はんたぁはんたぁ AI生成   作:缶コーヒー好き

15 / 16
オリ主の喫煙描写がありますわ〜!


医者の卵には、言えない事がある

シューレ・ショットがタバコを吸うことを、レオリオは以前から知っていた。

 

初めて見た時には、当然のように注意した。

 

「おい、シューレ! タバコなんか吸ってんじゃねえよ!」

 

「まあ。レオリオさん、煙がお嫌い?」

 

「そういう話じゃねえ! 健康に悪いって話だよ!」

 

「存じておりますわ〜」

 

「知ってんならやめろ!」

 

「それはまた、別のお話ですわねぇ」

 

当時のレオリオは、いつもの調子で煙に巻かれたと思っていた。

 

まさか、あの左目の話が関係しているとは考えもしなかったのである。

 

⸻

 

ある日の夕方。

 

訓練を終えた一行は、山中の休憩所で一息ついていた。

 

ゴンとキルアは食事の準備を手伝い、クラピカは今日の訓練内容を整理している。

 

ビスケは疲労具合を確認し、レオリオは医療用品の点検をしていた。

 

その時、シューレがふらりと外へ出ていった。

 

「……あいつ、またか」

 

レオリオは窓の向こうを見た。

 

シューレは休憩所から少し離れた場所で、タバコに火をつけていた。

 

紫煙が、夕暮れの空へゆっくりと流れていく。

 

特に何をするでもない。

 

ただ、ぼんやりと煙を吐いている。

 

その姿を見て、レオリオはため息をついた。

 

「ったく……」

 

注意するべきだ。

 

医者を目指している人間として、健康に悪い習慣を見過ごすわけにはいかない。

 

そう思って、立ち上がった。

 

「……レオリオ」

 

クラピカが声をかけた。

 

「ん?」

 

「シューレのタバコについてだが……」

 

「おう。今からちょっと言ってくる」

 

「……いや」

 

クラピカは、少し言いづらそうに視線を落とした。

 

「君は、あの左目を使った後のことを知っているな?」

 

「……ああ」

 

「三日間、ひどい頭痛と吐き気が続く。眠ることもままならない」

 

「知ってるよ」

 

「では、彼女がなぜタバコを吸っているのか、考えたことはあるか?」

 

レオリオは黙った。

 

「……まさか」

 

クラピカは静かに頷いた。

 

「本人から、少し聞いた」

 

⸻

 

「頭の中をイバラで締め上げられているような痛みが、三日間続くんですのよ」

 

以前、シューレはそう説明した。

 

「眠れない。気持ち悪い。何をしていても痛い。痛みから意識を逸らそうとしても、結局、痛みが追いかけてくる」

 

それでも、彼女は軽い調子で笑っていた。

 

「……あれは、何度経験しても慣れませんわねぇ」

 

その言葉を、クラピカは覚えていた。

 

シューレは左目を使うことを嫌がる。

 

当然だ。

 

あれは、単に疲れるとか、少し頭が痛くなるとか、そういう代償ではない。

 

眠りたくても眠れず、身体を休めたくても休めない。

 

三日間、逃げ場のない苦痛に付き合わされる。

 

そして、使った後に何かあっても、すぐには本来の力を発揮できない。

 

それを承知で、彼女は必要な時には左目を開く。

 

仲間を守るために。

 

自分の判断で。

 

「……あの子、タバコを吸っている時だけは、少し気が紛れるらしい」

 

クラピカの言葉に、レオリオは顔をしかめた。

 

「だからって、タバコがいい理由にはならねえだろ」

 

「ああ。私もそう思う」

 

「だったら――」

 

「ただ、彼女が何を紛らわせようとしているのかを知った上で、君は同じように言えるか?」

 

レオリオは口を閉じた。

 

⸻

 

「……シューレ」

 

外へ出ると、シューレはちょうど煙を吐いたところだった。

 

「あら、レオリオさん。どうかなさいました?」

 

「いや……」

 

レオリオは、彼女の隣に立った。

 

タバコの先が赤く光る。

 

シューレはいつものように、のんびりとした顔をしていた。

 

「……それ、うまいのか?」

 

