はんたぁはんたぁ AI生成   作:缶コーヒー好き

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イタズラはダメですわ

小話:寝ている相手をイタズラする時は、墓穴を掘る覚悟を

 

森の中に設けられた、訓練用の休憩場所。

 

その一角で、シューレ・ショットは横になっていた。

 

すぅ……すぅ……。

 

普段のあの飄々とした態度も、底の見えない実力も、今ばかりは鳴りを潜めている。

 

目を閉じ、静かに呼吸を繰り返す姿は、どう見ても休眠中だった。

 

その様子を、少し離れた茂みから覗き込む二人の男がいた。

 

キルアとクラピカである。

 

「……なあ、クラピカ」

 

「なんだ」

 

「今なら、いけると思わない?」

 

「……何がだ」

 

キルアは、にやりと笑った。

 

「イタズラ」

 

クラピカは即座に眉間を押さえた。

 

「やめておけ」

 

「まだ何も言ってねーだろ」

 

「お前の顔を見れば分かる」

 

「ひどくね?」

 

「シューレに対して何かを企んでいる時のお前は、普段以上に悪い顔をしている」

 

「褒め言葉として受け取っとくわ」

 

「褒めていない」

 

キルアは聞いていなかった。

 

彼の視線は、すやすやと眠るシューレへ向いている。

 

「いや、考えてみろよ。あの人、普段はこっちが何をしても気づきそうじゃん?」

 

「実際、気づくだろうな」

 

「でも今は寝てる」

 

「……」

 

「寝てる相手にまで警戒しろってのは、さすがに無理があるだろ?」

 

クラピカは反論しようとした。

 

しかし、目の前のシューレは本当に眠っているように見える。

 

呼吸は穏やか。身じろぎひとつしない。

 

――確かに、今なら。

 

いや。

 

いやいや。

 

そこで納得してはいけない。

 

クラピカが自分に言い聞かせている間に、キルアは動いていた。

 

「じゃ、ちょっと行ってくる」

 

「待て、キルア」

 

「大丈夫だって」

 

「何が大丈夫なのか、説明してから行け!」

 

キルアは返事の代わりに、すっと息を吐いた。

 

次の瞬間。

 

彼の気配が、消えた。

 

「……!」

 

クラピカの目が見開かれる。

 

キルアは本気で『絶』を使っていた。

 

ただ気配を薄めた程度ではない。

 

オーラの存在を徹底して消し、足音も呼吸も極限まで抑え、周囲の景色に完全に溶け込む。

 

隣にいたクラピカですら、キルアの位置を見失った。

 

一秒。

 

二秒。

 

三秒。

 

「……どこへ行った!?」

 

思わず声が漏れた、その瞬間。

 

シューレの傍らに置かれた荷物が、かすかに動いた。

 

キルアだった。

 

(よし……!)

 

彼は内心でガッツポーズを決める。

 

(クラピカでも三秒見失った。これなら、さすがのシューレでも――)

 

キルアは荷物の中を慎重に探り始めた。

 

目的はひとつ。

 

シューレが愛用しているリップ。

 

それを使って、眠っている彼女の顔に落書きをする。

 

額に肉。

 

頬にヒゲ。

 

もしかしたら、眉毛をつなげるのも面白いかもしれない。

 

(いや、待てよ。シューレの顔に肉って、なんか普通すぎるな……)

 

悪戯の完成度を上げるため、彼は真剣に構図を考えていた。

 

その時だった。

 

ヒュッ。

 

「――っ!?」

 

頬のすぐ横を、何かが通り過ぎた。

 

キルアが反射的に身を引く。

 

直後。

 

背後の木に、一本の弾丸が突き刺さった。

 

正確には、弾丸状の念弾。

 

その軌道は、キルアの顔に落書きをするために伸ばしかけた手を、寸分違わず狙ったかのようだった。

 

キルアの全身から、血の気が引いた。

 

(……は?)

 

荷物の陰から、そろりと顔を上げる。

 

シューレは、まだ横になっていた。

 

目も閉じたまま。

 

呼吸も穏やか。

 

ただし。

 

彼女の右手の指先からは、かすかに煙が上がっていた。

 

キルアは悟った。

 

失敗した。

 

いや、違う。

 

そもそも、イタズラを始める前から失敗していたのだ。

 

シューレはゆっくりと口を開いた。

 

「……んぅ」

 

欠伸の前触れのような声。

 

キルアは固まった。

 

クラピカも固まった。

 

「……一週間ほど」

 

シューレが、寝返りを打つ。

 

「キルアさんとクラピカさんには、特訓特別メニューですわね……?」

 

「…………」

 

「ふわぁ……」

 

大きな欠伸。

 

それからシューレは、ようやく片目を薄く開けた。

 

「……おやすみの邪魔をするのは、感心しませんわねぇ……」

 

その声音は、いつもと変わらない。

 

怒鳴りもしない。

 

睨みつけもしない。

 

ただ、眠たそうだった。

 

それがかえって恐ろしかった。

 

キルアはゆっくりと、手に持っていたリップを荷物の上に戻した。

 

「……いや、その」

 

「はい?」

 

「……ちょっと、借りようとしただけで」

 

