僕の個性シャッフルアカデミア 作:新秩序
「ひどいよかっちゃん......泣いてるだろ......こ、これ以上は......僕がゆるさないぞ!」
泣きながら、震えながら。それでも、腕を抑えて震える少年を守る為にガキ大将に立ち向かう少年。
「【無個性】のクセに......ヒーロー気取りか?デク」
「ひっ」
無個性......【持たざる者】である少年、緑谷出久は、そうして個性ある者、
人は、生まれながらに平等じゃない。これが齢4歳にして知った社会の現実。
そしてこれが、最初で最後の挫折だ。
月日は流れ、緑谷出久は中学三年生になった。緑谷出久に限った話ではないが、この時期になれば皆進路について考える。緑谷出久は無個性だが、ヒーローへの憧れは持っていた。
「え〜、お前らも3年という事で、本格的に将来を考えていく時期だ。今から進路希望のプリントを配るが......みんな、大体ヒーロー科志望だよね!」
はーい!と中学生らしいテンションでみんなが個性を発動させる。目が取れる個性だったり、手が炎になる個性だったり、岩の髪を持つ個性だったり。
「うんうん、みんないい個性だ!でも校内で個性発動は原則禁止な!」
そんなお祭りムードに冷水をかけるセリフが吐かれる。
「センセー。【みんな】とか一緒くたにすんなよ。俺はこんな没個性共と仲良く底辺なんざ行かねぇよ」
在りし日にガキ大将だった少年、爆豪勝己は未だに不遜であった。
「そりゃねーだろ勝己!」
「モブがモブらしくうっせー!」
「あ〜確か爆豪は......雄英高だったな」
担任の教師が手元のバインダーを見ながら答える。
「雄英!?国立の!?」
「今年偏差値79だぞ!」
「倍率も毎度やべーんだろ?」
各々が持つ雄英高校の情報を近くのクラスメイトと話し合う。
「そのザワザワがモブたる所以だ......模試じゃA判定。俺はウチ唯一の雄英圏内。あのオールマイトをも超えて、俺はトップヒーローとなり!必ずや、高額納税者ランキングに名を刻むのだァ!!」
「そういや緑谷も雄英志望だったな」
「ウッ」
爆豪勝己の自信満々のセリフからの、担任の緑谷への矢印。その矢印はクラスメイトから緑谷出久へも注がれる。
「「「「「はぁ!?」」」」」
驚き......というより、最早笑いである。
「緑谷?無理っしょ!」
「勉強出来るだけじゃヒーロー科は入れねぇんだぞ!」
モブたる所以のガヤを飛ばしながら緑谷出久を嘲笑するクラスメイト。小さな声で緑谷出久は反論する。
「そ、そんな規定はもうないよ。前例がないだけで......」
「オラァ!」
爆豪勝己の
「うっ......!」
「コラデク!!没個性どころか無個性のてめぇが、なんで俺と同じ土俵に立てるんだァ!?」
地面にへたり込んだ緑谷出久は、その爆豪勝己の威勢と個性に萎縮し、後ずさる。
「ま......違う!待ってかっちゃん!別に、張り合おうとかそんなの全然......本当だよ!?......ただ、小さい頃からの目標なんだ。それに、その......やってみないと、分かんないし......」
「なァにがやってみないとだ!記念受験か!?てめぇが何をやれるんだ!?無個性のクセによぉ!!」
悔しいが、緑谷出久は何も言い返せなかった。
「今朝の事件、ニュースサイトのトップだ。早く帰ってノートに纏めなきゃ」
通勤途中に見たヴィラン退治、そのニュースを見る。若手実力派のヒーロー【マインスイーパー】の個性が活躍し、建物被害は出たものの人的被害は0だった事件だ。
将来の為のヒーロー分析No.13ノート。そのノートが誰かに奪われる。
「話はまだ済んでねぇぞデク」
「勝己。何それ」
爆豪勝己が取り巻きの2人にそのノートを見せると、途端に取り巻きは笑い出す。そんな事は無駄だと。
「いいだろ、返してよ!」
「フンッ」
またも爆豪勝己の体から出た黒い手がノートを縦にぺしゃんこにする。
「あー!」
そしてポイッと窓の外に投げ捨てる。
「あーー!!」
「一線級のトップヒーローは大抵学生時から逸話を残してる。俺はこの平凡な市立中学から初めて、唯一の雄英進学者っつう箔を付けてぇのさ。まぁ完璧主義な訳よ」