「さて。おいしいかと聞かれますと、少々難しいですわねぇ」

 

「じゃあ、何で吸ってんだよ」

 

「気が紛れますの」

 

「……何から?」

 

シューレは、少しだけ黙った。

 

それから、タバコを持つ手を軽く振った。

 

「頭の中の、嫌な記憶からですわね」

 

レオリオの表情が変わった。

 

「……左目か」

 

「ええ」

 

シューレはあっさり頷いた。

 

「使った後の痛みを思い出すだけで、少し嫌な気分になりますの。実際に痛むわけではないのですけれど、あの三日間を思い出すのは、あまり愉快ではありませんわねぇ」

 

「……」

 

「タバコを吸っている間は、そちらに意識を向けずに済みますの。煙を吐いて、ぼんやりして。そうしていると、少しだけ頭が休まる気がいたしますわ」

 

彼女は、また煙を吐いた。

 

「もちろん、タバコが健康にいいとは思っておりませんわよ?」

 

「……だったら」

 

レオリオは言いかけた。

 

やめろ。

 

身体に悪い。

 

他にストレスを解消する方法を探せ。

 

言いたいことはいくらでもあった。

 

だが。

 

「……だったら、もうちょっと身体を大事にしろよ」

 

出てきたのは、それだけだった。

 

シューレは瞬きをした。

 

「まあ」

 

「いや、タバコも身体に悪いしよ。そこは俺だって、やめてほしいと思ってる。思ってるけど……」

 

言葉が続かない。

 

左目を使った後のシューレを、レオリオは直接見ていないわけではない。

 

痛みに顔を歪め、まともに立つこともできず、眠ることすら許されない三日間。

 

彼女は、それを知っている。

 

知っていて、それでも必要なら左目を開く。

 

そして、その記憶を抱えたまま、いつものように笑っている。

 

「……お前、あんな目を使った後、三日間も苦しむんだろ」

 

「ええ」

 

「だったらせめて、使わずに済む時くらいは……」

 

レオリオは、そこで言葉を切った。

 

シューレは、タバコを持ったまま彼を見つめていた。

 

いつもの笑顔。

 

だが、からかうような笑みではなかった。

 

「……ありがとうございます、レオリオさん」

 

「礼を言われるようなことは言ってねえよ」

 

「いいえ。ワタクシの身体を心配してくださったのでしょう?」

 

「……そりゃ、医者を目指してるからな」

 

「ふふ。そうでしたわねぇ」

 

シューレは小さく笑った。

 

「でも、ご心配なく。左目は、必要がなければ使いませんわ」

 

「……分かってるよ」

 

「タバコについては……」

 

「……」

 

「今すぐやめる、とまではお約束できませんけれど」

 

「……だろうな」

 

レオリオは頭を掻いた。

 

「そこは、少しずつ考えてくれ。別に、今すぐ全部やめろって言いたいわけじゃねえから」

 

言ってから、自分で驚いた。

 

以前なら、そんな言い方はしなかった。

 

健康に悪いものはやめろ。

 

それで終わりだったはずだ。

 

けれど、今は違う。

 

タバコを吸う彼女の姿を見るたび、頭の中をイバラで締め上げられるような痛みが、三日間続くことを思い出してしまう。

 

そして、眠れない夜を何度も越えなければならないことも。

 

「……ただし」

 

レオリオは、少しだけ真剣な顔をした。

 

「頭痛がひどくなったり、吐き気がしたり、体調がおかしい時は、絶対に俺に言えよ。タバコで紛らわせようとするな。いいな?」

 

「ええ。承知いたしましたわ〜」

 

「本当だな?」

 

「本当ですわよ」

 

「……ならいい」

 

レオリオは、深く息を吐いた。

 

シューレは最後に一度だけ煙を吐き、タバコを消した。

 

「……さて。そろそろ戻りましょうか」

 

「ああ」

 

二人は並んで休憩所へ戻った。

 

⸻

 

その夜。

 

キルアは、レオリオの様子がおかしいことに気づいていた。

 

「……なあ、レオリオ」

 

「何だよ」

 

「今日、シューレにタバコのことで何も言わなかっただろ」

 

