「フフッ、はづきちゃんと一緒に寝られるなんて、はなまる嬉しいなぁ…」
「あ、あんなさん?何をなさるおつもりで…?」
「ナニをするんだよ?」
僕とあんなちゃんは今、際どいランジェリー姿でベッドの上にいた。あんなちゃんは僕の上にまたがって妖艶な笑みを浮かべている。
「ま、待ってあんなちゃん!僕達まだ恋人じゃ…」
「
「あ、それはその…」
「否定しないんだ…やっぱりはづきちゃん、はなまる可愛いね!…さーて、そろそろ…」
「食べちゃおっと♡」
「…き…づ…はづき!!」
「食べないでぇーーー!!」
「ひゃっ!?」
「…あれ?夢…?」
「だ、大丈夫…?」
「う、うん。ごめんねれい、ビックリさせちゃって…」
「き、気にしないで」
夢から覚めた僕がいたのは僕が通っている『まことみらい学園』の生徒会室で、着ているのは際どいランジェリーではなくまことみらい学園の女子制服で、いつも被っている緑色のキャップ帽も頭の上にあった。そばにいるのは僕のクラスメイトであり、生徒会長でもある金田れいだ。この学校に転入してから少しして、れいから生徒会に勧誘され、断る理由はないのでそのまま入ることになった。れいは学校内で『怖い』とか『近寄りがたい』とか言われているが、僕にとっては気兼ねなく話せる大切な友達だ。
「それにしても珍しいね。はづきが仕事中に寝ちゃうなんて…」
「…ごめんごめん!昨日遅くまでポケ〇ンやってたから」
「もう、ゲームのやり過ぎは良くないよ?」
「仰る通りです…」
勿論それは嘘で、寝不足の原因は言わずもがなあんなちゃんだ。
昨夜、あんなちゃんに襲われそうになったのだが、間一髪のところでみくるちゃんとジェット君が部屋に入って来たので一線を越えることはなかった。その後あんなちゃんはみくるちゃんに説得され、不本意そうだったがキュアット探偵事務所に帰っていった。とはいえまた来るかもという恐怖に駆られてしまい、まともに睡眠を取ることが出来なかった。
「…じゃあ、今日はもう帰っていいよ。今日はゆっくり休みなさい」
「ありがとうれい!持つべき友は生徒会長様だね!」
「もう、調子が良いんだから…」
れいのご厚意で今日は早めに帰れることになった。ただ僕は正門を通らず、裏門から学校を出ることにした。もしかしたらあんなちゃんが正門で待ち構えているかもしれないし。
さて、問題なく裏門まで来れたし、このまま…
「はづきちゃん、待ってたよ!」
「…」
はいダメでした。どうやら僕の考えすらあんなちゃんにはお見通しのようだ。流石名探偵!
「や、ヤッホーあんなちゃん、みくるちゃん!」
「どうも、女の敵」
「女の敵!?」
何故かみくるちゃんから辛辣な呼ばれ方をされてしまった。ってか一応僕も女なんだけどな。
「もー!はづきちゃんは良い子だっていつも言ってるでしょ?」
「いいあんな?女の子を誑かして、大切な純潔を奪おうとする人間を良い子とは言わないんだよ?」
(純潔を奪われそうになったのはこっちなんだけどな…)
どうもみくるちゃんは僕があんなちゃんを誑かせたと思っているようだ。完全なる誤解である!
「あのさみくるちゃん。僕はただ元気がなかったあんなちゃんを…」
「まさか私も狙ってるんですか!?近寄らないでください!」
「うん、泣いても良いかな?」
うぅ、涙が止まらないよ…
「みくるってば、はづきちゃんを泣かせちゃダメだよ!よしよーし!」
あぁ…あんなちゃんに撫でられてる。今の僕にとって凄く心地いい…ハッ!
(はづきちゃんの頭を撫でちゃった…フフ、大丈夫だからね。はづきちゃんが望むなら、ずっとなでなでしてあげるよ…)
何を考えているのかわからないけど、絶対良くないことを考えてる顔だよアレ!
「あ、ありがとうあんなちゃん!もう大丈夫だから!」
「あ、うん…」
僕がさっと離れるとあんなちゃんはしょんぼりしてしまった。なんか心が痛む…
「…そうだはづきちゃん!良かったら私達のお店に来てよ!」
「新しいお店?」
「うん!『プリティホリック』っていうお店だよ」
プリティホリック…確かトロプリ辺りから毎回シリーズに出てきたコスメショップだよな。最近キュアット探偵事務所の二階にオープンしたらしい。正直あんなちゃんがいて不安だけど、みくるちゃんがいるなら大丈夫だよね。
「うん、いいよ」
「やった!ありがとうはづきちゃん!」
「あんながそう言うなら…でも先輩!私の目が黒い内はあんなに手を出させませんからね!」
「は、はい!」
みくるちゃんの迫力に思わず返事をしちゃったけど、手を出されそうになったのは僕なんだって…
「ジェット先輩!ただいま!」
「おかえりあんな、みくる…って、はづきも一緒か」
「ヤッホージェット君!」
キュアット探偵事務所の中に入った僕達を出迎えたのは自称天才科学者のジェット君だ。こんななりだけどキャプタンやポチタンと同じ妖精で、確か222歳のおじいちゃんなんだっけ?