取り巻きは心の中で爆豪勝己のみみっちさに(いつもの事だが)辟易する。才能マンで大抵の事は出来るがまだまだ子供である査証。
「つうわけで一応さ。雄英受けるなナード君」
その言葉に何も言い返せず、緑谷出久はひたすら言葉にならない言葉を口から発する。爆豪勝己が興味をなくし、教室を去ろうとするも、緑谷出久は肩を震わせるだけで何も言わない。言えない。
「あ、そんなにヒーローに就きてぇなら効率いい方法あるぜ?来世は個性が宿ると信じて、屋上からのワンチャンダイブ!」
将来ヒーローを目指している人間の言葉とは思えないソレに、思わず緑谷出久は振り返り、少し睨むが、逆に睨まれ返されてしまう。
「ナニ?」
「......ッ」
それでもやはり、何も言えなかった。
そんな爆豪勝己とのやり取りを終え、悔しさで胸をいっぱいにしながらリュックを背負ってノートを拾いに下へ向かう。
「(バカ野郎......本当に僕が飛んだら自殺教唆だぞ。考えて物言え......!)」
本人に言う事は出来ないが、こうして心の中で悪態をつく。やがて教室の下にたどり着き、ノートが鯉に餌と間違えられてパクパクとされているのを見て、また胸がいっぱいになる。
「餌じゃないよ、バカ......僕のノートだ......バカ......バカ野郎......!」
彼、緑谷出久の過去。彼も昔は普通にヒーローに憧れていた。僕に個性が出たらどんなのだろう。どう使おう。そんな子供の1人だった。だが、そんな夢は4歳の時に打ち砕かれた。
「諦めた方がいいね」
周りの子供達が個性を発現していく中、個性が発現しない緑谷出久。それを不安がって母が連れてきてくれた病院で現実を突きつけられた。
「そんな......やっぱりどこか悪いんですか?」
「う〜ん。まぁ、本来なら4歳までに何らかの個性が発現するんだけどね。昔超常黎明期に1つの研究結果が発表されてね。足の小指に関節があるかないかって流行ったの。人間、使わんとこは必要ないってもんでね。ない人の方が型としてまぁ新しいと」
そこで、医者は壁に貼られた緑谷出久の足のレントゲン写真の小指を指さす。
「このレントゲンを見てわかる通り、出久くんには関節が2つある。この世代じゃ珍しい、何の個性も持ってない型だよ」
そんな絶望と失意の中帰宅し、自分がヒーローを目指すきっかけになったNo.1ヒーロー【オールマイト】のデビュー動画を暗い部屋で見る。
『もう大丈夫。何故って?私が来た!』
パソコンの操作も覚束無い子供の緑谷出久の代わりに動画を再生してたげた緑谷引子が、パソコンに釘付けの緑谷出久の背中を見る。
「おかあさん......どんな困ってる人でも笑顔で助けちゃうんだよ。超カッコイイヒーローさ............僕も、なれるかなぁ?」
母は、緑谷引子は、思わず緑谷出久をその腕で抱き締める。
「ごめんね出久。ごめんね......ごめんねぇ......」
ボロボロと涙を流す緑谷出久は、子供心に思っていた。
「(ちがう......ちがうんだ、おかあさん......)」
今振り返ると、更に深いところで思う。
「(違うんだよ。お母さん。あの時僕が言って欲しかったのは......)」
「あん時決めたじゃないか......そうさ。周りの言うことなんて気にするな。ぐいっと上見て突き進め!」
そうして、バカ笑いを上げながらトンネルをくぐる。すると、背後でズルズルとなにかの音がして、振り向くとマンホールからヘドロのようなものが溢れ、朧気ながら人の形を成そうとしていた。
「ヴィ、
いつもヒーローが戦っているモノである悪、ヴィラン。それが今、緑谷出久に襲いかかろうとしていた。
「Mサイズの隠れ蓑......」
「う、うわぁぁぁ!!」
恐怖のあまり、逃げ出す。しかしヘドロヴィランは素早く、緑谷出久の体に巻き付き体を乗っ取ろうとする。
「大丈夫さ。落ち着いて、苦しいのは約45秒。すぐに楽になるさ」
口の中に入ってこようとするヘドロをかきだそうとするが、流動的なそれは掴めない。
「まさかあんなのがこの街に来てるなんて......」
死ぬ。そう思った。霞む視界で、ノートに書きなぐった憧れのヒーローを模した自分のヒーローコスチュームが見える。
「(誰か......嫌......!)」
ガンッ!!
