僕の個性シャッフルアカデミア 作:新秩序
「君ならば私の個性、受け継ぐに値する」
「......うぇ?」
そこから聞いた、オールマイトの個性の話。冠された名は【
その話を聞いてから、雄英の入試までは激的なトレーニング生活だった。
OFAは力の結晶。生半可な身体では譲渡した途端、力を受け取りきれず四肢がもげ爆散してしまうらしい。その為の体づくりは苛烈を極めた。
だが、その翌年の2月26日。雄英高校入試当日、緑谷出久はギリギリで体を仕上げた。
そして
実技は0〜3ポイントのそれぞれ4種類の仮想ヴィランを各々なりの個性で倒し、より多くのポイントを取る。というシンプルで、どこかゲームを彷彿とさせる試験だった。
「(あっ!良い人!)」
雄英高校の入口で、転びそうになっていた自分を助けてくれた少女をみつけ、お礼を言おうと思いぎこちない動きで歩く。すると、後ろから肩を掴まれる。
「(こっちも!?)」
肩を掴んできたのは、先程自分を注意したメガネの少年。
「彼女は精神統一をはかっているのではないか?君はなんだ。妨害目的で受験したのか?」
「い、いや!」
なにか言い返そうとするも、緊張で何も言えなかった。あたふたしていると、上から声が聞こえた。
「はいスタートォ!」
「「「「「??」」」」」
「どうしたぁ!?実戦にカウントなんざねーんだよ!走れ走れ!賽は投げられてんぞ!」
「えっ?......えっ!?」
気付くと、周りに人はいない。
「で、出遅れたぁぁぁ!!」
「この実技試験は、ヴィランの総数も配置も伝えていない。限られた時間と広大な敷地、そこから炙り出される」
目の前のモニター郡に映る様々な個性と受験者達。
「状況をいち早く把握する為の情報力」
耳たぶがイヤホンジャックのようになっている大柄な少年。
「あらゆる局面に対応する機動力」
体から黒い煙のようなものを発しながら巨躯に変貌し、高速で移動するメガネの少年。
「どんな状況でも冷静でいられる判断力」
エコロケーションのように頭から音波を発し、仮想ヴィランを破壊する富裕層のようなシャツを着た少年。
「そして、純然たる戦闘力」
黒い影のような手で仮想ヴィランを引きちぎり、それを他の仮想ヴィランにぶつける派手な戦いをする少年。
「市井の平和を守るための基礎能力が、ポイント数という形で」
「今年は中々豊作じゃない?」
「いやぁ、まだ分からんよ。真価が発揮されるのは、これからさ」
YARUKI SWITCHという赤いボタンを押す。
そして、会場に現れる超巨大仮想ヴィラン。
脅威を目の前にした人間の行動はシンプルだ。自分より何百倍もデカいヴィランに対して、どうするのか。大抵は逃げる。
「し、シャレにならん......逃げなきゃ......!逃げつつポイントを......!」
かく言う緑谷出久も、逃げるという選択肢を選んだ。だが、上手く足に力が入らない。わたわたと逃げようとすると、後ろから声が。
「いった......」
緑谷出久は気付いた。校門で助けてくれた、あの【良い人】が足を瓦礫に挟まれてもがいている。
『転んじゃったら、縁起悪いもんね』
「ッ!!」
あの超巨大ヴィランに挑んでもメリットは一切ない。しかし、緑谷出久は立ち向かった。
初めてのOFAの使用。憧れのヒーローから学んだ使い方。
『ケツの穴グッと引き締めて、心の中でこう叫べ!』
「SMAAAAAASH!!!!」
浮かび上がる、ヒーローの大前提......自己犠牲の精神。
しかし、飛び上がるのに両足はボロボロ。殴った右手もボロボロ。
「(そうか!ギリギリ収まっただけ......!まだ僕は、スタートラインに立つ権利を与えられただけなんだ!着地は......デトロイト・SMASH!アレを地面に打てば!遅すぎても早すぎてもダメだ。たとえ成功したとしてもまだ0ポイント!合格は絶望的!)」
だが、このままだと地面と激突して死ぬ。心の中で距離を測っていると、誰かが自分の体を掴んだ。それは、先程自分が助けた少女。
「ご、ごめんね!大丈夫......じゃないよね!?凄いパワーだね!」
「浮いてる......」
「重い......ゆっくり降ろすね」
自分のお腹を持っている、ふわふわと浮遊している少女。地面にゆっくり降ろされるが、足は痛みでまともに立てはしない。
「あ、ありがとう......!」
「こちらこそ助けられちゃったよ」
「まだ......試験は続いて......!せめて、1ポイントだけでも!」
少女を助けられたのは良かった。だが、試験とそれは別。残った左手で少しでも前に進もうとするが......
