろうか、低いうなり声のようなものが聞こえる。いや——これは。

 

エンジン音だ。

 

ヤマトは顔を上げた。霞んだ視界の向こうに、巨大な影が浮かんでいる。鋼鉄の塊。軍艦だ。白い航跡を引きながら、ゆっくりと近づいてくる。その姿は、まるで海の上に聳え立つ城壁のようだった。

 

「——っ!」

 

声を出そうとしたが喉はからからに渇いて、掠れた息しか出ない。ヤマトは残った力を振り絞って、片腕を高く掲げた。波が何度も顔を洗い、視界を遮る。それでも腕を下ろさなかった。

 

軍艦が近づいてくる。船体に描かれた番号が読めるようになった頃、甲板から声が飛んできた。

 

「生きてる人間がいるぞ! 右舷、漂流者確認!」

 

「総員、救助用意! 急げ!」

 

怒号のような指令が飛び交う。やがて、ロープが投げられ太い腕がヤマトの体を掴んだ。引き上げられる感覚。甲板に叩きつけられるようにして、彼はようやく固い鋼鉄の上に横たわった。

 

「大丈夫か、坊主」

 

誰かが顔を覗き込んでいる。逆光でよく見えないが、低く落ち着いた声だった。ヤマトは咳き込みながら、掠れた声で答えた。

 

「……た、助かった……のか」

 

「ああ、助かった。ここは戦艦エンデュランスだ。お前さんは運がいい」

 

「エンデュランス……」

 

聞いたことのない名前だった。だが、そんなことはどうでもよかった。生きている。ただ、それだけが信じられないほどに嬉しかった。

 

ヤマトは仰向けに寝たまま灰色の空を見上げた。雲の切れ間から、一筋の光が差し込んでいる。海鳥が一羽、遠くを横切っていく。

 

(生きてる)

 

胸の奥で、その言葉を何度も繰り返した。

 

その時、甲板に響く足音が近づいてきた。救助の兵たちが一斉に背筋を伸ばす。ヤマトは首を巡らせた。

 

そこに立っていたのは、一人の男だった。金髪のショートヘア。無表情な青い瞳。年齢は三十代半ばといったところか。肩には、この艦の——おそらくは航空隊のものだろう——ワッペンが縫い付けられている。男は黙ってヤマトを見下ろしていた。

 

「レックス隊長」

 

兵の一人が声をかける。男は短く頷くと、初めて口を開いた。

 

「……生き残りは、こいつだけか」

 

「はい。他に漂流者はいません」

 

レックスと呼ばれた男はしばらくヤマトを見つめていた。その目は、感情を読み取らせない。まるで、海の底のように静かだった。やがて、彼は背を向けた。

 

「医務室に運べ。それから、副官に報告しろ」

 

「了解!」

 

兵たちが動き出す。ヤマトは朦朧とする意識の中で、レックスの背中を目で追った。その歩き方は、一切の無駄がなく静かだった。

 

(無口な人だな)

 

そんなことを思った。そして再び意識が遠のいていく。波の音が、遠くで聞こえた気がした。

 

——これが、ヤマト・サイトウが戦艦エンデュランスに拾われた日のことだ。

 

後に彼は知ることになる。この艦が、彼の人生を大きく変えることになるということを。そして、あの無口な男——レックス——が、彼の新たな上司になるということを。

 

だが、その時のヤマトはただ眠りたかった

 

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