『昨夜、宝生美術館オーナー、宝生ちなみ氏に怪盗団ファントムを名乗る人物からの予告状が届いたとの事です。予告状には明日の夜8時、『星明かりのプリンセス』を頂くと書かれており…』
キャプタンと一緒に朝食を食べていると、この様なニュースが流れていた。
「ファントムの奴らが予告状?どういう風の吹き回しだ…」
朝食の食パンを頬張っているキャプタンはそう言っていた。
怪盗団ファントム…マコトジュエルを盗み出すことを目的とし、幾度も名探偵プリキュアと戦ってきた組織だ。キャプタンによると、ボスを含めたファントムの連中は全て妖精らしい。僕も何度か戦った事があるけど、今のところ苦戦せずに退けてきた。
とはいえ、今回怪盗団ファントムが予告状を送っていたのは正直驚いている。幹部であるニジーとアゲセーヌはバレないようにマコトジュエルが宿った物を盗み出し、その持ち主の身近な人等に変装してやり過ごそうとし、ゴウエモンという男は小細工を使わずに真正面から強奪している。だが、どのメンバーもこれまで予告状を送ったことはない。
となると、考えられる事はただ一つ…
(ようやくキュアアルカナ・シャドウが出るんだろうね…)
キュアアルカナ・シャドウ…前情報によるとプリキュアでありながら、敵勢力である怪盗団ファントムに属しているようだ。ちなみに本名は森亜るるかというらしい。たんプリ放送前に僕は死んでしまったのでその雄姿はアニメで見られなかったけど、やたら世間で話題になってたんだよな。
「…ちょっくら行ってみようぜ、宝生美術館ってとこに」
「だね」
キャプタンが僕の頭の上に乗ってくると、光に包まれて緑色のキャップ帽に変化した。僕がいつも被っていたのはキャップ帽に変身したキャプタンだったんだよね。
「…よし!」
僕はキャップ帽を深く被り、宝生美術館に向かっていった。
あれから問題なく宝生美術館に辿り着いた。予告状の影響か、大勢のお客さんが館内にいた
「これが星明かりのプリンセスねぇ…」
僕はファントムのターゲットになっている星明かりのプリンセスが展示されているケースを見る。だけどそれを見た僕は違和感を感じていた。何故かはわからないけど…
「あら?あらあらあら!?」
「?」
そんな僕の元に凄い勢いで近づいてくる人がいた。確かここのオーナーじゃ…
「なんて可愛らしい帽子なの!?」
「え?」
何この人?もしかして、キャプタンを気に入ったのかな?
「先程のポーチに引けを取らない可愛さだわ!良かったら譲ってちょうだい!」
「だ、ダメですよ!大事な帽子なんですから!」
「あらそう…まぁいいわ!気が変わったら教えてちょうだい」
危ない危ない…それにしても、キャプタンみたいに可愛いポーチもあるんだな…あれ、ポーチ?
「あの、さっき言ってたポーチの持ち主って、どんな人でしたか?」
「ポーチの持ち主…丁度あーたくらいの女の子二人だったわね。それがどうかしたの?」
「…ナンデモナイデス」
そう言って僕は宝生さんから離れる。
そりゃそうだ。怪盗団ファントムから予告状が来てるのに、あの子たちが黙ってるわけないもんね。
よし!星明かりのプリンセスは見たし、一旦帰ろう!