「試験!!終了ーー!!!」
「......あ」
そこに告げられた、残酷な宣告。演習試験場Bの監督教師、クリエイト・マイクの言葉を聞いて、痛みで気を失う。
次に目を覚ましたのは、雄英高校の保健室。
「ここは......」
右手と両足の痛みはなくなっていた。
「目が覚めたかい?」
「......プレゼント・ガール」
ヒーローノートに纏めた事のあるヒーローだ。記憶通りなら、彼女はヴォイスヒロイン・プレゼントガール。雄英教師の1人だと記憶している。
「ふぅ。入試に来てくれた子に治癒系の個性の子が来てくれてて助かったよ。私だけじゃどうにもならないくらいボロボロだったからね」
「そう、ですか」
「とりあえず、もう試験は終わったよ。傷が治ったならお帰り」
「はい......」
1週間後。実技の前に行った筆記はギリギリ合格圏内だった。だが、それをひっくり返す実技試験の圧倒的0ポイント。
「通知......今日か明日、だっけ?」
「......うん」
ゴミ袋に纏めた生活ゴミを自身の個性で崩壊させ塵にする母の言葉も虚ろに聞く。
「(オールマイト......見初めてくれたのに、ごめんなさい。でも僕は、正しいことをしたんだよ)」
オールマイトとの関係は母にも言えない。彼がトップヒーローとして、平和の象徴として守るべき秘密。言えるはずがない。
日課の筋トレをしながら、そんなことを考えていると、回覧板を回しに行った母がドタバタと帰ってきた。
「い、いいい出久!来てた!来てたよ!」
母の手に崩壊が発動しないよう小指だけ離した状態で握られていたのは、手紙サイズの封筒。右下には雄英高校の名が刻まれていた。
リビングで母と一緒に見ても良かったが、不合格を目の当たりにした時なんて言えばいいのか分からず、自分の部屋で1人で見ると言って机に置いた。開く勇気を出すのに時間がかかったが、思い切って破った。すると、中から出てきたのは折り畳まれた書類と1枚のディスク。
『私が投影されたァ!!』
「えっ!?オールマイト?雄英から、だよな......?」
『いやぁ〜。諸々手続きに時間かかってしまって連絡できず申し訳ない!実はこの街に来たのは、雄英に務める事になったからなんだ!さて、入試の結果だが......筆記は取れていても、実技は0ポイント。当然、不合格だ』
分かっていた......分かっていた筈だが
「悔しいな......!」
『......それだけならね』
思わず顔を上げた。
『私もまた、エンターティナー!まずはこちらのVTRをどうぞ!』
ピッ。とホログラム投影されたオールマイトが画面内のテレビをつける。そこに映ったのは、落ちゆく自分を助けてくれた女の子と、演習試験場B担当教師ヒーローのクリエイト・マイク。
『あの......すみません』
「良い人」
『頭もさもさの......そばかすのある人......分かりますか?え〜っと、地味めの〜』
「(僕だ!)」
『あの人に、私のポイント分けるって出来ませんか?あの人、せめて1ポイントって言ってて。私聞いてて......せめて、私のせいでロスした分。私の事助けてくれたんです!お願いします!お願いします!』
そこでピッと画面は止められた。
『個性を得て尚、君の行動は人を動かした。先日の入試!見ていたのはヴィランポイントだけにあらず!」
えっ?と思っていると、VTRに戻る。
『お願いされても、ポイントは分けらんねぇ。そもそも分ける必要ねぇと思うぜ。女子リスナー』
画面の中では、万物ヒーロー【クリエイト・マイク】が良い人の頭をポンポンと撫でていた。
『人助けを、正しいことをした人間を排斥しちまうヒーロー科なんて、あって溜まるかって話だよ。
綺麗事?上等さ!命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!