「んん?」
先程自分が出てきたマンホールが空の彼方に飛んでいく音が聞こえ、振り返ったヘドロヴィランの視界に
「もう大丈夫だ、少年......私が来た!」
「チィッ!」
ヘドロヴィランの横薙ぎの一閃をかわし、彼......オールマイトの拳が構えられる。
「テキサス・SMAAAAAASH!!」
到底拳の当たる距離ではなかった。しかし、オールマイトの拳から発せられた風圧で、流動的な体を持つヘドロヴィランは形を保てなくなり、爆散する。
霞む視界で、今度は憧れのヒーロー本人が見えた気がした。
「え?......オール......マイ......」
「Hey!Hey!へ......あっ、良かったー」
「どぅわぁぁぁ!!!」
次にしっかりした視界に映ったのは、筋骨隆々な画風さえ違く見える程濃い顔の憧れの
「元気そうで何よりだ。いやぁ悪かった。ヴィラン退治に巻き込んでしまった。いつもはこんなミスはしないのだが......オフだったのと、慣れない土地で浮かれちゃったかなぁ?アッハッハッハッ!!しかし!君のおかげさ!ありがとう!無事詰められた!」
オールマイトの両手にそれぞれ握られた2Lペットボトルに詰められた見るも無惨なヘドロヴィラン。しかし、緑谷出久はそんなヘドロヴィランなんて気にもとめず、目をグルグルとさせながらオールマイトを見ていた。やがて気を取り戻し、何かにサインを貰おうと思いあのノートを見つける。開くと、そこには既にオールマイトのサインがしてあった。
サービス精神旺盛なその対応に、緑谷出久は口から感謝を述べながら頭を何度も下げる。
「じゃあ、私はこいつを警察に届けるので。液晶越しにまた会おう!」
「えっ、そんな......もう?」
緑谷出久はオールマイトにどうしても聞きたいことがあった。
「プロは常に、敵か時間との戦いさ。それでは、今後とも......応援、よろしくねぇ〜!......って」
飛び上がったオールマイトは、自分の足にしがみつく少年を呆れ眼で見る。
「コラコラコラコラ!離しなさい!熱狂が過ぎるぞ!」
「い、今離すと......し、死んじゃう!」
「......確かに」
オールマイトの力で跳躍したのだから、地面からはもう既に常人が落ちたら助からない高さになってしまっていた。加えて速度も出ているので、落ちれば死ぬ。
「ぼ、ぼぼぼ僕、あなたにににに、直接つつつ、いろいろろろろろ、あなたにににに」
「OKOK!わかったから、目と口閉じな!」
緑谷出久が落ちないように首根っこを掴み、目立たない落下地点を探す。
「っ......Shit......」
口の端から流れる血を、少年を掴んだ逆の手で拭った。
やがて、少し離れたビルに着地する。
「こ、怖かった......」
「まったく。階下の方に話せば降ろしてもらえるだろう。私はマジで、時間が無いのでこれで!」
なにをそんなに急いでいるのか分からないが、緑谷出久は思わず呼び止める。
「ま、待って」
「NO!待たない!」
「でも!」
幼い頃医師に言われた言葉が頭の中でリフレインする。次にかっちゃん、爆豪勝己の言葉が。母の言葉が、次々と。
けど、それでも、僕は......
「個性がなくても、ヒーローはできますか?」
「......」
「個性のない人間でも......あなたみたいになれますか?」
「......個性が......うっ!あぁ、いかん......!Hori shietだ。ドチクショウ......!」
なにやら体から蒸気を出しながら体を丸めるオールマイトだが、緑谷出久はそんなオールマイトから目を離していたので気付かなかった。
「個性がないせいで......そのせいだけじゃないかもしれないけど、ずっとバカにされてきて......だからか、分かんないけど......人を助けるって、めちゃくちゃカッコイイと思うんです。恐れ知らずの笑顔で助けてくれる、あなみたいな最高のヒーローに......僕も!」
そしてやっとこさ見たオールマイトは、萎んでいた。
「......え?」
萎んでいた。
その屋上で聞いた、オールマイトの......恐れ知らずの笑顔で助けてくれる、最高のヒーローの過去。
「見られたついでだ少年。間違ってもネットには書き込むなよ」
そしてまくり挙げられたシャツの下には、おぞましい傷があった。本人いわく、5年前敵の襲撃で負った傷。呼吸器官は半壊し、胃袋は全摘しなければならなかった。
「私のヒーローとしての活動限界は今や、1日3時間程なんだ」
それでも、傷を隠してまで人々を救うナチュラルボーンヒーローで、平和の象徴として立ち続ける。
「私が笑うのは、ヒーローの重圧。そして、内に湧く恐怖から己を欺く為さ。プロはいつだって命懸けだよ。
現実はどこまでも残酷だった。分かっていた。分かっていた筈だが、憧れのNo.1ヒーローからの否定は、どこまでも重かった。その現実に何も言えず、去りゆくオールマイトの背中を目で追うことも出来なかった。
ドカーーン!!!