「……ああ」

 

「やめろって言わねえの?」

 

レオリオは、少しだけ眉を寄せた。

 

「言いたいさ。そりゃ、身体に悪いんだからな」

 

「じゃあ、何で?」

 

「……事情を知っちまったからだよ」

 

キルアは黙った。

 

レオリオは、机に肘をついた。

 

「タバコが身体に悪いのは事実だ。そこは変わらねえ。でもよ……あいつが何を紛らわせるために吸ってるのか知っちまったら、簡単にやめろとは言えねえだろ」

 

「……」

 

「三日間だぞ。三日間、頭が痛くて、吐き気がして、眠れねえんだ。俺だって、そんなの経験したことねえ」

 

レオリオは拳を握った。

 

「それでも、あいつは必要なら左目を使うんだ。自分がどんな目に遭うか分かっててもな」

 

「……ああ」

 

「だったらせめて、タバコを吸ってる間くらいは、あいつが少しでも楽でいられるなら……」

 

そこまで言って、レオリオは口を閉じた。

 

医者を目指す者としては、褒められた考え方ではない。

 

身体に悪い習慣を、事情があるからと見過ごす。

 

本来なら、別の方法を探してやるべきなのだ。

 

それでも。

 

「……俺は、今すぐやめろとは言えねえよ」

 

キルアは、しばらくレオリオを見ていた。

 

やがて、小さく息を吐いた。

 

「……お前、そういうとこは本当に医者っぽいよな」

 

「どういう意味だ?」

 

「患者の事情を知ったら、簡単に切り捨てられなくなるとこ」

 

「……うるせえ」

 

レオリオは顔を背けた。

 

「ただ、いつかは別の方法を一緒に探してやりてえとは思ってる」

 

その言葉に、キルアは何も言わず頷いた。

 

⸻

 

翌日。

 

シューレは、休憩時間にタバコを取り出そうとした。

 

すると、隣からレオリオが声をかけた。

 

「……シューレ」

 

「はい?」

 

「吸う前に、少し散歩でもしねえか?」

 

「散歩?」

 

「ああ。身体を動かすのが嫌なら、座って話すだけでもいい」

 

シューレは目を丸くした。

 

「……タバコをやめろ、とはおっしゃらないんですの?」

 

「言いたい気持ちはある」

 

「まあ」

 

「でも、いきなり取り上げるような真似をするつもりはねえよ。……別の方法で少しでも楽になるなら、それに越したことはないだろ」

 

シューレは、しばらくレオリオを見つめていた。

 

そして。

 

「……ふふ」

 

小さく笑った。

 

「レオリオさんは、お優しいですわねぇ」

 

「別に、優しくなんかねえよ」

 

「そうですの?」

 

「……医者になりたいだけだ」

 

「それは、素敵なことですわ」

 

シューレはタバコをしまった。

 

「では、今日はお散歩にいたしましょうか」

 

「おう」

 

二人は歩き出した。

 

その日、シューレがタバコを吸わなかった時間は、いつもより少し長かった。

 

それだけのことだ。

 

すぐにやめると約束したわけでもない。

 

頭痛の記憶が消えたわけでもない。

 

それでも、レオリオは思った。

 

いつか、あの左目の代償を紛らわせるために、タバコ以外の選択肢を増やしてやりたい。

 

タバコをやめろと一方的に命じるのではなく。

 

彼女が苦しみを抱えたままでも、少しだけ楽に過ごせる方法を、一緒に探してやりたい。

 

「……なあ、シューレ」

 

「はい?」

 

「今度、頭痛がひどくなった時は、遠慮せず俺を呼べよ」

 

シューレは、少しだけ驚いた顔をした。

 

それから、いつもの笑顔で頷いた。

 

「ええ。頼りにしておりますわ、レオリオさん」

 

その言葉に、レオリオは照れくさそうに顔を背けた。

 

――医者の卵には、言えないことがある。

 

けれど、言えないからといって、何もできないわけではない。

 

少なくとも今は。

 

彼女がタバコを吸う理由を知ってしまったレオリオには、ただ「やめろ」と言う代わりに、隣を歩くことができた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。