レスキューポイント!しかも審査制!我々雄英が見ていたもう1つの基礎能力!緑谷出久、60ポイント!ついでに麗日お茶子、45ポイント!......合格だってさ』
「......無茶苦茶だよ......!」
隠されたポイント。試験制度に、涙を流す。それは嬉しみの涙。安堵の涙。憧れのヒーローが通った憧れの学校への切符。
『来いよ、緑谷少年。ここが君の、ヒーローアカデミアだ』
雄英高校ヒーロー科の入学倍率が、毎年300を超える訳。推薦入学4名を除く一般入試定員は36名。18人ずつで、なんと2クラスしかない。
「1-A、1-A......広すぎる」
やっと見つけた教室のドアはバカデカかった。バリアフリー......にしても、開くのが大変だ。怖い人いないといいな。なんて思いながら扉を開くと......
「机の上に足を乗せるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか?」
「思わねぇよ!テメェどこ中だよ端役が!」
「(ツートップ!)」
自身の昔馴染みの爆豪勝己と、説明会の時と入試前に話したメガネの少年。どちらにも苦手意識がある。
「ぼっ......俺は、私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
「聡明ィ?クソエリートじゃねぇか!ぶっ殺し甲斐がありそうだ!」
「ぶっ殺し甲斐!?君ホントにヒーロー志望か!?」
「ケッ......あ?」
そこで、爆豪勝己がドアに立ったままの緑谷出久に気が付く。そして飯田天哉も、クラスの他の人も。
「君は......おはよう!俺は私立聡明中学の」
「聞いてたよ!あっ、と......僕、緑谷。よろしく飯田くん」
そして、何故か謝られた。君はあの試験の構造に気付いていたんだなと。もちろんそんなこと気付いていなかった緑谷出久だが、なにか言葉を返す前に背後から少女の声が聞こえた。
「あっ!そのもさもさ頭は!地味めの!クリエイト・マイクの言ってた通り受かったんだね!そりゃそうだ、パンチ凄かったもん!」
「(良い人だ!制服姿やっべえ〜!)いや、あの、ホント......あなたの直談判のおかげで僕は、その〜」
「へ?なんで知ってるの?」
「そ、それは」
そんなやり取りを遠巻きに見つめる爆豪勝己。
「うちの中学から雄英進学者が2人も出るとは。特に緑谷は奇跡中の奇跡だな!」
そんな教師の言葉に緑谷出久は萎縮する。その後、校舎裏で詰め寄られる。
「どんな汚え手使やあテメェが受かるんだよ。あぁ!?史上初、唯一の雄英進学者。俺の将来設計が早速ズタボロだよ!他行けつったろうが!」
「かっちゃん」
いつもなら反抗なんてしてこない緑谷出久が、爆豪勝己の腕を掴んだ。小さな反抗だが、されたことのない事で少し動揺した。
「い、言ってもらったんだ......君はヒーローになれるって。勝ち取ったんだって。だから......僕は!行くんだ!」
「(反抗なんかしやがって......ぜってぇ裏があるはずだ)」
「今日って式とかガイダンスだけなのかな?先生ってどんな人なんだろうね」
「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」
ふと、地面の方から声がした。思わず、緑谷出久と麗日お茶子は後ろを向いて、下を見た。
「ここはヒーロー科だぞ」
「「「(な、なんかいる......!)」」」
そこに居たのは、寝袋に身を包んだ男。無精髭を生やし、髪は伸びっぱでくたびれた印象を受ける。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」
「担任!?」
クラス中がざわめく。誰もこんなヒーロー知らないし、教師にしても小汚過ぎる。そしてモゾモゾと這い出てきた寝袋から、雄英高校の運動着を取り出す。
「早速だがこれ着てグラウンド出ろ」
とりあえず配られた運動着に更衣室で全員が着替え、集結する。
「「「「「個性把握テスト?」」」」」
「入学式は?ガイダンスは?」