「ッ」
暫く呆然としていたら、遠くで何かが崩れる音がした。思わずどのヒーローが現場に!?と思い、現場に行こうとするも、先程のオールマイトの言葉で足が止まる。
「ハァ......ハァ......」
半壊した呼吸器官をフル稼働して走るオールマイト。先程、自分の足のポケットに入れたはずのペットボトル......ヘドロヴィランがなくなっていた。恐らくは少年との空中での押し問答の時に落としたのだろう。
現場につくと、1人の少年がヘドロヴィランに捕まっていた。
「『ウオアアア!!』こんなドブ男にィィ......!『俺が飲まれるかァァ』ァァァ!!」
1人の少年からする2人分の声。ヘドロは大きく膨張し、まるで中からヘドロを食い破ろうとしているようだった。
「えれぇ力......こりゃ大当たりだぜ」
少年の体から溢れ出る
「この個性と力ならば......奴に報復出来る!!」
その大きなヘドロ影は周囲のものを破壊し、暴れ回る。
「くうっ!?」
少年の個性で膨張した手が近くにいた逃げ遅れた取り巻きに襲いかかろうとしたが、突如飛来したものを叩き落とそうと目標を変えた。しかし、それに触れた瞬間飛来したものが爆発し、思わず手を引く。
その隙に爆発物を投げたヒーロー、マインスイーパーが取り巻きの2人を抱えて離脱する。
「くっ、我の個性では有効打は与えられん。今日は他に譲ってやろう」
そうして、被害を少なくするしか今は方法がなかった。今ここに、ヘドロヴィランをやっつけられる個性の持ち主はいない。
「クソッ......奴を吹き飛ばせるだけのパワーがあれば......!」
「(活動限界ばかりに気を取られた!ファンを諭しておいて、こんなミスか......!情けない......情けない!)」
オールマイトは悔いていた。自分はもう動けない。傷が痛む。マッスルフォームになれない。
自分の前では、あのヴィランはオールマイトが追っかけていたやつではないか?ではオールマイトはどこだ?と話されているが、ここに居るのにもう個性が使えないからと電柱を弱々しく握るしか無かった。
一方、帰路に付いていたつもりの緑谷出久は、気付いたら先程破壊音のした商店街に来てしまっていた。
「(おいおい......癖で来ちゃったってか?やめとけ今は......余計虚しくなるだけだ)」
そう思いつつも、気になって人混みの中から破壊音の方を見る。そこに居たのは、つい先程自分を襲ったヘドロヴィラン。しかもなにやらとても大きくなっている。
「(あいつなんで!?オールマイト、逃げられたのか?......落とした?だとしたら......僕の、せい)」
近くの野次馬の話を聞くに、もう数分程はあのままのようだ。自分はものの数秒で死ぬと思ったのに、という驚きが襲う。
「(僕のせいだ。彼は動けない。あいつは掴めない。有利な個性のヒーローを待つしかない......!頑張って......ごめん、ごめんなさい......すぐに助けが来てくれるから......誰か、ヒーローが......すぐ......)」
思わず口を抑えながら見てしまっていた。そして、膨張するヘドロの影に見えた、小さな、小さな顔。
いつも自分をいじめ、見下し、突き放すヤツが......
