僕とキャプタンの目の前には、信じ難い光景が広がっていた。
ボロボロになり、立っているのがやっとな状態の名探偵プリキュアの二人。どこか焦っている様子の怪盗団ファントムの面々に、それをただ見ているだけのキュアアルカナ・シャドウ。そして名探偵プリキュアの前に立ち塞がる鎧を身に着けている男。
結構離れているのに、男からとてつもない威圧感を感じるし、キャプタンも男を見て珍しく動揺していた。
すぐにわかった。この男がファントムのボス、ウソノワールだと…!
「は、はづき!?」
「せ、先輩!?どうしてここに…って、キャプタンもいる!?」
「っ…」
最初にこちらに気づいたアンサーとミスティック、ポチタンとジェット君は僕がこの空間内にいる事と、キュアスティールのおとも妖精である筈のキャプタンが一般人である筈の僕と一緒にいることに困惑しているようだった。いや、困惑しているのはスティールの正体を知らないミスティックとジェット君だけだ。
アンサーだけはこちらを見て、「何で来たの?」と言いたげな顔をしていた。
困惑しているのはニジー、アゲセーヌ、ゴウエモンも同じだったけど、ウソノワールだけは冷静にこちらを見ていた。
「模倣の妖精…まさか、お前は…!」
どうやらウソノワールは僕の正体に気づいたようだ。これ以上正体を隠し通す事は難しそうだし、ちゃちゃっとキュアスティールに変身しちゃお。
はい、変身完了!
「先輩が、キュアスティール…!?」
「どうなってるんだよ!?」
「…はづきちゃんだったんだ。キュアスティールの正体は」
動揺するミスティックとジェット君に、アンサーがそう告げている。
「まさかお前、あいつの事を知ってたのか!?」
「どうして言ってくれなかったの!?アンサー!」
「あまりアンサーを責めないでくださいな。私がアンサーに黙っているように伝えましたの」
「スティール…あのね!」
「話は後で…ですわ」
そう言って僕はウソノワールのほうに向き直った。ウソノワールはなんか変な本を見つめていた。
「大怪盗プリキュアのキュアスティール…名探偵プリキュア同様、
ミラージュの書?なんだそりゃ?
「未來自由の書は、あたしのご先祖様達が記した伝説の書…これから起きることが全て記されているの。長い間読み解く事が出来なかった書を、ウソノワール様だけが読み解くことが出来るのよ」
僕の疑問に答えるかのように、マシュタンは未來自由の書の事を教えてくれた。
これから起こる事が全部わかるねぇ…
「要するに、あなたは未来の出来事がわからないと不安で仕方がない…そうでしょう?」
「なに…?」
「口を慎みたまえベイビー!ウソノワール様への侮辱は許されない事だぞ!」
「事実をお伝えしたまでですわ。そういうあなたこそ、一度も私に勝ったことがないでしょう?口を慎んでほしいですわね」
「くっ…相変わらず生意気なベイビーだ…!」
「言わせておけ」
ウソノワールはニジーに書を預け、こちらに向かってくる。
「お前も書に記されぬ異物…名探偵プリキュア諸共、消えなければならない」
「やれるもんならやってみろ…ですわ!」
僕はウソノワールに向けて拳を突き出したが、ウソノワールは片腕だけで受け止めてしまった。なるほど、ボスという肩書きは伊達じゃなさそうだ。それなら!
「アンサーアタック!!」
言わずもがなこの技はアンサーの技をコピーしたものだ。とはいえ、これだけで決定打になるとは考えられない。
だから僕は、アンサーアタックで地面を砕いて、それによって出来た破片で目くらましをしてやった。
「小賢しい!」
ウソノワールは破片を払いのけるが、それだけで十分だ。
「どりゃあっ!!」
「がはっ!?」
一瞬の隙を突き、ウソノワールを背後から蹴り飛ばしてやった。これにはファントムの面々も驚愕しているようだ。
「やるじゃない。ウソノワール様の不意をつくなんて」
「…だけど」
アルカナ・シャドウとマシュタンが何か話していたが、僕は気にせず追撃しようとした。
「嘘よ覆え。お前は何も出来ず、私に敗北する」
!?…な、なんだこれ?身体が動かない…!頭も痛い…まるで頭の中に大声が響き渡っているかのような感覚だ…!
「がはっ!?」
僕は抵抗できないままウソノワールに蹴り飛ばされてしまったうえ、変身も解けてしまっていた。よく見たらマジックキュアウォッチも破損していた。たぶん今の衝撃で破損してしまったのだろう。
「はづきちゃんっ!!」
「はづき!しっかりしろ!」
アンサーとキャプタンの呼び声が聞こえてきたけど、僕は上手く声が出せず、地面から起き上がる事も出来なかった。僕は名探偵プリキュアのライバルなのに、二人に情けないとこ見られちゃったな…
「何、今のって…!?」
「これが私の、嘘で覆う力だ」
「嘘で、覆う力…?」
「今は僅かな時間のみ…だが、マコトジュエルの力があれば私の嘘は永遠に続く。私の嘘が真実となるのだ!」
そう言ってウソノワールは僕に近づいてきていた。これは、ヤバすぎる…!