「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出てる時間ないよ〜。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。お前達も中学の頃からやってるだろ?個性使用禁止の体力テスト」
出された種目は
・ボール投げ
・立ち幅跳び
・50m走
・持久走
・握力
・反復横跳び
・上体起こし
・長座体前屈
「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている。合理的じゃない。まあ文部科学省の怠慢だな。実技入試試験のトップは爆豪だったな。中学の時ソフトボール投げ何メートルだった?」
「67メートル」
「じゃ、個性使ってやってみろ。円から出なきゃ何してもいい」
相澤消太からボールを受け取った爆豪勝己は、ボール投げの円の中に入る。相澤消太からの言葉を聞いて、ダークシャドウを出す。
「んじゃまぁ......ダークシャドウ」
『アイヨ!』
「(俺のパワーにダークシャドウのパワーを乗せる......日光下だからパワー落ちちまうが......)死ねぇぇぇ!!」
周囲の人間が爆豪勝己のあまりに粗暴な掛け声に驚きつつ、空の彼方に消えていったボール。落下地点は見えないが、相澤消太の持つ端末に記録が表示されるらしい。
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
表示された記録は404.7m。
「404mってマジかよ」
「何これ?面白そう!」
「個性思いっきり使えんだ。流石ヒーロー科!」
ガヤガヤと盛り上がるクラスメイトを見て、相澤消太は少し落胆し、だが対照的に口はニヤリと笑った。
「面白そう、か。ヒーローになるための3年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し、除籍処分としよう」
「「「「「はぁ!?」」」」」
「相澤くんか......こりゃいきなりどでかい受難」
一方、職員室に居たオールマイトは手元の職員データを見ていた。
温冷ヒーロー【テンパーチャー】。本名、相澤消太。今年度の1-A担任で、通算除籍指導数は154回。通算謹慎指導数は62回。脅威の数字である。
「(除籍処分って......そんな、まずい。8種目も?OFAは100か0しか力を出せない。僕はまだ、調整なんて......)」
思わず自分の手を見る。
「生徒の如何は俺達の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
「最下位除籍って......入学初日ですよ!?いや、初日じゃなくても理不尽過ぎる!」
「自然災害、大事故。そして身勝手なヴィラン達。いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れている。そういうピンチを覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。更に向こうへ。Plus Ultraさ。全力で乗り越えてこい」
それだけ言って、テストが開始された。
第1種目:50m走
『位置ニツイテ。ヨーイ......ドン!』
そして、1番目スタートの蛙吹梅雨と飯田天哉が走り出す。
飯田天哉、個性【ストレス】。内に溜め込んだストレスを体躯とパワーに変える!
『3秒04』
「(ストレスがまだ溜まりきっていなかったか)」
余談だが、蛙吹梅雨の記録は7秒62。
次の組、麗日お茶子と尾白猿尾。麗日お茶子はふわりと浮き上がり、少し前傾姿勢になる。
「よっし」
麗日お茶子、個性【浮遊】。空が飛べる。指向性も持たせられるぞ!
『5秒02』
麗日お茶子の少し後に、尾白猿尾がゴールする。記録は7秒10。
次、青山優雅と芦戸三奈。
「フフッ。みんな工夫が足りないよ。個性を使っていいっていうのは」
『ヨーイ、ドン!』
「こういう事さ!」
後ろを向いて、頭を地面に向ける。そしてそのまま飛び上がり、頭から発した超音波で地面を滑るように移動する。
青山優雅、個性【シャチ】。シャチっぽい事は大体できる。頭から超音波を発したり、海中を素早く泳いだり出来るぞ!