「ねぇ」
「や、やぁ!奇遇だね二人とも!」
「…二人って、何の事?」
「へ…?」
あんなちゃんとみくるちゃんかと思って咄嗟に声を出したのだが、よく聞くと声が二人と違う。僕に話しかけてきたのは少し不思議な雰囲気を纏い、可愛らしいぬいぐるみを抱っこしている女の子だった。
森亜るるかその人です。
「私の顔に何かついてる?」
「す、すみません。ジッと見ちゃって」
「別に謝らなくてもいい」
思わずガン見してしまったが、特に気にした様子ではないようだ。よく見ると森亜るるかって僕より少し背が高いように見えるけど、もしかして僕やあんなちゃん達より年上だったりする?ホントに年上だったら失礼なのでるるかさんと呼ぶ事にしよう。
「…あの首飾り、凄い人気ね」
「まぁ、予告状なんて大それたモンが送られてきましたしね」
「それだけじゃない。騒動になる前から首飾りが好きな人は沢山いた…何が皆を惹きつけるのかしらね?」
るるかさんはどこか意味深気にそう問いかけてくる。ここは正直に答えよっと。
「わかんないっスね。僕、高級品の良し悪しに興味がないんで」
大怪盗として活動しておいてなんだけど、僕は高額の宝石や世界の名画といった物には興味がない。僕が集めているのはあくまでマコトジュエルなわけだし。
僕の返答を聞いたるるかさんは意外そうな表情になるが、「そう…」と言って瞼を閉じた。
「あっ、はづきちゃんだ!おーい!」
「ゲッ!?あんなちゃんだ…あの!すぐに僕から離れた方が…あれ?」
どういう訳か、いつの間にかるるかさんがこの場から消えていた。どうやって消えたんだろ…
まぁ、これでるるかさんが危険な目に合わずに済むね。今のあんなちゃんに女の子と二人で話してたってバレたらタダじゃ済まないもん。
「どうしたの?」
「う、ううん!あんなちゃんも例の予告状を見てここに?」
「うん!みくるも一緒だよ…ねぇはづきちゃん。私以外の女と話してたでしょ?」
「ふえっ!?…な、何の事かな~?」
「嘘は良くないよ?だって、はづきちゃんから知らない女の匂いがするもん」
犬か君は!?
「…嘘を吐いたのは謝るよ。ごめん…その人からさ、星明かりのプリンセスが何で人を惹きつけるんだろうって訊かれたから答えただけだよ」
「…その人、私がさっき会った人と同じ人かも」
「え?」
「私もね、知らない女の人から同じような事を訊かれたの」
「へぇ…その人、ぬいぐるみを抱えてなかった?」
「あ、抱えてたよ!」
「じゃあ、もしかしたら同じ人かもね」
るるかさん、もうあんなちゃんと話してたんだ。
「ねぇはづきちゃん…はづきちゃんも一緒に星明かりのプリンセスを守ろうよ」
「…いや、遠慮しとくよ。そういうのは君達探偵の役目だし…」
「一緒に来ないとみくるとジェット先輩にバラしちゃうよ?キュアスティールの正体がはづきちゃんだって」
うっ、そう来るか…いや、もしかしたら嘘かもしれないし、真に受けない方が…
「噓じゃないよ?私、嘘吐かないから!」
そうだ、あんなちゃんは嘘を吐くような子じゃないんだった…
結局あんなちゃんの圧に負け、僕も星明かりのプリンセスの警護に参加することになった。
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その日の夜、宝生美術館の屋上に二人の人物の姿があった。
一人は件の少女、森亜るるか。もう一人はるるかのおとも妖精であるマシュタンだ。
「上手くいったわね」
「言ったでしょ?私に失敗はない」
るるかの手には星明かりのプリンセスが握られていた。
あれからるるかはあんな達を欺き、星明かりのプリンセスを盗む出すことが出来たのだ。
(…私の思い過ごしだった?)
しかし、るるかの中には疑念も残っていた。その疑念とは、昼間に少し話をしたはづきの事だ。るるかは彼女こそが大怪盗プリキュアのキュアスティールだと推理し、接触を試みたが、確証に至ることはなかった。
(これを盗み出した時も、彼女は何もしなかった。いったい何故…?)
