ー2018年某日、広県県呉市ー
巨大な艦が、埠頭に鎮座している。
真っ白な船体と、緑色の甲板。側面には海上保安庁所属を表す青いS字。船体は、この巨艦がたどってきた歴史を思わせる。
ジャパンマリンユナイテッド呉工場のそばで作られている巨大コンテナ船に比べても見劣りせず、呉市立海事資料館(通称「大和ミュージアム」)そばに陸揚げされた旧海自潜水艦「あきしお」に比べてはるかに大きい。
細長く流麗な船体の前後には、ユニコーンの角を思わせる巨大な単装砲塔がわずかな仰角を立て係止されている。中央には箱のような艦橋、高い塔状のマスト、太い煙突、そして箱状のヘリコプター格納庫とヘリコプター甲板。艦橋と格納庫の側面にはそれぞれ大型のクレーンが設置されている。
白い舷側に青い文字で書かれている巡視船としての船名「ほっかいどう」…そのすぐとなりにラッタルがあり、擬人化パネルの脇を通ってやってきた観光客たちが内部へと入っていく。
「ご覧ください。こちらがあの『奇跡の戦艦』こと巡視船『ほっかいどう』…またの名を巡洋戦艦『蝦夷』です。」
テレビカメラが、艦を背景にしてキャスターを撮影している。
「フネの大きさを表す排水量は35000トン、これはあの戦艦『大和』の半分に達します。
今皆さんの見ているちょうどすぐ真上、主砲ですね。こちらは口径51センチ。軍艦に搭載された大砲としては史上最大で、水平線の向こうにまで届くそうです。
今は花火大会に使われたりしているこちらの主砲、かつて、フィリピンや沖縄、韓国、北海道、そして皆さんの記憶に新しいところでは奄美で、海を守ってきました。ですがそれは、時代の偶然に翻弄されるようないきさつでもあったそうです。」
大写しに、艦橋の破口を塞ぐ青いビニールシートが映される。
「何度もピンチを迎え、2回、もうダメだ、そう思われながらも、再び港に戻ってきた。そんな姿が人々を惹きつけてきました。
今夜お送りするのは、奇跡の巡洋戦艦『蝦夷』の、物語です。」
映像がスタジオに切り替わり、オープニングのイントロが流れ始める。
ー*ー
かつて、世界の海軍関係者からミラクルと呼ばれた一隻の艦があった。
戦艦から空母へ時代が移り変わる中、徒花として生まれた一隻の「簡易戦艦」。
それは第一次大戦で作られた特殊な軍艦を元とし、主砲わずかに2基、防御も不足した、歪とも言える存在だった。
来襲するアメリカ軍、海を囲む機雷。
もはや運命は潰えたかと、誰もが思った。
人々が歓声を上げ、艦は2度よみがえる。
数奇な運命の果て、そして3度目、群衆が立ち上がる。
今夜贈るのは、奇跡の巡洋戦艦の物語。
(あまり考証をしていないのでお目こぼし願います…)