『3秒55』
そしてその後に芦戸三奈がゴールする。記録は6秒99。
「(個性を最大限使い、各記録の伸び代を見れば何が出来て、何が出来ないかが浮き彫りになる)」
その後もどんどんと記録を取っていき、緑谷出久と爆豪勝己。
『ヨーイ』
「(それは、己を生かす創意工夫に繋がる)」
『ドン!』
「ダークシャドウ!」
『アイヨ!』
ダークシャドウを身にまとい、空を浮かびながらグラウンドを駆け抜ける。
『4秒12』
爆豪勝己、個性【
『7秒02』
「やっぱ日光下だと出せるスピードに限界があるな......デクは」
OFAはまだまともに使えない。今ここで使っても、この後に控える7種目の記録は散々なものになって、トータル成績は最下位になるだろう。無闇矢鱈には使えない。調整しなければ......
一応、オールマイトに調整のコツを聞いたが、「感覚だ!」と。オールマイト曰く、既に入試の実技試験で100%を引き出したから、感覚を覚えたはずだと。自分は電子レンジに入れた卵をイメージに置き換えて説明したら、ワット数を下げる、タイマーを短くする、なんでもいいから爆発しないようなイメージをするんだと言われた。
「(調整......調整)」
第2種目:握力
「(卵が爆発しないイメージ......)」
そのイメージをしながらOFAを発動しようとすると、入試試験の時を思い出す。バキバキになった体と痛みに心が竦む。
「くっ......」
『56.0Kg』
やはりどうしても個性が発動出来なかった。
「うっおすっげ!1200Kg!?1.2トンじゃん!」
「すげぇだろ!」
赤髪のツンツン頭のクラスメイト、切島鋭児郎が、黒髪の醤油顔のクラスメイト、瀬呂範太の記録に驚いていた。瀬呂範太も誇らしげである。
瀬呂範太、個性【筋肉増強】。皮下に収まらない程の筋繊維を操る。筋繊維を増強すればするほど防御力もパワーも上がるぞ!出し過ぎに注意だ!
第3種目:立ち幅跳び
浮遊して何百メートルも飛び続ける麗日お茶子や、ダークシャドウで飛べる爆豪勝己はもちろん......
「とおっ!」
50m走の時の青山優雅のように後ろを向いてちょっとだけ空を飛ぶクラスメイト。先程見た赤髪ツンツン頭......切島鋭児郎である。
切島鋭児郎、個性【ネビルレーザー】。へそからレーザーが出る。腸内環境によるが、大体2秒以上射出するとだんだんお腹が痛くなってくるぞ!
「(調整......)」
第4種目:反復横跳び
口からエクトプラズムを出して、20人程に増えたクラスメイトが反復横跳びをし始めた。単純に記録は20倍だ。
口田甲司、個性【分身】。口からエクトプラズムを出して任意の場所で化けられる。今のところ同時に最大20人まで増やせるぞ!
第5種目:ボール投げ
「『ボール』。ボールは大気圏まで飛んでいく」
そう言うと、手に持っていたボールがひとりでに浮かんで空の彼方へ消える。
相澤消太が記録の映し出された端末を見せる。
『∞』
「無限!?」
「すっげぇ!無限が出たぞ!」
轟焦凍、個性【
「(ダメだこれ......すぐ出来るような簡単な話じゃない。みんな1つは大記録を出してるのに......残りはこれと持久走、上体起こし、長座体前屈。もう......後がない。このままだと僕が最下位)」
「緑谷くん、このままだとマズイぞ......」
ボールを持って立ち尽くす緑谷出久を心配している飯田天哉がボソッとそう口に出す。それに絡むのは爆豪勝己。
「はぁ?ったりめぇだろ。無個性のザコだぞ」
「な......無個性?彼が入試時に何を成したか知らんのか?」
「あぁ?」
「(......そろそろか)」
相澤消太が個性の発動準備に入る。
「(......ぐ!絶対なるんだ!)だあ......ッ!」
ボールを投げる、OFAを発動しようとした瞬間、体温が一瞬で奪われたような感覚に襲われ、体がすくみOFAが上手く発動しなかった。
『46メートル』
「な......い、今の寒気は......」
「俺の”個性”で体温を奪った」
声の方をむくと、こちらに手を向けた相澤消太が。
「つくづくあの入試は合理性に欠くよ。お前のようなやつも入学出来てしまう」
「体温を奪った?......あ、あの捕縛布!そうか、周囲の気温や体温等の温度を操作する個性。温冷ヒーロー【テンパーチャー】!」
相澤消太、個性【温度操作】。周囲の気温や体温等の温度を操作出来る。自分の体温は操作出来ないが、他人の体温は操作出来るぞ!