「オープン!プリキットライト!輪投げ!」
声が聞こえてきたと同時にるるかに向かって輪っかのようなものが飛んでくるが、るるかはそれを軽々と避けてみせた。輪っかを投げたのはるるかを捕縛しようとしたあんなであった。
「どうしてここにいると?」
「美術館の入口には監視カメラが十台以上あるし、外には大勢の記者がいる…だから屋上から逃げようとしたんでしょ?」
「やるじゃない…ところで、あなた達と一緒にいた子はどうしたの?」
「もしかして、はづきちゃんの事?」
「先輩は一般人よ!だから中で待ってもらったの!」
「…まぁいいわ。それより、早くプリキュアに変身しなさい。でないと、さっきの様に変装して街中に逃げるけど?」
そう言ってるるかはある物を二人に見せる。それは探偵道具として二人も使っているプリキットグロスだった。
「プリキットグロス!?」
「どうしてあなたがそれを!?」
「さぁ?…それより、どうするの?」
「…行くよ、みくる!」
「うん!」
「どんな謎でもはなまる解決!名探偵キュアアンサー!」
「重ねた推理で笑顔にジャンプ!名探偵キュアミスティック!」
「「名探偵プリキュア!!」」
「私の答え、見せてあげる!」
「…オープン、ティアアルカナロッド」
二人が変身を終えると、るるかも首に下げていたペンダントを持つ。するとペンダントが大きくなり、杖の形になった。
「神秘と秘密で包み込む、キュアアルカナ・シャドウ」
「さぁ、迷宮へ誘いましょう」
るるかはキュアアルカナ・シャドウに変身した。その姿を見たアンサーとミスティックは呆然としていた。
「どうしたの?早く来なさい」
「「!…ハァーーッ!!」」
二人は同時に動き出し、アルカナ・シャドウに向けて拳を突き出す。しかしアルカナ・シャドウにはあっさり避けられ、視界からも消えてしまった。
「ふにゅ…!?」
突如後ろから頬を突かれたミスティック。後ろには余裕の表情を浮かべるアルカナ・シャドウの姿があった。
「ハァーッ!!」
「動きが単純すぎ」
アンサーの攻撃をアルカナ・シャドウは辛辣な評価を下し、さらりと避けた
「次の一手、答えが透けて見える」
「「っ…ヤァーーッ!」」
「動きが大きくてワンパターン」
またしても二人の攻撃を避けたアルカナ・シャドウはティアアルカナロッドを構えた。
「アルカナスターレイン!!」
ロッドから出てきた無数のビームがプリキュアに向かって放たれた。直撃こそしなかったが、その余波で二人は吹き飛ばされてしまった。
「随分と一生懸命なのね…偽物なのに」
「えっ…?」
「偽物…?」
「この首飾りの事よ」
マシュタンはアルカナ・シャドウから預かっていた星明かりのプリンセスを見せてそう言う。
「偽物…嘘の首飾りが人を惹きつけ、マコトジュエルが宿った…嘘も満更悪いものじゃない。そう思わない?名探偵さん」
「違うっ!!」
アンサーはアルカナ・シャドウの言葉を否定する。
「嘘を吐いて人の物を盗るなんて、許されることじゃない!」
アンサーはジュエルキュアウォッチの針を動かした。
「アンサーアタック!!」
「また単純な攻撃…!?」
アルカナ・シャドウは単純な攻撃と判断していたが、すぐに違和感を感じた。
アンサーの拳はアルカナ・シャドウではなく、彼女が立っている足場だった。
「ヤァッ!!」
アルカナ・シャドウは足場が崩れる前にジャンプをする。それを見たアンサーはすぐに飛び上がってアルカナ・シャドウにパンチをした。アルカナ・シャドウはロッドでそれを防いでアンサーを弾き飛ばしたが、その時の彼女から先程見せた余裕の表情は消えていた。
「…確かに、あなたは強いよ」
アンサーは体勢を立て直しながら、そう呟いた。
「でも私達には、あなたよりもっと強いライバルがいるんだよ」
「…大怪盗プリキュアの、キュアスティール」
「うん…キュアスティールとの戦いが、私達を強くしてくれた!」
「アンサーの言う通り!」
アンサーの隣にミスティックが立つ。
「スティールの事は嫌いだけど、彼女との戦いが私達を成長させてくれたのは、紛れもない事実!」
「…なるほど」
二人の言葉を聞いたアルカナ・シャドウは笑みを浮かべていた。
「そういう事なら、少しだけ本気を出してあげる」
「私も混ぜてくださらない?この遊戯に!」
突如この場に少女の声が響き渡ってきた。
この声を何度も聞いてきた名探偵プリキュアには、少女の正体がわかっていた。
「オープン!マジックキュアウォッチ!」
「ターン!」
少女は左腕に身に着けている腕時計についているダイヤルを右に回した。少女は様々な箇所が変化していき、その姿が露わとなった。
「どんなお宝も優雅に頂く!大怪盗キュアスティール!!」
「あなたの答え、頂戴しますわ!」