「お前、なんか失礼な事考えなかったか?」
「気のせいじゃないかな?」
あんなちゃんといい、この世界の人達って何かと鋭くない?
「プリティホリックは事務所の二階にあるんだ。さっそく行くよ!」
「お前達は先に行っててくれ。はづきと話したいことがあるんだ。はづきもいいか?」
「う、うん…」
「わかった!じゃあ後でね」
あんなちゃんとみくるちゃんが出ていったタイミングでジェット君に「ソファに座れよ」と言われ、僕は言う通りにした。
ってか、僕と話したいことって何だろ?まさか、僕が大怪盗プリキュアのキュアスティールだってことがバレちゃった!?
「…昨日はすまなかった」
「…へ?」
「あんなの事だよ。昨日あいつに襲われそうになってただろ?」
「あ、ああ!その事ね!」
「その事って、他に何があるんだ?」
「ううん!気にしないで!」
どうやら正体がバレたわけじゃなかったみたい。ただでさえあんなちゃんに正体がバレてるのに、これ以上正体がバレたら僕が築き上げた『名探偵プリキュアのライバル』というイメージが崩壊しちゃうからね。
「…それで、はづきはあんなの事をどう思ってるんだ?」
「あんなちゃんをどう思ってるか…?」
…正直、僕はあんなちゃんを主人公というより、可愛い後輩と思っていた。そんな彼女から突然告白され、更に大人がするようなキスまでされた。その時の目に光がなかったあんなちゃんに少なからず恐怖は感じたけど…
「まぁ、意識はしちゃってるね。ストレートに告白されちゃったし…」
「お前、意外と単純なんだな」
ニヤニヤしながらそう言ってくるジェット君に、僕は思わずムッとなってしまう。
「だってしょうがないじゃん!あんなちゃんって元々可愛いし、なによりディープキスされちゃったんだよ!?意識するに決まってんじゃん!」
「でぃ、でぃでぃ、ディープキスゥゥ!?」
ジェット君は顔を真っ赤にしながら動揺していた。童貞か君は。
「…コホン!とにかく、僕が言いたいことは一つだけだ…あんなの気持ちをわかってやってくれ。普段は悩みがないように振舞ってるけど、あれでも寂しい思いをしてるんだよ。詳しい事は言えないけど…」
…確かにそうだ。僕は転生者だからタイムスリップした時に冷静でいられたけど、あんなちゃんは元々普通の女の子だ。寂しくないなんて思えるわけがない。
「…僕は、まだあんなちゃんの気持ちに応えられない。だけど、あんなちゃんから逃げるような事はしない。僕の中で気持ちの整理が出来たら、返事をするつもりだよ」
「はづき…」
「さ、二人が待ってるよ。早く行こ」
「わ、わかったから、引っ張るなって!」
僕はジェット君の手を掴んで事務所の外に出て、そこから二階にあるプリティホリックに行こうとする。
「はづきちゃん!」
外に出た僕とジェット君の目の前にいたのは、昨日の様に目に光が灯っていないあんなちゃんだった。その傍には警戒心むき出しのみくるちゃんの姿もあった。
「あ、あんなちゃん?二階で待ってたんじゃ…」
「中々来ないから迎えに来たんだよ?」
中々来ないって、五分くらいしか話してないんだけど…
うぅ…あんなちゃんから逃げないって決めたけど、やっぱし怖い…
たちゅけて、ジェット君…
「じゃ、じゃあ、僕とみくるは先に行ってるから!行くぞみくる」
「えぇ…大丈夫なの?」
「大丈夫だろ…じゃあはづき、生きてたらまた会おうな」
あんにゃろ逃げやがった!?
「はづきちゃん…」
いつの間にかあんなちゃんが僕の傍まで来ていた。
「…前から思ってたけど、はづきちゃんってはなまる綺麗だよね」
「そ、そう?ありがとう。あんなちゃんも可愛いよ」
「…フフ、ありがとう!…えへへ!」
よし!今の内に二階に…
「もう!待ってよはづきちゃん!」
行こうとしたらあんなちゃんに手を掴まれた。
「そこまで綺麗なら、凄くやりがいがあるね」
「や、ヤリ!?」
ちょ、ここでヤルつもりなの!?それはマズいって!
「安心して!はづきちゃんの事…」
「もーっと、綺麗にしてあげるからね♡」
「…はい!終わったよ!」
僕が今いるのはプリティホリックの化粧コーナー。そこの鏡に映っていたのはあんなちゃんとみくるちゃんによってメイクをされた僕の顔だった。ヤルんじゃなくてメイクをやるだったわ。
「わぁ~!はづきちゃん、はなまる綺麗だね!」
「本当に綺麗…先輩、顔は良いもんね…」
あんなちゃんは興奮しながら僕を見ており、みくるちゃんは少し失礼な事を言いつつも、僕に見惚れているようだった。
あれから何事も起きず、僕はコスメを買って屋敷に帰っていった。
その日の夜、あんなの自室にて。
「えへへ…メイクをしたはづきちゃんの写真…♡」
(あんながどんどん先輩に染まっていく…!先輩、あなたの思い通りにさせませんからね!)
あんなはこっそり撮ったはづきの写真を見ながら笑顔を浮かべ、部屋の外からコッソリそれを覗いていたみくるははづきに対し、更に敵対心を燃やしていたのであった。