「テンパーチャー?俺知らない」
「聞いたことあるわ。アングラ系ヒーローよ」
「(”仕事に差し支える”とメディアへの露出を嫌っているからな。そうさ緑谷少年。私は彼と馬が合わないぞ)」
口々に知識を出し合うクラスメイトを遠巻きに見るオールマイト。どうやら緑谷出久が心配で見に来たようだ。
「見たとこ、個性が制御できないんだろ?また行動不能になって、誰かに助けて貰うつもりだったか?」
「そ、そんなつもりじゃ!」
捕縛布で掴まれ、近くに引き寄せられる。
「どういうつもりでも、周りはそうせざるを得なくなるって話だ。昔、暑苦しいヒーローが大災害から1人で1000人以上を救い出すという伝説を作った。同じ”蛮勇”でも、お前のは1人を助けて木偶の坊になるだけ。緑谷出久。お前の力じゃヒーローになれないよ」
「......」
何も言い返せなかった。
「次は邪魔しない。ボール投げは2回だ。とっとと済ませな」
どうすればいいのか。チャンスはあと1回しかない。残る種目でOFAの活用法も思い浮かばない。そんな思考がグルグルと頭の中で回る。
「指導を受けていたようだが......」
「除籍宣告だろ」
心配するクラスメイト、放任するクラスメイト、期待するクラスメイト。色々な思い渦巻く中で、意を決したようにボールを握り直す。
「(ここでは性懲りも無く玉砕覚悟の全力か、はたまた萎縮して最下位に収まるか。どっちに転んでも見込みはない)」
力の調整はまだ出来ない。最後の一投で出来る可能性にかけ、OFAを使うのか?まだ卵が爆発しないイメージも固められていないのに。良い考えは思い浮かばない。
「(ダメだダメだ!それならただ全力で!)」
「(見込みゼロ)」
ボールを持った手を振りかぶる。
「(相澤先生の言う通りだ......これまで通りじゃヒーローになれやしない!僕は人より何倍も頑張らないとダメなんだ!だから、全力で!今僕に出来ることを!!)」
緑谷出久のボールを持つ手の人差し指
「SMASH!!」
轟音と共に、ソニックブームを出しながらボールは飛んでいく。それに驚く声を出すクラスメイト達と、心の中で少し驚いた相澤消太。
「(あの痛み......程じゃ、ない!)」
『705.3m』
手元の端末に映される、ヒーローらしい記録。
「先生......まだ、動けます!」
「......コイツ......」
力の調整はまだ出来ない。行動不能になる訳にも行かない。ならばと、ボールを押し出す最後の力、指先のみにOFAを発揮させた。最小限の負傷で最大限の力を発揮するプラン。
「(なんだよ少年......カッコイイじゃないか!)」
痛む右手で握り拳を作る緑谷出久を見ながら、オールマイトはそう思った。
障子目蔵→イヤホンジャック(耳郎響香)
飯田天哉→ストレス(リ・デストロ)
青山優雅→シャチ(ギャングオルカ)
麗日お茶子→浮遊(7代目OFA・志村菜奈)
プレゼント・マイク→創造(八百万百)
リカバリーガール→ヴォイス(プレゼント・マイク)
イレイザー・ヘッド→温度操作(オニマー)
瀬呂範太→筋肉増強(マスキュラー)
切島鋭児郎→ネビルレーザー(青山優雅)
口田甲司→分身(エクトプラズム)
轟焦凍→
ホントにランダムで轟くんが新秩序持っちゃいました。
個性の修練度については、個人の才能や資質によって独断と偏見で決めています。
かっちゃんの生まれつきの個性がダークシャドウだったら、この時点で「空を飛べる」という黒の堕天使的な発想に入学時点で既に至ってるだろうな、とか、口田くんが分身の個性持ってても性格上あんまり本家エクトプラズムみたいに30体前後はまだ出せないだろうな、とか。