「はづきに近寄るな!嘘っぱち野郎!」
「キャ、キャプタン…!」
「邪魔をするな、模倣の妖精…」
「ポチー!」
「ポチタン!?」
キャプタンだけではなく、ポチタンまでも僕を守ろうとウソノワールの前に出てきた。
「時空の妖精…マコトジュエルの欠片をお前が移動させ、何処の地で巨大なマコトジュエルに戻しているのだろう?」
マコトジュエルについては以前キャプタンから聞かされている。マコトジュエルが元々巨大だった事を。ウソノワールはキャプタンとポチタンに攻撃しようとする。
「アンサーアタック!!」
するとアンサーがアンサーアタックをウソノワールに向けて放った。
「キュアアンサー…」
「はづきちゃん達には、指一本触れさせない!あなたの言う、嘘に覆われた世界にもさせない!」
「…嘘よ覆え」
ウソノワールがそう言うと、アンサーの様子が変わった。先程僕に使っていたウソノワールの力か…
「お前は私に跪く」
「く…ぅ…!」
アンサーは何とか抗おうとしているが、無情にもアンサーの膝は地面につきそうになっていた。
「何のつもりだ…キュアスティール?」
「お、おいはづき!」
僕はアンサーを守るように、彼女の前に立っていた。
不思議なもんだ。さっきまで立ち上がれそうになかったのに、気がつくとアンサーのそばまで来ることが出来た。
「は…づき…ちゃん…!」
アンサーは苦しみながらも、僕を見ているようだった。
正直、これで彼女を救えるかはわからない…だけど、やらない後悔よりやって後悔。
これが、僕の
「ん…!?」
「ひゃわっ!?」
「な、なな、なにやってんだよ!?」
ミスティックとジェット君が恥ずかしそうにそう言ってるし、きっとウソノワール以外のファントム共も驚いている事だろう。
僕は今、アンサーにキスをしていた。
勿論ただのキスじゃない。以前あんなちゃんからされたディープキスだ。
キスを終え、僕はアンサーの様子を見守った。
「…ありがとう、はづきちゃん!」
「…どういたしまして、あんなちゃん!」
無事にアンサーは元通りになった。マジでよかった…!
「ウソノワール様の嘘が、破られた…!?」
「しかもキスで!?マジチョベリバ!」
「ハハッ!随分大胆な事をすんなぁ!」
「「笑ってる場合か!!」」
ファントムの三人が漫才をする中、これまで冷静さを保っていたウソノワールは明らかに動揺していた。
「私の噓が、破られただと…!?」
「…ハハッ、今ので破られるようじゃ、大した力じゃないんだね」
「おのれ!」
冷静さを欠いたウソノワールは僕達に攻撃を仕掛けてくるが、ミスティックがミスティックリフレクションでそれを防いでくれた。
「サンキュ、ミスティック」
「…私はアンサーとポチタンを助けただけで、先輩を助けたわけじゃありません」
「ほいほい」
まったく、素直じゃないな~。
…よし、決めた!
「僕も一緒に戦うよ。ライバルとしてじゃなくて、仲間として」
「でも、はづきちゃんはもう…」
そうだ。マジックキュアウォッチが壊れちゃったから、もうキュアスティールに変身できないんだった…
「まぁホラ、そこは気持ちだけでも一緒に戦ってるって思えばね!」
「し、締まらないですね…」
「アハハ…」
そうこうしている内に再びウソノワールが攻撃を仕掛けてきた。間一髪でアンサーにお姫様抱っこされて奴と距離を取ることが出来た。
「…何とかなるかもしれないぜ!」
そう言ってキャプタンは首元の宝石からある物を取り出してきた。マジックキュアウォッチに似てるけど、ところどころ構造が違うようだ。
「これは俺の昔の相棒…はづきの曾祖母ちゃんから預かってたもんだ。もしかしたら、これで変身できるかもしれないぜ!」
僕はキャプタンからマジックキュアウォッチ?を受け取り、左腕に装着した。
よし…やってみよう!
「オープン!マジックキュアウォッチ!」
マジックキュアウォッチ?に僕のマコトジュエルをかざす。
「ターン!」
ここまでの過程はキュアスティールに変身する時と同じ。だけどそこからが違った
髪型はスティールと同じだけど髪色は銀色ではなく金色。衣装もスティールの物に近いけど、赤色が基調だ。
気がつけば僕は、こう言っていた。
「どんなお宝も華麗に取り戻す!名探偵キュアリゲイン!!」
「僕の答え、見せてやる!」