「何に使うおつもりでしたの?」

 

「…………」

 

「キルアさん?」

 

「……」

 

「お顔に?」

 

「……はい」

 

「落書き?」

 

「……はい」

 

シューレは、ふにゃりと笑った。

 

「そうですかぁ……」

 

キルアは思った。

 

あ、これ絶対ダメなやつだ。

 

シューレは再び目を閉じた。

 

「では、明日から一週間。朝の基礎訓練に、追加で反応訓練と追跡訓練。それから、ワタクシの射撃を使った回避訓練も入れましょうか……」

 

「ちょ、ちょっと待て!」

 

キルアが思わず声を上げる。

 

「一週間!? いや、イタズラは未遂だろ!?」

 

「未遂でも、荷物を漁りましたわよねぇ……?」

 

「それは、まあ……」

 

「それに、リップを使ってお顔に落書きするおつもりだったのでしょう?」

 

「……はい」

 

「では、反省する時間も必要ですわねぇ……」

 

「反省と射撃訓練を結びつけるな!」

 

「大丈夫ですわ。出力は安全基準内に調整しますから」

 

「そういう問題じゃねえんだよ!!」

 

その横で、ようやく事態を飲み込んだクラピカが、勢いよく立ち上がった。

 

「ま、待て! シューレ!」

 

「はい?」

 

「わ、私もか!?」

 

シューレは、目を閉じたまま答えた。

 

「当たり前でしょう。一緒にいたんですもの」

 

「私は止めようとしていたぞ!?」

 

「でも、そこにいらっしゃいましたわよねぇ?」

 

「そ、それは……!」

 

「キルアさんが何をするのか、分かっていたのでしょう?」

 

「……っ」

 

「でしたら、止めきれなかった責任もありますわねぇ」

 

クラピカは口を開いた。

 

閉じた。

 

もう一度開いた。

 

そして、何も言えなくなった。

 

キルアはその様子を見て、思わず叫んだ。

 

「クラピカ、お前も何か言えよ!」

 

「言っただろう! やめておけと!」

 

「もっと本気で止めろよ!」

 

「お前が本気で『絶』を使って動いたせいで、私も三秒ほど見失ったんだぞ! どうやって止めろというのだ!」

 

「いや、そこは何とかしろよ!」

 

「無茶を言うな!」

 

二人の言い争いを聞きながら、シューレは小さく笑った。

 

「ふふ……仲がよろしいですわねぇ」

 

「よくない!!」

 

二人の声が、見事に重なった。

 

シューレは満足そうに頷く。

 

「では、明日の朝はいつもより少し早く起きましょうねぇ……」

 

「少しって何時だ!?」

 

キルアが叫ぶ。

 

シューレは眠そうに指を一本立てた。

 

「……いつもより、一時間ほど」

 

「一時間!?」

 

「それと、キルアさん」

 

「……はい」

 

「ワタクシのリップは、勝手に持ち出さないでくださいませねぇ」

 

「……はい」

 

「次に同じことをしたら、二週間ですわ」

 

「やりません!!」

 

即答だった。

 

シューレは満足したのか、再び静かな寝息を立て始めた。

 

すぅ……すぅ……。

 

キルアとクラピカは、しばらくその場から動けなかった。

 

やがてキルアが、かすれた声で呟く。

 

「……なあ、クラピカ」

 

「……なんだ」

 

「俺、今、本気で『絶』を使ったんだよな?」

 

「ああ」

 

「お前でも三秒、見失ったんだよな?」

 

「……そうだ」

 

「なのに、あの人……寝たまま撃ってきたんだよな?」

 

「……そうだな」

 

「…………」

 

「…………」

 

二人は、ゆっくりと顔を見合わせた。

 

そして、同時に天を仰いだ。

 

「「……終わった」」

 

翌朝。

 

指定時刻の一時間前。

 

キルアとクラピカは、すでに訓練場に立っていた。

 

目の下には、濃い隈。

 

表情には、深い絶望。

 

その前に、シューレがのんびりと現れる。

 

「おはようございますわ〜。よく眠れました?」

 

「誰のせいだと思ってんだよ……」

 

「おや? 何かおっしゃいました?」

 

「いえ、何も……」

 

シューレはにこりと笑った。

 

「それでは、まずは軽く追跡訓練から始めましょうか」

 

キルアが顔を引きつらせる。

 

クラピカが天を仰ぐ。

 

シューレは右手を軽く構えた。

 

「……あ、そうそう」

 

二人がびくりと反応する。

 

「今日のワタクシ、少々眠いので」

 

「……それが?」

 

「反応が遅れたら、危ないですわよ?」

 

「「やめろぉぉぉぉ!!」」

 

森に、二人の悲鳴が響き渡った。

 

なお、シューレはその日の昼休みに、愛用のリップを荷物の奥へしまい直した。

 

「……まったく。イタズラするなら、もう少し上手にやっていただきたいですわねぇ」

 

そう呟きながら、彼女は再び横になった。

 

今度こそ、静かに休眠するために。

 

――ただし。

 

彼女の荷物に手を伸ばそうとした者は、その後しばらく誰もいなかった。

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