「ッ!!!」
思わず、駆け出していた。
「バカ野郎!止まれ!止まれ!!」
背後から聞こえるヒーローの止める声も聞かず、ヘドロヴィランに向かって走り続ける。
「あのガキ!」
「『デ』ク......?」
ヘドロヴィランに捕らわれていた少年......爆豪勝己も、こちらに向かってくる昔馴染みに気付いた。
「(なんで出た?何してんだ?なんで!?)」
それでも自分の足は止まらなかった。まるで自分の足ではないように、走り続ける。
「圧死だァァ!!」
「(どうしようどうしよう!こういう時は......No.7、42ページ!)」
大阪で活躍する
「かっちゃん!」
「なんで......テメェが!」
「足が!勝手に!なんでって、わからないけど!」
色々理由はあったと思う。またリフレインする、医師の言葉、幼き頃の自分の言葉、目の前にいる爆豪勝己の言葉、そして先程のオールマイトの言葉。
ただ、その時は
「君が、助けを求める顔してた」
それだけ、だった。
「もう少しなんだから......邪魔するなぁ!!」
爆豪勝己の個性を取り込んだ巨大な手が、緑谷出久に降りかかる。
「ムダ死にだ!自殺志願かよ!」
ヘドロヴィランに有効打を持たないヒーロー達も、流石に見てられず助けに入ろうとするが、あと一歩間に合わず......しかし、緑谷出久に衝撃は来なかった。
「本当に情けない」
「オールマイト......」
そこに居たのは、憧れの、No.1ヒーロー。
「君に諭しておいて、己が実践しないなんて!!」
その剛腕が、巨大な手を押しのけた。そのまま爆豪勝己の腕を掴み、血を吐きながら拳を構える。
「プロはいつだって命懸け!!」
「オールマイトォォ!!」
ヘドロヴィランの拳が再度振りかぶられる。
「デトロイト・SMASH!!!」
先程とは比ぶべくもない程のパワーで振るわれた
『おい、カツキ!大丈夫か!?』
爆豪勝己の個性【
すると、雨が降り始め、ダークシャドウは主人の爆豪勝己と一応緑谷出久の傘になるように広がる。
「雨......?」
「まさか、今の風圧で......上昇気流が発生して......」
プロヒーローの1人が、驚いて口に出す。
「雲を......作ったのか!?」
「おいおいおいおい、右手1本で天気が変わっちまった!」
右手を高々とあげるオールマイトに、観衆が歓声を上げる。やがてそれはオールマイトコールに変わった。
この後、散ったベトベトはヒーローらに回収され、無事警察に引き取られた。
オールマイトは駆けつけた報道陣に囲まれ、目を覚ました爆豪勝己と緑谷出久はというと......
「まったく!無茶にも程がある!」
と、緑谷出久を叱責するマインスイーパー。
「君が危険を冒す必要は全然なかったんだ!」
こちらも緑谷出久を叱責するデステゴロというヒーロー。
このように、緑谷出久はヒーロー達に叱責されたが......
「凄いタフネスだ!それにその個性!プロになったら是非ウチの事務所に来てくれ!君なら優秀なサイドキックになれる!」
『ウルセー!』
「うるせー!?」
「......」
爆豪勝己はヒッチクックドゥードゥルというヒーローに賞賛され、メディアにも撮られた。最も、爆豪勝己本人は何も話さず、緑谷出久を睨み付けていた。反論しているのは個性であるダークシャドウだけだった。
帰り道。
「(オールマイトに謝りたかったけど......取材が続いてたし......帰ったら、オールマイトのホームページからメッセしてみよう)」
メディアに囲まれていてオールマイトに話しかけらなかった後悔に苛まれていたが、天上人のオールマイトにはもう二度と会わないだろうと心の中で思っていた。
「デク!」
「かっちゃん?」
遠くから呼び止められ、振り向くと、そこにはなにやら悔しげな顔をした昔馴染みが走ってきていた。
「俺は、お前に助けを求めてなんてねぇぞ......助けられてもねぇ!あぁ!?なぁ!?一人でやれたんだ!無個性の出来損ないが見下すんじゃねぇぞ!恩売ろうってか......見下すなよ俺を!クソナードがァ!」
「(タフネス......)かっちゃんの言う通りだ......何かできたわけでも、変わった訳でもない。でも、良かったよ。これでちゃんと、身の丈にあった将来を......」
「私が来たァ!!」
いきなり目の前の角から、二度と会わないと思っていたオールマイトが現れた。
「わぁ!?オ、オールマイト?なんでここに......さっきまで取材陣に囲まれて......」
「ハーッハッハッハッハ。抜けるくらい訳無いさ。なぜなら、私はオールマイt」
そこでブフゥー!と血を吐きながら一瞬で萎むオールマイト。
「ゴフッンフッゴホッ!......少年、礼と訂正、そして提案をしに来たんだ。君がいなければ、君の身の上を聞いていなければ、口先だけの
「そんな!そもそも僕が悪いんです......仕事の邪魔して......無個性のくせに、生意気なこと言って......」
「そうさ。あの場の誰でもない、小心者で無個性の君だったから、私は動かされた。トップヒーローは学生時から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ。
”考えるより先に、体が動いていた”と」
緑谷出久は、母の言葉を思い出していた。
《ごめんね出久。ごめんね......ごめんねぇ......》
「君も、そうだったんだろ?」
違うんだお母さん。あの時、僕が言って欲しかったのは......言って欲しかった言葉は。
「君は、ヒーローになれる」
言い忘れてたけど、これは、僕が最高のヒーローになるまでの物語だ。
かっちゃんの個性→ダークシャドウ(常闇踏陰)
シンリンカムイの個性→地雷(キュリオス)
ファットガムの個性→角砲(角取ポニー)
裏話
緑谷引子の個性→崩壊
緑谷父の個性→窃盗